「勝てない……アグネスタキオンは別次元にいる」
「あぁ、ちょっとあのレベルは異常だな」
「椎名トレーナー……どうすればアグネスタキオンに勝てますか? 私には思い付かない」
「……俺にはわからないが領域に入るしか方法は無いだろう」
「領域領域言いますが私にもわからないのです……なんなんですか領域って!」
「……こうしよう皐月賞は捨てるタキオンを常に観察しろ。そこから学べることも有るだろう」
「G1を捨てる……一生に1度のクラシックの1つを!?」
「ここでタキオンを攻略する糸口を探し出さなければダービーも取られる。だったら皐月賞はピッタリ後ろでマークしろ」
「脚質転向して戦えるほど私は強く有りませんよ」
「わかってる。絶対的な逃げを捨てるんだ。掲示板外でも構わない。タキオンのゾーンを見破っていけ」
「椎名トレーナー……わかりました。次の一戦観察に集中致します」
「ラビット姉! ラビット姉! ファースト姉の皐月賞始まるよ!!」
「……わかってる」
青森トレーニングセンターの巨大スクリーンの前にガイア姉妹全員が揃って皐月賞の中継を見る
全員にガイアを冠名とし、その後の単語で呼び合う
長女の星子みたいに各自それぞれ名前は有るのだが、本名で呼び合う事は少ない
それに3女神様からの御告げが無いだろうとガイアこと椎名桜が小学生に上がると同時に名付けていった
事実ファーストもラビットも3女神様から名前を授かってない
それどころかここにいる姉妹達は全員3女神の声を聞いたことが無い
それでもファーストは重賞を勝利して3女神から名前を授からなくても速く走れることを証明した
更に今8歳のラビットは領域にも到達し、順調にいけば数年後時代を作るウマ娘となるだろう
「お母さんはレース場に居るんだよね」
「仕事で忙しいらしいけど大丈夫なのかな?」
「ここにいるよりもあっちの方が本社に近いからねー」
ラビットは無口であるが、7歳のガイアムーン、6歳のガイアエナジーはよく喋ること喋ること……
「……始まる」
パドックの映像からレース場の映像に切り替わる
「レース場は良バ馬かファースト姉には可もなく不可もなく……一番人気のアグネスタキオンも同じか」
「だー」
「おーよちよち未来も見えるかな」
ムーンが抱いている未来と名付けられた産まれたばかりの赤ん坊ウマ娘も見守るなか皐月賞が始まる
ちなみにベビーシッターが5名この会場にスタンバイしています
「よし! 好スタート!! 前に出ない!!」
「え! 逃げないのファースト姉!?」
「ファースト……」
この会場にはおばさんこと桜お母さんのお姉さんも居る
おじいちゃんやおばあちゃんもここでガイアファーストを見守っている
ガイアファーストはアグネスタキオンをピッタリマークする形でレースは進んでゆく
「ファースト姉は逃げなきゃ! 体が小さいんだから揉まれてしまうんだから!」
「でもここでのトレーニングで筋肉はついたよ」
「それでも高等部の生徒も居るなかで5番手外側はスパートしたタイミングで揉まれてしまう! 体格差で不利だ」
「1000メートルは59.8……ファースト姉が逃げていれば59秒切ってるハイペースに持ち込めるのに!!」
「……」
ガタッとラビットは席を立つ
「ラビット! どこ行くの?」
「……勝つ気がない」
「え?」
「……」
「あ、ちょっと!!」
ラビットは座席を立ってどこかへ行ってしまった
「勝つ気がないってのはどういう意味だろう」
「最終コーナーが終わるよ!!」
「ダメだアグネスタキオンの前が塞げてない!! 突破される!!」
「ファースト姉は……もがいているけどなんとか抜け出した」
「あぁでも4番手か」
「……何で逃げなかったんだろう」
「ガイアファースト!」
「ハァハァ……」
「なぜ逃げなかったんだい? 君が勝つには私へのマークではなく逃げていれば可能性が有ったんじゃないか?」
「あなたに勝つ為には……ここであなたを研究するしかなかった! 皐月賞を糧に私はダービーであなたに勝ってみせる!!」
「勝つ気が無いのに走ったと言うのかい? それはレースに出ていた者への侮辱じゃないのかい!」
「いや、侮辱じゃないね! 勝つよりも次に繋げる走りこそ必要と判断して私は走った!! ダービーでは見ていろ、全てを糧に私はあなたの言う領域に入ってみせる!!」
「やってみたまえ、繋ぎの走りだとかぬかす者には一生入ることのできないのがゾーンだ。ファースト、君には失望したよ」
「勝手に失望してろ! ダービーでは私が勝つのだから!!」