フェアリーフェンサーエフ~元ドルファ四天王の旅~ 作:ゆるポメラ
前回の続きになります。
ティアラ登場回になります。
それではどうぞ。
「やっと着いたー」
ゼルウィンズで準備を済ませ、無事にソーヨル草原に着いたレイル達4人。
『やっぱりここは何回来ても落ち着くね♪』
『そうね。いつもの小鳥の囀りが聞こえるのも変わらないわね』
ティルアとシャルが言う。
ソーヨル草原はのどかな草原で、様々な動物が生息している。遠くに見えるシュケスーの塔が確認できるのもレイル達にとっては見慣れた光景だ。
「……(ペシペシ)」
「ん? はいはい、分かってるよ。モンスターにも気をつけるってば」
レイルの頬を軽くペシペシと叩いて注意事項をするホロン。
そう。この世界では動物だけじゃなく、モンスターも存在する。なのでモンスターに細心の注意を払う。見つからないように。それと生態系を壊さないためもある。
もしも生態系のバランスが崩れてしまったら、自然豊かなソーヨル草原が枯れた大地になってしまう。
「さて。いつもの場所まで歩いて、お弁当やお菓子を食べよっか」
「……(コクコク)」
『さんせー♪』
『ホロンも言ってたけど、モンスターには気をつけて……よね?』
現在地から少し歩いた場所にレイル達しか知らないお気に入りの場所へ向かう4人であった。
◇
「あっ、あれじゃない?」
同じ頃。
ゼルウィンズで情報屋のロロからフューリーがこのソーヨル草原にあると聞いてやってきたファングとアリン。少し歩いていると地面に突き刺さったフューリーを見つけた。
「あそこに刺さっているのが、フューリーだよね?」
「ったく、散々苦労させやがって。とっとと引っこ抜いて、ずらかろうぜ」
ファングがフューリーに近づいた時だった。
「そこのお方、お待ち下さい」
誰かに呼び止められ、振り向くと、そこには少女がいた。
腰の辺りまで伸びる水色の髪は一見すると銀色にも見えるくらいに綺麗に透き通っており、ゴシックロリータ風の蒼いドレスの服を身に包んでいた。
「旅のお方、見ればずいぶんとお疲れのご様子」
「いや、そこまで疲れてねえけど」
ぶっきらぼうに答えるファング。
「いいえ、お疲れに決まっています。よろしければこちらのお茶をお飲みください」
疲労回復に効果がありますのよと言って、ファングにお茶を勧める少女。
「お、美味そう。ちょうど喉が渇いていたんだよ」
「ちょっと、いくらなんでも怪し過ぎるでしょ。知らない人から貰ったものを食べちゃいけないって、助けてくれたあの子に教わらなかったの?」
目の前の少女が怪しいと感じたアリンは、レイルの名前をさり気なく出しながらファングに警告するが、ファングは美味しそうにお茶を飲む。
「うっ。か、体が……動かねえ」
「もしかして、痺れ薬!? もう、ファングの馬鹿。だから怪しいって言ったのに!」
ファングが飲んだお茶に痺れ薬が盛られていた事に気づくアリン。しかしファングもファングで、疑いながらも何故飲んだのか分からなかったが。
「何者だ、てめえ」
「あら、お茶をご馳走になっておいてお礼も言えませんの? 無礼な方ですね。
「キュイ、キュイ」
痺れ薬を盛った少女……ティアラは名乗った。長い耳を持つ白い小動物のような妖聖が呼ばれたかのように鳴いた。
「あなた、薬入りのお茶などという古典的な手に引っかかるなんて、フェンサーとしてはまだまだですわね」
そして、お礼という建前で、フューリーを持ち逃げしようとするティアラ。
「ちょ、ちょっと待て、汚ねえぞ」
「ご冗談を。私は綺麗ですわ。ほら、お飲みなさい」
そう言って、ティアラは液体が入った小瓶をファングに放り投げた。
「な、なんだ、また毒か」
「いいえ、解毒剤です。あなたをこのままにしておくのは忍び難いですから。これを飲むと5分もすれば痺れは解けます」
まあ、その間に自分はおさらばしてますけどと付け足す。
「一瞬優しいかと思ったが、やっぱり汚ねえ!」
「あら汚いのはあなたの顔ですわ。パートナー妖聖さんも残念なお顔ですし。まあ、お二人ともお似合いですけど」
「な、な、なんですってえぇぇぇぇぇ!」
言いたい放題言われ、顔を真っ赤にして怒るアリン。
「そうそう。それにスゲー口うるせーんだわ」
「あら、気が合いましたわね」
「気が合ってる場合じゃないでしょ! 人の事をなんだと思ってるのよ!」
アリンの言葉にファングは我に返る。
「そ、そうだった。上品ぶった残念女! 根性真っ黒だな、ろくな死に方しねーぞ!」
「な、なんて非道い事をおっしゃるの……あ、あ……でも……なんだか新鮮……」
「なに、この女……」
ファングの苦し紛れの罵声に何故か高揚した表情になるティアラ。それを見てドン引きするアリン。
「それでは、目的の品も手に入れた事ですし私は失礼いたしますわ。ごきげんよう」
そう言い残してティアラは離れていった。
◇
ソーヨル草原から街道へと向かうためティアラが歩いてると、1人の男がティアラの前に現れた。
「あら、どちら様?」
「へへへ、オレは所謂ちんぴらさ。お決まりのキャラってやつだ。大人しくそのフューリーを渡すんだな」
「お決まりなキャラであって、随分とつまらないお顔をしていますのね。そもそも差し上げるものはございません」
ティアラがそう返すと、ちんぴらはニヤニヤと受け流した。
「なら腕ずくで頂くぜ。あんたごとな。その綺麗な顔が泣き顔になるのが見てみたいねえ」
「それは俺も見たい」
「!?」
ちんぴらが振り向くと、そこにはファングとアリンがいた。
「……!? だ、誰だ。てめえら」
「あら、ファングさん……だったかしら?」
「そうだ」
「なるほど。私を追いかけてきたんですね。わかりますわ、私を愛してしまったのですね」
「ンなわけねーだろ!」
顔を歪めながらファングが言う。
「てめえ、この女の仲間か!?」
「違う」
「ええ、そうですわ。こちら、私の頼もしい下僕ですの」
「絶対に違う」
そう問われ違うと答えるファング。ついでにいつの間にかティアラに下僕扱いされてる事も否定する。
「ファングさん、私この方につきまとわれて困ってましたの。助けていただけます?」
「って、誰があんたの味方なんか……」
あれだけの事をしておいて、アリンはティアラに呆れた。
「へへっ、お前もフェンサーか。ならお前のフューリーを置いてきな」
「あちゃー……」
何故か自分達もちんぴらの標的にされてしまったようだ。
「……なあ。なんでお前、米粒なんて付けてんだ?」
「「「は?」」」
ファングの突然の言葉に、ちんぴらだけでなく、アリンとティアラも目が点になった。
「やべ、さっき香草を取りに行ってた女のガキから盗んで食べた弁当の米粒か。そんな事はどうだっていいんだよ!」
ファングの指摘にちんぴらが反論した時だった。
「……みぃ~つ~け~た~~……」
「……は?」
突然の爆発音。ちんぴらの背後から何者かの低い声が聞こえた。
「(今の声……)」
その声を聞いたティアラは懐かしさを感じた。魔法を使ったのだろうか、白煙で姿がよく見えない。
「あ! ファング! あの子!」
「は!? あ、兄貴!?」
「あ、兄……貴?(もしかして、ファングさんのお兄様なんでしょうか?)」
声の主を姿が確認できたのか、アリンとファングは驚愕の表情。それを見たティアラはファングの兄かと推測していた。
しかしそれは彼女の予想を大きく裏切った。
「……みぃ~つ~け~た~~、みぃ~つ~け~た~~。僕達の昼食泥棒みぃ~つ~け~た~~……」
「えっ!? レ、レイルお
「「は?」」
声の主……レイルの姿を見て、ティアラは驚愕の表情。その言葉を聞いたファングとアリンは目が点になった。
「てか何だよ、お前。兄貴の事、知ってんのか」
「しかも呼び方のニュアンスが……」
「そういう、お二方こそ、お義兄様とはどういうご関係なのですか」
お互いにレイルとはどういう関係だと訊くファングとアリン、そしてティアラ。
「て、てめえ、さっきのガキか! お前もこいつらの仲間だったのか!?」
「こいつらって?」
そんな3人をよそに突然、自分の背後に現れたレイルに驚きながらも反論するちんぴら。そして当人は首を傾げながら振り向く。
「あ。ファングとパートナー妖聖ちゃんじゃん。か弱い女の子と一緒にデート? 両手に華だね」
「いや、ちげえよ。誰がこの上品ぶってて残念腹黒女なんかと……俺、寧ろ被害者なんだが……」
「ま。僕も偉そうに言える立場じゃないから、問い詰めはしないけど。……で、なんだっけ? どういう関係かって? 弟分と僕の
ファング達に気付き、冗談交じりな会話をしつつ、獲物を狩る目でちんぴらの質問に答えた。
「それより自分の事を心配したら?」
「は? てめえ、何言って……っ!?」
ちんぴらが気付いた時にはもう遅かった。
何故なら、レイルのパートナー妖聖、ホロンが自身の基本形態である槍のような形状のボロい釘をちんぴらの首元に突きつけていたのだから。
「へっ、こんな虫みたいなちっこい奴に何が……「黙れ、目玉抉られて死にたいの?」ひいぃっ!?」
ホロンの見た目をバカにしたちんぴらだが、レイルの殺気のこもった低い声色を聞いてビビってしまう。
「
「「「……4人?」」」
レイルの『4人』という言葉に違和感を感じたファングとアリン、ティアラの3人。
彼の言う、4人の内の2人はレイルと彼のパートナー妖聖のホロンで間違いないだろう。では残りの2人は?と思った3人だが、姿が確認できない。
「う、うるせえ! だいたい名前でも書いてなかっ……「は? 名前ならちゃんと書いてあったけど」……は?」
ちんぴらの言葉を遮るレイル。そしてその証拠である空の弁当箱を見せつける。そこにはちゃんとレイルの名前が記されていた。
「……あーあー。あのちんぴら、完全に兄貴を怒らせやがったな。やっぱ食い物の恨みは恐ろしいぜ」
ニコニコと笑ってるが、明らかに怒ってるレイルを見たファングは、ちんぴらを哀れみの目で見ると同時に心の中で合掌した。
「まあでも……僕もそこまで鬼じゃないから。ホロン、予備の縄あったよね?」
「……(コクコク)」
「よし。じゃあこいつを縛り上げよっか」
そう言うと、レイルとホロンはちんぴらをぐるぐる巻きに縛り上げた。
「て、てめえ! オレをこんな風にしてどうする気だ!」
最早、簀巻き状態になったちんぴらがファング達のところに向かうレイルに喚いた。
「? どうするもこうもこの場で放置するだけだよ。ソーヨル草原に生息するモンスターは、そこまで強くないけど夜になると稀に凶暴なモンスターが出てくるからさ。餌にならないように気を付けなよ?」
その言葉の意味を理解したちんぴらは顔が真っ青になるのであった。
◇
「おい兄貴、いいのかよ。アレ放っておいて……」
「あのちんぴらの事? 仮にもフェンサーなら、ああいう状況になった場合の体験をさせてあげないと」
ファングの疑問にやんわりと軽く答えたレイル。そして今度はティアラの方を向き……
「それにしても大きくなったね? ティアラ。雰囲気で直ぐに分かったよ」
「あ、あの……お義兄様? その、私もう子供じゃありませんってば……」
背伸びをして、よしよしと言いながらティアラの頭を撫でた。子供扱いされたティアラは頬を膨らます。
「ところで、なんで2人はここにいるの?」
「あ! そうだった! あんた、あたし達のフューリー返しなさいよ!」
レイルの言葉を聞いて、思い出したのか、アリンがティアラに詰め寄った。
「えっと……ファング? どゆこと?」
「あー……実はな……」
アリンとティアラが騒いでる間に、レイルはファングから地下牢から脱出した後、今の状況に至るまでの経緯を聞く事にした。
「なるほど。アリンちゃんの記憶を取り戻す為に、とりあえずフューリーを集める事になって、ソーヨル草原に来たら、ティアラに痺れ薬入りのお茶を飲まされ、追いかけて今に至ると……」
「キュイ、キュイ♪」
レイルが今の状況を纏めてると、キュイが肩に乗ってきて頬擦りしてきた。
「こら、くすぐったいてっば」
「キュイ♪」
「こらキュイ、お義兄様を困らせてはいけません!(キュイが私以外の人にこんなに懐くなんて……)」
慌ててティアラがキュイを引き剥がすと同時に、初対面の人にこんなに懐くキュイを見て驚いていた。
「あーあ、誰かさんのせいで、お昼ご飯は盗まれるわ、誰かさんのせいで、お昼ご飯は台無しにされるわで気分が悪いよ! 全く……」
「「「……(相当、嫌だったんだな(のね)(ですのね))」」」
わざとちんぴらに聞こえるように文句を言うレイル。その様子を見て3人は、さっきのを相当根に持ってるんだなと思った。
「それでしたらお義兄様? 私の縁者が宿屋を経営しておりますので、そちらでお食事はいかがですか? お義兄様さえよろしければ、お泊まりの場所も提供しますわ」
「まぁ、ゼルウィンズ外で野宿もアレだなって思ってたし。それにティアラには話しておきたい事もあるから、お言葉に甘えようかな」
それにティアラの縁者が経営してる宿屋なら、知り合いや元仕事仲間に遭遇する事はあまりないだろう。
「それじゃあ、ティアラ、宿屋までの案内お願いしてもいい?」
「ええ、もちろん。付いていらして下さい」
「あ、ファング。何か食べたいものとかある? リクエストがあるなら作ってあげるけど?」
「マジか!? じゃあ俺、兄貴が作る玉葱多めのオムライスが食いてぇ!」
「どんだけ楽しみなのよ……」
やれやれ、着いたら色々とありそうだなと思ったレイルであった。
読んでいただきありがとうございます。
本当だったら最後辺りにシャルマンがちょろっと登場するんですが、まだ出しません。(その代わり出番は増やす予定です)
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。