終末が来たりし世に英傑の旗を掲げよ   作:謎の食通

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蠢動編

風光明媚な森林、家族でピクニックとして来れば、素晴らしいだろうロケーションの中で私、モルガン・エヴァンズはダナン神族の王ダグザとの会談をおこなっていた。

 

「それでは、大きな荷物が無い避難民は飛行機で、ある程度の家財を持っている者は今度のガイア連合の運搬船にて日本に送り届ける事になります」

 

「うむ。頼んだぞ。大事な俺の信者だ。くれぐれもよろしく頼むぞ」

 

ここはダナン神族が治める異界ティルナノーグだ。クトゥルーの顕現のせいでGPが上昇し、ついに最高神であるダグザ神すらも顕現することになった。その為、一応幹部級である私が臨時の渉外役としてガイア連合ヨーロッパ支部(規模的には日本の支部と比べると派出所レベル)の要請で会談することとなったのだ。

 

「お任せくださいダグザ神」

 

「そう言えば聞くところによると貴様はペンドラゴンの末裔のそうだな」

 

私は、顔を顰めそうになるのを堪えつつ、心の中で舌打ちした。こやつ、顕現してそれほどの時も立っていないのに情報収集はある程度していたようだ。やはり、あのダグザだ。油断も隙もない。

 

「・・・確かに我が一族にはそのような伝承が伝わっておりますが、一族の誰もが眉唾ものだと思っていることですよ」

 

「いや、貴様からは懐かしい匂いがする。間違いないだろう。」

 

これだから高位の悪魔は困る。と言うか実家の魔術書と言い本当のことだったのか。

 

「貴様の名前もモルガンなのだろう?どうだ、かつてのモルガンのようにこのブリテンの玉座を目指してみないか?」

 

「御戯れを。私はイギリス人とのハーフとはいえ、国籍や心は日本人ですよ」

 

なんでわざわざ朝食以外微妙なイギリスに住まないといけないのだ。娯楽も日本の娯楽とか入手しづらいのに。

しかし、この私を玉座に、か。いや、正確にはアーサー王の血族を欲しているようだな。

ダグザの傍に控えている現地の霊能力者であるドルイドたちも、随分とまあキラキラした目を私に向けてくるものだ。

 

「そうか、それは残念だ。ところで貴様の伴侶も同じ一族の出だそうだな?」

 

「確かに我が夫アーサーは、はとこですが何か?」

 

私を知っているのならあの人のことも当然知っているか。一応私たちは自衛隊ニキのように先祖の悪魔が覚醒した事はないが、この調子だと注意した方が良いな。

あの人と会ったのは一族で集まる事となったあの日が最初だったな。私は、父が日本からの婿入り、あの人は義母がイギリスから日本へ渡って生まれた人だ。出会った当初はお互いの見た目で盛り上がっていたが、その時の話題が時を超えて再び私たちの前に来るとは・・・。

 

「くくっアーサーか。いや、何でもない。今度来るときは出来れば貴様の夫も連れてくると良い」

 

ダグザのその言葉で今回の会談は締めくくられた。それと必要がなければお前に私の家族を会わせるなんてしないかな!

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

家に帰る帰路の最中、私のシキガミが今回の会談のことで不満を愚痴っていた。

 

「なんだ、あいつ。神様だからってお母さま(マスター)に向かって失礼な」

 

赤い髪の可愛い女の子のシキガミ、バーヴァンシー。アーサーやアルトリアに並んで大切な私の家族と言ってもよい娘。と言うか、もはやもう一人の娘である。

 

「落ち着きなさい、バーヴァンシー。ダグザ神はあれでもマシな状態です」

 

そう、本当にこれがマシなのである。

 

「我が夫から聞いた多神連合は私たち転生者にとってある意味メシア教並の偏見を持つ対象でした。」

 

「マジですか、それ?」

 

多神連合が出てきた作品で彼らがやろうとしたことは全人類の解脱、つまり大量虐殺である。やはり神々など理不尽の塊である。そういう意味では、救世主と覚者は凄かったんだなあと思う。

原作での彼らに比べれば、今のメシア教との覇権争いなどかわいいものである。

 

「そういう意味では良くも悪くもダグザは普通の神々と言ったところですね。おそらくアーサーや私を使ってブリテンや多神連合、そしてガイア連合に対する影響力を強めたいのでしょうね。アーサー王のネームバリューは、今の時代においても健在です。むしろ終末が近い故にアーサー王信仰とも呼べるものがイギリスでは増えてきていますね」

 

要するにアーサー王の威光で、かつて自身の氏子であるケルト人を追いやったサクソン人を取り込もうと考えているのだろう。終末の世で危機を迎えたイギリスに現れた復活する王アーサー・ペンドラゴン。これほどセンセーショナルなことも珍しいでしょうね。

 

「へえ~。まあ、私たちは次の船に乗って日本に帰るから関係ない話ですね」

 

「ボストンにクトゥルーも顕現しましたからね。いつ欧州に飛び火するのがわからない状態ですから、とっとと帰るのが吉ですね」

 

「バウ!」

 

夫のシキガミが吠えながら走ってきた。どうやら話しているうちに着いたらしい。

 

「おー、カヴァスただいま。お前のマスター(お父さま)も帰っているか?」

 

「ワン!」

 

バーヴァンシーが屈んでカヴァスを撫でている光景、真に尊いの一言・・・!と言うか後で私もモフモフしよう。

 

「お父様も帰っているそうです、お母様」

 

「そうですか」

 

バーヴァンシーはカヴァスの言葉を翻訳して私に伝えてきた。カヴァスと会話できるのは主である夫と同じシキガミであるバーヴァンシーのみだ。私の場合だとカヴァスに獣人形態に変身してもらわないと会話が出来ない。そんなことよりも犬と会話するバーヴァンシー可愛い・・・!

私が鉄面皮の裏側で萌えているとバーヴァンシーが私の手荷物を運んでくれた!

おっと、私もあの人のもとに行かねば。

 

「ただいま戻りました。アナタ」

 

「おかえり、モルガン」

 

我が夫アーサーは、自室のパソコンに向かい合っていた。どうやら転生者スレを見ていたのではなく、仕事関係の連絡を取り合っていたようだ。まあ、私がダナン神族との交渉に駆り出されるくらいだ。アーサーも欧州の友人紳士たちとの打ち合わせで大変なのでしょうね。

 

「父様や母様、それにアルトリアは?」

 

「みんなもう寝ちゃったよ。アルトリアを友達とライン通話してたけど、先ほど寝かせたよ」

 

アルトリアもイギリスでの友達が出来たようで何よりです。その分、日本に連れてくることが出来ないのは心残りですが・・・。

そんな私の心の中に気付いたのか、夫は苦笑している。

 

「アナタもおつかれのようですね」

 

「ダグザと面会する羽目になった君ほどじゃないさ。全く、クトゥルーのせいで終末時計が3秒ほどは進んだぞ、これ」

 

吐き捨てるように私に告げてくる。やはり、だいぶ疲れているようですね。もともと経済人として欧州の経済界に友人が多いのに、ガイア連合に所属してからは、ヨーロッパ方面の交渉担当として現地の霊的組織、メシア教の穏健派などの交流もしているのだ。海を越えた先にあの邪神には気が気でないのだろう。

 

「分霊とはいえ、本来顕現できないような最高神の高位分霊ですからね。聞くところによるとゼウスの存在も確認されたそうです」

 

「ゼウス、有名どころだね。女神転生的に考えるとシヴァやオーディンも居そうだな」

 

夫と違って女神転生ファンでは無く、型月ファンだった私としてはあまりのビッグネームに気が遠くなる。型月だとゼウスですらグランドサーヴァント案件だったのに、この世界もとい女神転生世界は最高神が気軽に出てきて困る。

とりあえず気分転換に話を変えるとしましょうか。

 

「ところで話は戻りますがアナタの仕事の方はどうでしたか」

 

「今のところ邪神の直接の影響は無いけど漁師が奇形の魚を釣り上げたそうだよ」

 

奇形の魚・・・どう考えてもクトゥルーに汚染されていますね、それ。それがイギリス近海で取れたということは・・・。

 

「・・・アメリカから海流で流れてきましたか」

 

「ディープワンが海流を利用して欧州に流れ着くのもそう遠い未来じゃないだろうね。おかげで欧州のガイア連合の資産はだいぶ整理しなくちゃいけなくなった」

 

そう言うと夫は椅子の背もたれに寄り掛かった。と言うか私も夫にしなだれたい気分だ。

 

「僕も一応幹部の末席だから現地にいるから仕事が回されてきたからなあ」

 

「それで私たちが乗る船は何時になりそうですか?」

 

まさに、こんな所に居られるか俺は部屋に帰るぞ、と言いたい状態である。私もアルトリアや父様や母様を連れて早く帰りたい。

 

「クトゥルーのいるアメリカから避難してくるメシア教のせいで少々時間がかかりそうだよ」

 

「なぜメシア教の避難に我らガイア連合が関係するのですか?」

 

確かにメシア教とはある程度の付き合いがありましたが・・・。

 

「どうやらメシア教も内部分裂をしているみたいでメシア教の穏健派を日本で受け入れることになったのさ。これがその資料ね」

 

「これは、また・・・」

 

夫に渡されて資料を見て、絶句した。特に、頭を抱えたのは転生者たちに待望され、私もその性質からあるプロジェクトへの利用を考えていた悪魔召喚プログラムの酷い有様だ。*1

 

「念願の悪魔召喚プログラムがこの様さ。」

 

夫も気落ちしたように呟く。メガテンファンである夫としては私よりも落胆は大きいのでしょうね。

 

「本来なら僕らだけが避難するなら今すぐにもできるけど、義父さん義母さんだけでなく一族の皆を避難させようとするとてもじゃないが席が無いからね」

 

「ガイア連合も転生者である私たちを優遇しても、その家族は自己責任と言うのが基本スタンスですからねえ」

 

父様や母様が日本に引っ越すついでに一族のみんなに日本で集まろうという形で避難させようと考えていたが、中々移動の便が確保できていない。

 

「そんな訳でイギリスに来てまで仕事をしながら本来研究畑の君を多神連合の交渉に担ぎ出すことにすらなっている訳さ」

 

「こんなことならもっと早くイギリスに来ればよかったですね」

 

はあ・・・。本当に私が早く賛成していれば、いやむしろ私の方から早く提案すべきでしたね、これは。ただ言わせてもらえばメシア教の本拠地ともいえるアメリカでクトゥルーが顕現するとか思いもよらなかったです。

 

「それについては僕も判断が甘かった。ごめん」

 

「済んだことは仕方がありません。今日はもう休んで、明日に備えましょう。」

そうだな、と呟く夫の手を引き寝室に向かう。はあ、今日は泥のように眠りたいですね・・・。

 

 

 

帰国するために私たちは、仕事を済ませるために積極的に動きました。

そしてアメリカメシアンの避難や多神連合の氏子たちの避難作業を粗方終えて、もうそろそろ帰国と言うときにアメリカから全世界に向けてICBMが撃ち込まれたのです。

 

*1
本編における★俺の天使が神ぴょいスレ 26羽目。悪魔召喚プログラムと言う名の天使召喚もしくは神話生物召喚プログラムである。




モルガン・エヴァンズ
 前世では女神転生は名前しか知らず、どっぷりと型月界隈の沼に沈んでいた。ちなみに前世も女性であるがお腐れ様では無い。純粋な型月ファンであった。
夫であるアーサーが転生者であったことから他にも同じ転生者が居ないかインターネットを探していたら、★転生者雑談スレを見つけた。ちなみに自分たちと同じような型月作品の見た目をした人が居ないか期待していた。

 覚醒者になった後はこの世界に本当にオカルトが存在している事から実家の倉庫にあった魔導書を引っ張り出して解読し、魔界魔法の他に魔女術を習得した。
ちなみに実家の魔導書を日本に持ってきていたのは厨二病的なサムシングであった。

 ガイア連合においての立場は技術部門に所属していて、スキルカードの作成などを行っている。なお、ガイア連合内の型月ファンと共謀してあるプロジェクトを進めようとしていたがある問題のせいで凍結されていた。
 なお初期スキルは『霊魔集中』である。
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