ウマ娘には全盛期が存在する
私の仮説には領域に入ることができたウマ娘はその地点が普通は全盛期である
一部例外は居るが
そういう例外が三冠を取り時代を作っていく
ただ領域に入ることができなかったが、領域に必死に食らい付いていった先輩が1人いる
ステイゴールド先輩だ
最盛期のマチカネフクキタルから始まり、サイレンススズカの悲劇、98世代の最盛期、テイエムオペラオーの時代と最近のウマ娘を全て見てきた大先輩だ
私は菊花賞でのどうしようもない敗北
周りのウマ娘達が学園にもないような最新設備、莫大な費用を使ってメンテナンスをしたのにもかかわらず領域という未知なるものに入っていく
その焦りから私はステイゴールド先輩にご指導を受けたいと思い、土下座している
「お願い致します! ステイゴールド先輩! あなたの知識を私めに伝授いただけないでしょうか!!」
学園の廊下でいきなり土下座した
ステイゴールド先輩は不良で有名な方だ
当然生徒会からも眼をつけられている
そんな彼女が急成長した財閥の令嬢を土下座させたというのは周りに衝撃を与えた
「お、おい! ここは不味い!!」
「どうか! どうか!」
「あぁもう! 立て! 話は聞いてやるからこっち来い!!」
「で、なんだG1勝ちが無い俺に何のようだG1ウマ娘」
「どうすれば領域に入れますか! 領域に入ってきたウマ娘を一番見てきたあなたに聞きたいのです!」
「……誰から領域について聞いた」
「母親とアグネスタキオンから……あと妹が既に領域に入ってるのですが上手く説明できなくて……」
「はぁ……なるほど……それで俺か」
「テイエムオペラオー先輩に先着したのを知っています秋の天皇賞では覚醒したアグネスデジタル先輩も見ていらっしゃったのですよね。ただでとは言いません! どうか教えていただけませんでしょうか」
「……ちょっと横座れ」
「はい!」
ペタペタと触れられる
「あの……何を……」
「お前女神に愛されてないな」
「女神? 三女神様でしょうか」
「あぁ、オカルトチックになるが三女神様のお告げが無いウマ娘は走らねぇとされてる……そこにはシックスセンス……第六感的何かが有ると俺は読んでるが、それが脳に作用して領域を展開しているんじゃないかと思う……良い例がスズカだった。あいつは領域の更に先に踏み出そうとしていた。1800から2400まではあいつには誰も勝てなかっただろうからな」
「沈黙の日曜日のサイレンススズカ先輩ですか……もう走れないあの人もやっぱり領域に入ってたんですね」
「あぁ、領域に突入していたが、あいつは他のウマ娘と違った……絶景が見えたらしい。俺達にして見ればただのレース場だが、あいつは領域の先に何か見えたらしい。それが何か永遠にわからなくなっちまったがな……俺はそれを調べることにした。領域の先が見えれば俺もその力を手に入れられるからな……研究してあれから3年か、俺にもようやく領域ってのに触れることができたが……」
「できたのですか! ではお金は出します! 教えてくだ「お前死ぬぞ」……え?」
「俺は他のウマ娘より頑丈だった。だからスズカが残した領域を俺なりに解析して断片を手に入れられた。ドバイシーマCで俺もようやく領域を展開できるようになった。……それも凄い不恰好なもんだったがな……お前、近親婚かなんかの子か? 心音が他のウマ娘よりも大きい。大きな心臓を持っている証拠だ。スタミナが豊富だろ。ポンプが大きいんだ他のウマ娘よりもスタミナの回復も早いし、その力が領域に入った瞬間に脳の毛細血管か心臓近くの大動脈が負荷に耐えきれずに破裂するだろうよ……エルコンドルパサーがそれに近かった。あいつは運が良かった。体も領域に慣れていたから何とかなったが……競争寿命は縮めたわな」
「悪いことは言わねぇ……死にたくなかったら領域は諦めな」
ステイゴールド先輩はそう言うと席を立った
「ジャパンカップ出るんだろ。俺、オペのやろーにドトウ、それにあー、あいつだジャングルポケット。たぶん領域に突入してる奴が4人も揃う異次元だ。お前はペースメーカーでもして見てろ。お前が永遠にできない物を見せてやるよ」
『さぁ逃げる逃げるガイアファースト! しかし残り200メートルで捕まえられた!!』
ジャパンカップ
私はステイゴールド先輩に言われた事をモヤモヤした気持ちで受け止めていた
しかし、最強決定戦であるここで私が勝つことが出きれば最強の座を奪えると思い、意気込んで挑んだが、領域に突入している面々だけじゃなく、ナリタトップロード先輩にも破れる6着だった
先輩達やジャングルポケットの上がりが凄い早かったかというとそうでもない
領域に入ることができた人達も壊れないところで上手くセーブしているようにも見えた1戦だった
勿論死力を尽くして戦っては居たが、抜かされて後ろで食らい付く中でそう見えてしまったのだ
『お前は領域に入れない……入ったら死ぬ』
その言葉が重く……重くのし掛かった
年の暮れ有馬記念
ステイゴールド先輩はこの前香港の地で領域を証明した
黄金の末脚とも呼ばれる伝説の香港ヴァーズで、その強さを世界に見せつけた
一方私は前回のジャパンカップが記憶に焼き付いて離れない
今日も調子が良さそうなテイエムオペラオー先輩にメイショウドトウ先輩、何を考えているかよくわからないマンハッタンカフェ、トゥザヴィクトリー先輩も調子が良さそうな感じがする
領域に入らなければ勝てない
領域に入り方もわからない
領域に入ったら死ぬ
それでも勝ちたい
ならばどうするか……私は試すことを選んだ
「領域に入らずに勝つ方法を……」
プレッシャー、圧力にトリック
私はジャパンカップから少ない時間を使い、相手に本来の走りをさせない方法を研究してきた
まだ完成には至って無いけど試してみようと思う
ゲートに入り体勢を整え
スタート!
ポンとゲートが開く瞬間に飛び出した私はすかさず先頭を取る
今回道中警戒するべきはトゥザヴィクトリー先輩だ
この人は普段ティアラの方に進んでいるので戦った事があるのが前回のジャパンカップのみだが、この人の逃げを封殺するのは簡単である
まず少し差を離しながらトゥザヴィクトリー先輩を私の後ろに付くように誘発させ、後ろに入った瞬間にスピードを落とす
ただし接触はしないように緩やかに落とすのがポイントだ
最初に大きく逃げてからのペースダウン
しかも周りは私が3000メートルを逃げれるスタミナがあることを菊花賞で知っている
特にマンハッタンカフェは間近で見ていたからよくわかるだろう
だから選ぶのは消耗戦
普通のウマ娘ならペースダウンさせたらそのまま淀み無いペースで走って、最後にギアをあげていくが、私はここで再びペースを上げる
スタミナ自慢のウマ娘が有馬記念には揃っている
事実2500メートルは長距離
2400メートルでもなかなかにキツいが、私はペースを握ることで3000を走っているかのように体力を大きく消耗させる
加速と減速を使い分け、私をマークするウマ娘をまずふるい落す
焦らしだ
先行勢は私をマークしていた、マークさせざる得なくなったトゥザヴィクトリー先輩の不恰好な加減速に焦らしを覚える
それを抜かそうとすれば、私は半身だけ外に体を出す
疑似ブロック
私を抜かすにはトゥザヴィクトリー先輩、更に私の2段階を乗り越えなくてはならず、横にやや広がることで大回りを強要する
抜かされそうになれば私は加速して絶対に抜かせない
抜かせそうで抜かせない
このトリックに引っ掛かったのはアメリカンボス先輩だった
2番手をどうにか確保しようとしているが、それは地雷
私が速度を調整したことでトゥザヴィクトリー先輩とアメリカンボス先輩が横に並ぶ形になる
壁が出来上がったところで私は突き放しにかかる
1000メートルを1分2秒9で通過し、更にぐちゃぐちゃにさせる
影響が一番少ないのは最も後ろに居る人だが、今回は出遅れたホットシークレット先輩で、彼女には二の脚が備わってない
出遅れてしまえばそのまま沈んでいくので最も影響が無いポジションが死に場所となっている
私は1600メートルを勝った幻影をここで使う
スピード勝負にも強くないと勝てないマイル距離を勝っているのでスピード勝負が得意だろうと中盤に備えているウマ娘達に番外戦術で吹き込んだ
そうなると中盤でペースを上げたり下げたりしながらもジリジリと距離を取ろうとする私を捕まえにいかなくてはならない
動いたのはテイエムオペラオー先輩だ
メイショウドトウ先輩も釣られて動いていくが、ペースに付いてこられなくなったトゥザヴィクトリー先輩が沈んでいくのとオペラオー先輩の加速が重なる
後続を巻き込みながら沈むトゥザヴィクトリー先輩を避けるために1バ身以上のロスが生じる
私はそれを確認すること無くスパートをかける
残り900メートルだった
コーナリングで差を広げると残りのスタミナを燃焼させて一気に勝負を付けようとする
コーナーが終わり、坂を登る
まだ後は来ていない
勝ったと思った瞬間背筋が凍る
いや、やはり奴が来た
影響をほとんど受けず、後ろで脚を溜め続けた黒い体の少女……マンハッタンカフェ
レースをぐちゃぐちゃにした影響か彼女しか来ていない
これで斜行して塞ぎにいければ最高だったが、それをしたら反則になるのでやれない
残りの脚を全て使うが、やはり残念ながらマンハッタンカフェから逃げきることはできなかった
『勝ったのはマンハッタンカフェ!!』
収穫はあった
逃げ、先行勢を軒並み壊滅させることができた
逃げを極める
そうすれば恐らく領域にはなれなくても溜め殺しをすることが出きる
世代の頂点を取るのはやめだ
怖い逃げに恐怖を与えることにしよう
その為にはラップタイムや体内時計の調整か……やることは多いな
頑張ろう
この選択が良い方向に転んでゆく