フェアリーフェンサーエフ~元ドルファ四天王の旅~ 作:ゆるポメラ
前回の続きになります。
戦闘シーンって、難しいなぁ……(頑張るぞい!)
それではどうぞ。
「……よいしょっと。侵入成功」
あれから3日かけて辺境の地下牢に着いたレイル達4人。ただ馬鹿正直に出口から入るのはアレなので、もう1つある反対側の入口から侵入したのだ。
『まさか侵入できる入口がもう一箇所あったなんて……』
『それが陽の光が浴びれる窓ですもの。多分、位置的には一番端の牢屋に繋がっているんじゃないかしら』
ティルアとシャルが呟く。
彼女達2人は特殊な妖聖なので、
ちなみにホロンは元からレイルのパートナー妖聖なので、彼の肩にちょこんと乗っているが。
「ラッキー。ここの牢屋の鍵、蹴り飛ばせば開けれるみたい。そーれっと♪」
レイルが扉を蹴る。バコン!と音が鳴って、扉が開く。どうやら内側が脆かったせいなのか、すんなり開いた。
「……(ツンツン)」
何かに気が付いたのか、ホロンがレイルの頬をつついて、あれを見てと言わんばかりに主を呼ぶ。
そこには寝息を立てる看守が居た。
「ぐご~……」
「もしかして……この看守、寝てる?」
『そうみたいね。魔法で眠らされてるみたい。あ、見て、レイ。あそこの看守達も眠らされてるみたい』
近くに寄って観察すると、シャルがそう言った。
確かにこの看守だけじゃなく、他の看守も魔法で眠らされているようだった。ぐっすり眠っている為、大きな声で騒がしい限り起きないのは明白だった。
「寝てるなら好都合だ。とりあえず、散策しながら出口まで行こう」
「……(こくり)」
『そうだね』
『そうね』
その一言に3人は異論無しであった。
◇
「ちょっとファング、起きなさい! ほら、起きるのよ。とっとと、起きて! あたしよ、アリンよ。助けに来たわ。逃げましょ」
同じ頃。別の牢屋で、アリンと呼ばれた少女が牢屋を開ける鍵を使って、ファングと呼ばれた青年を叩き起こす。
「助ける? 誰をだ?」
「あんたに決まってるでしょ! パンを無銭飲食して捕まるなんて全く情けない。早く起きて! 逃げるのよ!」
そう言ってアリンは、早く逃げるように促す。ファングが捕まった理由があまりにも情けないが。
「逃げる……なんでだ?」
「あんたには
「……嫌だね。俺はここが気に入った。ここで一生を過ごす。だから放っておいてくれ」
それを聞いたアリンは呆れたのか目を細める。
「……は? あなた分かってるの? ここは牢屋なのよ、牢屋」
「分かってねえな。ここにいれば、タダで
まさに天国だ。とアリンに豪語するファング。
「……バカ、そんな美味しい話があるわけないでしょ。この街では、食料を盗む事は重罪なのよ。しっぺ百回の刑よ」
手が腫れて動かなくなっちゃうんだからと注意するアリンだが……
「それはいい、もう顔を洗わなくて済む」
「呆れた。あなた本当にバカなのね。手が動かなくなったら、もうご飯も食べれなくなっちゃうのよ」
「よし、逃げよう。
切り替えの早さに額から汗を流すアリン。彼が言ってた『兄貴』という単語が気になったが、牢屋から出る気になったから結果オーライとしよう。
◇
「……いやー、散策してみたけど、あんまり目ぼしい物はなかったね」
「……(コクコク)」
『えーっと、レイ? そもそもここ牢屋だよ?』
「うん。でも、加工ができそうな石ころぐらいだもんね、見つかったの……ちょっと残念」
『ティルアが言ってるのは、そういう意味じゃないんだけど……』
地下牢を散策して数10分。
牢屋の中を漁っては、古い樽の中を探してみたりと色々やってみたが、全く目ぼしい物は見つからなかった事に、肩を軽く落としながら残念がるレイルとホロン。
ティルアがそもそも牢屋なんだし、と言うが見事に会話が噛み合っていなかった。シャルはそれを見て苦笑い。
「……それで、誰も抜けない剣を抜いたから、パンぐらい大目に見てくれる、と思った訳ね……。考えが甘いわ」
「別に盗んだ訳じゃねぇ。試食品だと思ったんだ。いっその事、この剣を金に替えちまえばよかったぜ」
「……?(なんか聞き覚えのある声がするな。ティルアとシャルが言ってた無銭飲食した人かな?)」
何やら男女が喧嘩をしてる声が聞こえた。
レイルは気づかれないように、会話を聞きながら足を速める。すると人影がうっすらとだが確認できた。
「ひ、ひど! あなたはフューリーに選ばれたのよ? この意味分かってる?」
「うっせえな! 最終的にどうするかを決めるのは自分だって、俺は兄貴から教わってんだ。お前の都合を俺に押し付けんな!」
「……(この2人、地下牢のど真ん中で何してるんだろう?)」
傍から見たら、口喧嘩してるようにしか見えない。
しかし場所が場所だ。とりあえず、声をかけてみよう。1人は自分の事を『兄貴』と呼んでる時点で誰かは察しはついたが。
「ファング」
「あ? ……って、兄貴!? 何してんだよ、こんな所で!?」
「……え? あ、兄貴? この子が? お姉さんじゃなくて?」
声をかけたレイルの姿を見たファングは驚き、アリンはファングより背が低い152cmで黒を基調としたワンピースを着ており、両腕に赤いリボンを巻いた美少女?を見て戸惑っていた。
「簡単に説明すると、この街でフューリーを抜いた人がいて、その人が無銭飲食して捕まったから、どんな人かなーって思って散策がてら見に来た。ダメじゃん、ファング。無銭飲食しちゃあ……」
「試食品だと思ったんだよ。腹減ってたし……」
「まあ、ファングの場合、試食品だったら、ちゃんと区別つくもんね? 大方その店、試食品のプレートが書いてなかったんでしょ。次からはちゃんと店員さんに訊くんだよ?」
「はーい。次からは気をつける……」
「ファングがあっさり言う事を聞いた!?」
レイルがめっ!と言って注意すると、ファングは素直に次からは気をつけると言って頭を掻いた。その光景を見て驚くアリン。
「……ところで君はファングが抜いたっていう剣の妖聖?」
「そうなの! しかも聞いてよ! 宿っていたのはおっさんでも不思議な動物でもなく、こんな可愛い女の子の妖聖だったのよ? もっとウハウハしてほしいわよ!」
「……いや、ファングにそれを求めろって言うのは難しいと思う」
アリンはそう言うが、ファングの性格上、こう言われるのは仕方ないとレイルは思ってた。
「貴様ら! そこで何をしている!」
すると騒ぎを聞きつけたのか、衛兵達がゾロゾロと集まり出した。
「やばい、見つかったわ、衛兵達よ!」
「お前がデケー声を出すからだろうが」
「……そうだね。今更だけど、ここが地下牢って事を忘れてたよ、僕」
ファングの言葉にレイルは頷いた。そりゃこんな大声で騒げば気づかれるって。
「ファング、ここの衛兵達は僕がやっておくから、2人はこの先にある出口に向かって外に出て。今後どうするかは2人で話して自分で決める事。いい?」
「……分かった。約束する」
「ん。それなら良し。あとこれ渡しておくね?」
そう言って、レイルがファングに渡したのは弁当箱のようなものだった。しかも2人分。
「ここを無事に出て、道中に2人で食べなよ? あ、お弁当箱はあげるよ。今後何かに使って」
「分かった。おい! 行くぞ!」
「え? ちょっと、この子を置いて行っていいの!?」
兄貴なら大丈夫だからとアリンに言って、出口に向かって走るファング達。
「よし。妖聖のあの子も一緒みたいだし、大丈夫でしょ。さて……」
「貴様! たった1人でこの人数をやれると思うのか!」
衛兵の1人が剣を構えながら、そう言った。
「……君達、威勢だけはいいね? ホロン、フェアリンク」
「……(こくり)」
レイルがホロンにそう呟く。するとホロンの体が輝き出し、槍のような形状のボロい釘に姿を変えてレイルの右手に収まった。
「はっ! そのボロそうな武器で何ができ……」
何ができるんだと言おうとした瞬間、衛兵達の身体は真っ二つになった。
「……ふぅ。こういうタイプの人間って、相手が格下だって見るや否や、こうだもんね、学習しなよ。来世でね」
「……(コクコク)」
追っ手が来る気配もないので、とりあえず自分達も出口に向かう事にした。
『レイ、さっきの子達が向かった出口の方から、別の力を感じる』
「……ティルアがそう言うって事は、ファング達が逃げた出口から別の追っ手と鉢合わせしたのか」
侵入した入口近くまで向かおうと思った矢先、ティルアがレイルにそう言った。ここの地下牢の出口は、自分達が侵入した隠しの場所とファング達が逃げた場所の2つしかない。
『レイ、どうするの?』
「……ファング達が無事に逃げられるように隙を作る。相手が誰だか分からないけど、一回だけ攻撃したら僕らも天井をぶち抜いて逃げるよ」
シャルの問いに、レイルはファング達が逃げれるよう隙を作った後、自分達も即座に逃げるという選択をした。
◇
「く……っ。なんなんだお前。これがフェンサーの力……!?」
「貴様の剣には何も無い……。覚悟も信念も」
一方でファングも出口が見えた途端、立ち塞がっていた1人の男に苦戦を強いられていた。
「そんな剣では私を倒す事は出来ん!」
「ちっ!」
「ファング、ここはいったん引きましょ! 今のあなたじゃ勝ち目はないわ!」
相手の男は只者じゃないと判断したアリンは、今は逃げる事をファングに優先した。
「バカ、ナメられたまま逃げ出せるか!」
「いいから! 少しはパートナーの言う事も聞きなさい!」
「おい! ちょ、引っ張るな!」
言う事を聞かないファングをアリンは強引に連れ出そうとするが……
「逃がさん」
ゆっくりとこちらに迫る男。手に持つ大剣型のフューリーを振り下ろそうとした時だった。
「(殺気……!?)く……っ!」
自分の背後から感じた殺気に男は反射的に大剣を盾のように構えをとるが、巨大な衝撃波がこちらに迫ってきた。受け止めた剣で衝撃波の軌道を何とかずらす。
「ファング、今のうちに逃げるわよ!」
一瞬の隙ができたアリンはファングを連れて、男に背を向けて出口に向けて走り出した。
「逃がした、か。あのファングという者、フェンサーとしては未熟だが、我が魂を震わせる何かがあった。暫しの間、猶予を与えてみるのもいいか……」
第3者による攻撃でファングとアリンを逃がしたその男……アポローネスはファングとの戦いで何かを感じ、逃がしてはしまったが、猶予を与えてみる事にした。
「しかし先程の攻撃……」
それよりもアポローネスは気になる事があった。第3者によって攻撃され、とっさの判断で衝撃波の軌道をずらした方を彼は見る。
「……(魔法による衝撃波かと思ったが、この壁の切れ込み、そして受け止めた際に感じた重み……間違いなく純粋な剣による衝撃波。もしや……)」
こんな芸当ができる人物をアポローネスは知ってるが、まだ確証が持てない。
「……もし先程の攻撃をしてきた者が、私の想像通りならば……セグロよ。お前もうかうかしてられぬぞ」
『ぐおおおーっ!』
アポローネスの言葉に彼のパートナー妖聖、セグロが答えた。どうやらセグロも自身と同じ事を思ってたらしい。
「道は違えど、武の道や己の信念を貫く者同士、引かれ合うのも宿命という事か。レイル、そしてホロン。……もし先程の攻撃がお前達だとしたら、ここ数年の見ぬ間にまた腕を上げたようだな。いずれお前達と会う日が来た時にそれまで更に剣の腕を磨かなくてはな」
アポローネスは期待に胸を膨らませる。
もし先程の攻撃の主が、かつての好敵手とそのパートナー妖聖だとすれば、どこかで彼らに会った時、期待に応えられるよう、更に剣の腕を磨かなくてはと思うのだった。
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。