猛吹雪が止まない地、凍土。
ここには極度の寒さに適応したモンスターでなければ生息は難しい。
そこに猛々しい咆哮が響き渡る、氷牙竜ベリオロスである。
全身が白色で琥珀色の牙が特徴的な飛竜種である。翼脚の爪はスパイクブーツのように鋭いトゲが付いており、凍りついた大地をがっしりと掴んで滑ることなく駆け回ったり、壁にへばりついたりと、俊敏な動きを自在にこなす。
このモンスターは凍土においてトップクラスに入る程強く、また凶暴な性格である。
ギルドからクエストを受け、このモンスターを狩猟しに来た、上位ハンターのハオコゼと、オトモアイルーのハゼは苦戦を強いられていた。
ベリオロスの側面から攻めていたハオコゼは、死角から振られてきた尻尾によってぶっ飛ばされる。
尻尾が地面の氷を削りながら攻撃をするので、飛来する氷塊が当たり、通常より大きなダメージとなる。
「っ!?・・・強い!こいつは予想以上だ!」
「どうするの?このままじゃ、まずいわ!」
「確かにな・・・やべぇ!?」
ベリオロスは口から竜巻のようなブレスを放つ。それはハオコゼらの元で冷気を垂直に巻き上げる子型の竜巻になった。
「うぅ、くそっ!」
「ハオコゼ!その手はもう限界よ!」
一旦岩陰に身を潜める。
だがハオコゼは攻撃を避ける際、凍てついた竜巻に右手を巻き込まれ酷い凍傷を負っていた。己の武器(双剣)を握る力は殆ど無くなっていた。
それだけでは無い、既に全身の至る所が凍傷だらけだった。しかしそれはハゼも同じで凍土を負っているのは一目瞭然だった。
「へっ、お前も似たようなもんだろうがよ。だが引くにも引けねぇ、やつの出したあの竜巻が邪魔する限り逃げ道は限られてる」
「アタシが囮になる、ハオコゼはその隙に逃げて」
「何言ってやがる!一人じゃ助からねぇ!」
「アタシだってオトモアイルーだ。あなたより身体は小さい分、攻撃をかわしやすい。こんな所でくたばる訳に行かないでしょ?」
「だけどよ・・・おい!待て!」
ハオコゼを置いて岩陰からとび出たハゼは、ベリオロスの注意を引くため誘導を始める。
「あぁ、全くよぉ!」
ハオコゼもすかさず、岩陰から飛び出した。だがベリオロスは先に出たハゼに目掛けて真っ直ぐに突進する。
走ってい追いつける距離ではなかった。だがハオコゼは一旦、自分に注意をそらすため音爆弾(特定のモンスターが嫌う高周波を放つ玉)を投げた。
ベリオロスに対して効果は薄いが、狙い通り突進を止めされる事は出来た。そしてハオコゼの方へ向く。
「こっちじゃボケが!」
「ダメ!逃げて!」
ハゼの声は届かず、双剣を逆手に持ち鬼神化しながら、ベリオロスを挑発するハオコゼ。
それに応えるようにハオコゼに向かって攻撃を仕掛けるベリオロス。
だがその攻撃はハオコゼにとって予想外のものだった。ベリオロスは自身の真下に竜巻を発生させ、生じた上昇気流に乗り急速に空に駆け上がった。そして竜巻の頂点から急角度で一気に滑空してきた。
予想外の動きに反応が遅れるハオコゼ。
「何!?」
「ハオコゼ!」
ベリオロスはその翼脚を軸に身体をスピンさせ、ハオコゼを遥か彼方へと弾き飛ばす。
ハオコゼが飛ばされた先は、運悪く崖になっていた。手を伸ばし必死に留まろうとするも、何も出来ないままそのまま崖に滑り落ちた。
「ハオコゼェェェ!」
「うあぁぁぁぁ!」
それからしばらくたった今もハオコゼとハゼはユクモ村には戻らなかった。
村では行方不明者としてギルドが捜索をしている、だがハンターがモンスターに殺されることもよくある話。
白黒種やジエン・モーランのせいもあって、捜索はしだいに抑制されつつあった。
そんなある日、二人の受けたクエストを再受注したハンターがいた。それはジエン・モーラン討伐から帰ってきたばかりのカジキである。
それを見ていた村長が心配そうに話しかける。
「本当に大丈夫?カジキさん?」
「問題無いぜ、村長。俺はハンターだ、クエスト行ってなんぼだぜ」
「確かに、行きたい気持ちも分からなくもないんですが。ついこの前帰ったばっかりじゃないですか。もう少し休んでからの方がいいのでは?それに、このクエストを受けたハオコゼさんとハゼさんは上位ハンターです。彼らの身に何かあったのなら、おそらくその相手は手強いでしょう」
「大丈夫だって!俺だって上位ハンターになったし。強敵の方が燃えるぜ」
「確かにあなたの強さは認めます。ですが、何だか嫌な予感がするんです」
「そのベリオロスってのは戦った事はねぇが、まぁ問題無いぜ!」
「ですが・・・」
「なぁ、頼むよ村長!受けさてくれよ!」
「困りましたねぇ・・・」
「どうしたんすか、村長?」
そこにふらっと現れた、ユウゼンが困っていた村長に話しかける。
「ユウゼンさん!丁度良かったわ!」
「良かった?」
「よろしければ、カジキさんと一緒にクエスト行ってくださる?」
「えぇ!?こいつとですか!?」
「何か問題でも?」
「おぉい!ユウゼン!てめぇ、何勝手に割り込んで来てんだよ!こいつは俺のクエストだ、邪魔すんじゃねぇ」
「まだ何も言ってないぞ」
「村長、あんたの頼みとは言えこいつと組むのはマジで嫌だぜ」
「まぁ、そうでしたの?それは失礼致しましたわ。ですが生憎今いるハンターで実力のある方はユウゼンしかいないと私は思いますわ」
「カジキ、村長さんを困らせんな。みんなクエスト行ってるだよ。それに、あのジエン・モーランとの激戦からそんなに時間たってねぇだろ。ぎぎは右足無くしちまったし。シイラだってあの攻撃を受け流した反動で腰やっちまったらしくてよぉ、しばらくはハンター活動を休むそうだ」
「ぐぬぬ、だったらシロギスはどうしてんだよ!どうしても誰かと組めってんならあの人がいいぜ」
「シロギスさんは赤衣の男を追って、先日調査に出かけました。いつ戻るか検討もつきません」
「帰って来てからずっと、アマエビさんの事気にしてたからなぁ。それに関しては、あの場にいたお前の方がよく分かってるだろ?」
「アマエビ・・・」
「なぁ、カジキ。村長さんはお前のためを思って、提案してるんだぞ」
「んな事は分かってらぁ・・・はぁ、全く。これで最後だぜ!お前とクエストに行くのはよぉ!」
「おぉい!だから、俺なんにも言ってねぇって!」
「お願いしますユウゼンさん。一緒に行ってあげてください」
「村長さんにそこまで言われちゃ仕方ねぇっすね。分かりました、俺も行きましょう。ぎぎ達が動けねぇ今、俺にできる事はモンスターを狩猟する事くらいだしな。それが村の平和のためだし」
「ありがとうございます。すぐクエストを手配しますね」
「早く準備しろよ、ユウゼン。ノロマなやつを待ってる時間はねぇぜ!」
そう言いながら準備のため走って自宅に戻るカジキ。
「あぁ、それとユウゼンさん」
「何すか?」
「最近、白黒種が多く目撃されてます。くれぐれも気おつけてください」
「おう!」
翌日、クエストを受けた二人はベリオロスの生息地、凍土へ向かった。
歩いている道中、前回ぎぎと共に凍土へ来た事があるユウゼンは、あまりの静寂さに違和感を覚えた。
「おかしい、静かすぎる」
「何がぁ?」
「ポポやバギィ達の声が全然聞こえねぇ。聞こえるのは風の音だけだ」
「前は聞こえてたってか?」
「あぁ、ここいらじゃもう既に聞こえていてもおかしくない」
「ふん、それがどうしたってんだ?」
「いや、明らかに様子がおかしいだろ。何が起きるかわからねぇ、気を付けた方がいい」
「そうかよ。にしても何だこの道、歩きづらくて仕方ねぇ」
「おかしい、前はこんなに酷くなかった。やけに平坦な場所だと思ったが・・・おい!あれ!」
「あぁん?・・・こいつはモンスターの死体!?」
ユウゼンの指さす方に見えたのは、大量に積み上がった氷漬けのモンスターの死体でできた壁であった。
「何なんだこの量は・・・まさか!俺たちが歩いていたのは!?」
「死体の上だと!?」
ふと足元を見下ろすと、それはギィギやバギィなどの小型モンスターの死体群であった。
凍土に氷漬けの死体があったとしても特に珍しくはないだろう、だが異常なのはその数である。
「何があったんだ?」
「分からねぇ。だけどこいつら、傷だらけだ」
「そうか?だったら、こいつを見てみろよ。まるで生きてるみたいだ」
カジキが見ていたのは外傷が激しい死体群の中で唯一、無傷個体のバギィであった。
「みんなボロボロなのに、どうしてこいつは、無傷なんだ?」
カジキが氷越しでそのバギィの瞳をじっと見つめる。何だか、こちらも見られてるような気がした。
「死んでるのに気味が悪ぃぜ・・・あれ?今動いて・・・!?」
「グギャァァ!!」
氷漬けの死体かと思ったバギィは雄叫び上げ、氷壁の横から飛び出して襲いかかってきた。
「カジキ!」
バギィは思いっきりカジキに噛み付いてくる、だが咄嗟に出した双剣で防ぎ難を逃れた。
「珍妙な真似しがやって!雑魚のくせによぉ!」
「白黒種のバギィか!」
「おい、ユウゼン!後ろだ!」
「そりゃお前だ!後ろにいるぞ!」
「くそっ!囲まれた!」
気が付くと周りには五頭ほどバギィが威嚇しながら迫っていた。二人は背中合わせで武器を構える。
「お前がボケっと突っ立ってるから、こんな事になったんだろ!」
「うるせぇ!ボケっとしてんのは、テメェも同じだろうがよ!」
痺れを切らした一頭のバギィが、ユウゼンに飛びかかってくる。それを見切ったユウゼンは太刀で捌く。
だが斬り伏せたバギィの後ろからもう一頭のバギィが、青白い何かの塊を吐きつけきた。それはユウゼンにべチャリと着弾した。
その瞬間ユウゼンはぼーっとしてきてふらつき始めた。
「うぅ・・・眠てぇ・・・」
頭を抑えて片膝を着くユウゼン。
「おい、このバカ!戦闘中に眠くなるやつがいるか!」
動けなくなったユウゼンに対して、容赦なく攻めてくるバギィ達。カジキは持ち味のスピードと驚異的な反射神経で、攻撃をいなしながら確実にバギィを倒していく。
あと一匹となった所で、ユウゼンは目を覚ました。
「いつの間に・・・」
「なんだ、白黒種も大したこと無かったぜ」
「・・・グルル」
「逃すかよぉ!」
「おい!無闇に追うんじゃねぇ!俺たちの標的はベリオロスだろうがよ!」
「はぁ?あいつは白黒種だぜ。それに俺に舐めた真似したやつを黙って、見過ごせねぇな!」
戦闘を放棄して逃げて行くバギィを追いかけるカジキ。足の早いバギィを見失わないように必死だった。
「全く、逃げ足の早いやつだぜ」
バギィの逃げた先にいたのは、恐らくこのバギィ達の群れの長である、ドスバギィであった。
通常のバギィより大柄で大きなトサカが特徴である。だが青白い体毛も白黒種のため純黒に染っている。
「親分の所に逃げたってか。臆病な奴だぜ」
「カジキ、こいつは大型モンスターの白黒種だ。さっきのバギィのようにはいかない。強敵だぞ」
「関係ねぇな」
余裕な素振りを見せ、双剣の片方の切っ先を謎にクルクルと回しながらゆっくりと近づくカジキ。
「 グォォォオォォ!」
威嚇するように吠えたドスバギィは、大口を開けカジキに狙いを定める。その瞬間、素早い動きでバギィと同様の青白い塊を射出してきた。油断していたカジキの顔面に命中した。
「何だこれ?うわっ!汚ぇ!」
「カジキ!」
さっきのユウゼンと同じ様にふらつき始めるカジキ。
「・・・・・」
喋ることもできぬまま、その場で膝を落とし項垂れるように、ユウゼンより深い眠りについた。
「あの攻撃に当たったら眠るってか。厄介だな」
ドスバギィが邪悪な表情で駆け寄ってくる。ユウゼンは太刀を構えて臨戦態勢になった。ドスバギィの爪や牙による俊敏な攻撃を、回避や受け流しで見極めるユウゼン。
だが一番警戒していたのは、あの青白い塊だった。だがこのまま防戦を続けるも、不利だと感じたユウゼンは仕掛ける。
本来なら回避する噛みつき攻撃に合わせて、太刀による突きを繰り出した。
それは自身がある程度のダメージを負う覚悟があってこそ成せる所業であった。この攻撃にはさすがの白黒種のドスバギィと言え、簡単には防げないとユウゼンは思った。
だがこの瞬間、ドスバギィは噛み付くために空けた口をさらに大きく開けていた。あの攻撃が来る。
そう判断したユウゼンは突きを途中で静止し、太刀を両手持ちに変え、薙ぎ払うように太刀を振るった。そのまま横にローリング回避をしたたので、射出された青白い塊はユウゼンの後ろ、彼方へ飛んで行った。
「油断ならねぇな、だが戦える!」
一進一退の攻防はしばらく続いた。徐々にダメージを与え、ドスバギィを追い詰めていくユウゼン。
その頃になって、ようやく目が覚めるカジキ。
「・・・何が起きやがった?」
双剣を杖がわりに立てて、何とか立ち上がると、ドスバギィと闘うユウゼンが見えた。
「俺を置いて、勝手にやりやがったな!」
「カジキ!起きたんなら、手を貸せ!」
「うるせぇ!俺に命令すんな!」
飛び起きたカジキが加わりさらに追い詰められるドスバギィ。
だが白黒種であるため簡単には倒れてくれない。どれだけの傷を負っても、まるでゾンビの如く攻撃の勢いは衰えなかった。
「グォォォオォォン!」
「コイツしぶといぞ!」
「嘆いてる暇があるなら、攻撃の手を緩めるな!」
二人が喋っていた隙を着いて、ドスバギィが飛びかかって来た。
その時、突如ドスバギィの真下に氷の竜巻が発生した。それによって吹き飛ばされるドスバギィ。だが倒れてもすぐに立ち上がり、竜巻の方を凝視する。
「何だ!この冷気の竜巻は!?」
「・・・グゥゥ」
竜巻が収まり、冷気が辺りに漂う中、颯爽と現れたのは、ユウゼン達のクエスト標的、氷牙竜ベリオロスであった。
「こいつだ!ベリオロス!」
「よっしゃ。探す手間が省けたぜ」
「感心してる場合じゃねぇ!白黒種になるぞ!」
ユウゼンが叫んでも、ドスバギィには意味が無い。雄叫びを上げながらがベリオロスに飛びかかるドスバギィ。翼脚に噛み付くドスバギィ。
「くそ!またかよ!」
「遅かったか!」
だが、ベリオロスは特に何も変化しなかった。
「白黒種にならない!?」
ベリオロスはドスバギィを軽く振り払い、自分の真下に竜巻を発生させた。その上昇気流に乗り急速に空に駆け上がった。
そしてドスバギィ目掛け急角度で一気に滑空する。
ベリオロスの翼脚が衝突と同時に獲物(ドスバギィ)の首を地面に叩きつけながら引こずる。
翼脚をどけてもドスバギィはピクリとも動かない、即死だった。
戦いを傍観していたバギィも慌てながら去っていく。
「攻撃を受けたら白黒種になるんだろ?話が違うじゃねーか」
「それも気になるが、あのドスバギィを一撃で殺しやがった。なんて強さだ」
ドスバギィの死体に足をかけ、咆哮を上げるベリオロス。そしてゆっくりと、ユウゼン達に振り返る。
「あの翼脚の棘、極寒の凍土で円滑な動きを可能にしてやがる。白黒種のスピードにも対応できるってか」
「何?急に、俺頭良いですよアピールか?」
「ふざけてる場合じゃないぞ!」
ベリオロスは氷の大地を俊敏に駆けて、ユウゼン達に突進してくる。
「速い!」
そのスピードに翻弄されたまま、避ける隙もなくもろに突進を喰らうユウゼン達。
だがベリオロスの突進の軌道は一直線であった。では何故避けれなかったのか。それは翼脚の棘によるノーモーションの急加速であった。
通常のモンスターの突進は走り出しながら徐々に加速するパターンが多い傾向にある。
だがベリオロスの場合、加速するタイミングが予測しづらいのと、加速後のスピードが加速前に比べて異様に差がある。
そのため、単純な突進でも避けるのは容易で無かった。
「何だ・・・あの動き」
「ちくしょう、速いぜ。だがな俺の方がもっと強いぜ!」
「だから、無闇に突っ込むなって!」
「おらぁ!」
カジキが低姿勢で突っ込んでいく。堂々と正面から行った。安直すぎる攻撃に見えたが、カジキは持ち味のスピードを活かし、ベリオロスの顔面の直前で身体をひねり、翼脚に斬撃を与えようとした。
だがベリオロスの目はそれを逃さない。
翼脚にいるカジキを身体でタックルのような動きをして吹っ飛ばした。またしても壁に激突したカジキは、やることが上手くいかずイライラしていた。
「くそ!バレてたか!」
「息を合わせろ、一人じゃ勝てねぇぞ!」
「黙ってろ、気が散る!」
今度はユウゼンが攻撃を仕掛ける。氷塊の竜巻を警戒しながらも正面に向かっていく。
氷塊の竜巻は撃たれることなく、ベリオロスの近くまで寄れたが、尻尾による薙ぎ払いが襲ってくる。
その兆候を視界の端でとらえたユウゼンは素早いローリング回避で尻尾が届かない側面に移動した。
傍から見ていたカジキにもベリオロスに隙ができたように見えた。
だがユウゼンが取った構えは。太刀でまず有り得ない、受け流しの構えだった。
「何やってやがる!攻めろよ!」
カジキから見れば明らかな隙、だがユウゼンはその瞬間ベリオロスと目が合ったのだ。
自分は今捉えられている。そう思ったユウゼンが咄嗟にとった行動が受け流しの構えであった。
予想通りベリオロスのタックルが来た。
太刀の刃がその翼脚に接触した瞬間、思っいきり体を反らして攻撃を受け流すユウゼン。歯を食いしばり、必死に踏ん張りをきかせる。
「ふごぉぉぉぉぉ!」
翼脚が太刀の刃を擦りながら、逸れていく。反れた身体を無理やり起こし、生じた隙に一閃を刻む。
「でりゃぁぁぁ!」
だがその一閃は、ベリオロスの頬を僅かに掠めただけで、空振りに終わった。バランスを崩したユウゼンがベリオロスの方へ倒れ込む。
毛並みがめっちゃ暖かい。
なんて思っていると壁に激突させられた。
だがベリオロスの猛攻は止まらい、またしても冷気の竜巻を起こし、今度はカジキ目掛けて滑空してくる。
「危ねぇ!」
無駄にいい反射神経で発動した、大ジャンプで何とか避けれたカジキ。
だが反撃のタイミングを掴めず、当たれば大ダメージの滑空攻撃を繰り返すベリオロスに確実に追い込まれていく二人。
それだけでなく冷気の竜巻も直接喰らうと凍傷が残り後に響く。
「このままじゃやばいぜ」
「ハァ・・・確かにやばいぜ。なぁカジキ、師匠がいっつも言ってたこと、覚えてるか?」
「はぁ?なんだよ唐突に。そんな事てめぇより覚えてらぁ・・・ん?・・・気づくこと・・・そうか!」
カジキは急に武器をしまい、近くの洞窟に向けて全速力で走り出した。
「何してやがる!離れるんじゃねぇ!」
「てめぇこそ、ボサっとしてんじゃねぇ!いいから洞窟に走れ!」
「洞窟!?」
「俺は気づいたぜ。奴は翼竜、なら天上がある洞窟の方が動きづらいはず。そこなら俺たちに勝機があるはずだ!」
「いや、ちょっと待てって!」
自分勝手にどんどん離れていくカジキを見失わないように、仕方なく後を追うユウゼン。
もちろん、ベリオロスもそのまま追ってくる。
カジキはノンストップで洞窟へ入っていく。ユウゼンもベリオロスの猛攻をかいくぐりながら、なんとか洞窟の入口までたどり着いた。
「はやくこい!こっちだ!」
「ハァ・・・ハァ・・・カジキ本当に大丈夫なのか!?」
その時、ユウゼンの真上でビュンと風を斬る音が聴こえた。
ふと後ろを振り返る。だがそこに居るはずのベリオロスの姿は無く、戸惑う。
「奴は!?」
「・・・居ない?」
ユウゼンが正面に視線を戻し、目を凝らして見てみると、洞窟の奥で光る眼光が見えた。
「カジキ!前だ!奴はすでに洞窟の中にいるぞ!」
「何!?」
ユウゼンの言った通り、ベリオロスすでに洞窟内にいた。壁から滑空してきてカジキを襲う。
「うわぁぁぁ!」
咄嗟の出来事に反応できず、翼脚のスピンをまともに受けるカジキ。
頭からの流血しながらも自力で立ち上がった。だが壁から壁へ移り、またしても滑空してきた。
カジキは連続で翼脚のスピンを一方的に受け続ける。
ユウゼンが止めに入ろうとするも、その動きに隙が全くなかった。壁から壁へ常に動き続けているため、上手く狙いが定まらない。
外で戦っていた時より明らかに俊敏になっているベリオロスと、一方的に攻撃を受け続けるカジキ、を見てユウゼンは、苦悶の表情を浮かべる。
この洞窟はベリオロスの狩場だ。
「カジキ!逃げろ!」
「・・・く・・そ」
何かいい手はないか?気づけ俺、この状況を打破できる方法はなんだ?そう考える時間すら惜しく感じる。
そこでユウゼン一か八かの行動に出た。
「気刃斬り!」
なんと、ベリオロスの着地に合わせて気刃斬りを放ったのだ。
ロクなダメージにならいだろう、当たるかどうかも分からない。だが少しでも気を逸らせれれば、それでいい。
そう考えたユウゼンの決死の斬撃だった。斬撃はまたしても空を斬る。
だが思惑通りベリオロスがこっちに向いた。
カジキからベリオロスを引き剥がすためあえて距離をとる。
ベリオロスはユウゼンに狙いを変えて再び壁に張り付く。それを見て受け流しの構えを取るユウゼン。
一方カジキは既にボロボロで、立つのもやっとであった。
今にも閉じそうな片目に映ったのは、さっきベリオロスが自分にやった攻撃を受けるユウゼンの姿であった。
殆どの攻撃をくらいまともに受け流しができてない状態であった。
「ユウ・・ゼン・・・」
自分の判断が招いた、最悪の結果。それを認めたくはなかった。その意思が限界だった体を奮い立たせる。認めない、認めるもんか。
「鬼神化!こっちじゃボケが!」
双剣を逆手に持ち替え、咆哮するカジキ。獣のように走り出す、いや出したつもりが、思うように動かなった。そのまま転倒する。
「カ・・・ジキ!」
手を伸ばした所で結果は何も変わらない。だがその時だった。
「全弾発射にゃ!」
突然、洞窟内の至る所から大量の小タル爆弾がベリオロスに降り注ぐ。
いくら俊敏なベリオロスとは言え、身動きが取れずにいた。
「今の内にゃ!」
「・・・メラルー!?」
「速く!こっちへ!」
「オトモ・・・アイルー?」
気を失った二人はいきなり現れた、メラルー達に運ばれてなんとか逃げることが出来た。
しばらくしてユウゼンが目覚めた。
当たりを見回して見ると、自分をじっと見つめているメラルー達がいた。
そんな中、最初に話しかけてきたのは、メラルー達の中で唯一装備を付けていたオトモアイルーだった。
「気が付いた?」
「メラルー?どうして、俺たちを?」
「アタシはハゼ。オトモアイルーよ。聞きたいことは色々あるでしょうけど。まずは傷の手当をしないとね」
「俺はユウゼン。とりあえず助かった。ありがとう」
ベリオロスはいつの時代も強い気がする
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