気弱だった僕と、まっすぐな彼女の青春ラブコメはまちがっている。 作:レオン・アーノルド・スチュアート
「もしも彼が死んだらどう責任取るんですか!?貴女は彼のご家族にどう詫びるんです!?」
僕のあまりの剣幕に、雪ノ下さんですら何も言えなくなる。
「それは…………」
無理もない。彼らがイメージする港ミカと言う男は、常に礼儀正しく、爽やかな笑顔が特徴のナイスガイだからだ。
それが珍しく、歯をむき出しにし、色白の顔を真っ赤にさせて怒りをあらわにしていた。
「ミ、ミカっち……もうその辺りで」
「結衣さん、貴方もですよ」
「え?」
「一年も謝罪がなかったらしいですね。それはどういうつもりなんですか?」
「…………………」
「仮にも重大な事故なんですよ?貴女がリードを離さなけりゃ、こんなことはならなかったんだ!」
結衣さんも泣きそうな顔で俯く。
「おい港、もういいだろ……俺は気にしてないから」
「だからといってこのままでいいんですか?入院までしたんですよ?」
事の発端は一年前。入学式で八幡くんは事故にあい、その車が雪ノ下家の物だった。そこに雪ノ下さんも乗っていたというわけだ。おまけに事故原因は、轢かれそうになった犬を助けたからだが、その飼い主は結衣さんだったのだ。
「なあ…なんでお前がそこまで」
「すみません。頭を冷やしてきます」
そう言って、嫌な雰囲気から逃げるように僕は奉仕部を立ち去った。
まずいなあ………あそこまでヒートアップすることはなかったかもしれない。事故という話を聞いた瞬間、スイッチが入ってしまったのだ。
事故………………クラッシュ…………………………………
スピンしたマシンが、後ろ向きにコンクリートウォールへ……………
いかんいかん、またフラッシュバックが起きそうになった。
何とか頬を叩き、冷静になろう。
[newpage]
あれから月日は流れ、大学の練習について行けず、母校で威張り散らす柔道部のバカなOBを合法的な手段で追放してやったり、材木座くんとか言う八幡くんの相棒(八幡くんは断固否定してたが)と遊戯部とか言う部活のイザコザで、遊戯部が野球拳を仕掛けてきやがったのでキッチリ証拠を確保して追い込んでやったりしている内に、7月に入り夏休みがやってきた。
夏はこれからが本番だ。出された課題をすぐに片付けた僕は、ふと物思いに耽る。
高校生の夏休みは留年でもしない限り3回しかない。だから無駄使いはできないのだ。しかしやることがない。それこそ一年生のときは日替わりで女の子に会いに行ったが、今はそんなことは出来ない。
父の代からある無駄にバカ広い豪邸の、スイートルームと見紛うようなベッド仰向けになりつつ、スマホのディスプレイの名前を見て、指が迷う。
通話のところに指が行きかけ、再び戻す作業をさっきから延々と繰り返している。
夏は嫌いじゃない。僕は寒い寒い北の大地生まれなので、夏の暑さは苦手なのだが、イベントは山ほどあるし、遊びに行けるスポットも腐るほどある。水着姿の女の子は、それこそ太陽よりも眩しいからね。
他の女の子を呼び出すのは、スイスイと指が動くのに、なぜか川崎沙希の名前だけは見ると金縛りのごとく、指が動かなくなる。画面では川崎沙希の連絡先が表示される。電話か、メッセージか。
そう言えば近く、花火大会がある。彼女を誘おうと思ったが、やはり指が動かない。その代わり、他の娘からの誘いは何件もあったが。なんとなく彼女と再会して以来、一時期ほど女遊びが激しくなくなってきているような気がする。
だめだだめだ、もう止めよう。スマホ画面を消すと、充電器に繋げて、ベッドに放り投げた。
台所に行き、冷蔵庫を開ける。Oh shit.コーラを切らしている。こんな暑い日は、ガンガンに冷房を効かせた部屋で、キンキンに冷やしたコカ・コーラでも煽り、デリバリーのピザでも頬張りながら、ピアース・ブロスナンの007シリーズか、野沢那智のコブラでもイッキ見しようと思っていたのだが。
見るとコーラだけじゃなく、お菓子やカップラーメン等、全体的に買い置きの食べ物が足りない。取り敢えず買い出しに行くか。頭の中ではすっかり、コブラのOPテーマが流れている。
『街をつつむ Midnight fog 孤独な Silhouette 動き出せばそれは まぎれもなく ヤツさ 』
と、鼻歌を歌いつつ部屋着の半袖シャツと短パンを脱ぎ捨て、外出用の服を着て、スマホと財布をズボンのポケットにねじ込むと、着信があった。ディスプレイ画面には『平塚静』とある。メッセージではなく電話だ。僕は基本的に、女性からの連絡は速攻で取るタチである。
「もしもし先生?どうかしました?」
『港か。出てくれて嬉しいよ』
まるで自分の電話には誰も出てくれないとでもいいたげな話である。
『突然だけど、開いてる日はあるか?』
「おや先生、デートのお誘いですか?」
『バカを言うな。違うよ』
「どうせ相手はいないんでしょ?」
スマホの向こうから、うぐぅ!と言う声が聞こえてきた。どうやら図星のようである。日ごとに化けの皮が剥がれつつある人だ。
『そ、そうではない………夏合宿だ。奉仕部としてな』
「夏合宿ですか?」
『そうだ、どうせお前は暇だろう?』
「失礼な話ですねえ、平塚先生。だからいつまでもいつまでも売れ残りなのでは?まあ特に予定は無さそうなのでいいですがね」
またまた電話口に、心臓を射抜かれたような声が聞こえた。どうせ電話口では何もできまい。だからこんなことが容赦なく言えるのだ。ひとまず平塚先生から日程と集合場所についての話を聞いた。
[newpage]
「おはよう御座います。みなさん」
「うっす」
「おはよう、港くん」
「やっはろー!ミカっち」
集合場所に行ってみると、奉仕部メンバーの他に戸塚くんと八幡くんの妹の小町さんがいた。
「おや、戸塚くんもですか?」
「うん。平塚先生に言われたんだ」
うーむ…………私服姿の彼も中々のものである。つくづく思う、女であれば…………
「どうも、小町さんも。しばらくぶりですね」
「やっはろーです、ミカさん!」
相変わらず、元気な娘である。八幡くんの血がどこへ有るのだろうか。
「しかし、お兄さんに似てませんね。相変わらず明るい人だ」
「そうですか?」
「それに………実に魅力的だ」
秘技・キラースマイルを小町さんにお見舞いすると、小町さんは照れたように目を背ける。
「い、いや……あの……その……」
「おい、兄の目の前で妹を口説く奴があるか」
八幡くんが僕と小町さんの間に割って入る。
「やだなあ、英国紳士の嗜みですよ。美しい女性を口説くのは」
「う、美しいって…………」
「お前フィンランド人だろ?」
「む、僕はこう見えてもイギリスへの在住経験もあるんですよ?」
「貴方の口説くは犯罪的な匂いしかしないのだけれど………」
「やだなあ、口説かれたいなら早く言ってください。生憎希望者が殺到してるものですから、なんなら整理券でもお配りしましょうか?」
「貴方って人は………」
僕のめげない根性に、雪ノ下さんは呆れ顔。結衣さんや戸塚くんも呆れたように笑う。
「馬鹿なことやってないで、早く行くぞ」
平塚先生にせっつかれて、僕らは車に乗り込んだ。
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現地に着くと、僕らの他に葉山くんたちのグループも来ていた。どうやら内申点を餌に釣ったらしい。ずる賢いというかなんと言うか………
そう言えば、奉仕部は気付けば仲直りしているようだ。ジャパニーズ諺だと「雨降って地固まる」というのだろうか。やたらと距離が近いのが気になるが。
僕らの今回の仕事は、小学生たちのキャンプの手伝いである。夏休み潰してまでやるかなぁ……と言う本音は言わないでおこう。
やがてオリエンテーリングが始まった。僕らの仕事はゴール地点での昼食の準備だ。子どもたちより早く到着する必要がある。
やっぱり小学生は若いだの、誰が大人だの、あーしらババアみたいじゃんだの、他愛のない会話を繰り返すと、雪ノ下さんが何かに気づいた。
女子小学生5人が集団で固まっている。なにかに怯えた様子だ。ただ、僕が気になるのはそこから離れた位置にいる一人の女の子。八幡くんもそれに気づいたようで、二人で顔を見合わせる。
カメラを抱えてうつむく姿が、どこかいじらしい。
どうやら蛇がいたらしく、葉山くんが駆けつけてそれを追い払う。流石にリーダーと言ってあげようか。
その後もクスクスと、意地悪く彼女たちは笑っている。
どうやら問題発生のようだ。
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「こんにちは。チェックポイントは見つかりましたか?」
葉山くんを制して僕はその子に駆け寄ると、笑顔で聞いてみた。
「いえ…………」
「そうですか、では………僕と一緒に探しましょう」
女の子の背丈に合わせてしゃがみ込みながら提案すると、女の子は少し驚いた顔をした。この見た目から流暢な日本語が飛び出したことにびっくりしたのか。
「僕は港ミカと言います。君の名前は?」
「………鶴見留美」
「留美さんね。よろしく。じゃあ、向こうへ行ってみましょうか」
「…………うん」
「こんなルックスですが、日本語は話せますから。何でも言ってくださいね」
葉山くんのグループに合流させるべきなんだろうが、それをやったところで自体は悪化するだけ。しばらくは距離を取ったほうがいい。
葉山くんの心情はわからないわけではないが、今のこの子達には無理だろう。
「何あれ」
「うわーやらせてるんだー」
「サイテー」
「あの外国人のお兄さんかわいそー」
するとあのグループが陰口を叩き始める。まあ仕方ない。
元はと言えば君等のせいなのでは?と突っ込みたいが、ここは
我慢してやろう。
それが聞こえたのか、留美さんはうつむき始めた。
「留美さん、大丈夫ですよ」
小声でそっと語りかける。留美さんはこちらをちらっと見た。
「あんなのは気にしないでください。さあ、チェックポイントを探しましょうか」
「…………………うん」
少し彼女の壁が薄くなったような気がした。
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野外炊飯も一通り終わり、一息つく。小学生組は男女に分かれてそれぞれ役割を分担し、高校生組は自分たちの用意をする。あらかた終わり、残った時間は小学生組の手伝いに回る。やはり葉山くんに子どもたちの人気が集まるが、僕にも少なくない人が付いている。
「ねえねえお兄さん!お昼ごはんってフィンランド語で何ていうの?」
「lounasですよ」
適当にフィンランド語を子どもたちに教えてやりながら、僕は留美さんを見てみる。やはり一人だ。
葉山くんが話しかけるが、余計に周りからヒソヒソと噂される。
どうも彼は肝心な部分が分かってないみたいだ。雪ノ下さんは呆れてため息を吐く。八幡くんも同じことを考えていそうだ。
「どうも、留美さん」
にこやかに笑顔を浮かべて、留美さんの横に立つ。
「お手伝いしますよ」
そう言って僕は、
「うん」
留美さんは少し安心した顔。少しずつだが、僕に対する警戒心を解き始めたみたい。
「君は、楽しいかい?」
「………別に」
あいも変わらず留美さんはそっけない態度。
「馬鹿みたい。みんなガキなんだもん」
「ガキですか……」
「誰かをハブるのは何回もあって、私もやってた。それで仲のいい子がターゲットになってて……それで距離をおいたら、気付けば私が標的にされてた」
まあ子供なんてバカだから、それは仕方ない。
誰かが言い出し、気づけばそれが普通になっている……
僕だってそうだ。
なら、僕はどうしたか。
「中学でも……こうなのかな?」
寂しそうにつぶやく留美さん。
「留美さん」
「とにかく動いてください」
「誰か頼ってください。それができなければ逃げてください。頼ることも、逃げることも、なんにも恥ずかしくない。一番いけないのは、何もしないことです」
留美さんはいつしか真剣な眼差しになっている。
「僕で良ければ、頼ってください。神様ではありませんが、話は聞けますよ」
僕は微笑んだ。無論これは、本物の笑顔だ。
「うん……ありがとう」
「ねーねーお兄さん!」
また女の子たちが話しかけてきた。あの留美さんを悪く言うグループの子だ。
「好きってフィンランド語で何ていうの?!」
満面の笑みでこう答えた。
「Yhtäkkiä lyöty, vitun paskiainen」
女の子たちはありがとー!と言って駆け出していく。恐らく葉山くんへだろう。
僕は上機嫌に鼻歌を歌いつつ、お皿を取り出す。
留美さんはこちらをじっと見つめる。
「本当はなんて言ったの?」
ほほう、気づいたか。やはりこの子は鋭い。
「本当はね………」
僕は留美さんの耳に耳打ちしながら。
「とっととくたばれ、クソ野郎」
「!………ぷっ」
某○滅の刃のし○ぶさん的笑顔で言ってのけると、留美さんは笑いを堪えきれない。つかみのギャグってやつだ。
「……なにそれ………ふふ………」
留美さんが笑ったのは初めてだ。
「いやあ、留美さんが笑うのをちょっと見てみたくなりましてね」
あっけらかんと答える。これでは口説いてるみたいだな。
「女性は笑顔が一番ですからね。ルミルミ」
ロマンス映画の主演俳優の如きスマイルで、彼女の笑顔を肯定する。全くお世辞はない。
「それってキモい」
途端に能面に戻った留美さんからの、見事なカウンターパンチ。これはきく。
「ひ、ひどい………」
幼女からの罵倒を、ご褒美と取る者もいるようだが、今の僕にはそんな余裕は生まれないだろうな……………
しばらくして僕は八幡くんと雪ノ下さんのところにいったが、そこへ留美さんがついてきた。
八幡くんたちの嫌味ったらしい会話にちょこんと混ざる留美さんは、なんともシュールで、噴き出しそうになる。
ハンサムな笑顔を貼り付け、その場を見守る。しばらくすると結衣さんがやって来て、奉仕部メンバーが固まる。
「何か、そっちの三人は違う気がする。」
三人というのは、僕も含まれてるのか。
留美さん曰く、みんなガキだから、自分は一人でもいい。
いつも誰かが言い出して、なんとなくみんなそういう雰囲気になる。
何となく、わかる気がする。人の悪口を言って、バブる。そんな連中は自分より下だと思わなければ、やってられない。
それが、留美さんに回ってきている。
確かに彼女は誤解を生みやすい。
それは、僕にも。
−−−−−−−−
どこか留美さんは似ている。僕にも、彼女にも。
『何かアイツ、変な髪だよな』
『しかも変な目の色だし』
『それに男なのに「ミカ」なんて、オカマなんじゃねーの?』
ああ、そうだ、これはあのときの。
『ちょっと!やめなって!』
『あたし、結構あんたの髪、嫌いじゃないし』
『サキ。サキでいいよ、あたしのことは』
そうか……………今の僕が『サキ』なのか。
−−−−−−−−
「ミカっち?」
結衣さんが不思議そうに首を傾げてくる。
「へ?…………あっ」
ふと、考え事をしていたようだ。いかんいかん。
「すみませんね。少し考え事をね」
留美さんも心配そうにこちらを見る。残りの二人も同様に、こちらを見ている。
「珍しいわね。貴方が考え事とは。」
「はは、僕は何も考えないバカみたいじゃないですか」
「そう言ってるのが分からないのかしら」
「出しゃばって失敗する奴よりはマシですがね……テニスとか」
「っ!…………誰から聞いたのかしら…………」
「僕は誰かさんと違って、独自の情報網がありますからね。ああすみません………雪ノ下さんは縁遠いお話ですね」
「くっ……………!どうせロクでもない関係でしょう?」
「良かったら雪ノ下さんも仲間になります?空きはいつでもありますよ」
「遠慮しておくわ」
プルプルと白い肌を赤くさせる雪ノ下さん。それを結衣さんが引きつった笑顔で宥める。それを八幡くんが呆れたように見る。いつもの光景だ。この人はホントにいじめると楽しい。
[newpage]
夕暮れ時に入り、高校生組が集まった。
議題に上がったのは、やはり留美さんのことだ。
「心配事かね?」
「ええ、ちょっと孤立しちゃってる子がいて」
「だよね〜、かわいそー」
三浦さんのえらく軽々しい発言。少し僕はイラッとした。
僕の持論としては「孤立」自体が悪いものではない。本当の問題は悪意によって孤立させられていることだ。
「で、とうしたいのかね」
「可能な範囲で、何とかしてあげたいです」
「可能な範囲で、ね」
雪ノ下さんが冷たく噛みつく。前々から、この人は葉山くんにやたらと冷たい。
「貴方では無理よ。そうだったでしょう?」
葉山くんは何も言えなくなる。
この口ぶりから、二人の確執は根深いものだと分かる。
大方、雪ノ下さんがいじめられていて、葉山くんが何もできなかったとかそんなところだろう。葉山くんはその程度の発想しかできず、雪ノ下さんは否定ばかりで何もしない。
彼らがいじめ問題に取り組むなど、お笑いもいいところだ。
「雪ノ下、君は?」
今度は平塚先生が雪ノ下さんに話を振る。
「これは奉仕部の合宿も兼ねているとおっしゃっていましたが、彼女の案件についても活動内容に含まれますか?」
「林間学校のサポートボランティアを部活動の一環としたわけだ、原理原則から言えばその範疇に入れてもよかろう」
「そうですか。では、彼女が助けを求めるならあらゆる手段をもって解決に努めます」
あらゆる手段か…………この人は大丈夫なのかな?この人もよく分かってないような気がする。
「それで助けは求められているのかね?」
「それはわかりません」
「ゆきのん、あの子言いたくても言えないんじゃないかな?留美ちゃんも自分も同じことしてたって言ってたし……だから自分だけ助けてもらうのは許せないんじゃないかな。みんな多分そう……。仲良くしたくても話しかけたくても、それができない環境なんだよ……」
結衣さんはアホだが、こういうところはよくできている。彼女の意見は最もだ。なんだかんだで結衣さんが一番常識的に見えてくる。
「雪ノ下の意見に反対の者はいるかね?」
手を挙げる者は居ない。
「よろしい、では君たちで考えたまえ」
そう言って平塚先生は咥えタバコのまま去っていった。
おいおい、この人も大丈夫かな……
こういった問題は教師がやるべきなのでは?
というより、この学校の教師陣は良く言えば放任主義、悪く言えば責任逃れだの事なかれ主義だの言われても仕方ないように思うが…………
てなわけで議論が始まったが…
「…ていうか、簡単じゃん?あの留美って子超可愛いし、だったら他の可愛い子とつるめばいいじゃん。話しかけるじゃん、仲良くなるじゃん、解決じゃん」
「それは優美子だからできるんだよ…」
確かに簡単ではある。三浦さんほど我が強ければの話だが。
続いて挙手したのは海老名さん。
「趣味に生きればいいんだよ。趣味に打ち込んでいるとイベントとかに行くようになって色々交友が広がるしきっと自分の本当の居場所が見つかると思うんだよね。だから学校だけが全てじゃないって気付くよ」
なるほど、名案だ。僕もクルマやモータースポーツが好きな人を見ると嬉しくなる。しかしこの人がこう言い出すオチは。
「私はBLで友達が出来ました!ホモが嫌いな女子なんていません!だから雪ノ下さんや結衣にも、はやはちとか、はちミカとか」
「優美子、姫菜とお茶取ってきて」
「おっけー。海老名、行くよ」
「ああっまだ布教の途中なのにっ!」
…………やはり納豆のごとく発酵してたか。少しは見直してやろうとした気持ちが一気にしぼむ。
さらっと僕がネタにされていて、悪寒が走る。葉山くんの判断は正解と言えるだろう。
「やっぱりみんなで仲良くできる方法を考えないと解決にならないか……」
みんなか。
彼は悪い人間ではない。だが結果的に、その程度のレベルでしか物事を考えられないのだ。それは仕方ない。一人になるのも、いじめられるのも、彼はなったことがないからね。その気持ちが分かるはずがない。
まあ、ここにいる全員、はっきり言ってレベルは低めなのだが。
するとまたしても雪ノ下さんの毒舌に三浦さんが突っかかり、また三浦さんが泣かされて終了するのを、内心で腹を抱えて大爆笑して、一日が終わった。