モンスターハンター 3rd 白黒の渇望   作:カワード

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シイラにユクモ村が、白黒種の軍勢に襲われたと聞いたユウゼンは、急いでユクモ村に帰ったが、そこには破壊された門と無数の家屋の残骸が、広がっていた。焦りと苛立ちを覚えながら中に入ったが、すぐに数体の白黒種が襲いかかってきた。すぐに拘束され、村の中央に連れていかれる。そこには村長を含めた村人達が集まっていた。ユウゼンが来たのを確認した白黒種達のボス、リオレイアは自分たちが何故、ユクモ村を襲ったのか説明し始める。それは、やがて来る終焉に対して人類を白黒種ウイルスに感染させ、終焉の対抗勢力にする計画だった。それを聞いて唖然とする一同だったが、救世主現る。それは渓流に出ていたレジェンドハンター、ガザミであった。だが追ってきた赤衣の男に、後ろから不意をつかれ、やられてしまう。ユウゼンは自分の師匠であるアカグツの帰還を強く願った。だが赤衣の男の正体は、もう一人のレジェンドハンターでもある、アカグツだった。


21話「裏切りのア」

 白黒種に協力する謎の人物、赤衣の男。

 その正体は龍脈の恩寵を受けた超人であり、村の英雄でもあるアカグツであった。

 だがアカグツはガザミと共に渓流で、白黒種の根城にいた。

 ではどうしてユクモ村に帰ってきたのか?時間を遡る。

 

 アカグツに言われるがまま、渓流の大きな滝の裏に入った。

 そこに居たのは白黒種ではなく通常種のモンスターであった。その数は大型、小型、合わせて約十頭程。

「何だ!?こいつらは?」

「・・・」

「アカグツ?」

 だが一頭白黒種が混ざっていたようだった。

 モンスターの集団の奥から白黒種クルペッコが前に歩いてきた。

 だが戦意が無いのか、咆哮もしなければ攻撃も仕掛けない。

『あぁ、そういう事ですが。あなたが赤衣の男でしたか。これではユクモ村に未来はありませんね』

 クルペッコは、背負っていた白い布が着いた棒、まるで白旗のようなものを、くちばしに咥え旗を立てる。

 それは降伏を示唆してるようだった。そしてクルペッコの後ろにいるモンスターはとても脅えていた。

「何がどうなってる?」

「・・・分かった。ここでの戦闘は控えよう」

「アカグツ!何か知ってんだろ!」

「寂しいな。ガザミ。お前とは長い付き合いだった」

 アカグツはガザミに斬りかかった。

「これは、なんの真似だ!」

 かわしたつもりだったが。胸から滴る血を見て、傷を負ってることに気がついた。

「一撃でやるつもりだったんだが。少し喋りすぎたか」

「信じたくは無いが、今分かったぜ。お前だったんだな。赤衣の男!」

 それが分かったガザミは容赦なく攻撃を仕掛ける。

 大剣で斬りかかっ行くと同時に麻痺属性の双剣で小刻みに振り回し、異常状態を狙う。

 アカグツは大剣を太刀で防いだが、双剣の攻撃は防げなかった。

 アカグツの動きは鈍くなった、その瞬間ガザミはアカグツに、背負っていた鋼鉄の箱をかぶせる。

 そして鋼鉄の箱の覗き穴にランスを突き刺す。ガザミはそれに手応えを感じると、距離をとった。

 その後すぐに鋼鉄の箱から爆音して、覗き穴から煙が上がった。爆発が起こったのだ。

 勝負は一瞬でついた、だがガザミは焦っていた。

 他の白黒種は一体どこに?

「こんな別れなんてな・・・いや、悔いてる場合じゃね!奴らはどこだ!?」

 思考を巡らせる。

 何が目的で、何を狙っている?

 もし自分がここに誘き寄せられたとしたら。

 そういえば奴らは人間にも効果がある白黒種ウイルスの研究をしていた。狙いは人間?

 だとしたら人が多い村や街を実験台にすれば都合が。

「まさか!」

 ガザミはすぐ近くにあるユクモ村の事を思い浮かべた。

 急がねば、この推測が本当なら、早くしないと手遅れになる。

 そう思いながら、大した武器も持たず村へ走って向かった。

 クルペッコなどに構っている暇などない。

 

 その結果がこれだ。村は占領され、アカグツは仕留めれなかった。

 村の英雄であるはずの自分が、本当に不甲斐ない。

 ユウゼンと同じように伏した状態で、リオレイアの計画を聞く事しかできない。

「オ前達ニ勝チメハナイ。大人シク白黒種ニナレ」

「ユウゼン。今日までよく頑張ってきた。見違えるほど強くもなったな。だが人の力じゃどうにもできない事もある。終焉は今の人類にとっては、どうにもならない」

「そんな・・・」

「人類ノ白黒種代表。ソレガオ前ダ、ユウゼン」

「・・・」

 ユウゼンは気力を失っていた。告げられたもうひとつの事実、白黒種代表。

 それはいずれ白黒種になる、人間とモンスターの代表だった。

 わけが分からないユウゼンは、反応を示さなかった。

 そして、リオレイアは赤衣の男と計画した、アルバトリオンの対策について語り始める。

 

 アルバトリオンが消息を絶って、長い年月が流れた。

 生命は再生し、人類とモンスターも数多く存在する世界が戻ってきた。

 だが今から十年前、リオレイアが持っていたアルバトリオンの逆鱗に変化があった。

 それは禍々しい紫の光を放ち、不気味な模様が脈打ちを始めた。

 これをアルバトリオン復活の兆しと感じたリオレイアは、アカグツと邂逅。

 その対策の計画を始める。

 まず最初にリオレイアの持つ呪花の女王の力、モンスターを感染させ自由自在に操る、白の力。それと、龍脈の恩寵により、腕力、生命力、スピードが究極上昇する、黒の力。

 白と黒、二つの力は交わることにより一つの強大な力になった。

 それが白黒種ウイルスの誕生である。

 感染力と身体能力の強化を宿しており、これを世界中の生命に感染させ、アルバトリオンとの戦いに生き残る対抗力を身につけるのが狙いである。

 だが完成した白黒種ウイルスの効果が現れたのはモンスターのみであった。人間には効果が無かった。

 ここのままでは人間はアルバトリオンとの戦いで生き残れず、さらに膨大な数の白黒種を指揮するのは、リオレイアだけでは不可能。人間の指揮官が必要なのである。

 そこで、リオレイアは白黒種を人間に適応させるために、研究を開始し、アカグツは白黒種の指揮官に相応しい人材を育てるため、ユウゼンとカジキを弟子にした。

 ユウゼンは、生まれ育った村を古龍に襲われて壊滅したとき、生き残っており。それでもなお古龍に立ち向かおうとする意思があった。

 子供ながらにして強い志を持っていた事、それがアカグツに選ばれた理由であった。

 一方のカジキはリオレイアが見つけた。凶暴なモンスターに挑もうとする勇気ある子供だった。

 この二人に白黒種ウイルスを投与して、修行させたが、効果は無かった。

 だがある日、リオレイアが古龍の血を白黒種ウイルスと同時に摂取することで人間にも効果が及ぼすことを発見。

 アカグツは二人を古龍と戦わせるために、ユウゼンとカジキを、古龍に対する戦闘意欲を高めるよう先導したのだった。

 狙い通り、打倒古龍を掲げハンターとなり、古龍ジエン・モーランと戦わせることに成功した。

 この時点でユウゼンもカジキも、白黒種モンスターの攻撃を受けており、白黒種ウイルスに感染していた。

 

 師匠として育てたのも、ジエン・モーランとの戦いも、全てはアカグツとリオレイアの計画だった。

 その目的のためにユウゼンとカジキは利用されていたのだった。

 ユウゼンの中のアカグツに対する憧れも、辛かった修行の日々も、時折見せてくれた優しさも、全部嘘だった。自分はただの道具にすぎない。

 白黒種と対立しているつもりが、いつの間にか何よりも協力していたのだ。

 この事実がユウゼンの心を、どん底に沈める。

「待ってください!ユウゼンさんは私たちと同じく普通の人間です!白黒種の指揮官だかなんだか知りませんが、そんな物にはなりません!」

 村長が命懸けの反論を唱える。

「同ジ?イヤソンナ事ハ無イ。彼ハ既ニ白黒種トシテノ才能ヲ開花サセテル。ダカラ今マデノ戦イニ勝利シテキタノダ」

「・・・俺が・・・なれば」

「?」

「俺がそ、その指揮官になれば・・・みんなは・・・た、助かるんだな?」

 絞るような声で震えながら喋る。それしか村のみんなを救う方法は無い。

 師匠は別に俺たちを騙して育てたわけじゃない。

 世界を救うためには、こうするしか無かったんだ。

「それがお前の答えか?」

「・・・ぅ」

「違うだろぉ!」

「ガザミさん!」

 叫んだのは倒れていたはずの、ガザミであった。必死の形相で

「ゲホォっ!・・・酷な話だが、こいつらは、お前をただの道具だとしか思ってねぇ!そんなヤツらの言いなりでいいのかぁ!」

「・・・俺は・・・俺は・・・!」

「ガザミ・・・案外オ前モ、シブトイナ」

「言わせときゃいい。簡単に頷かれも意味が無いからな」

 古龍の血が入った白黒種ウイルス、その真価が発揮されるのは、当人が追い込まれた時である。

 それは精神的でも、肉体的でも同じである。

 今ユウゼンはその両方で追い込まれていた。

 その瞳にもはや希望は無い。

 アカグツがガザミにトドメを刺そうとしたその時、急速に近づいてくる人間がいた。

「突撃!」

 その掛け声とともに、四方八方から大勢のハンターとギルドナイトが飛び出してきた。

 中央に向かうのミギマギとシロギス、そしてカジキであった。

「村を取り戻せ!」

「カジキ!命令は覚えたわね!」

「分かってるって!おい、ユウゼン!みっともねーぞ!」

「カジキ?」

「アカグツ無シデ勝テルトデモ?」

「ミギマギの指示か・・・っ!?」

 アカグツはミギマギの奇襲を見切った。アカグツの太刀とミギマギの片手剣がガチン!と激しくぶつかり合う。

「ソレヲ、我ガ大人シク見テルトデモ?」

「遅いぜ!ミギマギぃ!」

 ガザミは根性で立ち上がった。リオレイアの前に立ちはだかる。

「マダ立ツノカ。強者ヨ」

「ガザミ、無理をするな」

「ふん、お前らだけで、どうにかできるのか!」

 ガザミとミギマギは背中合わせで武器を構えた。

『ようやく暴れられるね』

『焦れったかったぜ』

 周りにいる他の白黒種達も動き出す。

「曲射撃ち五月雨!」

 それを前に出さぬまいと、シロギスの放つ矢の雨がせき止める。

 矢が降り注ぐ位置を理解していて、それをかわしながら前進してきたのはアマエビだった。

「シロギス・・・お早いお帰りじゃあないか」

「いいえ、遅すぎたわ。でも村は返してもらう!」

 シロギスとアマエビが対峙する。他のハンターたちも白黒種を相手取る、そして今、村の存亡を掛けた戦いが始まった。

 だが拮抗しているように見える両勢力だか、白黒種側が圧倒的に有利だった。

「村を取り戻す?正気かなのか?ミギマギ」

「・・・人を裏切ったお前に、言われたくは無い」

 ミギマギの剣術は対人戦に特化している、それでもアカグツの剣戟に押されていた。

 一撃の重みが違うのだ。

 そこをガザミがカバーする事で何とか戦闘が成り立っていた。

 だがガザミは手負いで、リオレイアの相手もしている。長く戦線を維持することは困難である。

「俺たちを相手に村を取り戻す?本気か、シロギス」

 アマエビは、探りを入れるようにシロギスを挑発した。

「そうよ」

「ふっふっふっ、そりゃご苦労なことで」

 唯一動きが無かったのはカジキであった。まるで何かを待っているように。

『試シテミルカ』

 だがリオレイアがブレスの構えをとった瞬間、突然ユウゼンの方にダッシュして行った。

 ブレスは倒れ伏しているユウゼンの方へ向いていた。

 放射状に放たれた炎のブレスはカジキとユウゼンを飲み込むほど、巨大であった。

 炎が引くと、そこに二人の姿は無かった。

 だがその先でユウゼンを抱えて走るカジキの姿があった。

 火属性を刃に受けたカジキは自身の特性で身体能力が上昇していたのだ。

「ヤハリナ」

「カジキ・・・」

「シロギス!取ったぞ!」

「そのまま行って!」

 シロギスはカジキを援護しながら、進む道を作るように矢を放つ。同様にアカグツと戦闘していたミギマギもカジキの援護に入る。

 ガザミはぶっ飛ばれて建物共に崩れて下敷きなってしまった。

 それでもアカグツへの警戒は怠らない。

 白黒種と戦っていた他のハンターやギルドナイトもほとんどが、戦闘不能状態であった。カジキは走り続ける、その先には集会所があった。

 アマエビはそれを理解し、何かを察した。

「そうか、狙いは最初からユウゼンか」

 実は集会所には、村の秘密の抜け穴があり、外に脱出できるようになっている。

 この事はギルドナイトしか知らない。だから元ギルドナイトのアマエビに気づかれれてしまったのだ。

 シロギス達はユウゼンの奪取であることが最初から狙いだった。

「でもそう簡単に行くかな?」

 集会所の前に着いたカジキの足は止まった。道を遮るようにウラガンキンが転がってきたのだ。

 だがカジキには攻撃の手段がない、そのためシロギスが前に出る。

「どけっ!」

 シロギスが矢を放つが頑丈な甲殻に弾かれた。

「爆破の矢が効かない!?」

「シロギス!急げ!」

 カジキの後ろで防御しているミギマギが吠える。彼女も何発も飛来してくるナルガクルガの棘を必死に防いでいた。

 ウラガンキンはシロギス達に攻撃をせず背を向けた。

「何を・・・うわっ!」

 一瞬気を取られたミギマギは、足元の地中から勢いよく突き上げてくるディアブロスの攻撃をまともに食らってしまった。

「ミギマギさん!」

 ウラガンキンが集会所の方を向いたと思ったら、その大槌のような顎を叩きつけ、集会所を壊し始めた。

「俺だって知ってんだぜ。ここに抜け穴がある事はな!黑異天!」

 アマエビのハンマーによる空中から降す最大火力の一撃が崩壊した集会所の建物の中から剥き出しなった、抜け穴を塞ぐ。

「退路は、あれだけか?」

「くっ・・・」

「シロギス!俺が道を切り開く!ユウゼンを頼む!」

「ダメ!あなたも逃げなさい!そうしないと、私はミギマギさんにも、ギルドナイトの人達にも、他のハンター達にも合わせる顔がない!」

「じゃあ、どうしろってんだよ!」

 作戦は失敗に終わった。村からの抜け穴は塞がれ。周りには白黒種の大群が集まってきた。もはやこれまでか。

「諦めるな!」

 その声は空から聞こえた。

 考古学者モクジの声である。

 そして急降下してくるのは白黒種クルペッコであった。なんとその背に乗っているのがモクジである。

「モクジさん!?それ白黒種モンスターなの!?」

「説明は後じゃ!ユウゼンとカジキを乗せい!」

「クルペッコ?なぜ奴らの味方をする?」

『血迷ったかクルペッコ!』

『これは、切り抜けられるか!?』

「ソウカ、オ前ハソチラ側ニ着クノダナ」

 だが、どれだけ速く滑空しても下にいる白黒種達の格好の的である。ブレスや棘、突進などの攻撃が容赦なく押し寄せる。それらを、かわし、防ぎながら、止まること無くカジキの元へ辿り着いた。

「捕まれ!」

「ええい!どうとでもなれ!」

 藁にもすがる思いで、白黒種であるクルペッコの足に掴まったカジキ。

「よし!離脱する!」

『させるかよ!』

 だが近くのディアブロスがそれを黙って見過ごすわけが無い。止めようと、突進して妨害してくる。

「カジキ!手を離さないで!」

 シロギスはカジキを守ろうと、矢を放ち、少しでも時間を稼ごうとする。だがまたしてもウラガンキンが前に出てきて、矢を弾かれてしまった。

「またお前か!」

 ディアブロスの突進は止まらない、このまま行けばクルペッコに追いつきそうだ。

 シロギスは身を呈してでもカジキを守るため、クルペッコ後ろでディアブロスの突進を受けようとした、両手を広げ構える。

「やめろシロギス!」

「止まらないで!行って!」

「はぁぁぁぁぁ!」

 そんなシロギスを横からどかして、割って入ってきたのは、ミギマギであった。その片手剣の小さな盾でディアブロスの突進を受けようとした。

 ディアブロスの角が盾を貫き、ミギマギの脇腹を刺した。

 だが突進は止まった。それは当たる直前に、隣に来たガザミが大剣で一緒に受けたからである。

 クルペッコは白黒種達の追撃をかわし、何とか飛び立つことができた。

「ミギマギさん!ガザミさん!」

「ぐふっ!」

「がはっ!」

 両者ともその場に崩れ落ちる。既に体力の限界であった。

 だがそれでもガザミはシロギスに手を伸ばす。

「ガザミさん!もう動かないで!このまま死んじゃう!」

「おい、モクジ!クルペッコを戻せ!ガザミとミギマギがやべぇ!」

「ダメじゃカジキ!このまま逃げ切る!」

「はぁ・・・はぁ・・・まだだ・・・おい!クルペッコ!」

『おい!?アイツは、まだ何かやる気なのか!?』

「何!?」

 その瞬間に振り返るクルペッコに対し、ガザミはシロギスの胸ぐらを掴んだ。

「うぉぉぉぉぉ!忘れ物だぁぁぁぁぁ!」

「えぇぇぇぇぇぇえええええ!?」

 ガザミはそのままクルペッコに向かってシロギスをぶん投げた。

 シロギスは曲線上に飛んでいき、クルペッコは見事にくちばしでキャッチした。

「待って!ガザミさん!ミギマギさん!私は!」

「それ以上何も言うな!お前が導いてやれ、若きハンターをよぉ!」

『人間なのに、なんて怪力だ!分かりました!既に定員オーバーですが、無事脱出してみせましょう!』

「頼むクルペッコ!」

「はぁ・・・これでいいだろ?ミギマギ・・・」

「あぁ・・・十分すぎる」

 ミギマギもガザミは力尽きてその場に倒れた。

「逃ゲ延ビタカ。ダガ帰ル場所ハココニシカナイ。イイダロウ!抗ッテミロ!ソレガ、オ前達ノ答エナノダロウ!」

「逃がすか!」

「必要ない。彼らはいずれここに帰ってくる」

 村から飛び立つクルペッコに、これ以上白黒種からの攻撃は来なかった。

 何とか脱出に成功したのだった。

 

 飛び去ったクルペッコが向かったのは、砂原のキャンプ地であった。

「どうやら逃げきれたようじゃの」

「モクジさん、シロギスさん、カジキ・・・どうして俺なんかを?」

 ユウゼンが質問した瞬間、カジキは殴ってきた。そのまま胸ぐらを掴んで暴言を続けた。

「黙れ!なんでお前はあいつらの言いなりなろうとした!俺達がどんな思いで、お前を助けたと思う!」

「カジキ、ユウゼンを責めないで」

「いいや!こいつは村を裏切ろうとした反逆者だろ!」

「口を慎めカジキ!お前もあの状況を見とったじゃろう!師匠であり恩人でもあったアカグツが、村を裏切ったんじゃぞ!ユウゼンを助けたのは、奴らの計画の時間稼ぎのためじゃ。ユウゼンがいなければ村人が白黒種にされる事はない」

 カジキはその事を理解していた。だがユウゼンとは違った結論を出していた。

「・・・」

「俺は師匠が裏切ったなんて思ってねぇ!」

「いや!師匠は俺達を裏切った!お前も、聞いたはずだ!俺達なんてあいつらにとっては、道具に過ぎない!そのために鍛えたんだ!ハンターとしてじゃなく、道具として!」

「違う!師匠はな、試しているんだよ!俺達が本当のハンターに相応しいかどうかをな!だから証明しなきゃならねぇ。これは試練なんだ!」

「カジキ・・・」

「お前のそういう所、本当に嫌いだ。だから俺は全力で逆らうつもりだぜ、こんな試練乗り越えてやんよ」

「全てカジキの言う通りだとは思わないけど、それでもこれがアカグツさんからの試練だとしたら、ユウゼン、あなたが決断する時よ。私は最後まで抵抗してみる。ミギマギさんや、ガザミさん、村のみんなのためにも」

「・・・」

「ユウゼン。このままでは村人は白黒種になってしまうぞ。厳しいことを言うかもしれんが、それで良いのか?」

「俺は・・・それでいい」

「ユウゼン!?」

「そうしないと、生き残れないんだろ?だったら従うしか道は無い。俺には、もう戦意が無い。師匠には誰も勝てないんだ。すまない」

「お前それでも・・・!」

「いいんじゃな!それがお主の答えなんじゃな?」

「はい」

 ユウゼンは、とぼとぼとその場から去ってしまった。

 シロギス達が声をかけても無視し、しまいには耳を塞いでいた。

「モクジィ!これで良かったよかよ!」

「時間が必要じゃ。まぁほとんど無いんじゃがの。今はユウゼンを、そっとしておくのじゃ」

「そう言えば、モクジさん。あのクルペッコは白黒種でしょ?どうして私達を助けてくれたの?」

「それはな、このクルペッコは白夜刀や健磐竜と同じで、元砂原の頂点に君臨するモンスターであり、今回白黒種にあえて感染して奴らの動向を探っていたのじゃ。ワシらの指示でな」

「このモンスターが白黒種のスパイなの!?」

「いかにも。そしてワシら竜人族は各フィールドにそれぞれが強力なモンスターと共に点在しておったろう?」

「確かに、言われてみればそうですね」

「そのわけは色々あるが、主にアルバトリオンによる終焉を阻止することが目的じゃ。そのために古龍達の動向を見守り、傷を癒すための良薬の開発などをやっていたんじゃ」

「ギルドにその事は伝えてあったんですか?」

「ギルドマスターも竜人族じゃったろ?」

「はい、そうですけど・・・っ!?マスターもこの事を知っていたんですか!?」

「そうじゃ、かつてマスターもワシらと同じように担当のモンスターがおったんじゃ」

 

渓流、ギルドマスター(ダツ)

担当、ジンオウガ(倶利伽雷)

目的、アマツマガツチの見張り

 

砂原、考古学者モクジ

担当、クルペッコ

目的、ジエン・モーランの見張り

 

水没林、竜仙人

担当、ドボルベルク(健磐竜)

目的、万能な治療薬の作成

 

凍土、アイルー村の長老

担当ベリオロス(白夜刀)

目的、ウカムルバスの見張り

 

火山、古代竜人

担当、アグナコトル(赤紅)

目的、アカムルバスの見張り

 

「そしてワシらの共通の目的は龍脈の穴の発見じゃ。龍脈の穴は、古龍のエネルギーの元であり、アルバトリオンが消息をたった場所でもある。この場所にアルバトリオンに関する秘密が隠されておるやもしれん。現在、この龍脈の穴は砂原にあるとの報告を受けておる。その場所はまだ特定できてはおらんがな」

「・・・すみません。情報量が多すぎて頭が混乱してきました」

「全てを理解しなくて良い。今は白黒種のヤツらをどうするべきか考えねば」

「もう一度村に行く」

「ダメよカジキ、まだ何も作戦を立ててない。言ったでしょ?この戦力差じゃ勝てないの」

「じゃあどうしろと!?」

「今、ニャン二郎が各地の竜人族達にこの事態を伝えて回っておる。待つしかなかろう」

「ユウゼンを追いましょう。やっぱりあのまま、ほおってはおけない」

「じゃあ、俺はぎぎを探す。あいつらは一緒に行動してたはずだ」

 

 砂原を転がるように落ちたのはユウゼンだった。止まった所は流砂の底。もう全てがどうでも良かった。村を救えず、仲間も守れず、挙句の果ては白黒種に従ってしまった。

 今の自分に何ができるのだろうか?

 行くあては無い。

 いっそこのまま野垂れ死んだ方がいいのではないか?

 憂鬱な思想は止まらない。そこに足音が聞こえてきた。

 それは恐らく獲物を見つけたモンスターであろう、段々と間隔が早くなった。

 流砂に落ちた音を察知したのだろう。

 自分がハンターであれば武器を構え、戦闘態勢に入っただろうが。

 何もしない。

 ハァハァと吐息の感触が背中に当った。自分を喰らおうとする恐ろしいモンスターは一体どんな形を、顔を、しているのだろうか?

 いや、こんな小さな地底洞窟の中に住んでいるんだ、きっと大した事ないやつだな。振り返ってその正体を見る。

「・・・ぎぎ?」

「ぐおぁぁぁぁぁぁぁ!」

 咆哮にも捉えられる怒声が響いた。

 そこに居たのは、変わり果てた姿になった、ぎぎであった。




この話は思った以上に長くて設定も多いですが、頑張って下さい!
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