終末が来たりし世に英傑の旗を掲げよ   作:謎の食通

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英傑を語ろうと言った割には出番が少なかったので書きました。


幕間
こぼれ話 その一


かつてのイギリスの首都ロンドン。メシア教過激派による核攻撃で壊滅した都市の一つだ。ブリテン連合王国により再建が進んでいるが、かつての原爆より強力な核爆弾は石造りにも関わらず広島に比べて少しマシと言う状態だ。かのビッグベンもへし折れてしまった。現在は、人間悪魔総出修復作業を行っている。

なぜ修復しているかというとこういう歴史的建造物はMAGを収集したり加工したり、異界を展開するのに効率が良いからだ。ビッグベンもモルガン殿下主導の元、生体エナジー協会本部と魔導研究所として改装工事が行われているのだ。

そして、私ゴルドルフ・ムジークが所属している英傑サマナー本部であるグリニッジ天文台もその一つだ。

 

「ゴルドルフおじさん、ヘラクレスはやっぱり使えないのか?」」

 

私の執務室に一人の少年サマナーが陳情に来ていた。昔、私に仕えていたメイドの親戚で私も甥っ子の様に可愛がっていたジーク・オルランドだ。・・・しかし、本当にあのセメントメイド親族か疑わしくなるほど良い子なんだよなあ、こやつ。

 

「ジーク君、MAG消費量を考えたまえよ、君ィ。あれ一体で何体分の英傑を維持できると思っているのかね?しかもあれはイタリアとの外交的にも難しい立ち位置にあるんだぞ」

 

ヘラクレスもといアルケイデスは製造段階でイタリアもといギリシャ神話の協力があって製造できた代物。残念ながら魔人戦では活躍できなかったがその後の戦いではヘラクレスの名は伊達では無いとばかりに暴れまわった。だが、最近は休眠状態のままだ。元々ヘラクレスのマスターだった奴も今は別の英傑を割り振られている。

 

「やっぱり駄目なのか?」

 

しょげた顔をするな。そういう顔は男にじゃなくて意中の女性にしなさいよ、もう。

 

「ブリテンが統一された今、また外敵が来ない限りは使わないだろうな。それにイタリアに提供するという話も政府の中にはあるぐらいだ」

 

「そうか・・・」

 

よし、理解はしてくれたようだな。いや、魔人の事を考えると特級戦力は多く抱えておきたいのは理解できるが、無い袖は振れないからな。今期のMAG予算も潤沢とは言えないし。

 

「・・・ふむ、君がわざわざこのような事を言いに来たのは周りのお願いかね」

 

それよりもだ。ジークがこういう事を私に言いに来るのは誰かしらの差し金に違いない。特にトゥースには何度も何度も・・・!

 

「わかるのか、ゴルドルフおじさん。凄いなあ」

 

「ふふふ、伊達にここの所長はやっていないのだよ」

 

恐らくジークに根回ししたのは人間主義の連中だろうな。イギリス産の英傑はその性質上、ケルト神話系の影響が非常に強い。クーフーリンやフィンマックールなんぞは殆ど妖精騎士団の所属のようなものだ。ちなみにジャンヌ・ダルクはメシア教の紐付きだったりする。しかも、ジークと色々と接触しているという話も聞くから不安だ。

ジークの英傑であるアストルフォは頭が弱いから、どうも頼りにならん。だからと言って元々の仲魔が信用に値するかと言うと微妙だ。

 

「ふむ、そうだ。時間はあるかね?」

 

せっかくだし、あれにジークを参加させるとしようか。ほかの奴らへのけん制としてな。

 

「ん?大丈夫だ」

 

「実はこの度、英傑管理機構グリニッジにかつての英国退魔組織が傘下に加わる事になったのだ。その会合にお前を連れて行ってやろう」

 

ジークは私の庇護下にあると周囲に分からせないとな。こやつ、マスターやサマナーとしての才能は一級品だからなあ。特にジークフリートの適合率が高すぎて逆にマスターになれなかったぐらいだ。

 

「・・・なんでグリニッジなんだ?普通は国軍や人外ハンター協会、そして騎士団に加わるものだろう?ここはあくまで英傑の為の組織の筈じゃ・・・」

 

まあ、在野の連中はブリテン・ケルト・メシアで取り込んでいる最中だからな。英傑は色々な種類が居る為、一種の中立状態みたいになっているからな。普通に考えればここに編入しようとするのは、道理に合わないと思うだろう。だがな・・・。

 

「何難しい話じゃない。そいつらが抱えている戦力が英傑もどきだからだ」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

約束の時間になったのでジークを伴い、応接室に入る。そこには褐色の肌をした金色の長髪の女性がお茶を飲んでいた。隣の居るのは執事だろうが、そこそこレベルが高そうだ。

 

「お初にお目にかかるミスター・ムジーク。私はインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングだ。かつてヘルシング機関と呼ばれていた組織の長をしていた」

 

眼鏡でも隠せない眼光が私を貫く。話には聞いていたが、今代のヘルシング卿と会うことになるとは・・・。

 

「お会いできて光栄だ、ミス・ヘルシング。私は英傑管理機構グリニッジ所長ゴルドルフ・ムジークだ。こちらはジーク。グリニッジのマスターをしている」

 

「ジーク・オルランドです。よろしくお願いいたします。」

 

隣にいるジークがお辞儀する。・・・ちょっと、殿下に毒されてるぞ~。それは日本の挨拶でこういう時は握手をするもんだぞ。そう思いつつもジークに見せるためにも私が率先して握手する。そして、それに気付いたのか、ただ流れに乗っただけなのかはわからないがジークもヘルシング卿と握手をする。

 

「なるほど、その名前は聞いたことがあるイングランドの王子アストルフォのマスターとしてエース級の活躍をしているとな」

 

「まあ、私の甥っ子も当然のような奴だが優秀なマスターだ。期待は裏切らないと思う」

 

なんせ、陛下直属の騎士団への編入も話に出たくらいだからな。今のところ直参は円卓の騎士の英傑と昔の友人だった侍女くらいの筈だ。そこに人を送り込めるだけでどれだけの結果が得られることやら。

 

「なるほど。だが、問題は奴が気に入るかですな?」

 

「おお、そうだ。それで例の者は、どこに?COMPの中ですかな?」

 

おっと、難しい政治の話はあとに考えるとするか。今は、ヘルシング機関の切り札だな。

 

「それなら、棺桶ごとここのホールに置かせてもらっている。それと警備していた英傑にも話はしてあります」

 

おおう、棺桶ごと・・・さすがヘルシング機関。徹底しているな。

では、ホールへ移動するとしよう。あと、念のためにジークフリートに念話でもしもの時のために備えていて貰うか。

そういえば、今回の警備担当は・・・ベオウルフか。ドラゴンすらも打倒した英傑なら竜とも称された事のある悪魔も抑えきれるだろう。

そうして、ホールにたどり着くとそこにはど真ん中に棺桶が鎮座していた。ベオウルフは、扉の壁に背を預けながら棺桶から目を離していない。

思わず立ち尽くしていると、ヘルシング卿の執事が棺桶に開ける。そこには赤いコートを着た黒髪の男が横たわっていた。

 

「これがドラキュラか・・・!」

 

「吸血鬼アーカード、我々ヘルシング機関が運用する兵器、今風に言うと仲魔です」

 

なるほど、切り札と言うだけあってかなり高位の悪魔らしい。吸血鬼伝承は世界中に広まっているから、その大本とも呼べるこやつは、昔なら現世に顕現できる程度の神霊では相手になるまい。今の終末の世界だと、さすがにこやつよりも強いのは出現しているだろうが。

 

「ううむ。モルガン殿下がヴラド・ツェペシュの製造が失敗した原因がこやつか」

 

「あのモルガン殿下が失敗?」

 

「ああ、かつての人間の魂を核に信仰で肉付けされた悪魔が英傑だと定義されている。だが、その核となる魂が無ければ全くの別物の悪魔にしかならないらしい。」

 

理屈は聞いたがどうやってそういうのが作れるかは理解できないがな!なんだガイア連合の技術力は!こちとら根こそぎ刈り取られた日本と違って日夜研究を重ねていた英国国教会の魔術師だぞ!・・・天才とは居るところには居るもんだが、日本には居すぎでしょうが。

 

「なるほど・・・ん?架空の英雄の場合はどうなんだ?」

 

首を傾げるジーク。まあ、架空の人物の場合悪魔と殆ど変わらないが・・・。

 

「そういうのはモチーフ元や血縁関係にある悪魔が核に代用になるらしい。史実英雄だと本人の魂が無いと、いかんがな。それで今回の失敗はだね?ヴラド公の魂が私たちの目の前にあるからだ。」

 

実際に作られた奴は自我も無いスライムが憑依していて、普通のシキガミと変わらないらしい。しかも、シキガミ体がヴラド公用に調整されていたので性能が簡易シキガミレベル以下に下落したと聞く。

 

「かつてのワラキア公が悪魔に変異したもの、それがこのアーカードだ。おい、起きているのだろう」

 

ヘルシング卿の声に反応したのか、ドラキュラが目を見開き、棺桶から身を起こした。そして、血のように真っ赤な瞳で私たちを見つめてくる。思わず息を吞んだ。

 

「ふぅーー・・・」

 

吐息が白く見える。いや、実際に白く見えるってどういう息をしているんだ。部屋は寒くないんだぞ。

 

「ほう、ここがグリニッジか。ふん、これが英傑と言う者か・・・」

 

化け物はベオウルフに視線を向ける。ベオウルフもそれに呼応して組んでいた腕を解き、腕をだらんとさせた。構えを解いたように見えるがこれって、自然体になっていざという時に対応するやつじゃないかね?

 

「まあ、及第点と言うところだ。・・・で、貴様がマスターとやらか?」

 

そう言うと顔をずいっとこちらに近づけてきた。・・・怖いわ!でも、表情に出したら絶対にヤバい奴だよね、これ!?

 

「あ、ああ・・・。私と隣の少年がマスターだ」

 

しばらく無言で私たちの顔をジロジロと見てくるアーカード、早く終わってくれ・・・!

 

「ふん、なるほど。まあ、よかろう」

 

「お眼鏡には叶ったかな、アーカード?」

 

アナタは楽しそうですね、ヘルシング卿!いや、インテグラ女史!

 

「それはこれからという奴だ」

 

そう言うとアーカードは帽子を脱ぎ、お辞儀をしてくる。おっと、彼に応えねば。

 

「うむ、これから頼むぞヴラド公」

 

「・・・アーカードだ」

 

「ん?」

 

あ、あれ地雷踏んだ?ジークフリート、いざという時には、ジークを頼んだぞー!?

 

「私のことはアーカードと呼べ。人間で居る事が出来なかった情けない男(ヴラド)は居ないのだ。ここにいるのは弱い化け物だ」

 

「お、おう?・・・ちょっと、ミス・ヘルシング?」

 

よ、弱い化け物?何というか独特な価値観を持っているのだな・・・。と言うより鏡を見ろとツッコミたくなんだが。

 

「こいつは、こういう奴なので。ただ、戦闘能力は大したものですよ」

 

「なるほど・・・。それなら歓迎しよう、アーカード!ブリテン、いや人類守護の砦の一つ、グリニッジへ、ようこそ」

 

私は、建物の中を示すように腕を広げた。ちなみにジークフリートが念話で伝えてくれた内容によると今グリニッジに居る英傑とマスターがここに集まっているらしい。アーカードもそれに気付いているのか視点がキョロキョロと動いている。しかも、なんか楽しそうなんですけど?

 

「ああ、幻魔アーカード、コンゴトモヨロシクだ」

 

アーカードはその鋭利な牙が見えるくらい唇を歪めた笑顔で挨拶してきた。・・・さて、だれに押し付けるかね。

 




ジークがこんなキャラになったのは何故だろう?ハルヒが出てくるメガテンスレの影響だろうか。
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