霊峰、厄災と恐れられる古龍アマツマガツチが住まう、何者も立ち入らぬ神の領域。
常に嵐の渦中の領域でもある。
だがそこに我が物顔で入る愚か者がいた。
その愚か者は雷を纏う雷狼竜ジンオウガ。その全身は本来の色より白く、蓄電殻は黒みがかっていた白黒種である。
ジンオウガは悠々と歩み寄る、厄災の元凶へ。
嵐を纏い、その力を持って海竜種のように空を泳ぐアマツマガツチ。敵意をむき出しにして、ジンオウガを睨みつけていた。
古龍と牙獣種、実力差は明白であった。だがアマツマガツチはジンオウガを、自分の脅威だと判断した。それはこの個体が白黒種だからでは無い。
ギルドはこのモンスターを倶利伽雷(くりから)と呼ぶ。
かつて霊峰付近の渓流で一番強いモンスターであったが、アマツマガツチの襲来により渓流を後にした。
凍土の白夜刀とは違い白黒種になる事により、通常種よりも強大な力を得た。
そして今、自分の地位を取り戻すため満を持して、霊峰にやって来たのだった。
歩きながら蓄電殻に溜まったが解放され甲殻が開き全体毛が反り立つ、これで倶利伽雷は超帯電状態へとなり戦闘態勢をとる。
倶利伽雷はアマツマガツチを捉えると、いきなり仕掛けてきた。強靭な前脚を落雷の如く空中から叩きつける。
それを身を捩って紙一重で避ける、その衝撃は大気を揺るがし、大地を焦がす。
それが開戦の合図となった。
その技の躱し際に高圧の水ブレスを打ち込むアマツマガツチ。
体内の水を高圧縮させて一点に放つ一撃は斬鉄の威力を誇り、いかなる防御も無意味である。
倶利伽雷はそれに反応していたものの、攻撃した直後の右前脚に掠ってしまう。
それだけでも血飛沫が勢い良く飛び出してきた。
威力は倶利伽雷の想像を遥かに超えていた。
一瞬の攻防だったが改めて相手の強大さを理解した。
そこからの戦いは苛烈さを増していく。
倶利伽雷は一撃でもまともに喰らえば即死だろう、だが攻撃をの手を緩める事は無かった。
超帯電状態を保ちながらアマツマガツチの攻撃を辛うじて掻い潜り、そのわずかな隙を全力で叩く。
雷擊が、嵐擊が、水擊が激しく交差する。
時の流れを忘れるような攻防は霊峰だけに留まらず、水没林にまで及んでいた。
その末に追い込まれていたのは倶利伽雷だった。
空中から水ブレスを連発するアマツマガツチに対して決して目を離さず、ひたすらに走り続けながら避けることに専念している。
攻撃がまともに直撃することは無かったが、長引く戦いで身体はかなり傷つき、超帯電状態は今にも解除されそうであった。
一方相手のアマツマガツチは多少のダメージを負ってはいるものの、まだまだ余力があるように見えた。
このまま逃げ続ければ倶利伽雷の敗北は明白だ。
だがその時、妙な事が起きていた。倶利伽雷の右前脚、そこに大量の雷光虫(ジンオウガが周囲からこの虫を引き寄せ電気を貯める)が脚全体を覆い尽くすよう密集していた。
攻撃を躱しながらどこまでも逃げる倶利伽雷に対して、冷静に淡々と攻めるアマツマガツチ。
そしてついに超帯電状態が解除され、一瞬動きが鈍くなった、その隙を見逃さず容赦なく水ブレスを放つ。
その瞬間、倶利伽雷は密かに後脚に雷を放出し、その勢いでアマツマガツチの目の前を飛び越える。
アマツマガツチの上に君臨した倶利伽雷に、自然発生した落雷が直撃した。
その電力を含め自身の全ての電力を雷光虫を纏う右前脚に集中させる。
落雷の威力を利用し、渾身の一撃を右前脚で叩き込む。
咄嗟に放つ水ブレスが左目を潰すも、その勢いは止まらない、避けようが無かった。
そして攻撃が当たる瞬間、蓄電できる限界量を大幅に超えた雷光虫が全て同時に爆発を起こし、周囲の物を全て吹き飛ばし、地面に大穴を穿つ。
その一撃は、水没林の全域に爆発音が響き渡る程の衝撃だった。
大穴が空いたのは川の付近だった。
川の水が大穴に向かって流れていく。
倶利伽雷は動くのもやっとの状態で、既に右前脚は損失していた。
残った三本の脚で大穴から何とか這い出て辺りを見渡すと、そこにアマツマガツチの姿は無かった。
だが倶利伽雷は確信していた。
後一撃で奴を殺せる。
失った右前脚に確かな手応えを感じていたのだ。
しばらくすると川下から二体のルドロスが泳いできた。
一瞬戸惑うも手負いの倶利伽雷を見て襲いかかっていくが。手負いとは言え、倶利伽雷にとっては、腹の足しになる格好の獲物だった。
抵抗も虚しく瞬殺され貪り食われるルドロス達。少しでも多く回復するために、新たな獲物を求め川下へ向かう。
カジキ達が遭遇したのは、手負いのジンオウガこと倶利伽雷だった。
ルドロスを捕食したことで体力を回復し超帯電状態を保持し直した。
既に臨戦態勢はできている。
「何があったんだこいつ?」
「ジンオウガ・・・手負いだからって油断しちゃダメよ」
「確かにそうだが、ここで仕留めないと後で苦労するぞ」
その言葉を聞いたカジキが本能的に斬りかかっていく。いつも通りの正面からの堂々とした攻撃、それを倶利伽雷は無慈悲に前脚の爪で引き裂く。
傷口に雷を流し込まれ体内から感電、もうまともに動くことは出来ない。
だがカジキは攻撃を続行できた、気を失い、脳が機能してなくとも双剣を振り続けた。
その予想外の斬撃が倶利伽雷の再生しかけた甲殻を再び傷付ける。
でもそれはほんの数秒の出来事だったため、その後カジキはしばらく痙攣して倒れ込んだ。
「カジキ!」
「ハゼ!武器をくれ!コイツは普通のジンオウガじゃねぇ!」
ハゼは双剣をハオコゼに投げ渡し、戦闘態勢をとる。
「どうにかしてカジキを助けてやりたいが、慎重に動かないとダメだ。あの雷の威力は即死に繋がる」
「そんな!?じゃあカジキは!?」
「心臓が止まってるだけならまだしも、他に損傷があったら助からねぇかも」
「早く助けないと」
「分かってる、だが決して焦るな」
両者の睨み合いは続く、慎重になっているの倶利伽雷も同じであった。
戦える状態とはいえ、これ以上の傷を負う訳にはいかない。その時、後ろからドシンドシンと健磐竜が遅れてやってきた。
「先先行くでないわい、若者ども。っ!?雷狼竜、何故ここに?」
「龍仙人!コイツは恐らくあの爆音を起こした犯人だ!どんな力を持ってるか分からない!」
乗っていた龍仙人は倒れているカジキと倶利伽雷に気付くと、パチンコのようなものを取り出し、秘泉水の苔をカジキ目掛けて発射した。
すぐに治ると思ったのか変化が起きないため首を傾げる。
「そうか、気絶しておるの。なら、健磐竜!」
「オオオオォォォォン!!」
咆哮を上げた健磐竜が木の根まみれの尻尾を何度も地面に叩きつける。その周囲は激しい振動に襲われた。
「な、何を!?」
「地震か!?」
ハゼとハオコゼは思わず尻もちをついた。対して倶利伽雷はその振動にじっと耐えていた。
「おい!生きとるか!」
「うぅ・・・痛ってぇ!なぁ、ちくしょう!」
「カジキが復活した!?」
何とカジキは意識を取り戻し、自力で立ち上がったのだ。
龍仙人の狙いは、まず秘泉水をカジキの体に直接染み込ませ、健磐竜の地ならしで振動を起こし、無理やり起こす事だった。
だがカジキが起きたその場所は、倶利伽雷の目の前であった。
「主らよ、ここは引け!この雷狼竜はワシと健磐竜が引き受けようぞ!」
「カジキ、一旦引くのよ!」
「いいや、ここで引いたら負けだね!後やっと分かってきたんだ」
「何を考えておる!?」
「うおぉぉぉぉぉ!!」
カジキは、起きてから再び斬りかかっていく。倶利伽雷は同じように前脚で引き裂くと思えたが、警戒してるのか雷光虫を放電させ遠距離の電撃に切りかえた。
だが今度は雷撃を刃に受けた。またしても身体に電気が流れる、それはカジキにとってはダメージだけではなく強化であった。
倶利伽雷も反応できないスピードで一気に駆け寄り、高速の斬撃を繰り出す。その後はまた一瞬で倒れ込む。
「無茶をしよる!」
そう言いながら龍仙人はまたしてもパチンコで秘泉水を打ち込む。
カジキはすぐに立ち上がり、なにを確信したのかニヤついていた。
「原理はわかんねぇけど、こいつの雷を俺が受けると、なんか強くなれる!龍仙人、俺に秘泉水を撃ちまくってくれ!そのままこいつを倒す!」
「ちょっと待たんか!戦闘中のお前に当てるのは難しいんじゃぞ!それに雷を受けて強くなったとしても、雷の痛みやダメージは無くなる訳じゃないぞ!」
龍仙人の忠告を無視して攻撃を続行するカジキ。それに倶利伽雷は、全力で応戦する。
電撃を喰らう度、意識を失うカジキに何とか秘泉水を当てて延命させる龍仙人。
だが意外にもこの戦法は倶利伽雷を苦しめていた。
「参ったな。全く入る隙が無い」
「・・・グゥルル」
普通のモンスターならとっくに倒れているはずだが、白黒種の驚異的な生命力が身体を動かし続けていた。
ここで倶利伽雷は一か八かの掛けに出た、超帯電状態をあえて解除してカジキに襲いかかったのだ。
その判断は正しかった、だが既に遅かったのだ。
健磐竜はこの攻防の中、ゆっくりとだが倶利伽雷に近づいていたのだ。
健磐竜は鈍重なモンスター、本来なら追いつくことなどありえないのだが、カジキに気を取られすぎた倶利伽雷は健磐竜の接近を許してしまった。
これが致命的なミスとなる。
カジキに襲いかかったその瞬間、健磐竜の強烈な横振りの尻尾が倶利伽雷を殴り飛ばす。骨が砕けフラフラな状態になった。
「全く、しぶといやつじゃな。ここで討伐せねば、脅威になりかねんわ」
「あ〜!あと少しだったのに!」
「じゃから確実に健磐竜がとどめを刺す!行くぞ!」
文句を言うカジキを尻目に健磐竜は脚を軸にして、尾を遠心力で何度も回転させながら、加速するさせていく。
乗っている龍仙人も目が回ってしまいそうなくらいの回転がしばらく続くと、その遠心力を利用して何と宙を舞ったのだ。
そして健磐竜の巨体が倶利伽雷を、押し潰した。
健磐竜がその場からゆっくりと下がると、ほぼ地面と一体となった倶利伽雷が出てきた。
血まみれのその身体はピクリとも動かず、手脚がありえない方向へ曲がっていた。
その周りには行き場を失ったのか、雷光虫が漂っていた。
「ふぅ、これで一件落着じゃな」
「凄いけど。相手は殆ど瀕死だったのにここまでやる必要あったかしら?」
「いや、龍仙人の判断は正しい。あのジンオウガに何があったのかは分からないが今仕留めなければ、どれだけ被害が出るか検討もつかない」
「ちっ!俺がとどめを刺したかったのによぉ!」
「ルドロス達の仇でもあったんじゃ。さて、ギルドに持って帰って調べるとするかの」
「そういえば、川の流れを塞き止めなくていいの?」
「おっと、すっかり忘れておったわい。原因を探らねばな。このまま流れ続ければ湖が干上がるかもしれん」
戦いが終わっても、その問題は解決しない。
カジキ達は再び川の流れを辿り始める。しばらく歩いていると水が流れ込んでいる元凶の大穴が見えてきた。
「ここに流れてたんだわ」
「いや、だとしたら水が溜まっているはずじゃ」
大穴に近づいて見てみると、水は溜まってはいなかった。
「おかしいのぉ?どこへ流れておるんじゃ?」
「・・・あっ!あれじゃない?」
ハゼが見たのは穴底から、通づる地下空洞だった。そこに湖の水が流れ着いていたのであった。
「こりゃ、またでっかい穴だな」
「あのジンオウガの一撃がこれを作ったのか!?」
「何にせよ、塞がねば湖の水が干上がる。そうなっては水没林は生態系を失ってしまう」
「でもどうやって塞ぐの?」
「うーむ、困ったもんじゃな」
大穴を見つめ悩んでいると、一匹の雷光虫が健磐竜の元へ飛んできた。
それはかなり放電していて赤色に発光しており、危険な状態にあった。
「雷光虫?どうしてここに・・・」
次の瞬間、龍仙人の前で雷光虫は爆発を起こした。
「何!?」
爆発の影響で健磐竜の体が炎上し、慌てだす。龍仙人は爆風で木の窪みの奥に叩きつけられた。
「おい!龍仙人、大丈夫か?」
「雷光虫が爆発した!?」
「うぁ・・・何・・・事じゃ?」
龍仙人は頭を抑えながらやっとの思いで立ち上がる。
健磐竜も川の水を自らに浴びせて何とか鎮火させることが出来た。
「・・・マジかよ」
ハオコゼが見たのは潰れていたはずの倶利伽雷であった。
手脚の骨が砕け、首が歪に傾いている、関節はありえない方向へ曲がっている。何より特徴的だったのは損失した右前脚の部分から雷のような光が地面に向かって伸びていた。
だがそれは確かに身体を支え、関節を持ち前脚として機能しているように見えた。
その醜い姿は生への執念があの死に損ないを動かしているのだろう。
「ふん、今度こそ俺が確実に仕留めてやる。後、血だらけで区別できなかったが、こいつも白黒種じゃねぇのか?」
「待ってカジキ。さっきまでとは明らかに様子がおかしいわ。雷光虫を爆発させるなんておかしいもの!」
「それもそうだが、あの脚は何だ?まさか、雷で脚を具現化させたとでも言うのか!?」
「どーでもいいぜ、そんなの。殺してじっくり調べればな!」
またしてもカジキは無鉄砲に、突っ込んでいった。
それを見たハオコゼがカジキに警告する。
「待て、まだ龍仙人が準備できてないぞ!」
顎が裂けるほど口を開け咆哮した後、それと同時に放電している雷光虫が飛んできた。
「離れろ!爆発するぞ!」
「やべっ!」
カジキはよける術なく、爆発をまともに受けてしまう。
「何でいっつも、何も考えずに突っ込んでいくのよ!」
「ハゼ!健磐竜が近づけるまで時間を稼ぐぞ!」
「分かったわ!」
「龍仙人!ちょっと目を瞑っててくれ!」
ハオコゼの閃光玉が炸裂する。
だが倶利伽雷の反応は薄い、そこでハゼは畳み掛けるように煙玉を投げて視界を奪う。
その隙にハゼは倒れているカジキを救出し、目視で倶利伽雷の位置を把握していたハオコゼが、残った左前脚を斬りにいく。
ハオコゼの双剣は少し特殊で片方が毒で、もう片方が麻痺の効果がある、異常効果に特化したものである。その毒と麻痺の効果で、相手の動きを鈍らせ、狩りを有利に進めることが出来る。
脚元を崩し、健磐竜に確実に仕留めてもらう。
近づいても倶利伽雷は気づいていない、攻撃のチャンスである。しかしその瞬間、雷の脚がその形状を変化させハオコゼを薙ぎ払うようにうねってきた。
ハオコゼの狙いは間違っていなかった。
だが雷の脚で振り払われてしまう。そのダメージは大きく、雷撃が直撃したようであった。
「くそっ!気付かれてたか!」
それでも、攻撃は続いた。今度は雷の脚に警戒しつつ後脚を狙った。
煙玉の効力はまだ続いている、そのため自分でも戦えるはず。だがその考えは甘かった。
突如、倶利伽雷の全身から放電が始まり、カジキと同じように感電してしまう。
倶利伽雷が動かなかったのは超帯電状態になるため電力を溜めていたからだった。
「うあぁぁぁぁ!」
カジキを離れた場所へ運んだハゼも攻撃を仕掛けるが、爆発する雷光虫に阻まれ全く近づけない。
そして雷光虫は次第にハゼを追い込み爆発した。
倶利伽雷の圧倒的な強さに、ハンター達は手も足も出なかった。
しかし、健磐竜は違う。
水没林の平和を守る使命がある。
龍仙人と共に今、倶利伽雷の前に立つ。
「お主らよく頑張った、あとは任せぇ。よくもここまで暴れおったな。後悔せよ!雷狼竜!」
お互いの咆哮が水没林に響き渡る。
健磐竜の猛突進を正面で迎え撃つ倶利伽雷。
両脚でがっちりと受け止め電撃を浴びせる。
だがその程度では健磐竜は怯みもしない。
その状態で倶利伽雷は、触れただけで感電する雷の脚で何度もかなぐった。
健磐竜の馬鹿力で倶利伽雷をなぎ倒すと、その尾を振って追撃する。
しかし倶利伽雷は歪な動きでそれをかわして、振り終わった尻尾からよじ登り、尻尾を辿って雷の脚で本体を叩く。
しかも今回は爆発雷光虫のおまけ付きだ。雷による斬撃と雷光虫の爆発が健磐竜に大きなダメージを与える。
龍仙人は秘泉水を傷口と炎上した箇所に素早く打ち込み対処する。
「これが瀕死の雷狼竜の力なのか!?」
激しい攻防が続いていく中、龍仙人は手元に秘泉水が尽きていた。
秘泉水が無くなっては回復できない、だが健磐竜はいざとなったら脚元の水を吸収して、体内で秘泉水を生成できる、そう思っていた。
しかし龍仙人が脚元の川の水を見た時、既に水はほとんど無くなっていた。
「あの穴に流れきったじゃと!?」
それに気を取られた瞬間、倶利伽雷の一撃が健磐竜の腹部を大きく引き裂く。
秘泉水を撃つのが遅れ、激しく吐血する。
いくら回復能力が高い秘泉水でも、連続して使用すれば徐々に内部に副作用としてダメージが蓄積されていき、大きな傷を負った時それが一気になだれ込んでくる。
健磐竜は生命の危機であった。悲痛な叫び声を上げ、痛みのあまり後ずさりする。
倶利伽雷はその隙を逃さない、馬乗りになって健磐竜を喰らおうとする。
激しく転倒した健磐竜に乗っている龍仙人も相当なダメージを負っていた。
「・・・ま・・・まずい」
このままやられてしまうのか。否、倶利伽雷に向けた刃があった。それはカジキの双剣であった。
爆発を喰らい、意識がほとんど無い中カジキは本能で倶利伽雷と戦おうとしていた。
だがカジキの技量では倶利伽雷に太刀打ちできない。
またしても爆発雷光虫が飛来してくる。カジキはまたしてもそれに突っ込んでしまった。
けれども今度は止まらない、爆発がカジキに何らかのエネルギーを与えたのか、はたまたカジキの身体がとても強靭なのか。理屈は分からないがカジキの猛攻が倶利伽雷を追い詰めていた。
「あやつの・・・あの能力・・・見覚えが・・・!?健磐竜!」
その隙にボロボロの健磐竜は大穴の元へ脚を引きずりながら向かっていた。それを見た龍仙人が何かを察したのか、必死に止めようとする。
「ダメじゃ!戻れ健磐竜!今はその時では無い!」
健磐竜の腹部から出血は止まらない、それでも健磐竜は進行をやめなかった。
倶利伽雷を相手にしているカジキも動きが鈍くなってきた。
「・・・そうか。それがお前の覚悟か。分かったワシもそれに全力で答えよう!後はお主らに託すぞ!」
大穴に着くと穴全体を埋めるように身体を丸め、そこに居座った。
「見よ!これが水没林の王、健磐竜の最後の技じゃ!」
龍仙人は懐から出したナイフを取り上げた。
「ありがとう、健磐竜。秘泉水の極!全ての生命よ蘇れ!」
龍仙人は取り出したナイフで思っいきり、そのコブを突き刺した。
すると健磐竜は大きく身体を震わせ、身体から大量の湯気が立ち昇る。それがやがて霧のように拡がり、一瞬で辺りを包み込んだ。
カジキも倶利伽雷も巻き込んで、どんどん膨張していく。
その霧はやがて水没林全域を覆い尽くすほど拡散した。
龍仙人が健磐竜に生えている白木蓮の窪みを根城にした理由は、このためにあった。
この窪みの底には健磐竜の弱点であり、切り札でもあるコブがある。そこを大きく斬られると健磐竜は体内の水分を全て蒸発させ、まるで枯れ木のように果ててしまう。
その蒸発した水分(秘泉水)は特別で周囲の生き物のあらゆる傷を完璧に癒す効果があったのだ。
そして霧が晴れると、そこには睨み合うカジキと倶利伽雷がいた。
両者が負っていた傷は全て完治されていたのだった。
アマツマも、ジンオウガもかっこええよな!だから敵にしたかったやんや!