私の名前はアルトリア・エヴァンズです。世界が大変なことになったとき私はアーサー王の力を手に入れてしまいました。それはイギリスの人々の希望に私がなってしまったことを意味します。実は少しだけこのまま日本に帰ろうかなとも思いもしました。けど、イギリスで出会った友達や親戚の皆、そして周りの人々を見捨てる事なんて私には出来ませんでした。
このまま帰れば十中八九死んでしまう。更にお父さんが言うには死ぬよりも酷いことになる可能性もあるそうです。触手の化け物とかが出てきた時から嫌な予感はしていましたが、それの裏付けが取れてしまいました。だから、みんなを助けるために私は現代のアーサー王になることを決めました。
その結果、お父さんやお母さんにお姉ちゃん達に迷惑をかけてしまったのは申し訳ないです。お父さんもお母さんも私の為に色々な仕事をしているそうです。だから、色々と知ろうと思いました。
「ねえ、お母さんのお仕事見学してもいい?」
久しぶりに家族が集まった食卓で私はお母さんにお願いしました。
「それは構いませんが、どうしてそう思ったのですか?」
「お父さんには戦い方とか経済学みたいなの教えてくれているけど、お母さんも色々やっているって聞いて気になったの」
お父さんは仕事の合間に私に組織の運営に教えてくれたり稽古を付けたりしてくれているけどお母さんからは、そういうのは無かった。まあ、お母さんは技術者だから私が勉強しなければいけない内容からはズレてるしね。
「なるほど、そういうことなら今度連れて行ってあげますね」
「それは良い。学べる内に学んだほうが良いからね。今のご時世いつどうなるかわからない。それに備えるのは大切だよ」
お父さんも右手にコーヒーカップを左手に書類を持ちながら賛成してくれた。
「はい!」
よし、がんばるぞ。とりあえず今は目の前のご飯を片付けよう。・・・偶にはお米も食べたいなあ。
見学当日、私はお母さんが運転する車に乗って目的地に向かっています。道路に放置されていた車も片付けられて、自衛能力があるなら車での移動も可能となっているみたい。お父さんがインフラを繋げなければ経済が動かないって言うので優先的に進められたらしい。ちなみにたまに出てくる悪魔はお母さんが車の中から魔法で吹き飛ばしている。
「ではまず陸軍工廠ですね」
結構大きな建物の前に車が止まった。ここが目的地なんだ。でも今お母さんが言った内容って・・・。
「おおう、だいぶ厳つい処から行くんだね」
まあ、このご時世なら必要なものはそういう暴力装置が優先なのは当たり前か。
「まあ、デビルハンターの数を揃えるにもここは重要な施設ですからね」
そういってお母さんが建物の中に入って行くのでそれに着いて行く。施設の奥に進むと大きな音が聞こえてきた。どうやら工業機械が動いている音かな?
「車が沢山・・・あれって動くの?」
目の前に車が沢山あった。ただ全てが完成品という訳では無く中古車だと思われるのもある。それらに作業員が何らかの作業をしているのが見て取れる。でも、終末が着た世界では機械類は殆ど動かないって聞いたんだけどなあ。
「あれは簡易デモニカ装甲車です。本国の奴と違って悪魔召喚プログラムを内蔵しただけで終末の世で動くだけで普通の乗用車と変わりがありません」
「えー・・・そんなもので大丈夫なの?」
それって装甲車って呼んでよいの?ただの車で悪魔が出てくる外を旅するってかなり危険だと思うんだけど・・・あっ、お母さんみたいに力がある人は大丈夫か。
「動くというのが大事なのですよ。デビルサマナーなりデモニカ兵なりを乗せておけば悪魔の対策にもなりますしね」
そういうことかー。確かにそれなら問題もなさそうだね。もしかしたら私がクエストやる時も車が使えるのかな?
「なるほど、これがお母さんの仕事なの?」
「いえ、これはアーサー、お父さんの仕事ですね。最初は関わっていましたが今ここで行っているのはデモニカ作成ですね」
まあ、悪魔召喚プログラムを入れるだけなら簡単だからかな。と言うかインフラ整備は、やっぱりお父さん肝いりの計画なんだ。これが各シェルターや人外ハンターに出回れば、きっと楽になるね。
「デモニカって対悪魔用のパワードスーツだっけ?オカルトなのに近未来的なんだね」
元々デモニカはお父さんとお母さんが所属しているガイアグループと言うところが作った兵器だ。これの凄い処は素養が無い人でも悪魔を見ることと倒すことが可能になるという事だ。一緒にクエストを受けたサマナーの人もデモニカが欲しいって言ってたなあ。
ちなみにお母さんが言うにスマホやら電子機器を回収して悪魔召喚?
「それでは次の工廠に行きましょう」
そう言うとお母さんは部屋を出て地下を目指していく。と言うか結構強行軍なんだね。まあ、今日しか時間が取れないから回れるところは回るっては聞いていたけど・・・なぜ地下に?
「お母さん、これは?」
地下のある一室に出ると変な空間に出た。部屋の真ん中にストーンヘンジみたいな石柱が立っている。なんか鳥居みたいだなあ。けど石柱にコードがたくさん付いているからオーパーツかなんかなのかな?
「ターミナル製造プロジェクトの一環で作り出した妖精の環と言う転移ゲートですよ」
「凄いSF!?」
ガイアグループってこんなものまでつくれるんだ!?でも、これだけ技術力があってもメシア教過激派に勝ちきれないなんて・・・
「ぶっちゃけ原理的にはマイクラのネザーですけどね」
「・・・なんかそう聞くと地味だね」
マイクラのネザーワープって・・・。ちなみにお母さんに詳しく聞くと妖精の異界を経由して道を縮めているらしい。取り替えっことか迷い込んだら全く別の場所に出てくる怪異などを参考に造りだしたらしい。ちなみに工廠と工房にしかつながっていないらしい。
「これでも画期的だと思うんですけどね。まあ、悪魔が普通に出現する世の中になったらターミナルも問題なく稼働できると思うので、そのうち不要になるとは自分でも思いますが」
・・・それってその内これの存在意味がなくなるって言っているような。私はトロッコに揺られながらそんなことを考える。こんなところもマイクラなのか・・・。
「次は、ここですね」
そう言うとお母さんはトロッコから降りてゲートを潜っていた。私もそれに続くと出た場所はさっきと同じように見える。けど、部屋の外を出るとさっきとは違う場所だというのが分かる。と言うかなんか匂いが・・・。
「潮の香り・・・もしかして海軍工廠?」
「その通りです。確か丁度整備の為に今日停泊しているはずですが・・・・あ、ありましたね」
お母さんが扉を開けた先には船があった。
「あれって、軍艦?しかも古いタイプじゃなかったっけ?」
これってイージス艦とかの現代の船じゃないよね。世界大戦の時とかのそういう船だ。そう言えば、お父さんが古い船はオカルトとの適合率が高いから実験艦を動かしているって言ってたけど、これのこと?
「巡洋艦ベルファスト、テムズ川に記念艦として停留していたのを回収してオカルト改修したのが、この船です」
記念艦なんだ。と言うかそういうのは戦艦とかじゃないのかな?しかも核が落ちたロンドンから持ってきたのか、これ。そう私が感嘆しているとこの場に似つかわしいメイド服を着た銀髪の女性が歩いてきた。・・・いや、あれをメイド服と言っていいんだろうか上半身がちょっと・・・胸の上側が丸見えだし・・・と言うか大きいなあ・・・。
「お久しぶりですわ、モルガン殿下」
メイドさんがスカートの裾を摘みながらお辞儀をしてくる。こういうのテレビでしか見たことがなったけど、これが本物かー。
「ああ、ベルファストですか。機能に不具合とかはありますか?」
船と同じ名前?偶然なのかな?
「今のところございません。艦長やクルーの皆様にも大切にしてくれています」
「それは良かったですね」
んん?艦長やクルー?もしかしてこの人の正体は・・・・
「お母さん、この人は?」
「彼女はベルファストの中枢ユニットであるシキガミです。艦体の機能を維持しつつもレベルを上げることによる戦闘能力向上を可能とすることを目指して造られました」
「そうなんだ、いろいろ複雑なんだね」
この人もシキガミなんだ。バーヴァンシーお姉ちゃんやガウェインみたいに人が作った悪魔兵器・・・本当に見た目は人間にしか見えないなあ。
「説明しようとすると時間が無くなるくらいにはね。ベルファスト、紹介しましょう。こちらが私の娘アルトリアです」
「お初お目にかかります陛下。巡洋艦ベルファストと申します。以後よろしくお願いしたします」
おおう、跪いてきた。こういう事にもなれないとなあー。人外ハンターの同僚も私を持ち上げてくるけど、こういうのに比べればまだ頼れる仲間って感じだったからなあ。こう、王様万歳って感じの対応されるとちょっと恥ずかしい・・・。あっ、返事をしてあげないと。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ちょっと舌が回らなかったけど何とか挨拶する。こういう場合どういうのが正解なんだろう?
「それではベルファスト。私たちは他のところの視察がありますので、ここらで失礼しますよ。・・・アルトリアも」
お母さんが話を切り上げた。私に助け船を出してくれたのかな?・・・うん、もっとがんばらないと。
「あっ、はい!失礼しますね、艦長さんや皆さんにもよろしくお願いします」
そうして私は海軍工廠を後にしてまたトロッコに乗っています。
「凄いメイドさんだったね。あの人が軍艦ってイメージが合わないなあ」
「そのうち慣れますよ」
なんかお母さんが苦笑いをしている。なんでだろうと首をかしげていると現世に出るゲートが見えてきた。次はあそこかな?
「さて、他にも細かい仕事にも関わっては居ますがキリが無いので、最後は私の工房に行きます」
スマホの時計を見てみると結構いい時間なのがわかる。確かに回れて後一か所かな。そうしてゲートを潜るとここは今までの部屋とは雰囲気が違っていた。
「うわぁ・・・メルヘンみたいな感じかと思ったら意外とSFチックなんだね」
ゲートが出た先はアニメで出てくる秘密基地みたいな感じだ。魔法使いの工房と言う印象が殆ど無いんだけど。印象としてはさっきまでの施設よりは洗練されているように見えるなあ。これって工房と言っているけどお母さんの研究所みたいなものだから、そんな印象を感じるかな。
(カルデアやエルメロイ2世の部屋などを参考にしましたからね。)
ん?なんか言ったのかな。ちょっと声が小さくて聞き取れなかったな。んん?なんか、ここにあるのが似つかわしいような物体が・・・なぜにスロットマシンが?休憩室とかにあるならまだ理解できるけどガラス張りの部屋の真ん中にどんと置いてあるその姿は違和感しか感じないんだけど。
「お母さん、これは?」
「それはマッカ製造用のアガシオンです。スロットマシンみたいな見た目ですけどちゃんと使い魔として使えるんですよ」
使い魔・・・これが?なんかカードゲームのモンスターみたいだなあ。あ、コインを吐き出し始めた。あれは最近流通し始めたブリテンマッカだね。こうやって作っているのかあ。
おっ、あっちにもなんかある。なんだろう機関車に石炭を入れる場所みたいな感じだけど竈か何かなのかな?
「こっちは何?」
「それは霊装兵器を作るための道具ですよ。これで作られたアイテムはデビルサマナーや英傑種族の悪魔、さらにはシキガミが装備出来るんですよ」
これで武器を作っているのか。・・・けど近場に弓矢があるけどまさかこれもこの竈を利用して作ったの?さすがに矢じり部分だけだと思うけどオカルトの竈だからなあ。
「色々あるんだねえ」
「そりゃまあ、ガイア連合の技術力は世界屈指ですからね。私はそこの技術部門にいましたから、このイギリスでの開発の総責任者みたいなものです」
改めて聞くとお母さんもとんでもないなあ。なんかイギリスの人たちってアーサー王の転生者である私を持て囃しているけど今この国で一番尊敬されるべきはうちの両親では?
「今この国で使われているオカルトアイテムの大半に関わっていますよ」
「・・・お母さん、大丈夫?無理していない?」
いや、本当に体壊さないか心配なんだけど。しかもお父さんもお母さんもたまに戦場に出ているって聞くし。
「大丈夫ですよ、これくらい。日本では私以上のレベルで私やアーサー以上に働いている霊能力者が居ますから」
「お母さんとお父さんより?・・・大丈夫?その人生きてる?」
「生きてるんじゃねーかな。と言うか神主なら過労死してもリカームで生き返るだろ」
「お姉ちゃん!?どうして、ここに?」
そこにはバーヴァンシーお姉ちゃんが居た。いつもの綺麗な洋服じゃなくてローブに身を包んでいる。
「ん?そりゃ、私はお母さまのシキガミだからよ。色々アイテム制作の助手をしているのさ」
なるほど、お洒落さんなお姉ちゃんが汚れていたローブを着ているのはそんな理由だったのか。しかし、カヴァスといい、さっきのベルファストさんといい、ガウェインといいシキガミって色々な仕様があるんだなあ。
「バーヴァンシー、アレの準備は出来ていますか?」
「はい、保管庫から出して降臨台にセットしてあります」
「お母さん、あれって?」
あれって何だろう?ここに来るまで色々なモノが置いてあって想像がつかないや。
「英国霊的国防兵器参号の事ですよ」
「霊的国防兵器ってガウェインと同じ存在・・・」
私が人外ハンターとして働き始めたころにお母さんたちが私につけてくれた英国決戦兵器・・・そういえば、私がある程度レベルが上がった時、再調整を受けるって言っていたっけ。
「ガウェインも対軍用にしないと行けなくなりましたからね。ICBMもあの日以降は基本的に中国や日本だけに撃ち込まれていますが、ブリテンが復興したら再び目標に設定される可能性がありますので、迎撃用の霊的国防兵器が必要となった訳です」
・・・やっぱり世界は大変なことになってるんだね。私たちが居るイギリスもだいぶ落ち着いたけど、それでも終末前に比べれば修羅の国なのには違いが無いからなあ。日本もいつまでもつ事やら・・・。
「ちなみに、今作っている此奴は私の戦闘スタイル元にもなっている奴だから製造は比較的楽だぞ」
へえー・・・。お姉ちゃんの戦闘スタイル元ってクギとトンカチの丑の刻参りだったよね?そんなモチーフのイギリス英雄って居たっけ?
「所以と云われがある奴無いと難易度が跳ね上がりますからね。ちなみにメシアンから提供された灰からはジャンヌ・ダルクが製造可能だったりします。・・・遺灰は川に流されたと思っていたのですがね」
それってつまり遺灰をこっそり回収してたという事だよね?・・・メシア教って昔からアレなの?それとも別のところからメシア教が入手したのかな。まあ、今の世の中を見るとこっそり盗んだと言われても納得しかないけど。
「では、最後の調整に入るとしますか。アルトリアは、バーヴァンシーに私の工房を案内してもらいなさい」
「わかった。ところでどんなのを作っているの?」
ああ、やっぱり結構無理して私の時間を捻出してくれたんだ。私も頑張らないと!
「霊的国防兵器参号は、トリスタン。円卓の騎士ですよ。もっとも本来はアーラシュあたりを作りたかったのですが、ここはイギリスですからね」
「円卓の騎士トリスタン・・・」
・・・クギとハンマー要素どこ!?
モルガンはイギリスにおけるショタおじポジションになりつつありますね。世界最高峰クラスの技術力を持つ研究者の一人、海外に居るなら現地で酷使されるのも是非もナイヨネ!
ちなみに外伝をあと一話書いたら1~2話で完結予定です。