真剣で私に恋しなさいとか言われてもな   作:怜哉

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旅行にはたくさん行っとけ

 

 

 

 

 

 

 

「京都だー!!!」

 

 そう叫ぶのは、小さなリュックサックを背負った一子だ。

 

 見上げる空は青一色。

 三月にしてはとても温かく、気分の良い天気だ。

 そんな快晴の下、風間ファミリーは京都に来ていた。

 

 いくつか交通機関を乗り継ぎ、しばらく新幹線に揺られ、現在は京都駅前のバス停留所付近にいる。

 

「こらワン子。駅前で大声を出すんじゃありません」

 

 まるで子供に言い聞かせるように、大和が一子を(たしな)める。

 言われた一子は慌てた様子で口を抑えるが、尻尾を高速で振る幻覚が見えるほどに興奮していた。

 

「気持ちは分かるぜ、ワン子。俺も叫びたい気分だ!」

「もー。止めてよねキャップ。周り、人多いんだから」

 

 一子に劣らずソワソワしているキャップに、こちらはモロが注意する。

 だが、大和もモロも、叫びたくなる気持ちが分からないでもなかった。家族旅行や修学旅行などの経験はあるが、友達同士でこんなに遠出したことは今までにない。気分が高揚してしまうのも無理はなかった。

 

「西にも強いやつはいるかな。ちょっと探してみるか」

「おっ、いいねぇ。とりあえず目立った気を出してるやつから......」

「止めてくれ。川神じゃないんだから、普通に警察沙汰になったらどうするんだよ」

 

 ウキウキという擬音が聞こえてきそうなほど昂っている百代と和樹を大和が諌める。

 彼は今回、川神鉄心より百代らの引率を頼まれていた。和樹との日常的な決闘である程度抑制が効いているとはいえ、百代のジャンキーぶりには鉄心も手を焼いている。和樹も百代ほどではないが、中々のバーサーカーだ。

 川神であれば、戦闘におけるある程度の破壊行為は、鉄心の尽力もあり黙認されている。しかし、西の京ではそうもいかない。

 

 何か問題が起きてはいけないと、大和にストッパーの役割を依頼したのだ。

 

「ぶー」

「大和のケチ」

 

 不満そうに言う百代と和樹だが、大和の制止を振り切ってまで戦いに行こうとはしなかった。

 というのも、「今回大和くんの言う事を無視したら、朝の決闘は暫くお預けだ」と鉄心に言われていたからだ。戦いに飢えているとはいえ、最も身近で最も自分と対等な相手との戦いが無くなるのは、彼らにとって非常に耐え難いことだった。

 

 和樹と百代が毎朝のように決闘できているのは、鉄心の存在があるからだ。詳しく言うと、鉄心が知事や建築関係、また周辺住民に声をかけているからである。

 これが無くなると、二人の決闘は、さすがに周囲が許してくれない。

 決闘場と化している河原を初め、周りの建物にまで被害を及ぼす二人の決闘は、武におおらかな川神においても危険かつ迷惑だからだ。

 

 いくら百代らでも、大衆に迷惑をかけることを良しとしてまで戦いに興じることはない。

 

 まぁそんなこんなで、今回の旅行においては、百代と和樹は大和の言う事を聞くことにしていた。

 

「とりあえず荷物を置きたいな。キャップ、宿ってどこだっけ?」

 

 二人とも暴走することなく、しっかり自制してくれていることに一安心した大和は、今後の行動の邪魔になりそうな荷物を置きたいと考えた。

 駅のコインロッカーでもいいが、それではまた駅に戻ってくる手間がある。ならば、最初から宿に荷物を置かせてもらったほうが楽だ。

 

 この旅行の発案者は翔一だ。当然、宿なども翔一が用意してくれているものだと思い、翔一に聞く。

 

「おう! なんか東の方だ!」

「いやザックリしすぎだろ」

 

 和樹のツッコミなど耳にも入れず、翔一はずんずん東へと歩いていく。

 彼以外は宿を知らないため、全員翔一に続いていくしかない。

 

 次にこのメンバーで旅行するときは、行く前にきちんと確認をしよう。

 ゴールの見えない道を歩きながら、大和は内心決意した。

 

 

 

 

 




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