モンスターハンター 3rd 白黒の渇望   作:カワード

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ジエン・モーランのクエストに出発したユウゼン一行は、山と見間違える程大きな巨体に苦戦しながらもダメージを与えていった。しかし砂上船の正面に現れたジエン・モーランが猛突進してくる。だが船はそれをよけずに撃龍槍で迎え撃つ。


7話「震える大地」

 大砂漠でユウゼン達とジエン・モーランの激闘が続く中、遠目からそれを視察するモンスターがいた。

 前回、打倒ジエン・モーランを掲げた白黒種である。

 その光景に白ディアブロスは苛立ちを覚えた。

『いつまで眺めてりゃいいんだ。前もそうだった、リオレウスが殺られる光景をただ眺めてるだけ。全くもって無駄な時間だ』

 ディアブロスはリオレウスと同様の飛竜種であり、前脚の代わりに翼を持っている。

 だが空を飛ぶことはしない。ジエン・モーランのように砂中を潜ることが得意だった。

 その移動能力はモンスター界でもトップクラスを誇る。

 頭に生えてる二本の角は突く(突進したり、地中から飛び出したりする)ことに特化したディアブロスの強力な武器であった。

 白黒種になった影響で、身体の色は砂に似た茶色から色素が抜けきったような白色に変化していた。

 そこにやって来たのはもう一種の白黒種、クルペッコだった。

 彩鳥の名を持ち全長は三メートルを超える巨大な鳥類で、緑色の体に極彩色の羽毛が一部生えており、見た目は非常に鮮やかである(白黒種のためこの個体の全身は白色)。

 最大の特徴は胸の発声器官である。発声器官をフグのように膨らませて特殊な音響を発生させることができる(モンスターの声や、体力を回復する不思議な音色など)。

 また、翼には火打ち石に似た爪を持っており、実際に発火することも可能である。

『そろそろお待ちかねの出番ですよ。準備は整いました』

『待ちくたびれぜ。それじゃ・・・』

 ディアブロスが両翼の爪で砂を掻き分け潜り出そうとすると、上空からリオレイアが急降下して告げる。

『待テ、オ前ニハ別ノ役割ガアル』

『何だよ、別にいいだろ?早い者勝ちだろ?こう言うのはな!』

『奴ラヲ足止メシナイト、恐ラク我々ガ介入シタ途端、逃走ヲ謀ルゾ。ソレデモイイノカ?』

『それは面白くねぇな。分かったぜ引き受けよう』

『先陣ハオ前ガヤレ、クルペッコ』

『緊張しますね。でもやるだけやってみましょう』

『我モコノ姿ノママデハ、マズイナ』

『何です?』

 すると全身白色だった、リオレイアは黒色に変色し始める。やがて全身は真っ黒に染まった。

『そんな事もできるんですね』

『我ハ、奴ラニトッテ殺サレタ存在ダカラナ。今生キテイル事ガバレレバ面倒ナ事ニナル』

『どうでもいいぜ。はやく行こう!』

 二頭は遠く離れたジエン・モーランへ飛び立つ、ディアブロスは地中から砂上船に向かって進む。

 

 船は猛進するジエン・モーランに向かって突っ込んで行く。

 かなり離れていたが、あっという間に距離が縮まる。

 シロギスは撃龍槍のタイミングを見極めるため、極限まで集中力を高める。

 ユウゼン達は撃龍槍を射出するために配置につき、シロギスからの合図を待つ。

 舵を握り絞める力は自然と強くなっていた。

 そして二者衝突の時は訪れる。

「一・・・二・・三・撃て!」

「喰らいやがれ!」

 シロギスの合図で射出した撃龍槍はズゴォォォン!と巨体の側面を掠める。

 槍の射出と共に船は巨体の側面に曲がり込む。そのため完全に直撃はしなかった。

 回転し続ける巨大な槍が巨体の甲殻をガリガリと削る。

 ひび割れた甲殻からドバドバと鮮血が溢れてきた。

 ジエン・モーランは悲鳴のような甲高い声を上げ、砂中へ潜った。

 シロギスの操舵で、船はぶつかる直前で巨体の横に擦れる形に進路をとったため大破は免れたが、それでも巨体と接触した船は大きなダメージを負った。

「やったか!?」

「いやまだだ。確かに傷を負ったが、傷口は浅いってか。あれキレてるぞ確実に」

「充分よ・・・何とかなったわ。でも、もう持たないわね」

「傷口が塞がる前に攻めきるぞ!大砲を・・・」

「待ってください!あれは!?」

「どうしたぎぎ?っ!何だあいつ!?」

 ぎぎが目にしたのは、砂上に浮上した巨体の背に乗った大型の鳥、クルペッコであった。両翼を広げ何かをしようとしている。

「あれはクルペッコ!どういうことだ?何故古龍の背に乗ってる?それにあの体、妙に白いな」

「シイラ、あれは白黒種よ!変異体だから注意した方がいい。古龍の背中に跨るなんて、何を企んでるのかしら?」

『燃・え・ろ』

「燃えろ?」

 ぎぎがその言葉を耳にした瞬間、両翼の火打ち石を打ち交わせ、巨体の背に火を付けた。

 そして火打ち石をガリガリと擦りつけ叫びながら、背中から顔に向かって滑空していく。

 巨体の背に次々と火の手が回る。

 焦ったジエン・モーランは急いで砂中に潜ろうとするが、猛スピードで迫り来るクルペッコがその顔面に火打石を打ちつけられ。

 強力な不意打ちを喰らって、ジエン・モーランはまたしても甲高い悲鳴をあげる。

 だが白黒種の猛攻は終わらない、上空から突如現れたリオレイアが巨体にダメ押しのブレスを連射する。

「白黒種!二頭だと!」

「白クルペッコに、黒リオレイア!」

「それにしても、やべぇなあの動き・・・?おい!シロギス何やってる!」

 シロギスが急いで舵を切り離脱を図る。

「見りゃわかるでしょ!緊急事態よ!引き返すのよ!」

「待て!このチャンスを逃すのか!」

「チャンス?違う、もう無理よ。白黒種と古龍が戦ってるあの中に勝機はない!」

「ここで引き返したら、今まで戦いが水の泡だ。二頭の白黒種がジエン・モーランと戦ってるなら、大砲で遠方から攻撃すればいい。だからこれはチャンスなんだ!」

「ダメよ!ここは引きか・・・っ!?今度は何!?」

その時、船をドーンと下から突き上げるような衝撃が起きる。言い争っていた二人は、一瞬宙に浮く。

「痛てぇな、何だってんだ。っておいおいおい、シロギス!どこに向かってやがる!」

「私じゃない!さっきから舵が全然効かない!」

 シロギスがよっぽど力を込めているのが傍から見ていたユウゼンにも分かった。

「・・・この方角・・いや、そんなまさか。どうして陸地が見えるんだ?シロギスさん!船の進路を変えてください!このままじゃ座礁する!陸地にぶつかります!」

「どういう事だぎぎ!?ここは陸地一つ見当たらない大砂漠だから、そんな場所無いって言ったじゃねーか!」

「恐らく、俺達は奴との戦いに夢中で気付かないうちに、随分と大陸側へ戻されてたってか。だからって、シロギスこのスピードのままじゃ大破するぞ!」

「だから今、止めようとしてるんでしょ!マジで・・・止まんない!」

 船は風の影響受けずに、どんどん加速していった。船を止めるため、シロギスが歯を食いしばりながら、舵を動かそうとするがビクともしない。シイラとカジキがそこに加わるも変化は起きなかった。

 それもそのはずである、船を強制的に動かしていたのは、白黒種ディアブロスであった。

 砂中での移動能力に特化したディアブロスが白黒種になることによって、さらに強化されたため、船底を二本の角で突き刺した後、砂中なら自在に動かせるのであった。

『逃げんじゃねーよ!人間共が!』

「あ〜クソ!こうなったら!」

「アマエビさん!何をする気ですか!」

「撃龍槍を地面に撃つ!それで多少ブレーキがかかるだろ!」

「無理・・・よ・・撃龍槍は・・・さっき・・・撃ったばっかり。すぐ・・・には・・・撃てない!」

 シロギスが力を込めながらアマエビに忠告する。

「やれる事をするだけだ!撃龍槍は俺の武器で直接撃ち込む!問題はねぇ!」

「無茶です!あの巨大な槍は人間が扱える代物ではありません!」

「俺達はハンターだ!普通の人間より強い!」

アマエビは船頭の撃龍槍の場所へ急いで向かう。

「アマエビさんを信じようぜ!俺達も何かやらねーと」

「そこの・・・レバーを」

 シロギスが目線でユウゼンにレバーの場所を教える。

「これか!」

 ユウゼンがレバーを引くと、船頭にあった撃龍槍はガチャンと音を立て、船の側面の方に向いた。

「でかしたぜ!オラァ!止まりやがれ!」

 アマエビがハンマーで撃龍槍を直に打ち込む。放たれた撃龍槍は、勢い良くズボッと地面に刺さった。

 船のスピードは大幅に減速したが、陸地はすでに目前であった。

「止まれぇぇぇ!」

 ザザザザザザサと爆音を響かせ、大量の砂煙を巻き上げながら陸地に滑り込む砂上船。

 陸地に突入しても船は止まらず悲鳴を上げる。

『アノ馬鹿ニ、仕事ヲ任セタノガ失敗ダッタ。誰ガアソコマデ派手ニヤレト』

『こっちも余裕は無いですよ!』

しばらく進んだ所で船はようやく止まった。原型は留めているものの、横転した状態で至る所に破損が見られた。砂煙の中、ユウゼン達はよろよろと船をおりる。

「ハァ・・ハァ・・何とかバラバラにならずに済んだな」

「何なのよ・・・ハァ・・・全く」

「奴らは・・・ハァ・・・もう一体います!」

「何だと!」

「声が・・・ハァ・・・聞こえました。そいつが船を動かしていた犯人です・・間違いありません」

 砂煙が晴れ無惨に横たわるの船が現れる。

 ユウゼン達はジエン・モーランを見失っていた。

 全員が辺りを見回して、規格外の巨体を探す。

「声?」

「あー、ぎぎはモンスターの声が聞こえるんすよ。本当に」

「マジでか・・・」

「奴らは連携してジエン・モーランを狩るつもりです。理由は分かりませんが」

「へぇ、本当にモンスターの声が聞こえるとはな。それであいつらは共闘していたってか。白黒種はよっぽ侮れないな」

「・・・いました」

 巨体は陸地に這い上っていた。ズシン、ズシンと、大陸を揺らしながら近づいて来る。

 その時、空から何か飛んで来た。否、それは圧倒的な力によって、投げ飛ばされてきたのだった。

 それは横転した船の上に墜落した。

 船に横たわっていたのは、ディアブロスであった。

「何が起こった?」

「白黒種が、飛ばされてきた!」

『・・・クソ痛ぇ』

「ディアブロス!こいつまでいたのか!」

「大型モンスターが、ぶっ飛ばされるなんてな」

「カジキ、師匠もそれくらいできるぜ」

「初耳だぜ。んなことより、船が壊れちまった!どーすりゃいいんだ!」

「俺達は、ハンターだ。その手に持ってる武器ひとつあればそれでいい。充分戦える!」

「その通りですね。それに走って逃げれる相手でもなさそうですしね。まぁ、僕は逃げるつもりなんてハナからないんですけどね!」

「陸地なら俺たちの土俵だ!白黒種がいたって関係ねぇぜ!」

「お前たち最高だぜ〜!」

「分かったわ、このバカ共。最後まで付き合ってやろうじゃないの!」

「シロギス、弓はどーしたよ?」

 ユウゼン、ぎぎ、シイラ、アマエビが各々覚悟を示す中、カジキがシロギスの持つ武器を見て不思議そうに尋ねる。

「狩猟笛よ。まぁ戦闘になれば理解できるわ」

「笛ってかギターじゃね?」

「細かいことはいいのよ。来るわ!」

 ユウゼン達に迫りながらも、ジエン・モーランはクルペッコとリオレイアの猛攻を受けていた。

『頑丈スギル。図体ダケガ取リ柄デハ無イナ』

 ブレスを放ちながらリオレイアは距離をとる。ジエン・モーランに対して序盤は優勢であったが、先程砂中から不意打ちを仕掛けたディアブロスが巨大な牙でぶち飛ばされてから、劣勢を強いられていた。

 ユウゼン達は一斉に巨体に駆け寄る。

「音の防壁!気炎の旋律!」

「何じゃこりゃ!?」

「相変わらず、ありがてぇぜ」

 シロギスの狩猟笛(ギター?)がジャララランと華麗な音色を奏でるとユウゼン達のステータスがパワーアップした。

「旋律のバフよ!大暴れしてやりなさい!」

「よっしゃー!任しとけ!」

 巨体が目前に迫ると、つい見上げてしまう。

 勝てるわけ無い、無謀過ぎる、殺される。だが、その心に宿る狩猟本能が武器を振るう。魂を奮い立たせる。

 シロギスの旋律の効果もそれに拍車をかける。

 ユウゼンが太刀を抜く、その一閃は迷うことなく巨体の前脚を切り裂く。

 するとその堅い甲殻に少しヒビが入った。手応えが違う、最初の時はただ弾かれただけだったが、攻撃が通じてる。

 ユウゼンは弾かれながらも斬撃を続ける。

 少しづつではあったがた確実にダメージ受けてると感じた。

「脆くなってる!いけるぞ!」

 そう感じたのはユウゼンだけでは無かった。シイラの大剣が腹を裂く。ぎぎの弾丸が撃龍槍の傷口を撃ち抜く。

 白黒種の猛攻、撃龍槍、大砲、狩猟笛のバフ、様々な攻撃がジエン・モーランを確実に追い詰めていく。

 そんな中、カジキは白黒種の放つ炎で近づけないでいた。

「だぁ〜!クソじれったい!こんな炎が何だってんだ!」

『コイツ!バカカ!』

 焦れったくなったカジキは、降り注ぐ炎ブレスを無視して巨体に突っ込む。

 案の定、ブレスに当たった。

 だが直撃では無かった。直前に武器でガードしたのだ。

 カジキの双剣が燃え盛る。

「熱ぃぃぃいいいい!」

 燃える剣を手にして、慌てふためくカジキは、みだりに剣を振り回す。そして振り回す剣がカジキ自体をグルグルと回転させる。回転エネルギーを宿す炎の剣が巨体を剃りあげた。

 空中で回転が止まるとカジキは何が起きてるのか理解できなかった。

「何か、すげー動きできた!」

 その一撃が巨体にくっきりと傷痕を残す。だが巨体は歩みを止めない。

 攻撃を続けるユウゼン達を無視する。

 その目線は白黒種とアマエビの方を向いていた。

 アマエビは武器を構えた状態でじっとしていた。

 リオレイアはカジキが乱入したせいで、一時的に攻撃をやめていた。

『アノ小僧面白イナ』

『少々当たったくらいじゃ、死にゃしねーよ』

『効率は悪いですがね』

『クルペッコ、下レ。オ前ハ、モウサポートニ徹底シロ』

『おまかせあれ。ここからが本番ですね』

「こいつら、また連携を!」

 クルペッコは後方へ下がる。それと同時にアマエビが巨体の方へ向かう。

『デカブツがぁ!』

 だがそれは直前で、タイミング悪く突如地面から出てきたディアブロスに、阻まれたように見えた。

 ジエン・モーランはアマエビを見失っていた。

 巨体に向かって、ディアブロスは猛スピードで突進する。

 だが巨体の前脚がガッシリとディアブロスの突進を受け止めた。

 そのまま踏み潰そうと脚を降ろすが、地面との境目ギリギリの所で脱出した。

 ジエン・モーランは再びアマエビを探す。どこにいる?

 アマエビは逃げも隠れもしていなかった。空に舞い上がり、巨体の頭上をとっていた。

 驚きのあまり、小さな目がめいっぱい開く。アマエビは地面から出現した、ディアブロスに突き上げられるような形で空高く飛んだのであった。

 己の武器を天に構え、その獲物(頭)目掛けて落下してくるアマエビ。否、落下ではなく自分の力で武器を振り下ろしていた。

「黑異天!」

 アマエビがその頭に最大火力の鉄槌を降す。

 ドゴォォォン!と頭が地面に叩きつけられる。

 甲殻が砕け、吐血し、特徴的だっだ二本の牙の内一本が折れる。

 その一撃は大地を揺るがす。

 その場にいる誰しもが注目してしまう程の見事な一撃だった。

 壮絶な攻撃だったため、アマエビ本人も上手く着地できずに体勢を崩してしまった。

 だが、そこまでして掴んだチャンスを、見過ごす訳にはいかない。

「今だ!たたみかけろ!」

 砂煙の中、必死に叫ぶアマエビの声は全員に届いた。攻撃が効いているのか、ジエン・モーランはすぐには起きれなかった。

「気刃斬り!」

「真溜め斬り!」

「強化貫通弾速射!」

「鬼人乱舞!」

 それに続くようにリオレイアがブレスを吐きながら滑空して一気に近く。そして巨体の目前で、宙返りして尻尾で攻撃する。

 斬撃、銃撃、打撃、炎、狩猟笛により強化された全員の攻撃が同時に襲いかかる。

『面白い道具ですね。我には及びませんが』

 クルペッコは鳴き袋を膨らませて音色を奏でる。その音色は狩猟笛とは違う強化を与えてくれた。

「八重桜の音色!雷鳴の音色!憎いけどありがたいわね、白黒種!」

 二重の音色が拍車をかける。それでも再び顔を上げ、体勢を立て直すジエン・モーラン。

 そこに追い打ちをかけるように、グサリと刺さる二本の角、死角から突進して来たディアブロスであった。

『痛ぇか、この野郎!』

 だが巨体の体勢は崩れなかった。そして前脚に角が刺さった状態のまま背を丸め、ビシッと伸ばす。

「避けろ!」

 無数の砂岩がまたしてもユウゼンたちに降り注ぐ。

 白黒種も同様に被害を受け、上空にいたクルペッコとリオレイアは墜落してしまった。

 また近くに落としすぎたため、ジエン・モーラン自身の体にも、いくつか当たっている。

 だが振り払うのには十分な代償だった。

 そして刺さったディアブロスを前脚で殴り飛ばす。

 その衝撃でディアブロスの片角が折れ、前脚に刺さりっぱなしになった。

 ユウゼン達が離れると、巨体の上半身を横に大きく捻る。全てを薙ぎ払うために。

「まだこんな力を残していたのか!」

「避けれねぇ!」

「うぉぉぉぉぉおおお!」

 アマエビが叫びながらユウゼンを思いっきり武器で殴り飛ばす。続いて近くにいたぎぎとカジキも同様、薙ぎ払いの範囲外まで、殴り飛ばした。

「ぐはっ!」

「アマエビさん、何を!」

「来い!受け流してやる!」

「無茶よ!避けて!」

 シロギスの忠告を気にせず、強撃を前にアマエビは武器を構える。

「一人じゃ無理だ」

 アマエビに唯一飛ばされなかったシイラがその横で同じく武器を構える。

「馬鹿野郎!どうして逃げねぇ!」

「避ける隙がなくてね。来ますよ!」

「仕方ねぇ!上手く合わせろよ!」

 ジエン・モーランは片割れのその牙で、弧を描く。フルスイングした牙は、二人に直撃した。

 受け流しは文字通り、武器でモンスターの攻撃の軌道を変えて受け流す技である。

 だが今回の相手は規格外サイズのジエン・モーランであるため、無謀な挑戦であった。

「うぉぉぉぉぉぉおおおお!」

 ギンっと擦るような音を立て地面をえぐる。薙ぎ払いを受け流す。

 潰されず、投げ飛ばされもしなかったため、致命傷は免れた。

 ただ、二人の足元のえぐれた地面がその壮大な破壊力を表していた。

「効くぜ・・・全く」

「立ってるのが不思議なくらいだ」

 二人は片膝を着く。巨体の至る傷口から滝のように鮮血が溢れ出していた。

 無我夢中で攻撃していたユウゼン達に付いた返り血が、重症さを物語る。

 だがユウゼン達も既に限界であった。形勢を立て直したジエン・モーランを見て、これまで蓄積してきたダメージが一気にのしかかってきた気がする。

 白黒種も迂闊に手を出し辛くなっていた。

 あらゆる手を打ち尽くしたからだ。強化されたモンスターとはいえ、無尽蔵の体力を持ち合わせてるわけではない。

 巨体は再び歩み始める。焦ったクルペッコが正面から翼撃で攻めるも、その牙は易々と振り払う。

 巨体は歩みを止め、大きな口を開き始める。

「何をするつもりだ?」

 大きな変化は無かった。ただ、開いたその大きな口に周辺の風向きが全て集中していた。これはジエン・モーランが何かを吸い込み始めていたとユウゼンは感じた。

「なんかやべぇのが来る気がする!」

 ユウゼンは力の限り太刀を振り回す。

「止めろぉぉぉぉ!」

「ユウゼンさん!ダメだ、逃げた方がいい!」

 ぎぎはユウゼンに向かって走り出した、その時、ゴゴゴゴゴと不自然な地響きが起こった。

「何だ、この揺れは!?」

『リオレイア!もう限界です!奴らを呼びましょう!』

『仕方無イ、ヤルゾ!』

「奴ら?」

「グオオオオオォォォォォ!!」

 二体の咆哮が大砂漠に響き渡る。地響きの正体は、攻撃を構えているジエン・モーランでも、ダウンしてるディアブロスでもない。もっと別の何かだった。

 それを察したアマエビが懸命に叫ぶ。

「ぎぎ!ユウゼン!そこから離れろ!」

「ユウゼンさん!危ない!」

 ユウゼンの目前に来たぎぎは、アマエビの言葉を聞くといきなりユウゼンを突き飛ばした。

 その瞬間、巨体の下から飛び出した地鳴りの主は、ばくんと齧り付いてきた。ほんの少し逃げ遅れたぎぎはそれに巻き込まれ宙を舞う。

「ぎぎ!」

 飛び出してきたその正体は潜口竜ハプルボッカ(外見はオオサンショウウオのような)であった。それも一体ではなく何十体もいた。

 顔に、脚に、身体に、尻尾に、巨体を覆い尽くす程のハプルボッカ(白黒種)の群れが一気に襲いかかってきた。巨大な口には細長く鋭い歯がビッシリ生え揃っていた。

 通常ならジエン・モーランの甲殻は、その歯を通すことはありえない。だが幾度も砕かれ、裂かれ、傷付いたため非常に脆くなっていた。

 弾け飛ぶ鮮血、甲殻も肉も骨も、ピラニアの如く全てを喰い尽くす。

『喰ライ尽クセ!ハプルボッカヨ!』

「何が起きてるの!?」

「こいつら、いつの間に!」

 その圧倒的な数の暴力を前にジエン・モーランの必死の抵抗も虚しく、徐々に無惨な姿に変貌していく。

 突然のできごとに唖然とするユウゼン達。

 嵐のように現れたハプルボッカの群れは、またしても嵐のように去っていった。そこに残されていたのは古龍の面影も感じない程、随分と小さくなった巨体であった。

「任務完了ってか」




できてるのはここまでです。ここからは時間はかかると思いますが、最後までやるので、待っててください。
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