メシア教によって世界各地に核ミサイルが落とされた。僕が居るイギリスもその例外でなく、ロンドンに命中し、かつての世界の中心は地獄へと変貌した。
今、僕はガイア連合の仲間と共に現地の調査に来ていた。
「これは酷いものだな。さっきのアレ、確かムーンビーストじゃなかったか?」
デモニカを纏った転生者四条翔さんがロンドンの町中を見ながらぼやく。転生者でありながら現地人によるデモニカ部隊を創り上げ指揮している人物だ。放射能汚染に対する有用な部隊として僕に同行している。元自衛官からデビルバスターに転職した人物で五島陸将からも自衛隊に戻ってこないかと誘われているらしい。もっとも本人は断っていて自衛隊にはアドバイザーとして関わっている。
ちなみに僕はデモニカを着ていない。モルガンが作ったアクセサリーで毒耐性を備えることが出来たので放射能下でも問題なく活動できている。もっとも、このロンドンで一番の問題が放射能では無い事が、メシア教過激派の業の深さだろう。
「なるほどね。僕は女神転生の知識はあるけどクトゥルフ神話系は触りしか知らないので」
「そうなんですかい?オレは前世でよくクトゥルフ神話RPGをしてたんで、なんとなくわかるんですがねえ。」
四条さんと軽口を話しながら、探索しているが、いつ襲われても良いように気は抜いてはいない。それに生存者がいるかもしれないかなら、常に周囲に注意を払っている。
彼とは僕が海外に出張するとき結構な割合で同行していて、たまに酒を飲みに誘ったりする間柄である。
「しっかし、酷い有様だな。日本の方は迎撃できたそうだが、ロンドンがこの様とはなあ。アーサーさんは、そこんとこ知ってます?」
「まあ、普通は同じNATO陣営の、しかもアメリカが味方にICBMを打ち込むなんて想像もできなかっただろうからね。普通はロシアや中国の方から打たれると想定したはずだし」
ちなみに日本政府自体もまともに対応できておらず、もっぱらガイア連合と外様の神々、そして在日米軍や自衛隊のイージス艦のおかげである。そんな中で中国が最低限の国体を維持できているのはさすが4000年の歴史という事だろうか。
「ロシアや中国か。中国は辛うじて迎撃できたようだが。ウラル以西はダメだったと聞くな。しっかし、大丈夫かねえ、ロシアの連中。モスクワ近辺が崩壊したという事は中央からの支援が無くなるつーわけ事だろう?暖房用の石油の量すら不足すんじゃねえか?」
「しかも核ミサイルが命中したことにより世界は半終末状態に突入。日本以外の電子機器などに深刻なエラーが発生する始末さ」
「おおう、暖房器具も駄目だろうな、そりゃ。まさに末世だな、おい」
まさに終末と言って遜色ないが辛うじて終末にはなっていないらしい。まあ、今のところは悪魔が出現する地帯も限定的だし、奴らが地上に顕現し続けるにも条件が居る。将来的には、拠点を一歩出たら悪魔が出現してくるというRPGのような世界になるだろう。
「それだけでなく過激派がネットに悪魔召喚プログラムと言う名の罠を流したから、本来貴重な通信手段であるネットが繋がっているところは悲惨なことになっているよ」
「まあ、イギリスだとロンドンがミサイルの直撃で一番被害がでかいが、ミサイルが落ちていない他の地方でも天使やら触手やらが出現しているらしいからなあ」
「それでもアメリカよりマシさ。なんせあそこは過激派と邪神の本拠地だからね。ヨーロッパには、多神連合やメシア教以外の一神教さらに魔女結社などの現地の霊的組織も居るんだ。今の僕たちの課題はこれらの組織を調整して戦線を構築し、終末に対抗することさ」
経済人としては頭が痛い。もともと外資系だったか顔の知っている知人友人は死んでいるか破産しているだろうし、何よりも僕たちの海外資産自体も回収が難しくなっている。特に欧州からの撤収は、この前終えたばかり。日本に運び込めなかった資本もかなりの量だろう。
まあ、ジョースター卿よろしく逆に考えるとしよう。海外の借金が無くなって良かったんだ、と。
「なるほど、どれもアメリカでは、最早出来ないような仕事だな」
「バウ!」
僕のシキガミ、カヴァスが吠えてきた。ちなみに僕には『御注進!』と聞こえる。僕は魔法系スキルが不得手だからそれをサポートする編成にしている。その中にはエネミーサーチ系のスキルもある。
「ん?ワン公か。そういやアーサーさんのシキガミは犬ですけど、人型にはなれるんですかい?」
「変身スキルはもっているよ。けれど戦闘スタイルよりサポートスキルガン積みの今の状態が使い勝手が良いからあまり使わないですけどね」
人型になれば装備が使えたり戦闘スキルの制限も解除されるが、ぶっちゃけ僕が殴った方が早い。それよりバフや回復、デバフをまいてくれた方が助かる。この状態だと僕のスピードにも付いて来れるし。
「それアーサーさんのような幹部級だから言えるセリフだぜ」
まあ、確かに幹部級はユニークスキルが使える連中がそこそこ居るからなあ。それはさておき、カヴァスが僕に伝えてきた内容が問題だ。
「それよりも四条さん、生存者と悪魔の反応です。カヴァスが感知しました」
「りょ~かい。おい、野郎ども戦闘準備だ!足引っ張んじゃねえぞ!!」
生存者が悪魔と共に居る。悪魔召喚プログラムで呼び出された存在なら大丈夫だが、そうでないなら襲われている可能性がある。
「「「「イエッサー!」」」」
デモニカ部隊を引き連れて僕たちは駆け出す。しばらくすると戦闘音が聞こえてきた。四条さんが手を掲げるとデモニカ部隊は静止し、周囲の警戒を始める。僕と四条さんで建物の影を見ると天使達が人々に襲い掛かっていた。恐らくメシア教過激派所属の天使たちだろう。
「あれは、一体の天使が襲ってくる複数の天使から人間を守っているな」
金色の鎧を身に纏った女性型の天使が天使プリンシパリティをリーダとした天使エンジェルの集団から人々を守っていた。どうやら高位の天使らしいが多勢無勢反撃する暇を与えられずサンドバッグ状態で人間たちの盾となっている。この様子から間違いなくメシア教のマシな天使なのは間違いなさそうだ。
「あのスマホを持っている奴、おそらく穏健派のサマナーだな。よし、奴さんを救出するぞ!」
天使に守られている集団に修道士が一人居る。確かにサマナーのようだ。しかしテンプルナイトでは無いようだし、あの立派な服装、上位の人間だな。こんな現場にいて良い奴ではないぞ。
「なら僕は大物を狙おう」
「大物?あそこには雑魚天使どもしか居ないが?」
エンジェルやプリンシパリティぐらいならば精鋭デモニカ部隊でも問題なく対処できる。現地人で構成されている。だが、カヴァスがもっとレベルが高い悪魔の接近を知らせてきた。
「さっき見つけたムーンビーストと同じ気配が接近しているそうだ」
「なるほど、そんじゃ頼んますわ」
腰に差してある二つのサーベルを抜くと僕は駆け出した。行き掛けの駄賃として何体かの天使の首を取りながら、瓦礫を飛び越えて神話生物ムーンビーストの前に降り立つ。
ヌルヌルと黒い皮膚を揺すりながら、ムーンビーストは僕に触手だらけの顔を向けてきた。目の位置が分かりずらいな。とりあえず正面から斬殺するとしよう。
「デカいカエルのような図体に顔に生えた触手、気持ち悪いな。悪いが、一瞬でケリをつけさせてもらう」
「『会心の覇気』『ダークエナジー』そして我流剣術連撃斬!」
斬
斬斬
斬斬斬
斬斬斬斬
斬!斬!!
双剣から放つ12連撃でムーンビーストを切り刻む。
僕の攻撃が終えた後、ムーンビーストの巨体はブロック状に分解された。
ムーンビーストは物理耐性を持っていると聞いていたが問題なく倒せてよかった。僕はチャージ系以外の魔法スキルは使えず、物理系スキルしか使えないが、この程度なら問題なく処理できる。
「さて、と。とりあえずフォルマは回収してするとして、あちらは・・・終わったようだな」
デモニカ部隊の方に視線を向けると、彼らも戦闘終了していた。さすがわざわざ海外に出てまで悪魔退治をしていたガンギマリ集団、良い腕をしている。たしか、彼らの装備しているアサルトライフルは八百万針玉と同じ追加効果を持っている高級モデルだったな。よくもまあ、いくら自分の仲間とはいえあれだけの数の現地人に装備させたものだ。
「四条さん」
「おお、アーサーさん。そちらも終わったのか。まあ、あんたなら余裕だろうな」
メシア教穏健派の修道士に握手されて困惑している四条さんの元に向かった。傍にいる天使は、これは大天使クラスだな。どう見ても穏健派の重鎮の一人としか思えないが・・・って、彼は知っている人物だった。
「アナタもガイア連合の方ですか・・・と言うかアーサーさんじゃないですか」
初老の男性が朗らかに笑いかけてくる。手を差し伸べて来たので僕も応じて握手することにする。貴方は、ここにいて良い人物ではないと思うのだが・・・。
「知っているのか、サマナーよ」
「はい、他の現地組織との交渉でいろいろと手伝ってくれた方です」
レド司教は、メシア教イギリス支部の支部長だった人間だ。イギリスは聖公会の影響が強い国だからな。メシア教も勢力の拡張が難しかったと聞いた事がある。
初めて会ったのはエジプトの亡命者受け入れ交渉の時だったか・・・。
「お久しぶりです、レド司教。彼らは?」
「私たちが探し出した市民たちです。放射能はポズムディで治療したのですが、過激派の天使たちに襲われまして・・・。私の守護天使様もさすがに多勢に無勢でして、本当に危ないところでした。ガイア連合の皆さんには感謝しても足りないぐらいですよ」
「私からも感謝する。ガイア連合の者よ。さすが神の教えを守る戦士たちだ。かのターミネーター共、忌まわしい不信心者達と違ってな」
傍にいた天使も僕たちに礼を言ってくる。確かに神の教えはマトモなことを言っているし、文明人としては(その内容は)守るのは当然のことだが・・・メシア教の天使に言われると・・・こう・・・もにょる。
「名乗り遅れたな。私の名は大天使アブディエル。メシア教イギリス支部長レドの守護天使である」
アブディエル・・・聞いた事があるな。
元々過激派よりの大天使だったがクローンや洗脳など神の教えを蔑ろにする過激派に愛想を尽かせて穏健派に合流した結果、左遷させられたと聞くが、そうか。レド司教の仲魔となっていたのか。
会話をしているうちに被災者の収容が終わったようだ。四条さんがデモニカ部隊から完了報告を受けている。
「とりあえず、この人数だ。俺たちが護衛しますよ。アーサーさんもそれでよいかい?」
「ああ、問題ないですよ」
ひとまず僕たちは彼ら被災者を拠点に案内することにした。すると僕が探していた建物が傍にあったから立ち止まる。だが、すぐに落胆する事となった。
「・・・どうやらイギリス政府や王室は駄目なようだな。これは忙しくなるな」
崩壊したバッキンガム宮殿を皆が僕はポツリと呟く。そして、頭を振るとみんなと合流して
――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロンドンでの被災者を調査拠点に預けると僕はいったん家族のもとに戻ることにした。シェルターの無いあの村より拠点の方が設備も充実している。
「なんだ、あの人だかりは・・・。人間だけでない、悪魔も集まっている。」
あの悪魔は妖精のようだな。恐らくトゥアハー・デ・ダナンに属する者たちだろう。出なければ周りにいる人間が無事なのはおかしい。しかし、いったい何が起きたんだ?悪魔の出現による恐慌状態ではなく、彼らは歓声を挙げている。
「あっ!?お父さま、大変です!アルトリアが、アルトリアが!」
赤い長髪を揺らしながらバーヴァンシーが駆け寄ってきた。
「落ち着くんだバーヴァンシー。アルトリアがどうしたというだい?それにモルガンは?」
「ええっと、その・・・ついて来てください!」
バーヴァンシーに手を引かれて、群衆の中に入っていく。その中心部には輝く両手剣を抱いたアルトリアがオロオロとしている。それとちょうど近くにモルガンが居た。
「モルガン、これはいったい!?」
「アーサー・・・アーサー!!」
モルガンが僕に抱き着いてくる。いったい何が起きたんだ。とりあえず落ち着かせなければ・・・。
「落ち着いて、僕のモルガン、いったんどうしたんだい」
「・・・アルトリアが本当にアーサー王の転生者でした」
首を思いっきりアルトリアの方に向ける。・・・この感覚、同胞では無いな。むしろ悪魔に近い。
「それは・・・メガテン的な意味で?」
メガテン的な意味の転生者とは、魂が神や悪魔の転生体である存在の事を指す。ただし前世の記憶は曖昧で前世の力のごく一部を使うことのできる存在だ。
「はい、メガテン的な意味です。自衛隊ニキと同じようなものです。意識が乗っ取られるという事は無いようですが・・・」
モルガンに何が起きた聞くと、実家の方にも天使や神話生物が沸いたらしい。町のみんなが悪魔たちに襲われている中、アルトリアは友達を救うため家の中にあったモルガンが作った礼装の剣を持ち出して悪魔に立ち向かったらしい。
元々素養はあり半覚醒状態だったアルトリアは人を襲っている悪魔を後ろから切り殺すと完全に覚醒して、引きずっていた剣を余裕で振り回すようになり町中の悪魔をどんどん倒していったそうだ。
ただ、レベルの高い悪魔も居たらしく覚醒したばかりのアルトリアでは敵いそうに無かったが、妖精ヴィヴィアンが突如として現れ、その身のMAGを剣にすべて注ぐと剣はエクスカリバーへと変貌、アルトリアもアーサー王として覚醒してレベルアップ、見事悪魔を撃退したのが今の状態のようだ。
そしてどこからか沸いてきた妖精どもがしきりにアーサー王の復活を喧伝し、周りの人たちもその熱意に飲み込まれたようだ。
「よし、わかった。少し待っていてくれ」
人垣を掻き分けアルトリアの元に向かう。一般人が多いな。あまりしたくはないが威圧してどかすか。・・・よし、人垣が割れたな。僕たちの愛娘の元に行く。
「お、お父さん。わ、わたし・・・。」
体が震えている。いくらアーサー王として覚醒しても本人ではない。この調子だと記憶の一部が継承されただけで殆どは力の覚醒だけのようだ。
うん、彼女は僕の、僕たちの大切な娘のアルトリアだ。何としても守らなければ・・・!!
「大丈夫だよ、アルトリア。僕について来ておいで」
アルトリアに微笑む。彼女を安心したようにコクっと頷く。僕は群衆に方に振り向くと群衆に言い放つ。
「お集りの諸兄!僕の娘アルトリアは少し人の熱気に酔ったようです。ですので親として休ませたいのでこの場は失礼いたします」
僕は、僕たち家族は家に帰っていく。将来に一抹の不安を覚えながら・・・。
アーサーの使った我流剣術連撃斬とは、物理属性で大威力の攻撃を4~12回行うスキルである。
すなわち『血のアンダルシア』と同質のスキルなのである。
それをダークエナジーにより3倍にしてチャージ系スキルを上乗せして攻撃するのがアーサー・エヴァンズのバトルスタイルである。
一撃系スキルより多段系スキルを好んで使用するため『プーサーかと思ったらキリトだった』『プーサーの皮を被ったブラッドレイ』と呼ばれるようになったのだ。
なお、スキル構成はほぼほぼ完成だが、レベル自体は幹部級の中では中堅よりやや下である。
よもやま話
メガテン5をプレイして思ったのはロウ陣営のまともさだった。たしかに過激派なところもあるし頭の固いが、メシア教と比べると一神教に近い存在だった。
そんな作品に出てきたアブディエルだけど、神への忠誠は絶対だけど、他人の意見を受け入れることもできるし人を導くこともする。堕天したのもルシファーの言葉ではなく人間の言葉が原因だったし、その目的も神の秩序の為。
この人本当にメガテンの天使なんですかね?
しかも一般天使自体も人間の遭難者を安全なところまで避難させてるし。
今回の天使って傲慢なところもある、過激なところもある、ただメシア教よりは遥かに正義側だよなあ。
比較対象が悪いともいうが。