終末が来たりし世に英傑の旗を掲げよ   作:謎の食通

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疫魔編

フォークストンの線路上に多くの車両と軍勢が陣地を形成していた。ドーバートンネルを通ってある強大な悪魔がブリテン島に上陸しようとしているという情報が伝わったからだ。そして、僕アーサー・エヴァンズも参加している。何せ相手が相手だ。雑兵やルーキーでは相手にならない。今使う事の出来る最大戦力を使うべきだと僕たちは判断した。

 

「閣下、6番から25番までの準備完了いたしました」

 

防護服を来た男が進捗状況を報告しに来た。

 

「町からの供給は?」

 

残りの霊的防衛兵器20体すべてをここに持ってきていた。本当はもっと精度を上げて、大陸側上陸作戦の時に使うために用意だけはしていたものだ。

 

「現在、各シェルタータウンに設立した合同神殿からのMAGの転送は75%の効率で送られてきています。起動と戦闘には問題ないと思われます」

 

合同神殿、それは町に結界を貼る起点である、ケルト神話や十字教の信仰を集める場所としても機能し、生体エナジー協会や人外ハンター組合を併せ持った町の中枢だ。もっとも一纏めにしないとリソースが足りないという理由もあったりする。

 

「しかし、それなら全力稼働は難しいか。やむを得ない、21番から25番までの供給はカットする。いや、12番などの大英雄級の消費はかなり重いはずだったな。13番からカットだ」

 

さすがに壱拾弐号を捨てるのは勿体無い。何せ、わざわざイタリアから調達して作り出したヘラクレスだ。今回用意した霊的防衛兵器の目玉だ。ちなみに正式名称は必殺霊的連合防衛兵器壱拾弐号アルケイデスである。

 

「そこまで切り捨ててもよろしいのですか?」

 

「今から来る奴に必要なのは数じゃない質だ。レベル差と言うものは大きいのさ」

 

MAG供給を絞って性能を下げた奴を20体使うよりは万全の状態の7体の方がマシだ。

 

「分かりました。それでは起動準備に移りたいと思います」

 

そういうと彼は配置に戻って行った。僕も視線をそちらに向けるとそこは20体のカプセルが並べられていた。町中から伸びてきたケーブルがトレーラーに接続され、そこから更にカプセルに接続されている。

 

「起動シークエンスを開始します」

 

カプセルの外についているランプが点灯する。トレーラーからもエンジン音に似た音が響いてきた。

 

「6番から12番ストレージにMAG注入開始します」

 

7台のカプセルのカバーが光りだす。カバーが透けて中の人影が確認できるな。

 

「各憑代にマスター登録実行中・・・完了しました」

 

カプセルの前に陣取っていたデビルサマナーたちのCOMPとカプセルに備え付けられていた赤い紋章との間にレイラインが構築されていた。

 

「各機、覚醒完了。霊的連合防衛兵器群、起動します」

 

カプセルが蒸気を吹き出しつつ開き始める。僕を含めた周囲の人間は固唾を呑みながら彼らがカプセルから出てくる姿を見ている。

・・・どうやらマスター登録は問題ないようだな。サマナーたちともコミュニケーションをとれているようだ。イギリスで呼び出したから暴走とか独自行動をするなどの想定もしていたけど、これなら大丈夫そうだ。やっぱり、人間ベースだと安心感が違うな。一部怪しいのも居るが。

 

「これほどの英傑悪魔が揃うとは壮観だな」

 

「ただ欠点もございます。モルガン殿下によりますと海外英傑は地脈からの供給が難しく、こちらがレイラインを繋げてMAGを注いでやらないと使い物になりません」

 

そこが問題なんだよなあ。霊的国防兵器は、ガイア連合にある防衛用シキガミみたいなものだ。国土を自身の守護地と設定されているからこそ、国の中ならどこでも供給を受けられるけど、外国産の英雄だと途端に効率が下がる。まだ、ヨーロッパだからマシだろうけど、

ヨシツネとかの東洋系の運用は不可能だった。技術的な蓄積がやっぱり足りないな。

 

「ある程度の高レベルデビルサマナーが居れば話は早いんだけど、そんなのが居るのは本国やメシア教ぐらいだからなあ」

 

神主のようなレベルの高いサマナーなら英傑クー・フーリンじゃなくて妖魔クー・フーリンを使えたりするんだろうがなあ。もしくは、イタリアの彼に悪魔召喚プログラムを持たせれば、ヘラクレスのMAGも維持出来るかな?

 

「メシア教の方々には天使に専念してもらわないといけないですからな。英雄たちはあくまで私たちの元で運用されなければ」

 

うむうむ、僕が裏で進めている人間主義の啓蒙は順調なようだ。まあ、古代の神や天使なんて信じるには不安要素しかないからね。救世主や覚者みたいな存在でもない限り僕も信仰することは無いからな。それにこの世界はメガテンだから、猶更だ。

もっとも、ここに人間主義者が多いのは単純に英傑計画にはその手の人間が多かったのとほかの連中はスコットランド方面に向かっているだけだけどね。

 

「そうだね。では、サマナーと英傑たちを集めてくれ」

 

僕の前に7人の英傑と7人のサマナーが集まった。しかし、こうしてみると丁度7騎なんだな。全てのクラスが揃っている訳でもないしエクストラクラス相当の奴も居る。それでも僕の前に7人の英雄と7人のマスターが居る。

 

「みんなよく集まってくれた。聞いての通り、現在スコットランドの過激派との一大決戦が行われている。だが、ドーバー海峡の向こう側、ドーバートンネルからも敵が来ている」

 

モルガンやアルトリアは、陸軍の大半と共にスコットランドへ遠征している。本来ならモルガンでは無く僕が行くつもりだった。大陸から敵が来なければの話だが。

 

「終末の四騎士、彼らはアフリカと欧州を幾度となく荒らしている。今回、その一体がトンネルに接近したからこそ厳戒態勢を敷いている」

 

終末の四騎士、それのどれもが高レベルだと思われる。おそらくメガテン4のように魔人同士のレベルもそこまで離れていないだろう。

 

「なお、これはメシア過激派の作戦だと思われる。ドーバートンネルに終末の騎士を誘引し、スコットランドで蜂起することで戦力を釘付けにする、そういう流れだろう」

 

まあ、ヨーロッパと言う十字教の本拠地とも呼べる場所を終末の騎士が縦断出来る方がおかしいから自明の理である。アフリカとは違うのだ。

 

「スコットランドは軍勢同士のぶつかり合いだ。だが、今ここの戦場で必要なのは一騎当千の英雄たちだ。そして君たちはそのマスターとしてこの戦場にいる。」

 

霊的防衛兵器のリミッターとしてマスターが居ないと活動出来ないように設定されている。もっともマスターだからMAGを供給する必要がある訳でもない、契約の要として必要なのだ。

ちなみにマスターが自力でMAGを供給できるなら東洋英雄だろうと問題なく英傑を活動させることが出来る。

 

「すでに詳細は事前のブリーフィングでも説明したとおりに事態は推移している。終末の騎士を誘引している過激派は僕らに擦り付けたらそのままブリテン本土の攪乱を行うことは目に見えている。」

 

ブリテン島の北部に戦力を集中させ、空家となった本拠地を攻撃する。しかも、厄介極まりない終末の騎士を押し付けてである。言ってみれば簡単な事だが、だからこそ有効的な手だ。しかも、これの厭らしい処は、どのみち遅かれ早かれスコットランドの失陥は戦力的に確実視されていたこと、仮に僕たちが勝っても終末の騎士の一角が僕たちに駆除されるという事だから過激派にとっても得だという事だ。

 

「それと英傑の起動が出来なかった担当サマナーは当初の予定通り防空戦の方に回ってほしい。天使をこのブリテンに上げてはいけない」

 

今回起動できた英傑は7体、つまり13人のサマナーが余ったという事だ。しかも英傑のマスターが出来るブリテン連合王国が誇る屈指のデビルサマナーだ。遊ばせておくにはもったいない。ドーバー海峡で制海している海軍と共に大陸側から上陸してくるだろう天使を迎撃してもらおう。

 

「それでは、各員の奮闘を期待する、以上」

 

雄叫びと共に彼らは駆け出した。さすが一線級のサマナーに英傑たち、ノリが良いね。士気と言う面では問題なさそうだ。

そして、みんなが敵に備えている内にとうとう招かれざる客のノックが聞こえてきた。

 

「閣下、カレー基地の観測員の収容を完了しました」

 

フランスにあるパ=ド=カレーにはドーバートンネルの大陸側の入り口がある。だからこそ、欧州側の拠点として確保していたが、今回の事態により人員は撤収させた。もとより最前線の観測所みたいなモノだ、最低限の備えしか置いていない。

 

「ご苦労。それで奴の予想到達時間は?」

 

「足止め用の仲魔がかなりのスピードで送還されています。更にトンネル内の封鎖ゲートも既にいくつか破られています」

 

「なるほどな。しかしネズミ型悪魔にペストを感染させると来るとはね」

 

奴の逸話的にペストに感染したネズミなんてどんぴしゃすぎる。しかも過激派に洗脳された悪魔だから病気でも平気にトンネルを超えてくる。さすがにネズミが通れる穴までは封鎖出来ないからね。

 

「この欧州で黒死病がいかに猛威を振るったか奴らも知って居る筈なのですがね」

 

遣る瀬無いという顔でリンド中佐はボヤク。今回の防衛線の前線指揮官だ。彼にとっては僕は後方にいてほしいだろうけど戦力的にいないと無理だから何とか飲み込んでもらおう。

 

「核を撃ったんだ、今さらだろうね。それにしても奴の誘引が出来るほどの効果が出るとは厄介極まりない。」

 

「それと、あまり気分のよろしくない追加情報が・・・」

 

知ってた(嘆息)

こういう時は予想していない不測の事態が起きるものだからね。

 

「・・・わかった、聞こう」

 

「誘引に使用されているのはネズミだけでなく人間も使用されているらしいそうで・・・例の脳管や人形みたいなモノを用意していたと報告が上がってきました」

 

「本当になんで堕天しないんだ、あいつら。文字通りの悪魔の所業じゃないか。いや、いつものペ天使か」

 

メガテンの天使と言えばこういうのだよなあ。真女神転生以前にはマシな奴もいたらしいがなあ。絶対、聖四文字に見捨てられているだろ、この様だと。どこに正しい信仰があるんだか。

 

「閣下、最終警戒網が突破されました!ご準備を!」

 

「わかった、すぐ向かう」

 

剣を抜刀する。他の英傑やサマナーたちも身構える。

鉄の大扉で封鎖されたトンネルを見続けると巨大な金属音と共に扉が歪んだ。どうやら無理やり扉を開けようとしているようだ。魔法ではなく力任せで開けてくるのか・・・。数回の轟音と共に扉が吹き飛んだ。

 

「隔壁が破られたぞー!総員、攻撃準備!」

 

空いたトンネルの出口から奴が出てくるのを待つ。出てきたらアナライズを行い、奴の弱点属性の魔法をぶつける手筈になっている。だが、なかなか姿を見せない?それに、扉が吹き飛んだ時に出た粉塵が未だに収まって・・・!?

 

「・・・・・・いけない!?このガスを吸い込むな!」

 

この空気に匂いのあるガス!?毒ガスだ!

 

「ぐぇほ、げほっ!」

 

「うぉぐああぁああ・・・・」

 

「これはパンデミアブームだけじゃない毒ガスまで・・・」

 

奴の特性から風邪の状態異常を付与してくるとは想定していたが、毒も同時に掛けてくるか!と言うか、やはりこの鬼畜仕様か。

 

「閣下、この毒ガスはただのスキルではありません!科学ガスも含まれています!」

 

と言うと、この干し草っぽい匂いはホスゲンか。何でこんなものまで!

 

「モルガンのアミュレットが無ければ危なかったな。使えるマスターは?」

 

「デモニカを装備していない兵は、後退させております。ですが、デモニカを着たものでも半数は・・・」

 

科学的な毒ガスと魔法的な毒ガスの両方の性質を持つとか最悪だぞ。ただの現地人だとデモニカかガスマスクを付けていないと防げないじゃないか。状態異常耐性についてもある程度は準備していたが、貫通もされてるようだ。僕もモルガン特性のアミュレットで何とかなってはいるが・・・。

 

「半数も持ったか。しかし、壱拾弐号は、ヘラクレスはダメか。」

 

まともに行動できる英傑は3体か。まあ、ヘラクレスは毒に弱いのは神話的に当然か。むしろ毒殺された英雄なんて結構居るからな。これは今後の課題だな。

 

「今、五号ジャンヌ・ダルクに回復をさせております」

 

「回復させしだい戦線に戻してくれ、いよいよお出ましのようだ」

 

ジャンヌが回復に回ると言うと、使えるのはジークフリートとアキレウスか。イギリス系の英傑である壱号から四号はスコットランド方面に回しているからな。

そして、蹄の音が耳に聞こえてくる。煙の中から現れるのは馬に乗った黒いローブの骸骨。手には鎌を持って、その姿は人々が想像する死神そのものだ。

 

「終末の四騎士の一人、ペイルライダー。黒死病だけでなく世界大戦の毒ガスすらも権能に取り入れたか」

 

「ふむ、疫病の気配に誘われてきてみれば、まだ私が来るには早い地のようだな」

 

「そういうならば、おとなしく帰ってほしいんだけどね?」

 

僕は剣を構えながら告げる。まあ、意味は無いが、精神状態をリセットするのは丁度良い。

 

「否、この身が訪れた以上、この地にも死を齎さなければならない」

 

「だろうね、ならばする事は一つだ」

 

「来るがよい人間たちよ。我らこそが試練だと知るがよい」

 

ペイルライダーが鎌を頭上で振り回す。

戦闘開始だ。皆がそう感じたんだろう。

 

「やれぇ!ジークフリートォ!」

 

金髪のふくよかなサマナーがジークフリートに指示を出した。

 

「『ベノンザッパー!』」

 

ジークフリートがその大剣で切りかかる。その衝撃でペイルライダーの周辺の地面は陥没し、クレーターのようなものが出来た。

 

「ふむ、悪くない。だが、『殺風激』」

 

だが、決定打にはならなかったようだ。ダメージは与えられているが、ぴんぴんしている。それどころか鎌を握っていない左手から風属性魔法をジークフリートにぶつけてきた。その衝撃でジークフリートはかなり吹き飛ばされた。おいおい、まさか迷子の状態にならないだろうな?

 

「受け止めて、アキレウス!」

 

それを見たアキレウスのマスターは吹き飛ばされたジークフリートをアキレウスに受け止めさせた。よし、いい判断だ。これ以上数を減らされるのはさすがに困る。

そして、英傑に遅れながら僕もペイルライダーに切りかかる。

 

「はあぁぁぁぁぁ!!」

 

手に持った双剣で何度も切りかかる。一撃系のスキルは相性的に得意じゃないが連撃系のスキルなら僕の独壇場だ。

 

「むぅ」

 

何度かペイルライダーもその鎌で僕の斬撃を跳ね除けようとしているが、僕はそれを受け流す。さながらゲームで敵をパリィしたりするように無効化する。

ペイルライダーは僕の攻撃に攻めかねている。つまり、僕に拘束されているということだ。それは隙となる!

 

「『ジャベリンレイ』!」

 

ジークフリートを回収したアキレウスがこちらに戻ってきて、槍で攻撃してくる。

 

「総員、射撃開始!閣下や勇士達を援護しろ!」

 

そして、周りに居た友軍も攻撃を開始する。僕がタゲを取り、後衛でダメージを稼ぐ。ゲームみたいだが、バカには出来ない。このまま、押し切る・・・!

 

「鬱陶しいな、周りにいる雑兵どもも煩わしい。ならば・・・」

 

この魔力の高まり・・・!そうだな、そうだったな!こいつレベルなら使えてもおかしくないか!

 

「ッ!?総員、防御態勢―!」

 

「『メギドラオン』である」

 

閃光と爆発が辺りを覆った。視界がホワイトアウトした。これがメギドラオン・・・!核爆発にも例えられる上級万能魔法!

 

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