あるいはA組が避難民の脱出を見届け、街に戻る頃。
あるいは崩壊した街の中心でミルコと乱波が笑う頃。
あるいは、ウーゴの個性では支えきれず、巨大要塞が山を越えられず刺さるように着地した頃。
振動を感じて、イレイザーヘッドは足元を見た。
「おいおい! 懐かしい顔ぶれじゃねーか!」
日本語での、嘲りを含んだ笑い声。
仮面を被っているわけではなく、口元が黒いマスクのように変色している異形個性のヴィランが道を塞いでいた。
対峙するは、イレイザーヘッド、デク、ショート、ダイナマイト、そしてジュリオに治崎。
「つくづく日本のヒーローとは縁があるよなぁ!」
「先生!」
「視てる!」
個性の不発に、ウォルフラムが首を傾げる。同時にショートとインゲニウムが走り出し、攻撃を与える。しかし、彼はそれを背後に跳躍することであっけなく避けた。
しかも、彼が着地した箇所から道が途切れていたらしく、落下していく。
「くっ!」
悔しそうに追い縋るショートに前線を任せ、デクはイレイザーヘッドにヴィランの情報を出す。
「あいつは《金属操作》と《膂力増強》! オール・フォー・ワンから個性を与えられています!」
『ネタバレどうもなぁ!』
崖下を覗こうとしたショートが大きく飛び退く。さきほどまで彼が立っていた場所を狙って、巨大な手が伸びてきた。
スピーカーを通して、ウォルフラムの笑い声が響き渡る。
『おいヒーロー! これでも個性封じれんのか!?』
「……できんスか」
非常に珍しいダイナマイトの敬語だったが、イレイザーヘッドはため息で返答し【立ち上がった】ヴィランを見上げた。
黄金のダークマイトは、あまりにも巨大な姿でヒーローたちのまえに立ち塞がった。
「あ! おい待て!」
治崎の制止を無視し、ジュリオがバイクを急発進させた。ヴィランの胴体に自爆特攻するような軌道だが、本人にはそんな気はまったくないだろう。
「治崎!」
『逃がすかよ!』
デクに指名され、治崎は鼻を鳴らしてバイクを追いかける。
途中ヴィランからの妨害があり、巨大な手が地面を抉ってジュリオの進行方向を塞いだ。しかし、その動きは大きい分緩慢であり、治崎にとっては容易に対処できる速度だった。
治崎の小さな手の平と触れ合った巨大な右腕は、肘の部分まで一瞬で分解された。降ってくる瓦礫をバイクと並走して避けつつ、荷台へと乗り込む。
「感謝する」
「すんな」
落ちてきた瓦礫を払いのけた治崎に礼を言うジュリオ。彼は目的のために一人でもダークマイトの元へ行こうとしていた。
『おい待てよ! てめぇらは俺が──』
振り返ろうとした黄金のダークマイトだが、突如爆撃を受けて上半身の大部分を失うことになる。左腕は根本どころか胸部から破壊されていた。
「なぁに寝ぼけてんだテメェ!」
面制圧重装機動《ストレイフパンツァー》。
ダイナマイトが展開した武装は、オール・フォー・ワンと対峙することは叶わない、無力なサポート科が命を賭して作り上げたものだ。
憎むべきヴィランに一撃でも与えよう。
英雄がすこしでも戦いやすくなるよう。
平穏を、平和を、平時を、一刻も早く取り戻せますように。
それらの祈りが形となった兵器だ。
その兵器の威力は警戒を高めるには十分で、ウォルフラムは個人的な復讐を治め、冷徹なヴィランへと成り下がる。
《金属操作》で周囲の金属を破壊された腕の代わりに見立てる。顔も、ダークマイトから機械の獣のように象られていく。
急速な金属の集合で、細かな金属が生じ摩擦熱で火花が散った。熱と電磁波で漂う微細な鉄は空気中を舞い、室内にいるのにまるで暗雲のように天井へと溜まっていく。
その光景は巨大な化け物が、どのような存在なのかを暗示させる演出にすら見えた。
『終わりだよ! お前らも、ダークマイトも!』
力に溺れ、高笑いをする愚かで強大なヴィラン。
『俺の時代の! 幕開けだぁ!!』
──もし、これが一年前ならば【戦い】として成立した可能性はあった。
鉄で固められた外皮を破ることはできず、ヴィランと力と力の勝負になっていた可能性だ。
デクが、ダイナマイトが、ショートが、イレイザーヘッドが、それぞれの想いと思惑を込めてヴィランに告げる。
「「「「邪魔だ」」」」
個性を鍛え上げサポートアイテムを整えたヒーローたちに、個性頼りの大きいだけのヴィランが抗う手段などなく、捕縛には三分とかからなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
バイクのライトで照らしてすら暗いという印象を受ける、長い、曲がりくねったトンネル。エンジン音が反響して耳が痛くなるくらい、狭い通路だった。
そしてその終点は、まさかの行き止まりである。
ローギアでスピードを制限し、壁の前で片足を地面に付けた。背後では荷台から降りた治崎の気配。彼はバイクの光源で周囲を見渡し、ふと花の匂いを嗅いだ。
「上だ」
見上げたまま壁に手を当てて《オーバーホール》する。頭上の穴がどこに繋がっているかわからないが、バイクでは通れないと判断した。
あごで出された指示を受けたジュリオは、一瞬目を瞑って発進させた。
目的地は、もう目と鼻の先だと感じ取っているが故に。
治崎が造り出したスロープを抜けると、空気の流れの変化から広い空間に出たと察する。その推測を証明するように、ドームの天井が青空を模した灯りに照らされていく。
「個性……というには【逸脱】してるな」
「《錬金》です。触媒を使って思った通りの物質を創れる個性」
まるで天空のように澄み渡る空。しかし、浮かぶ雲が動いている様子はなく、人工物であることは明らかだった。
資料を見ていなかった治崎は、ああ、と納得するように喉を鳴らせた。トリガーで強化した《オーバーホール》よりも凶悪な範囲に、改めてあのアンナという女性の個性に辟易した気分になった。
なぜここに立つのか、ここに立ってなにをするのか。
決まっている、これはちょっとした憂さ晴らしだ。
ジュリオはそんな治崎の気の抜けた対応に目を細める。せめて盾でなければ連れて来た意味がなかったからだ。
「いまは顔を変えてダークマイトなどと名乗っていますが、その正体はヨーロッパ最大のマフィア《ゴリーニファミリー》のボス、バルド・ゴリーニ」
「それが疑問だ。なぜ顔を変えてまでオールマイトに──」
「──象徴だよ」
二人同時に、ダークマイトの声に反応する。
さきほどはなにもなかった草原に、青いソファーに腰かける女性と、ダークマイトが立っていた。
「オールマイトに代わり、俺が象徴となるためだ。そうだ俺だ……次は──俺だ」
着込んでいた白いスーツを紙のように脱ぎ捨てたダークマイトは、オールマイトのコスチュームを着込んでいた。スーツを《錬金》したのか、本当にコスチュームを着込んでいた変態なのか、治崎には判断つかなかった。
「そうだろう、アンナ」
「はい」
「お嬢さま!」
アンナを背後から抱きしめ、彼女の個性の恩恵を受けるダークマイト。二人の足元から円状に花畑が広がっていく。
それを見て、ジュリオはさらに動揺でハンドルを強く握り締める。
「やめろ──やめろおぉぉぉ!」
「この力で俺はオールマイトを超える!」
向かってくるバイクに恐れることなく、ダークマイトは進み出た。
空中に向かって拳を放つと、その拳は黄金に輝き、巨大な影のように突き出された。遠距離攻撃となった拳を、バイクをスリップさせて避ける。
治崎は空中へと逃れ、ジュリオは転んだまま、それでもアンナへ向かって走り出す。
ダークマイトが追撃を治崎へと向けた。
同じような黄金の拳が放たれ、治崎は吹き飛ばされる。
三枚のコインをダークマイトが投げつけると、そのコインは銃弾のように治崎を襲う。逃げようとする治崎だったが、それはダークマイトが操作する地形変化の攻撃によって上手く行くことはなかった。
「どうだぁ! 憧れるだろう!」
新しい玩具を自慢するように笑っていたダークマイトは、その高性能な玩具によってジュリオの銃撃を防いでしまう。
高速回転する巨大化したコインを捨てて、ダークマイトは【遊ぶ】ことにした。
対面するダークマイトと最後の戦いを感じ取ったジュリオは、向かってくるヴィランを前に冷静にリロードを行う。
矢のように《錬金》された飛来する金貨が地面へ突き刺さり、爆発する。めくれ上がった地面ごと空中へ投げ出されたジュリオだったが、義手の銃口は吸いつくようにダークマイトを狙っての追撃。
それらも当然のように防がれて、それどころか着地を狙われ巨体が襲い掛かってくる。周囲の岩盤が、背中から着地したジュリオの周囲に降り注いでくる。
「フォー!」
立ち上がったジュリオが、慌てて膝から力を抜いて重心を落とす。その頭上をダークマイトの拳が通り抜けていった。
避けられても愉しそうに笑っていたダークマイトは、腹部に伝わる衝撃に顔を歪める。
ダークマイトと違い、ジュリオには慢心も余裕もなに一つとしてなかった。
人生初めてだれかの命を奪うという感傷を味わう暇もなく、義手から十発もの銃弾を零距離で撃ち尽くす。
硝煙の匂いは、どうしたってシェルビーノ家の惨状が脳裏に過る。
死んだ人間が戻ってくることはなく、しかし、それでも──。
「なっ!?」
俯くダークマイトの表情の変化を見たのは、ジュリオだけだった。
コスチュームに薄く張られたなにかが、銃弾を遮っていた。一撃与えることすら、彼にできなかった。
「どんなピンチをも乗り越える」
笑みを浮かべるダークマイトは、この状況を【ピンチ】だと言った。
他人の個性で、他人の顔で、己が生み出したこの状況を、そう認識している──ヴィランが。
「俺はもう! プルスウルトラ! しているぞ!!」
身体が強張り、喉が悲鳴を飲み込んだ。脇のホルダーから拳銃を取り出し発砲するも、それはダークマイトが出現させた巨石によって阻まれる。
その岩を砕き、ダークマイトはジュリオに向かって躍り出た。
拳銃を払いのけ、拳を振り下ろす。
義足であるジュリオは、個性も使わないただの暴力にすら抗うことができなかった。初撃こそ上体を逸らすことで避けられたが、頬を殴られ、回り込まれてあごを殴られた。
個性こそ使用されていないものの、その一撃一撃で骨が軋み、サンドバックのように身体が大きく揺れる。
ジュリオの頭を鷲掴みしたダークマイトは、ジュリオの身体を浮かせるほどの膝蹴りを腹部に叩きこむ。
血が混じった吐瀉物を吐き出し、それでもジュリオは立ち続けた。
意識朦朧の彼は、ダークマイトの蹴りで吹き飛ばされる。
「未来ある若者との語らいに水を差すな。お前のような小物に邪魔されたくないんだよぉ!!」
コイントスするダークマイトの頭上で、巨大な黄金の手の平が《錬金》されていく。
手の平はその質量をもって、地面に倒れ伏すジュリオに向かって落とされた。
確実な死を与えたつもりだったのだが、ジュリオは生き延びた。
片腕を犠牲に治崎が割って入り、その一撃を防いだからだ。
「なるほどな」
「おや? おやおやおやぁ? キミへの招待状は送ってないんだけどなぁ。そもそもだれだいキミは」
「気にするなよ、ただの負け犬だ」
抑揚をつけたダークマイトは対照的に、ずいぶんと枯れた声だとジュリオは思った。
ダメージで朦朧とするジュリオは、仕立の良い服はボロボロになり、義眼を覆っていた眼帯も捲れ、何か所にも骨折があるはずだ。
それでも、生き延びただけの自分などより、よほど立派だと手を差し伸べたい気分もある。そんな不思議な気分を味わう治崎だが、意外にも不快ではなかった。
「ペルデンテか。そんなものがなぜここにいる?」
「ご主人さまがずいぶんと変わり者でな」
「そうかい!」
不意打ちのような強襲に、治崎は一歩引くだけで対応した。鼻先を掠っただけの拳に、ダークマイトの笑みが深くなる。おそらくは小物から昇格したのだろう。
「変わり者と言えば──」
続く拳も治崎は最低限の動きだけで対応した。風圧が肌を撫で続けるも、それに対してすら余裕は保ち続けている。
「お前は、なんでオールマイトなんだ、バルド」
ダークマイトの動きが停止する。治崎は初めて防御のために手の平を広げていたが、それは無駄になってしまった。
身を翻し、距離を開けたダークマイトはマッスルポーズで質問に答える。
「その名は捨てた。俺のことは、ダークマイトと呼び給え」
「まあ、名前はなんでも良いんだ。俺にだって捨てた名前はある」
掌を下ろし、棒立ちのようにダークマイトと向き合う【治崎廻】。
「オールマイトの話、むかし聞かれたな。こっちは落ちぶれた弱小ヤクザだっていうのに、やけに熱心に時間を取られた」
「なに?」
治崎を訝しげに睨みつける。見覚えがあるかないかで言えば、すこしもなかった。ただ、ジャパニーズマフィアと話した記憶ならばある。
十年以上前、マフィアの会合に来ていた極東の小さい日本のヤクザ。当時二万もの荒くれたちを纏め上げるゴリーニは、その会合では神にも等しい扱いだっただろう。
その若頭であったバルドが自ら話しかけに行ったのは、オールマイトというヒーローが大好きだったからだ。
「オールマイトの映像ディスクも送ってやったよな。覚えてるか?」
「……忘れたよ」
覚えていた。
「なぜって?」
ダークマイトの手の平で、コインが躍り始める。
「いまは俺が! ダークマイトだからだよ!」
空中に浮かんだコインを治崎に向かって投擲した。
ため息を吐いて、治崎は地面から床を《オーバーホール》して視線を切る。コインはその岩を粉砕し、砂が周囲に広がった。
煙幕の中から、治崎がダークマイトへ話しかける。
「変わってないな。粗相をした中国マフィアを殺しかけたの覚えてるか?」
「忘れたねぇ!!」
声に向けて地面を隆起させ、動きを制限しようとする。
しかし、治崎は捉えられなかった。
「お前の本質は暴力だ。だれもついてこない」
「ついてこない!? いいや違うね! アンナに適合しない恥さらしを捨てて来たんだよ!」
岩を殴りつけるダークマイト。その一撃一撃が巨大な拳となって周囲に攻撃を放つ。治崎が隠れた方向は、天井まで何か所も大穴が空くことになる。
その途中、ダークマイトはコインを握り締めた拳を振るおうとし、硬直した。
治崎の背後に、花畑の中心で座り込んでいるアンナの姿があったからだ。彼はわざとらしく振り返り、「ああ」と納得した。
「心の拠り所か? あの女がいなけりゃバルドに戻っちまうってか?」
「あれも俺の力だ!」
ボクシングのように詰め寄るダークマイト。しかし、それは治崎の間合いでもある。
治崎の手の平は、死柄木弔の個性《崩壊》の上位互換。指先がかすりでもすれば、その時点で相手の肉体を崩壊させることすら可能だ。
それを知っているわけではないだろうが、ダークマイトも一筋縄ではいかなかった。乱波以上の戦闘狂であり、そのセンスは爆豪の遥か上を行く。
暴力が本質というのも間違えていない。
ダークマイトは──バルドは──暴力に憑りつかれていた。
連続の拳を、治崎はすべて紙一重で避けていく。皮膚が擦れ頬や額が赤く染まっているが、それだけだった。
「小さい的は! 当てづらいなぁ!」
「ミスター!」
突如背中を叩かれ、治崎が前へ押し出される。
倒れたジュリオが切羽詰まった声色で警告を発していたことで、治崎は防御を整えることができた。ついでに背後を確認すると、黄金に光るコインに押し出されていたことがわかる。
「面倒だな」
拳を【手の平】で受け止めた治崎は、空中に吹き飛ばされながらも、気だるげにつぶやいた。
ダークマイトは跳躍して追撃。治崎は左手を盾のように丸め、その拳を受け止めて地面へと殴り飛ばされた。
「面倒? ふふふ、この俺の力が、その程度なわけがないだろう?」
「なにか勘違いさせてしまったのなら申し訳ない」
抉れた地面の中心で、土煙を払いのけながら治崎は謝罪した。
「面倒なのはお前じゃなくて、お前の個性でもなくて……まあなんだ、ちょっとした約束ってやつだ」
「約束!? 大好きな日本語だ! お約束ってやつだな!」
「──ハァ」
迫ってくるダークマイトの脳筋に、治崎は大きくため息を吐いた。
「ま、俺も嫌いじゃないがな」
拳を避け、胴体部分のコスチュームに【触れる】。
一瞬だけ全裸になったダークマイトは、次の瞬間には身体が一回り小さく見えるほど縮んだコスチュームに拘束されていた。
「なんだと!? おのれ! 俺と同じような個性を!」
たしかに、と治崎は鼻で笑った。
おそらくはダークマイトの個性の発動条件も手の平付近なのだろう。触れるだけで理を壊すようなこの個性は、ひどく歪だと思っていた。
もし自分が行きつく先がこのダークマイトなのだとすれば、それはずいぶんと──。
「オヤジの言う通りだな」
「──父親、だと」
コスチュームを一新させたダークマイトは、その単語に笑みを捨て去って、治崎を睨みつけはじめた。
攻撃されたことにでも、避けられ続けていることにでもなく、その単語に反応したダークマイトに、治崎は嘲るように「ああ」と納得した。
「親殺しだったな」
「──弱い父だった」
暴力を好まず、組織を尊重し、老いぼれた癌のような存在だった。
ゴリーニの頂点に、そのような存在が相応しいわけがない。
治崎はダークマイトの【鍍金】を感じ取った。自分を騙す鍍金の、鉄臭い嘘の香りだ。ゴミのようなプライドが生み出す、どぶ川のような匂い。
「責めやしないさ。俺だって同じ穴の狢だ。運良く──いや、底抜けの善意によって救われただけの間抜けさ」
死柄木弔に腕を切られた感覚。筋肉が裂かれ、関節を断ち切られた。ミスターコンプレスに奪われた腕と、合わせて空に掲げた。
──血がぴゅうぴゅうと噴き出す、短くなった両腕。
それを見たときになってようやく、自分が父親を殺してしまったのだと絶望した。
「お前は自分の間抜けさに、いつ気づくだろうな、ペルデンテ」
「負け犬? 気付く? 俺はな! 認めさせるんだ!」
なにを、だれに、という問答は必要なかった。
治崎には良く、手に取るように理解できるからだ。
「ゴリーニを! 世界中に!」
ああ、ひどい悪臭だ。
手の平を大きく広げ、重ねるようにダークマイトへ向ける。
しかし、二人がすぐさま交戦を再開させることはなかった。
無人の遠隔操作されたバイクが、ダークマイトに向けて突進する。それを弱者が知恵を凝らした努力と認識し、ダークマイトは鼻で笑った。
バイクの先端を掴んで突進を停める。地面とタイヤは摩擦熱で煙を上げ、加えて《錬金》によって掴んだ箇所から変化が始まる。
「──とっておきだ」
義手に付けられた操作パネルをタップすると、バイクに付けられた赤い外部装甲が外れて爆発する。その範囲はダークマイトを中心に、治崎すら巻き込んだ。
ジュリオは身体の痛みを無視し、アンナへ向かって走り出す。
「お嬢さまー!!」
広がる花畑を無情にも踏みしめ、ジュリオは右手をアンナへと伸ばす。
しかし、彼は動きを止めてしまった。慣性に従って、花畑へ倒れて仰向けになる。
「ふふふ、アンナは渡さないわ」
個性で支配したジュリオを見て、アンナの背後に控えていたデボラは妖艶に笑った。その手には、鞘付きのナイフが握られている。
それは、どのような小物であろうとも、使い道があるのだから、と。
ダークマイトが考案したショーだった。
洗脳状態だとしても、もしアンナ自身がジュリオを殺したとなれば、彼女の心はもう元には戻らないだろう。
「アンナ、その男を殺しなさい」
「はい、お姉さま」
ナイフを受け取ったアンナは、倒れ伏すジュリオへと跪く。
彼女は無表情のままナイフを頭上に振り上げ──しかし、足元から突き抜けるように響いてきた震動のせいで、ナイフを手放して地面へ倒れ込む。
「なに!? なによ!」
もしこの巨大要塞を攻撃したものだとすれば、その衝撃はあまりにも巨大なものだった。
実際はウーゴの個性が途切れ、山へ不時着した結果の衝撃だったのだが、彼らにそれを知る機会は終ぞない。
デボラは半ばパニックになり、ダークマイトを見る。しかし彼の周囲は炎が舞い、黒煙のせいで意思疎通など取れなかった。
実際、ダークマイトは【それどころ】ではない。
加えて彼女の不幸は続く。
洗脳状態のジュリオの義眼が、突如独立して動き始めたからだ。
怯えた彼女が身体を引くと、それに合わせて義眼も向きを変えた。
「まさか! 私を認識したらサポートアイテムが自動で動くよう、あらかじめ設定して──」
そのサポートアイテムは、義眼だけではない。
彼の義手が銃へ変形し、狙いをデボラへ定めた。
死を受け入れる間もなく、カチン、という間抜けな音がその義手から響く。
発砲はなく、一定間隔で響くその音に、デボラは全身の力を抜いた。
「──え?……弾切れ?」
緊張状態が解け、彼女は底冷えする恐怖を振り払うように、高らかに笑い始めた。
「なんだそれ! 脅かしやがって!」
肩どころか身体全体を震わせ、鼓舞するように大口を開けて笑う。そうやってようやく悪態をつき、生きた心地を味わっていたというのに、ジュリオの策は彼女の予想を大きく超えた。
義眼がデボラの生存を確認していたのだろう、義足からジェットノズルが解放され、炎を噴き出しながらジュリオは空へ飛んで行った。
「──へ?」
その光景自体と、熱と轟音に驚いたデボラは、悲鳴を上げて逃げ出そうとする。
デボラに向けて落下突撃してくるジュリオの自爆特攻によって、彼女は吹き飛ばされて気を失うことになった。
代わりに目を覚ましたのは、幸せから夢から解き放たれたアンナだった。
◇ ◇ ◇ ◇
デボラの個性《ブレイン・リモート》は、思考を夢の世界へと閉じ込め、残った肉体を自由に扱える個性である。
その夢の多くは洗脳状態にある本人の願望の世界となって、より洗脳を深くする。
だからアンナは、本当に幸せだった。
だからアンナは、そこが夢の世界であるとなんとなく察していた。
テラスで、ジュリオが淹れてくれた紅茶の【匂い】を楽しむ。同じように紅茶を飲んだ父親も、幸せそうに笑っている。
「すごい、幸せね」
ティーポットを片付けようとするジュリオの右手に触れ、その甲を撫でつける。
「どうしましたお嬢さま、今日はずいぶんと甘えん坊ですね」
「なんでかしら。ずっと、ずぅっと、本当はこうしたかったの」
「もっと甘えて良いんですよ」
なんでいま、そんなことをしてしまったのだろうか。
触れてはいけないと我慢しなければならないはずなのに。
「きっと甘えてきたからかしらね」
甘え。
ジュリオに言われた、優しい意味合いなどではない、もっと無責任な存在であるならば──そう自問し、依存に類似する甘えなのだと納得する。
我慢することで、だれかが幸せになると思い込んでいた。
その程度で、報いることができると思い込んでいた。
「もっと甘えて良いんですよ」
ジュリオの右手がアンナの頬を撫でる。その男性としての行動に鼻で笑ってしまっていた。
彼の手を自分から引きはがして立ち上がった。
「もう、いっぱい甘えさせてもらったの」
「もっと甘えて良いんですよ」
エラーメッセージのように、同じ文言を繰り返すジュリオ。表情も、さっきから変化がない。
それを見て、アンナの笑みがもっと深くなった。
「馬鹿だなぁ私は!」
席を立ち、屋敷を見上げる。
もう戻ることはできない実家だ。
人形のように笑う父親に、最後の別れを告げる。
「ありがとうございますお父さま。アンナは、幸せに成りに行きます。ジュリオは、私が幸せにします」
だから、こんな甘えは許されない。
テラスの壁へ飛び乗って、レンガ一つ分の空間で彼女は綺麗にターンを見せつける。
父とジュリオに反応はないが、どこか寂しそうに笑っている気がした。ふわりと沈むスカートとともに、彼女は父の笑顔を必死に焼き付ける。
「行ってきます」
頭から落下する浮遊感。受け止められたのは、ちょっとした偶然だった。
「痛くないけど! 怖いって!」
「あなた!? ええと、大丈夫?」
地面とアンナの間に割り込んだ策束の姿を見る。すこし遅れて立ち上がり、周囲を見渡す。
「変なところね」
「個性に囚われているのがボクら二人だけだからでしょうね」
地平線まで見える広い空間に、アンナの屋敷と、すこし離れたところに日本のジオラマの空間があった。
そこには人形やぬいぐるみがいくつか転がっている。
「あれはもっと変」
「それは残念な評価だ。大迫力の戦闘シーンをぜひお見せしたかった」
「あなた、ヒーロー、で良いのよね? さっきもいたけど」
アンナは策束のスーツに視線を移す。とてもではないが、必殺技を使ってヴィランを倒すイメージは持てない。むしろ父のように弁舌で相手を翻弄する人間だと思った。
策束はその質問には答えず、口角を上げてアンナと視線を合わせる。
「あなたは、さきほどよりずいぶんと良い顔になりましたね」
「さっきは──」
言い訳をしようとした。
個性の悪用を防ぐためとか、そういう約束があったのだとか。
言いかけて、アンナは言葉を飲み込んで笑った。
その言い訳は、きっと幸せに成るためには、必要ないものだから。
「あなたはさっきの顔のほうが良いわよ、ニヤケ顔は似合わないわ」
「あはは、最近良く言われるんですよねぇ」
策束はなにかを察したのか、上辺だけの会話に留める。
代わりに真剣な表情で、胸ポケットからシガレットケースを取り出した。箱を開けて、小さく舌打ちをする。
「なに?」
「夢だから匂いがないんですよ。それに気付ければもうすこし早く起きれたのに」
言われて、アンナは首を傾げた。
紅茶の匂いが、まだ残っていたからだ。
「──ジュリオ」
それに気付いてしまえば、彼がすぐそばにいるような感覚に陥った。溢れた涙を拭って、行き先すらわからず走り出す。
「どこに!」
「わかんない! でも行かないと!」
アンナは走りながら、器用にドレスの裾を無理矢理まとめて、さらに速度を上げる。
「私は、幸せに成るんだから!」
◇ ◇ ◇ ◇
デボラが気絶したことによって、アンナは洗脳状態から解放された。
夢の空間が砕け、周囲が青空と花畑の空間に切り替わる。
「私は……なにを……!」
前髪が金髪から黒色へと変色している。
それは、過去に一度だけ見たことがある自身の変化だった。
そのときは毛根から毛先まで黒く染まり、彼女の個性は暴走したと聞き及んでいる。
詳しくは覚えていない。そして同時に、アンナの個性が、アンナの母親の死に関わっていることも、なんとなく聞き及んでいた。
「ジュリオ!」
それ以降、ずぅっとそばに居てくれたのが彼だった。
自身の個性への不安など忘れ、アンナは倒れるジュリオに向かって駆けよろうとし、背後から肩を掴まれる。
「アンナ! 力を! よこせ! 俺の! 力を!」
アンナの左肩を万力のような握力で掴み、宙に持ち上げたダークマイト。
その顔を見てアンナは恐慌した。
《個性変容》の反動も、痛みももちろんあるが、それ以上にダークマイトの【半分破けた顔】が恐ろしかったからだ。
バイクの爆発と炎に、ダークマイトは顔半分を焼かれていた。
破れた側の顔を抑え、ダークマイトはアンナの力を吸収する。
しかし、アンナを握っていた腕が《オーバーホール》され、アンナとの繋がりが消失する。
「ぎゃああ!!」
腕を失ったのは一瞬だった。つぎの瞬間には治崎がダークマイトの腕を治して、なかったことにする。痺れるような痛みに無傷であるはずの右手を振って、罪悪感を誤魔化そうとする。
「さっそく約束破っちまった……」
「顔が! 力が! 抜けてしまう!」
「アンパンマンかよ。その顔にそんな効果はねーだろ」
いや、とジュリオと並ぶように気を失ってしまったアンナを見て、自身の考えを否定した。
オールマイトのように見える顔は、整形ではなく人工皮膚の類だった。おそらく最初に付けていた板のような仮面は、弛んでしまう皮膚の矯正器具なのだろうと予想がつく。
問題は、なぜ《錬金》で直さないのか、という単純なものだ。
職人が造った顔を再現できない──のではないだろう。
おそらくは、神懸かりのような思い込みなのだ。
バルドは、ヒーローが纏うコスチュームのように、オールマイトのお面をもって、オールマイトに成ろうとしていた。代わりなどあるわけがない。
神憑りのような、自惚れの世界だ。
「おままごとだな」
治崎は過去、組長に祭りの出店で買ってもらったオールマイトの仮面を思い出していた。
安いプラスチックの仮面を被って、楽しそうに走り回っていた子どものようなものなのだ、バルドという男は。
もちろん、子どものほうがずいぶんと可愛らしい勘違いをしている。
オールマイトはひたむきに努力し、己が正義と向かい合い続けて象徴となった。
その過程無くして、人は象徴にはなれないのだ。
「力ぁ! 俺のぉ! 力ぁ!!」
勘違いは、そんな精神面だけではなかった。
アンナの個性で変容したものは、個性因子に留まらない。
変容した個性因子を受け止めるために、身体のほうがさらに変化をし続けていた。
顔の大きさはそのままに、胴体が、四肢が膨れ上がり、常軌を逸した筋肉量の肉体を作り上げる。
治崎は軽く背後へ重心をずらし、地面を削りながら繰り出されるバルドの拳を両腕で受け止めた。枯葉のように吹き飛ばされていく治崎に、バルドは満足そうに笑顔を作る。
「ふ、ふふふ! 見ろ! これが! 俺の! 新しい身体だ!」
二倍以上に大きくなった手の平で顔を隠し、バルドは笑う。
「おい」
「っ!?」
舞い上がる土煙の中、吹き飛ばしたはずの治崎がすぐ隣に立っていた。悲鳴のような情けない声とともに、バルドが拳を振るう。
バルドの腕とは、巨木と枯れ木のような太さの違いがあるというのに、クロスされた拳がバルドの顔に当たると、彼は尻餅をついた。
痛みなどない。ただ、当たっただけだ──なのに。
「人体ってのは不思議でな、異形個性だろうがなんだろうが、重心ってのが崩れれば立つこともできなくなる」
立ち上がろうとしたバルドのつま先を踏みつけておくと、彼はそこを支点に前のめりに転がった。
どれだけ巨体で、どれほど強かろうとも。
悪意に満ちようとも、殺意で塗り固めていようとも、聖人君主なのだとしても、それは変わらない。
話しは変わるが、八百万百の個性《創造》にはデメリットがあり、それは創造物の分子レベルでの【理解力】が必要である、ということだ。腰に下げたポシェットには緊急時に使えるカンニングペーパーを仕込んでいるが、それでもすべての物質を記憶することなどできはしない。
治崎の《オーバーホール》とて似たようなもので、分子などは一切必要ないが、再構成・修復そのどちらもが、【理解】していないと成立しない。
この場合の成立とは、たとえば人間とタイヤを融合させ、あるいは血液型が別の人間同士を融合させ、かつ元通り別々の存在へと分解できるのか、生きていられるのか、というものだ。
成立は、できる。
事実として治崎は、そういった化け物に成りたくなければ従うように、と構成員に脅しをかけていたのだから。
「だれもお前を救えない」
立ち上がろうとしたバルドの手を爪先で軽く蹴ると、彼はまた肩から地面へと沈んだ。
「お前に必要なのはそんな力じゃない」
治崎は自身の手の平を見る。
【あの時】とは違って、ちゃんと繋がっている自身の右手だ。
もしこの瞬間に《オーバーホール》が失われたとして、自分は慌てるだろうか。そう考えて、笑ってしまった。
「謝ってこい」
父親に、ファミリーに、傷をつけた人たちに。
過去の行いを。過去の自分に、謝ってくるといい。
それができれば、人の心は救われるかもしれない。
地面に伏せるバルドは、恥辱に顔を歪ませて巨大な拳を放った。それらは光の矢のように姿を変えて治崎に襲い掛かったが、彼は手で払うに留め、矢は《オーバーホール》でただのコインに戻され地面へ落ちた。
しかし、バルドの狙いはその一瞬の隙だった。
治崎から距離を取って立ち上がる。
両手を振るってから構えると、その指の間には金貨が挟まれていた。
「おいおい良いのか、顔を隠さなくて」
そう嘲るように言って、彼はフードの中に隠されていたマスクを口元へと当てる。
そのマスクはまるで、カラスのように真っ黒な、嘴のようなデザインだった。
「貸してやろうか、俺のヒーローマスク」
「うるさい!!」
黄金に輝く巨大な拳が放たれた。
それを避けたとて、本物のバルドの拳が控えている。逸らすために手の平を沿わせると、それだけで治崎の中手骨が折れたのが伝わって来た。
「おいおいマジでオールマイトかよ」
「そ、そうだ! 俺が! オールマイトだ!!」
その骨折は瞬時に《オーバーホール》したものの、攻撃は連続されている。本格的に個性抜きでの状況打破が不可能と踏んで、治崎は舌打ちを堪えた。
(くそ、死ぬにはつまらねぇ日だな)
さきほどの振動は、この建造物が浮力を失って墜落しかけている振動だと治崎は気付いていた。
バルドはさきほどより不安定な精神ながら、その膂力は数倍に上がっている。そのヴィラン相手に時間を稼げたとしても、このまま落下した建造物に巻き込まれれば、自分ならまだしも、ほかは無事では済まされない。
アンナを見れば、苦しそうに胸を抑えていた。おそらくは《個性変容》が壊理の《巻き戻し》ように暴走寸前であると予想がつく。ジュリオもデボラともども気を失ったままだ。
バルドの拳が触れるだけで擦過傷がつけられ、額や手の平に傷が増えていく。バルドの格闘センスは本物であり、重心移動の警戒も無意識で行われている。
時間稼ぎは無駄であり、打開するには約束の遵守が重すぎる。
「そら! そらそらそら!!」
調子を取り戻しつつあるバルドが、《錬金》で作り出した巨大な拳を飛ばしてくる。それはまるで巨大な壁で、《オーバーホール》で防ぐしかなかった。
「舐めプってやつかい!? それとも自殺志願者かなぁ!」
治崎の個性によって一瞬ではあるが右手を失ったバルドは、その危険性と対処を理解していた。
範囲は手の平からボール一つ分。触れられなければ問題などない。
それはもちろん誤認であり、侵入方法を思い出せばその程度で済むわけがない。しかし冷静さを欠いたバルドは、自分の都合の良いものを信じた。
すでに十回以上、治崎はバルドを殺せる機会があったとも知らないで。
「約束してんだよ」
「おおそれは素晴らしい! 死神との契約かな? さっさと死にます! ようにってなぁ!!」
巨大な拳を《オーバーホール》した瞬間、バルドの拳が現れた。治崎は両手を下ろして衝撃に備える。
顔面を殴り飛ばされ、無防備のまま追撃を受けとめた。
一撃受けるたびに骨が折れる音が、脳内にまで響いてくる。一瞬一瞬で修復するという選択肢もあったが、治崎は諦めていた。
バルドの巨大になった手に頭を持たれ、玩具のようにぶら下がる治崎。鼻やあごが砕かれ、眼球は内部の出血によって真っ赤に染まっている。
いま治崎を襲っているのは、激痛だった。頭蓋骨が折れるほどの攻撃に晒され、その頭部を持たれて笑われている。
そして、そんなことがどうでも良くなるほど、自分が行っていたおぞましい行為。
(本当に、済まないことをした)
彼女は、自分が死んだら心がすこしは軽くなるだろうか。
親父は、泣いてくれるだろうか。
「わるかったなバルド」
「なに?」
「痛かっただろ、腕」
「痛い? おいおい、オールマイトがその程度! 痛がるわけがないだろうが!!」
バルドに行った謝罪は、本質的にそれは、ある少女と交わした約束の反故に対する贖罪に近かった。
「ああ、お前がオールマイトだったら、謝ったりしなかったさ」
余裕を取り戻しかけたバルドの表情が、途端に険しいものになる。
昏い目だ。
まるで鏡を見ているようだと、迫る拳を見ながら治崎は目を瞑った。
衝撃の代わりに、治崎は暖かななにかに包まれる。
ボロボロの黄色いマフラーをマントのように靡かせる彼は、背負わされた期待を感じさせない、すこしだけ情けない声色で、治崎を心配するように声を掛けた。
「だ、大丈夫、ですか?」
デボラ・ゴリーニ
ゴリーニファミリーの紅一点であり、登場時は妖艶の魔女のような立ち振る舞い──だった。
個性は《ブレイン・リモート》。目を合わせた相手の心を亜空間に閉じ込めて、身体を支配できる個性。アンナの《過剰変容》対象者を一人から百人以上にまで拡大している。
ゴリーニファミリーではだれよりも感情豊かで、余裕がなくなると表情がコロコロ変わるので、正直アンナより可愛い。
「──へ?」