そこはかつて人の住む町でした。今は、メシア教過激派との戦場です。空を見上げれば天使同士の戦闘が行われています。友軍識別のために穏健派は、竜と盾の紋章を付けています。同じ天使が相手故に属性魔法や物理スキルが空中を飛び交っています。
地上に目を向ければ過激派テンプルナイトと改造人間やクローン人間の兵隊が見えます。こちらの戦力は、穏健派側のテンプルナイト、ダナン神族から来た騎士団、悪魔召喚プログラムを持ったデビルサマナーたち、そして私たちガイア連合から提供されたデモニカ部隊です。
今、私たちはイギリス統一作戦の一環としてグレートブリテン島におけるメシア教過激派の教会を襲撃しています。
「戦況は順調なようですね」
十戒プログラムの制約がある穏健派デビルサマナーを狙って過激派の人間部隊が攻撃を集中しようとしています。ですがデモニカ部隊による横殴りで打撃を受けているところも見える。空中に関しては互角のようですが地上の方は、このまま押し切れそうですね。
「当然です、モルガン摂政殿下。今、このイングランドにて動員できる可能な限りの戦力がここに集結しています。戦う前から既に勝つ事は決まっています」
私の近くにいた従卒が返答してきた。確か元イギリス軍の将校だったはず、そんな彼をしり目に戦場のある地点を見ると火柱が上がった。ほほう、アギダイン級の火力は出せていますね。
「・・・ガウェインは問題なく稼働していますね」
私はガウェインがテンプルナイトの首をはねているのを見ながら性能を確認しています。
ワイルドハントの分霊から作り出したガウェイン。ワイルドハント自体がアーサー王を含めた様々な英雄が棟梁として語られている。そこをベースにダナン神族から提供されたクーフーリンの微小分霊、これらをベースにアレは完成した。ペルソナすなわち集合無意識から作り出された武器、ブリューナクとゲイボルグのデータから作り出されたガラティーンを持たせている。
オリジナルそのものとは言えないが、もはやガウェインそのものと呼んで差支えがないぐらいには完成度が高いはずだ。
今もまた、火炎魔法でテンプルナイトを天使ごと燃やし尽くしている。
これでアルトリアの護衛としては十分なことがわかりましたね。
「ん、あれは・・・」
ふと、空を見上げると天使エンジェルが数体こちらに向かってきている。識別用の紋章がないところを見ると過激派の天使のようですね。こちら側の天使が突破を許してしまったか。
「チッ!メシアン共め、制空権の維持すらも出来ないのか」
従卒が悪態をついている。本陣に控えている部隊が迎撃準備に入る。そうだ、あの白い鴉は私が相手をするとしましょう。
「下がりなさい」
戦場で我が夫も戦っています。ここで見ているだけだと気分的によろしく無いですからね。
「!?・・・ハッ!」
本陣の部隊は私の周囲で待機している。いざと言う時、私を守るためだろう。私は手に持った杖を空に掲げる。そして生体マグネタイトを練り上げ魔力とし、口の端から呪文を紡ぐ。
「『コンセントレイト』『霊魔集中』・・・墜ちなさい、痴れ者ども『マハジオダイン』」
杖の先から多数の雷撃が放たれる。雷撃は空にいる天使に吸い寄られるように当たる。回避しようとした奴も一回躱しても次の雷撃に被弾して黒焦げになっている。
あの程度の低レベル天使には過剰でしたね。白羽エンジェルが混じっているかと思いましたが結論としては杞憂ですか。
「ふん、本陣を叩こうというのは良いですが、戦力評価が甘いようですね」
鼻で笑う。過激派との戦線がユーラシア大陸にある以上、イギリスの飛び地などこの程度ですか。
「これが、ガイア連合・・・!魔女モルガンの継承者!!」
周囲の反応がうるさい。現地人どもめ・・・強い奴らが軒並み戦死しているからか、実際に滅びに向かっているからか、アーサー王伝説への執着が強すぎる。だが、これもアルトリアの為、あの子の為に足場を作っておかなければ・・・ん?
「あれは・・・」
敵の本拠地である教会の屋根の一部が吹き飛んだ。戦場の動きが鈍化しましたね。特に過激派当たりの動きが悪くなってますね。
過激派をどんどん追い詰めていきつつも時がしばらくたった時、教会の扉が吹き飛んだ。
そこから私が愛する人が剣を掲げながら出てきた。
「敵の切り札である大天使は討ち取った!総員、殲滅戦に移行せよ!!」
エース級戦力を集めた別働隊による首狩り戦法は成功したようだ。
ガイア連合から我が夫アーサー、メシア教穏健派からはアブディエル、ダナン神族からはクーフーリン。彼らを中心に錚々たるメンバーで構成されていた。
この戦いは勝ちましたね。これでイングランドにおける過激派の影響力は排除出来ましたね。これでスコットランドへの足掛かりが出来ます。
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イングランドからメシア教過激派の影響を排除した後、僕らはイギリスを統治する組織を作り出した。壊滅したロンドンに代わって、コーンウォール州のペンデニス城を使っている。旧世代の城は結界を張る上で効率が良いのでこの観光名所を改造したらしい。アーサー王伝説にちなむならティンタジェル城にしろとも思ったが、あそこはさすがに古すぎるか。
そして僕は今会議室に向かっている。今後のイギリスの方向を決めるためガイア連合代表として参加する為だ。
プーサー其の物の服装を着ながら廊下を歩いている。本当はスーツで済ませたかったが悪魔組がこの衣装にするべきだと周りがしつこく勧めるから来ている。コスプレみたいな感じだが、まあ商人的にはそれで好感度が買えるなら例え民族衣装でも着るけどね。
「アーサー大総統閣下、入室いたします!」
モルガンが摂政扱いなので自分はこの名称になったらしい。ちなみにちょび髭の悪夢から大を付けて別者扱いにしたらしい。と言うかこれって身内の犯行だろうなあ・・・。ちなみに実態はガイア連合イギリス支部の支部長である。
会議室の中に入ると大きな円卓が部屋の中央に置いてあった。前は普通の会議室だったんだが、いつの間にかこうなった。
僕が席に座ると会議が始まる。本当は前もって座って準備していたかったが、僕が座るのが会議の始まりの合図みたいになっているのだ。
正直、アルトリアじゃなくて僕の事をアーサー王と思っているんじゃないかと疑うほどのアーサー王伝説推しである。
「軍部から報告します。陸軍においては各師団の生き残りを統合してデモニカ兵団を編成しております。ですが、デモニカの絶対数が不足しています。コアパーツはモルガン技術顧問殿が作ってくれますが、スーツの方が日本からの輸入だよりです。」
と言うかモルガンが全員分作るように考えているようだが、他にもやることあるから無理だからな?
と言うか簡易版もある程度用意しているだろうが。そもそもある程度自作しているから安く済んでいるんだぞ。
今は中華戦線の方が忙しいからそっちの方が需要がある。本国のガイア連合にライセンス生産の申請をしているけど、まだ交渉段階だしね。
「海軍としては記念艦ベルファストを霊的国防兵器に改装することによりパナマまでのシーレーンを辛うじてですが繋げることが出来ました。ただ搭乗員が霊的素養の関係上訓練生で構成されているのが不安要素です」
まさか、デモニカ戦車の技術を利用して艦これ計画ならぬKANSEN計画が実行することになるとは・・・。昔、日本でヤマトをサルベージして計画実行しようとした奴らが居たんだけど、僕たち経営陣が予算の関係で潰した計画がイギリスで蘇るとは・・・。
霊的国防兵器もそうだけど、モルガンって技術部門の色々な計画に首を突っ込みすぎてないかな?
さて、次からが一番厄介な連中の報告だ。
「次はメシア教イギリス支部からですね。イングランドにおける過激派の影響はおおむね排除できたといってよいでしょう。各地のシェルター避難民もライフラインの確保は出来たとみています」
メシア教はシェルターの製造などで避難民を匿う場所を確保している。その発言権は無視する事はできない。いずれこいつらは解体したい。
「トゥアハ・デ・ダナーンから告げます。ダグザの大釜による食糧製造は問題ありません。アーサー王直属の妖精騎士団を始めとしてフィオナ騎士団、赤枝の騎士団によるシェルター同士の交通路連結も計画通りです」
ダナン神族の奴らに食料生産やインフラを握られているのが痛い。早く産業を復活させて依存度を下げなければ・・・。こいつらも神殿の奥底に押し込めたい。
それに食料の提供するときも問題が起きたからなあ・・・。メシア教が抱える難民にダナン神族からの食料提供、その話を調整するのにだいぶ苦労をした。
と言うか貴様ら、だれがアーサー王直属騎士団だ。お前らの自称だろうが。
ダナン神族はブリテンの英雄として取り込もうとしてくるし、メシア教はメシア教でアーサー王が持たれている十字教の守護者のイメージを足掛かりにしてくるし厄介極まりない。
人類陣営も旧アイルランド側はダナン神族のイギリスを取り込む方向に賛同を示しているからなあ。まあ、あの国はイギリスに思うところがあるしな。一方の旧イギリス側は、メシア教が接近しているようだが、裏では僕たちガイア連合側に接近している。まあ、坊主は政治に口を出すなとは至言だからね。そもそも分派したとはいえ、核を撃ったのはメシア教だ。居住地を握っていなかったら仲良くはしたくないだろうしな。イギリスは元々聖公会の影響が強いしな。
「僕の話を聞いてほしい」
さて、会議の締めとして改めて僕たちの方針を告げるとするか。
円卓に座っている参加者だけでなく壁際に立っている秘書たちも僕の方に注目している。
「僕らの方針は、シェルター同士を繋げて町へ、町を繋げて国とする。それが僕たちの目指す未来だ」
全てがバラバラになった今、全てを繋ぎ直す必要がある。何せ今のままでは無駄が多すぎる。
「殆どの国が滅んだ今、新たな時代の国を作る必要がある。これから世界はゲームのように町を繋ぐ道に悪魔が出現するだろう。物理法則の変化によって精密機器の大半は使用できなくなるだろう。そんな世界で一番最初に新たな体制を作り出すんだ」
言うなれば、この国を終末後の国家のモデルケースにするんだ。日本はまだ守られているが、いずれ現体制は崩壊するだろう。
その時にイギリスと言う例があるなら日本の立て直しも速やかに行える。
「町を作ることで避難民を労働者に、街道の警備にデビルハンターを、僕たちで未来を創ろう」
経済と言うのは回してなんぼなんだ。経済と産業革命は、確実に人間を悪魔からの束縛を解き放つ手段だ。デモニカもあれも今では十分に工業製品と呼べる代物だ。世界は神話の時代に逆行しつつある。だが、今まで人類が築いた叡智は人間そのものを神話とは別のステージに持っていくことが出来る。デモニカがあれば英雄の才能が無くても英雄になる可能性が生まれる。神々も人類が創り上げた娯楽に熱を上げる。彼らから齎されるマッカは経済を動かす動力源となる。なら、それがうまく機能する場を、ルールを作れるならば世界は終末になって終わらない。
そして、アルトリアに渡すなら良いモノを渡したいものだ。
英国式必殺の霊的国防兵器第壱号ガウェイン
モルガン・エヴァンズによって作り出されたシキガミ型悪魔兵器である。火炎系のスキルを持ち、力依存系のスキルで構成されている。更に日中のみにラスタキャンディオートが発動する。
イギリス国内限定だが地脈からMAGの供給を受けることが出来る。ただし、現世の楔としてマスターは必要であり、マスターへの命令は絶対である。ちなみにマスター権は触媒を持つ者なので、他者への譲渡も出来る。