「白黒種!」
その時空から降りてきたのは、白黒種のリオレイアだった。
リオレウスの雌固体で、陸の女王と呼ばれている。尻尾の先にある毒棘や炎のブレスで攻撃する。
本来は緑色である身体は、すっかり白色に変色していた。
地上に降り立ったリオレイアはとても長い咆哮をあげた。
「グォォォォォォァァァァァァァ!!!」
「くそ!頭が割れそうだ!」
必死で耳を抑える三人。
咆哮が終わると同時に三方向にブレスを吐いた。その内の一発がリオレウスに命中した。
「不味い!感染する!」
『ああああああああぁぁぁァァァァァ・・・・・・・・・・・!』
リオレウスは炎に包まれて苦しみながら激しく炎上した。
しかし炎の勢いはすぐに治まった。
ぐったりと倒れ込むリオレウス。その赤色の身体は徐々に黒く変色していった。
「遅かったか!」
「来ますよ!」
「グオオオオオオオオオオオオオオアアアァァァァァァァァァ!」
立ち上がったリオレウスは禍々しい咆哮を上げた。
『適合シタカ、奴ハ望ム力ヲ手二入レタ』
風を斬る音と共に滑空しながら襲いかかって来た。全員が同時に飛ばされる。
三人が立ち上がる前にブレスを放つ体制に入った。
「速い!」
ぎぎとユウゼンの前に出たシイラが大剣の腹でブレス受け止め二人を守った。地面にシイラ足がめり込む、それでも威力は収まらずに押されていく。
シイラは渾身の力で大剣で炎を薙ぎ払った。その衝撃で片膝を着くシイラの後ろから、ユウゼンが前に出る。
「みんな、目を瞑れ!」
ユウゼンは閃光玉を投げ、滞空するリオレウスを落とそうとした。
太刀を振りかぶり、リオレウスに斬り掛かる。
ユウゼンは閃光玉の光が収まると同時に斬撃を仕掛ける。だがその一撃はリオレウスの凶悪な口に阻まれた。
太刀に噛みつき、そのまま首を振ってユウゼンを岩壁に叩きつける。
そのまま岩壁に激突し倒れ込んだ。
「ユウゼンさん!」
ぎぎが発砲するも全く効かず。突進してきたリオレウスに、ぎぎとシイラもユウゼンと同じ様に岩壁に吹き飛ばされた。
白黒種の異様な雰囲気を漂わせ、ゆっくりと近づくリオレウス。
倒れ込んだ三人の中で一人シイラは力を振り絞り、大剣を杖にして何とか立ち上がる。
「シイラさん・・・ダメです!僕達には・・・敵わない相手だ!」
そして渾身の力を込めて大きく振りかぶり、攻撃の構えをした。
「俺の・・・事はいいから・・・二人だけでも逃げでくれ・・・こいつは・・・こいつらは、俺の仲間を殺しやがったんだ!だから、アイツらのためにも、俺はこの一撃に全てを賭ける!来やがれ!化け物!」
ぎぎの忠告を無視して闘志を燃やすシイラ。
その闘志に対して応えるように、リオレウスは空高く舞い上がり凄い勢いで急降下しながら襲いかかって来た。
「シイラ!」
みるみる加速してくるリオレウスを自身の直前まで引き寄せ、振り下ろす。
ザンっと言う衝突音と共に両者は背中合わせに立っていた。
二人は衝突の瞬間を瞬きせずに見ていたが、何が起きたのか理解できなかった。
だが結果は一目瞭然だった。二人には、リオレウスの背後で吐血しながら大剣を手放し、無造作に倒れ込むシイラの姿が見えた。
「そんな・・・シイラ!」
『弱すぎる?・・・いや・・・俺の力が強すぎるのだ』
「シイラさん!・・・ユウゼンさん、僕が時間を稼・・・」
「無理だ!一人で太刀打ちできる相手じゃないだろ!」
リオレウスが無慈悲に、シイラにトドメを刺そうしたその時、聞き慣れない銃声が轟く。
それはぎぎの発砲音ではなかった。
リオレウスは発砲音の方へ顔を向ける。
『何だ!』
『ホォ、傭兵部隊カ面白イ』
「あんたらは、ギルドの傭兵で編成された部隊か!」
二十人規模で小銃を装備した、傭兵達。彼らは対白黒種用に編成された部隊であった。
「すまない!こちらの手違いで白黒種の元へ、下位ハンターである君たちを送り込んでしまったようだ。しかし悠長に謝罪を述べる時間は無い、今は感染体を討伐すること優先とさせてもらう。さぁ!今のうちに彼を救出せよ!」
隊の隊長らしい人物が命令を下すと、小隊は発砲しながら前進して行く。
飛んでくる弾が顔に被弾しないように翼で顔を覆いながら後ずさりするリオレウス。
小隊はその隙に手際よくシイラを救出した。
三人の前に出ると隊列を組み、一斉に銃を構える。
この隊列を組む間、二頭の火竜達は不自然にじっとしていて様子を伺っていた。
『あの弾は結構痛てぇな』
『ダガ無駄ダ』
「うてぇ〜!!」
ダダダダダダダダ!小隊は隊長の命令で一斉に引き金を引いた。
鳴り響く轟音と共に、二頭の火竜は小銃から発生した煙で見えなくなった。
「対白黒種専用に開発した強化貫通弾だ!あのウラガンキンの甲殻も蜂の巣にできる!だが油断するな!次の玉を装填しろ!」
「助かった。ありがとうございます!」
「礼には及ばんさ、それに非礼を詫びるのはこちらの方だ」
「ゲホッ・・・ゴホォ・・・だ・・・駄目だ・・・」
小隊に救出されたシイラが、火傷した右脇腹を抑えながら苦しそうに全員に警告する。
「シイラ?おい、大丈夫か!?」
「逃げ・・・ろ・・・はやく!」
「おいあれ!」
小隊の一人が、煙の中から光る目が二つあるのを見つけた。
その次の瞬間、炎のブレスが小隊に襲いかかる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
小隊は根こそぎ吹き飛ばされた。
「このっ!化け物め!」
『雑魚がよぉ!』
小隊は全員、何度も発砲したがリオレウスの猛攻は止まらなかった。
次々と負傷していく小隊を目にして、三人は言葉を失っていた。
「まさか・・・これ程とは・・・」
「隊長!避けてください!」
隊員の一人が必死に叫ぶが、絶望した隊長にその声は届かなかった。
隊長に巨大なブレスが迫る。
だがそれは隊長の目前で弾け飛び、蒸発した。強力な斬撃がブレスを切り裂いたのだ。
「情けないな、ハンターだけに任せれないと大口を叩いたってのに。このザマとはな。俺の仕事など残ってないと思ったんだがな」
「貴方は!」
「師匠!」
「ギルドの最終兵器と呼ばれた伝説のハンター、アカグツさん!どうしてここに!」
颯爽と現れたのは伝説の古龍アマツマガツチの装備を身にまとう、ユクモ村で一番強いハンターであり、ユウゼンの師匠アカグツであった。
「全く、モクジが知ったらガッカリだろうな。さて、我が弟子よこの状況をどう見る?お前がすべき事は何だ?」
「全然・・・大したことないですよ!」
「そうか、では任せるとしよう。全員武器を取れ!気づけ!今ここにいる全員が力を合わせなければこのまま全滅するぞ!」
場にいる全員を奮い立たせたアカグツは、生命の粉塵を周囲に巻き散らし傷を癒した。
「傷が!治っていく!」
「復活!」
「片方は俺が引き受けよう、お前ら!死ぬ気で生きろよ」
そういったアカグツは、天嵐ノ刀【雨過天晴】を握り、リオレイアの方に刃を向ける。
そして敵の懐に一瞬にして駆け寄るとその胸に強烈な一撃を与える。
「グオオオォォォ!」
「天叢雲剣!」
『コノ威力ハ!』
そして、自分何倍もの巨体を持つリオレイアを空中に吹き飛ばした。
「すぐ戻る!」
遥か彼方へ飛んでいくリオレイアをアカグツは追って行った。
「これが、最強格のハンターの実力!」
「大型モンスター、それもあの凶暴な白黒種を太刀一本で吹き飛ばすとは」
「このままじゃ、師匠に笑われちまう!俺達も反撃に出るぞ!」
「しかし、どうする?」
「俺が奴に傷つけた所分かるか?」
「シイラ?そりゃ、どこだ?」
「頭さ、あの時奴の頭に叩き込んだのさ」
シイラはリオレウスと一体一で衝突した時、微かだが頭に傷を入れていた。
「すれ違った時か、だが奴は動きが速すぎる。頭部だけを狙うのは至難の業だ」
「分かってる、だから俺とユウゼンで奴の動きを封じる。その隙にぎぎと小隊が頭部に、一斉射撃をやってくれ」
「三人でも歯形立たなかった敵に二人で足止めなんて無茶すぎます!」
「他に手はない。ユウゼン、俺たちが要だ覚悟はできたか?」
「分かってるぜ、行くぞ!シイラ!」
「おう!」
「二人とも待って!」
ぎぎの制止を振り切り二人はレウスに挑んだ。
「ぎぎ、我々にもできることがある!彼らの援護だ。ここにいる全員で戦おう!全員!麻痺弾と回復弾を装填しろ!」
「了解!!」
隊長の一声で全員が戦闘態勢に入る。
最前線で戦う二人は、明らかに格上の相手であるリオレウスの攻撃により体力の消耗も激しく不利な状況であったが、ガンナー部隊の援護により戦況を覆していた。
時折撃ち込まれる麻痺弾は、リオレウスの動きを少しづつ鈍らせ、回復弾は二人の体力を常に回復し続けた。
動きを封じるために二人が狙っていたのは、ダメージによる転倒や武器による直接的な押さえ込みである。
そしてついにユウゼンの気刃斬りによりレウスは転倒した。
その隙逃さず二人は各々武器で頭を押さえ込む。
「今だ!」
「撃て!」
怒号と共に全ての強化貫通弾がレウスの頭に直撃し、またしても小銃の煙で辺りは包まれた。
「今度こそ。仕留めたか?」
しかし煙が晴れてもそこにリオレウスの姿は無かった。近くにいた二人もリオレウスを見失っていた。
「何処だ?」
「グオオオオオオオオオオオオオオ!!」
怒りに満ちた咆哮が遥か天空より鳴り響く。
「上か!」
そこからリオレウスは炎のブレスを地上に向けて大量放射してきた。
辺りは一瞬にして炎の海に包まれた。それでも、なおリオレウスの猛攻は勢いを増してきた。
「やべぇ!ぎぎ避けろ!」
「しまっ…!」
『俺が一番最強なんだぁぁぁ!』
燃え盛る炎の中から突然強襲して来た鋭い鉤爪がぎぎに襲いかかった。
間一髪で攻撃を防いだは、リオレイアを追っていったはずのアカグツであった。
「師匠!」
「お前ら!よく生き残ったな。後は俺がやる」
『貴様一人で何ができる!』
「お前を狩ること」
『ふざけやがって!』
間髪入れずにアカグツに襲いかかる炎の猛襲。アカグツはそれを全て太刀で捌く、太刀で切られた炎は一瞬にして水蒸気へと変化した。
それは存在自体が天災と呼ばれ、大嵐を自在に操る古龍アマツマガツチの素材を用いて造られた最強の装備と、それを完璧に扱うアカグツが成す神業であった。
そして炎を捌きながらゆっくりとリオレウスに歩み寄る。
焦れったくなったリオレウスは、自らの尻尾で奇襲を仕掛ける。
アカグツは体勢を低くして迫り来る尻尾に目掛けて、太刀を切り上げる。
ブチッと尻尾が切断され宙を舞う。
ギルド小隊の一斉射撃やユウゼンたちの猛攻にもビクともしなかったリオレウスの強固な堅殼だったが、アカグツの放った一閃は容易くリオレウスを追い詰めていった。
怯んだリオレウスに更なる追い討ちをかける。その場にいる誰もが驚愕していた。
「これが、たった一人のハンターの力なのか…」
「通常ならモンスターの攻撃はハンターにとって致命傷に繋がる。だが師匠の場合はそれが逆になる。モンスターを凌駕する力、神業を使う真のハンター!」
「神業…初めて見たぜ…」
「ほぉ、神業ですか。大したものですね」
「もうアイツ一人でいいんじゃないかな?」
防戦一方だったリオレウスに、反撃の機会が訪れることは無かった。
勝敗は火を見るより明らかだった。
圧倒的な力の前に為す術なくリオレウスは倒れ込む。
その傷だらけの体が天災の恐ろしさを物語っていた。
展開が早い気がするけど、このまま行きます