これで現時点でエヴァンズ一家がイギリスでしている大きな動きは現時点では以上です。
次の動きは恐らく本編で語られて世界中での一斉反攻の時ぐらいかな。
「コノエ、そこの資料を取ってください」
ロンドンの地下の広大な空間に機械の音と魔法の音が響いている。大英図書館に存在した地下シェルターの増設作業は未だに終わらない。その作成には大工、科学者、悪魔、魔術師などの様々な分野の存在が関わっていた。
私の師匠であるモルガン摂政殿下、ここではモルガン院長の主導によって設立された魔術研究機関「時計塔」それがここの名前だ。
「はい、どうぞ。師匠」
私、コノエ・マールフィールドは降霊科で委員長の地位にある。階級の順番は各学科に学部長を上に置き教授、助教、委員長と続く。と言っても教授や助教の地位にある人間は殆どいない。それは時計塔の成り立ちが原因だ。
この組織の構成員は大陸側から追いやられた魔術師やメシア教に滅ぼされた魔術結社を糾合された者たちばかりだ。一族の秘伝や奥義が一つに纏まったと言えば聞こえは良いが、それを照らし合わせて一つにするのにかなりの時間が掛かっている。更に言うと魔術式のスリ合わせや一門同士の因縁など様々な問題が残っている。
それが仮にも一つに纏まっていているのは頂点に立つ師匠が優れた技術力を持ち、法政科と言う部門により派閥間の調整が行われているからだ。このままの体制が続くなら順当に時計塔は一つになるだろう。
「ふむ・・・バトルコンブやコンバックの術式構築は、難しいですね。似たような事は神主も出来ますが、それでも正規の悪魔合体の領域までいきませんからねえ」
ガイア連合の技術力と師匠の魔導の知識は、私たちの知識を纏まった体系に再編しつつある。おかげで私も魔女としての位階が上がったのを実感している。
ところで今師匠の発言に気になるところがあったんだけど。
「師匠、バトルコンブとは?海藻型のシキガミとかでは無いですよね?」
日本の方では様々な種類のシキガミが居るとは聞いているがさすがに海藻は無いわよね?モルガン師匠もそんなものを作るような人でも無いし。
「今、私たちで一番求められているといっても過言ではない悪魔合体、それを行うための魔法ですよ」
「悪魔合体・・・噂では存在していることは聞きましたが本当にあるんですか?」
悪魔同士を合体し位階の高い悪魔を作り出すという邪法、まさかそんなものまで研究していたなんて。
「まあ、あるんでしょうね。すでに限定的な結果は出てますし」
「さすがガイア連合・・・これも様々な部門の知識を糾合した結果なんですね」
ガイア連合は科学技術やオカルト技術を際限なく取り込み昇華していると聞く。それと同じやり方、ここブリテンでも効果は出ている。英傑の増産やオカルトインフラもその成果と言えるでしょうね。
(・・・そういえば今の私の立ち位置って英国版ショタおじでは?)
私の言葉を聞いたモルガン師匠が急に黙り込み、その後愕然とした表情をした・・・何事!?
「あ、あの師匠?どうしたのですか?」
「いえ、なんでもありません。ええ、なんでもありませんとも。それよりもそろそろ時間では無いですか?」
師匠が壁にかかっている時計を指さす。もうそんな時間か。
「あっ、本当ですね。それじゃあお先に失礼します」
「ええ、私はもう少し資料を読んでいますので。妹さんによろしくね」
そう言うと師匠は再び机に視線を向け、パソコンを操作し始めた。・・・こういうところは、ガイア連合らしさを感じるわね。
部屋を出て、視線を巡らすと踊り場のソファーに座っている少女を見つけた。その少女は私が部屋から出てきたことに気付くと立ち上がる。隣に座っていた男性と挨拶をして、こちらに向かって駆け寄ってきた。・・・後で、あの男について調査しなければ。
「おねえちゃーん!」
「レイ、走ったら危ないわよ」
栗色のポニーテールが揺れながら駆け寄ってくる。そして予定調和のように足元の小石に躓いて転んだ。もう!あんたは運動神経が良くないんだから。
「いたたた・・・」
「もう、だから言ったのに」
小言を言いながら妹に手を差し伸べて立ち上がらせてあげる。
「えへへへ」
笑ってもご任せれないわよ。と、そう言いつつもハンカチを出して顔についた埃を拭ってあげる私だったのだ。
「それじゃあ、行きましょうか」
「うん!」
地下であるにも関わらずちょっとした大通りのような廊下を妹と歩いていく。ふと、横を見ると、妖精たちがモノを部屋に運び込んでいる。確かあの部屋は異界化されていたわね。
この時計塔の地下は地下研究施設と言うよりももはや巨大な迷宮異界とも呼べる存在になりつつある。
おかげで時計塔内の異界で霊的資源の採掘が可能になっている。しかも、迷宮化した補正か下層では上質な資源が採掘されているとも聞いている。
元も大英博物館の表に出せないオカルト品が存在していた事も考えると世界で一番霊的資源が豊富と言ってもおかしくはないだろう。・・・噂に聞くガイア連合本部には多分負けるだろうけど。
「レイ、最近どうかしら?」
この子はMAG保有量こそ多いけど実家の術式と相性が悪かったのよねえ。この時計塔が出来なければ適当な家の嫁に出されていたかもしれないから、それだけでもこの時計塔は存在する価値はある(断言)
「うんとね。私に会う術式が見つかって今それを習っているところなの。あとはモルガン先生に異界に連れ出されて修行したりかな?」
「・・・なんで師匠は、位階が高いの魔女なのに、修行は脳筋路線なのかしら」
私も師匠にレベリングしますよと連れ出されたことがある。しかもそれで実際に位階が上がったし。私なんてDレベルが3も一気に上がった事がある。なお、総統はDレベルが苦手らしい。師匠に付き合って異界に来ていたのだが、随分と面白くなさそうな顔をしていた。そんな総統を慰めている師匠とのイチャイチャぶりにはブラックコーヒーが美味しく感じたものだ。
「まあまあ、バーヴァンシーさんや偶にアルちゃんも一緒に修行に参加しているし安全だよ」
「そのメンツは別の意味で不安なんだけど・・・」
と言うか、この前戴冠してたでしょうが、あの子は。
「ねえ、お姉ちゃんのほうはどうなの?」
「今降霊科ではマーニュプランの検討をしているわ」
私が所属している降霊科は悪魔召喚プログラムや英傑製造などの研究において中核である。この時計塔でもっともリソースがつぎ込まれていると言っても過言ではない。
まあ、魔術師本人を強化する術式研究に割くリソースが無いとも言えるが。
「マーニュ・・・もしかしてカール大帝の英傑?」
「その名の通りよ。あのヨーロッパ文明の礎を築き上げた偉大な英雄、その英傑悪魔の製造が検討されているわ」
「シャルルマーニュなら凄い強そうな英傑になりそうだね」
「それだけでは無いわ」
この形式の英傑は現在英傑が抱えている欠点を解消する能力を持っている。そのために研究されている英傑なのだ。
「円卓と言う概念はフランス英雄であるジャンヌ・ダルクをイギリスでの稼働を容易にしたわ。これは円卓にはフランス人も参加していたという伝承があるからよ」
「それって、カール大帝の場合だと・・・」
「そう、カール大帝の名の下でヨーロッパの英傑がヨーロッパでの活動制限が無くなると、想定されているわ。つまり、あの燃費極悪のヘラクレスの燃費をギリシャで活動させるとき並みに軽減出来るはずよ」
「あのヘラクレスが!?私も実物を見た事はあるよ。確かにすごく強かった。でも、そのあとで聞いたMAG消費量を聞くと唖然としたもん。それが節約できるのかあ~」
「ちなみにローマ皇帝でもあったから地中海世界全体に影響があるといっても過言では無いわ。」
本当にかつてのローマ帝国って偉大だわ。匹敵するのは、中国で言うと大秦帝国ぐらいかしらね?
後はアレキサンダーやフビライ・ハンとかが指揮官型英傑の候補に入るかしらね。
「つまり、北アフリカや中東も範囲に入るの?」
「あのアーラシュ・カマンガーも運用できるようになるかもね」
「ならいつの日か故郷に帰れるかもしれないね」
故郷、あそこから去る時の怨嗟の声が忘れられない。我が一族に伝わる冥蒲のランタンからも声が聞こえる。冥蒲のランタン、いつからか死者の魂が昇天せず現世に残留しつつある現状を危惧した先祖が創り上げた霊魂の揺り籠。このランタンにはグレートウォーの死者の魂も眠っている。だが、終末の世における悲劇は死者の数を上回ってしまった。このランタンにはメシア教への憎悪が渦巻いている。師匠はこのランタンを呪いの聖杯とも呼んでいる。総統はタルタロスマキナもしくはディスレヴと呼んでいたが。
「そうね。その日が来るといいわね」
私は彼らの無念を晴らすためにこの膨大な霊魂をリソースにした巨大シキガミや武装を提案したが技術的な問題から却下された。だが、総統曰く、もし仮説があっているならばまさしくアークエネミーとなるだろうと語っていた。だから、私は研究は続けている。故郷の仲間の為、死んでいったものの為、そして妹のレイが生きる未来のために。
「お姉ちゃん?顔が怖いよ?」
んん!?少し顔が険しくなっているわね。やれやれレイを怖がらせちゃったようね。
「あっ、ごめんなさい。少し考え事していたの」
------------------------------------------ーーー
「・・・行ったようですね。そろそろ行きますか」
私の弟子であるコノエが部屋を出たのを確認すると、この部屋に備え付けてある秘密のポータルを起動させた。
目的地はこの時計塔の地下数十キロの地点に設置された私の特別研究室だ。
「アクセスコード、ゾギングヂグリ、ザギヂンベヅシュグゾダダベギロンゼ、パセゾギザバゲ」
私が呪文を呟くと壁の本棚が開き、紫色の光が蠢くゲートが形成される。うん、ロマンが溢れる隠しゲートですね。我ながら惚れ惚れします。
「やあ、おつかれさま」
そこには見慣れたスーツ姿のアーサーが居た。うんうん、鎧姿もカッコ良いですがこっちの方が私の知るアーサーらしいですね。
「アーサーこそ、忙しいところすいませんね」
「なあに、これも公務みたいなモノさ」
アルトリアが戴冠したとは言え、官僚機構も一から作り出しているところだ。アーサーの負担は大きい。うん、やっぱりアーサーよりは忙しくない私*1はブリテンのショタおじでは無いですね!
「これがロンゴミニアドか」
アーサーが研究室の中央に開いている大穴を見て呟いた。その穴の中には蒼い炎が蠢いてる。かと思えば波にように揺らいだりもしている。その中央に私が設置した礼装が浮かんでいる。これこそが地脈接続式戦略撃神槍ロンゴミニアド砲の中心核だ。
「世界のテクスチャを縫い留めるのでは無く、魔術としてのロンゴミニアドですけどね」
「まあ、前者の機能を再現できれば、今のこの世界を元に戻すことも可能だろうけど。さすがに無理だろ、それ」
八百万の神々のせいで世界の壁が壊れて魔界と近くなった地上世界。その世界のテクスチャを縫い留めるロンゴミニアドは想像したこともありますが・・・。
「正直、どこから手を付けて良いのか私にもわかりません。本土の方にもメールで相談しましたが、宛は無いそうですし」
まあ、世界の壁を縫うって普通に考えたら意味不明ですからね。ペルソナのパレスとかを利用できればワンチャン?とかそんな感じですね。
「とりあえず、今必要なのは後者の機能だ。想定される性能はどうなんだい?」
「ヨーロッパ全域を射程範囲には納める事が出来るでしょう。ですが、アメリカには届きません。」
ヨーロッパ全域の地脈の把握が出来たのでそこは問題ありませんね。このロンゴミニアド砲は、地脈の流れを利用して充填、照準、発射を可能とします。アメリカの地脈を把握できれば、直接ぶち込んでやれたモノを・・・。
「少し期待はしていたが、無理か。これが出来れば核ミサイルは勿論の事メギドアークすらも撃墜出来る戦略兵器が完成すると思ったんだがなあ」
「ですが生半可な悪魔なら消し飛ばしますよ。例え主神クラスでも直撃すれば死にはしないでしょうが、大きなダメージを追うでしょう」
威力だけは想定道理です威力だけは。ちなみにシュバルツバースのプラズマ雲のデータも参照しているので分子レベルでの破壊も可能だ。
「地脈から組む出した力を束ねて放つんだ。出力が桁違いだろうね」
「まあ、制御系に問題があるので完成にはもっと時間がかかりますからね」
現状の技術力だと色々と足りなすぎます。極秘プロジェクトとして予算は流れてきますが、予算だけの問題でもありませんからね。そう、私がいうとアーサーは少し考えこんだ後私にとんでもない事を聞いてきた。
「・・・ちなみに未完成状態のままで使うとどうなる?」
「この時計塔自体が砲身になり地上のロンドンを吹き飛ばしますね」
それどころか月に大穴を開けかねませんね。
「まるでバベルハンマーやカ・ディンギィルだな」
「ん?聞いた事のない単語ですがどの作品です?この前のブレイブルーとかと言う奴と同じですか?」
コノエが発案した礼装を聞いて、事象兵器とか言っていたのを聞きましたが、今回もそれ関係でしょうか?
「違う作品さ。しかし、ロンドンにおびき出した悪魔を吹き飛ばすのには使えるな」
「ちょっと、アーサー。既に地上の再建は始まっていますし、何よりも私の時計塔もあるんですからね。そんなもの使ったら全てが吹き飛びますよ」
今の時計塔には貴重な資源だけじゃなく多くの人命も居るんですよ?
「なあに、最悪の事態やよっぽどの好機が来ない限りそんな自爆装置めいたものは使わないさ」
「当たり前です」
ただ、いざという時の備えだけはした方が良いのでしょうね。あるはずが無いと思っていてもアーサーが最悪の想定をしているのならそれに備えるのが私と言うモノ。そう、かつてスレからメガテンの存在を知り、星霊神社で覚醒しようと判断した時のように。
時計塔
モルガンのよって作られた魔術研究地下都市。廃墟となって殆ど人のいなくなったロンドンに残った最後の都市である。すでにロンドン中の地下シェルターを連結しつつあり、それ以外のロンドン市民の殆どを収容するまで規模を拡大している。
地下空間は多くの異界と現実の地下空間が結合し、迷宮を形成している。この時計塔異界のコアとなっているのは地下深くに造られてモルガンの研究室にある礼装だ。
ダグザの大釜を参考にして地面に埋め込まれ、精神感応作用をもつ金属で作られた巨大な窯。中央には槍上のクリスタルらしきものが浮遊している。
現在、時計塔で開発が進められているのは『地脈接続式戦略撃神槍ロンゴミニアド砲』と『欧州展開用指揮官型英傑』、そして『超力戦艦マクロス』である。
なおアークエネミーの研究も少しずつ進んではいる。もし鳳翼・烈天上を造り上げる事が叶うならば、世界は再び神代と決別するだろう。