どす黒いウマ娘   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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クソローテ

 ダービーは覚醒したジャングルポケットに完敗し、彼女も領域に足を踏み入れた

 

「椎名トレーナーごめんなさい……今の私じゃジャングルポケットに勝てない」

 

「……わかった……が、俺ももうダメかもしれん」

 

「ダメ……え?」

 

「妹から連絡が来た……チーム変更を打診された。原田さんのチームだ」

 

「え? あのマヤノトップガンを導いた?」

 

「あぁ、桜が数ヵ月前に接触した後入院していたが、戻ってきた……彼のチームならファーストを栄冠に導けるだろうって」

 

「……嫌だ! 椎名トレーナーの元で栄冠を掴み取るんだ!!」

 

「でももう上半期のG1は2つしかないが、距離適性的に怪しいマイルの安田記念とシンボリルドルフに並ぶG1を7勝した覇王テイエムオペラオーの宝塚しかない。安田記念に至っては来週だぞ! 無茶だ」

 

「でもどちらかを勝たないと椎名トレーナーから離されるんだったら勝ってみせるから!!」

 

「お前の脚は強くは無いんだ。ここで無理をすれば秋に影響が出る可能性が高い」

 

「それでもここまで鍛えてくれた椎名トレーナーには感謝しているんだ! ……椎名トレーナーが陰で凄い勉強をして、精神論中心だった練習メニューを変えて、最先端のトレーニング方法を模索しているのだってしってる! 椎名トレーナーと共に私は強くなってきたと思ってる! ダービー前にナーバスになった私を叱ってくれてとっても嬉しかった……だから! 離れたくない! チームミラを解散させたくない!!」

 

「ファースト……」

 

「可能性が少なくても有るんだったら両方出る! 安田記念を勝てれば宝塚記念は辞退すればいいし」

 

「……わかった安田記念勝とう! 疲弊した状態だが、今年の安田記念ならチャンスはある……宝塚は行かせない。勝っても負けてもだ」

 

「……わかった安田記念で決める。作戦は」

 

「東京1600はサウジアラビアロイヤルカップで勝っている。やり方は走ったファーストに任せる! 行けるか!」

 

「いける! 必ず勝つ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『【無謀】ダービー2着ガイアファースト安田記念出走決定』

 

『故障する未来しか見えない』

 

『危険すぎる連闘』

 

『暴かれるガイア一族の闇 G1への執念』

 

 

 

 

 

 

 

『おい』

 

「桜か」

 

『電話をかけた理由はわかっているな』

 

「わかっている……ファーストが勝てると見込んでの出走だ」

 

『それは貴様のエゴだろ兄さん……ファーストが壊れたらどうするつもりだ』

 

「ファーストは壊れない。歩調も骨も筋肉も異常はない」

 

『だからといって連闘は無いだろ! 確かに私は結果が伴わなかったらチームの移動を進言すると言ったが、だからといってこんな暴挙に出るのであればそれ相応の報復はさせて貰うぞ』

 

「最初ファーストは宝塚も走るつもりでいた。さすがに止めたが、安田記念を勝てればチームの移動の話はなくして貰うぞ」

 

『報復が怖くはないのか?』

 

「そんなんが怖くてウマ娘を預かれるか!! 担当するウマ娘にとって最善の選択肢を取るのがトレーナーだ!!」

 

『よく吠えた! それだけ言うんだ安田記念必ず勝て! ガイアグループとしては批判的な立場を取らせて貰うが、親としてファーストを頼む』

 

「任せろ、1年前の俺ではない」

 

『期待している』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無謀と思われる挑戦が今始まりますガイアファースト! この安田記念ダービー2着の意地をみせるか! それとも香港の誇るウマ娘! 1番人気のフェアリーキングプローンか! 京成スプリング杯連覇のスティンガーか! それとも伏兵が穴を開けるか! 安田記念今スタートしました綺麗な出たしになりましたがやはりガイアファーストスタートが良い! ポーンと飛び出していきました』

 

『ブラックホークも良いスタートでしたが控えていきます』

 

『ガイアファーストこれは大丈夫か!? 大逃げだ! 既にスパートしているようにも見えるが! 2バ身、3バ身いやいや、5バ身、6バ身離れているぞ!!』

 

『どんどん離れていく1600メートルとはいえ連闘の2400メートルのダービーを1週間前に戦ってきたウマ娘がシニアクラスの中に混じって大胆な作戦に出ました』

 

 

 

 

 

 

 

(ラップを刻め12、11、11で刻めば勝てるんだから)

 

(私には絶対的なスピードは無いけど圧倒的なスタミナがある。エンジンのかかりが遅いってわけでもないから全力で吹かしていけばトップスピードに持っていける!!)

 

 800の標識を通過した時点で44.8

 

 更に私は加速する

 

 緩やかな登りから一気に坂を駆け上がる

 

 後ろからの気配はまだ遠い

 

(マークが無い! 潰れると考えられているのか! いけるいける!! 領域には入れてないけどこれなら……まて、こんな感じで油断して何回負けた。フラグを立てるな最後の直線なんだ! 勝つんだ! 勝って栄冠を掴むんだ!!)

 

 

 

 

 

 

『直線に入ったガイアファースト! 差は7から8バ身!! これはセーフティリード! これはセーフティリード!! それでも加速を続けている! 差が広がる広がる! 2400メートルで上がり34秒の末脚を出せるウマ娘が安田記念の1600で上がり34秒を出せないハズはない!! 差が広がる広がる広がって! クラシッククラスがシニアのウマ娘達を抑えて! 連闘のダメージも乗り越えて! 今! 圧倒的な逃げを完遂したぁぁぁぁ!!』

 

『掲示板にはレコードのランプ! そのタイム1分31秒9!! 1分31秒9! クラシッククラスのウマ娘による安田記念制覇はスウヰイスー以来59年ぶり!! アグネスタキオンも! ジャングルポケットも強かったが! この世代はガイアファーストも居るぞ!! 今年のクラシック世代は一味違う!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やりましたよトレーナー!」

 

「あぁ、見ていたぞ……おめでとうファースト」

 

「ありがとうございます」

 

「どうだ? 領域には入れたか?」

 

「……いえ、見えませんでした」

 

「そうか……日本ダービーと安田記念の連闘でのダメージは大きいだろうから夏はゆっくり休んで菊花賞ぶっつけ本番でいくぞ」

 

「はい!! 3000メートルから私の本領です! 必ず勝ち取ってみせます!!」

 

 こうして安田記念を勝利したことによりお母さんの言っていたチーム移籍の話は無くなった

 

 話は秋のシーズンへと移ってゆく

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