フェアリーフェンサーエフ~元ドルファ四天王の旅~ 作:ゆるポメラ
前回の続きになります。
それではどうぞ。
「それじゃ、準備をしっかり整えたらクラヴィーセ洞窟に行くよ」
「おう」
「あいあいさー」
レイル達はクラヴィーセ洞窟に行く前に、大都市ゼルウィンズで準備する事に。
「ん?」
「どしたの、ファング?」
何かを発見したファングにレイルが声を掛ける。
「いや、あそこにいるのってアレだよな。
「…ほんとだ。エフォールが居る……」
視線の先には確かにエフォール、その隣にはパートナー妖聖の果林も居た。
「エフォールさん? あの奇抜な格好の方がですか?」
「あれ? 前はあんな格好じゃなかったんだけど」
アリンの言う通り、今のエフォールの格好は以前のようなシックな暗殺者装束ではなく、スコープが付いた眼帯とうさ耳フードを身につけ、肌を大胆に露出させた衣装だった。
「なあ、あいつに話しかけてみようぜ」
「ええっ! いやでもまた理不尽な理由で襲われるのがオチだと思うわよ?」
「まあ待て。前回は出会い頭の印象が悪かっただけだ」
「……なるほどね。それは言えてると僕も思うよ」
それを聞いて、一理あるなとレイルは思った。
「だろ? 相手と同じ土俵に立てば、向こうも心を開いてくれるさ。上手くいけば仲間に出来るかもしれない。おーい、エフォール!」
そう言ってファングはエフォールに話しかけに行った。
「?」
「殺殺殺、殺殺殺殺殺」
「ちょ、ちょっとファング!? 同じ土俵ってそういう事!?」
「…ある意味、同じ土俵といえば、同じ土俵だけど……」
同じ土俵って、エフォールが使ってた『殺殺殺殺殺』という言葉遣いの事か……と呆然とするアリンとレイル。
「殺殺殺殺殺殺!」
「殺殺殺、殺殺殺殺、殺。殺殺」
「なんだこのバカは。ふざけてるのか?と、エフォールは申しております」
「自分の事を棚に置いたー!」
「ですよねー……」
ちゃんと通じてるのかなー?と期待したレイルだったが、果林の通訳を聞いてしまった途端、やっぱりそうなのかと苦笑いを浮かべるしかなかった。
「殺殺殺殺殺殺殺殺殺」
「殺殺」
「寄るな不審者。と申しております。……あのう、私からもエフォールに近寄らないようお願いします。教育に悪そうなので」
それだけ言うと、エフォールと果林は去ってしまった……
◇
「着いたな」
「……確か、この最奥だったよね、フューリーがあったのって?」
「うん。多分そこでエフォールと会う事になる筈。この2つが実現したら、あたし達の事を信じてくれてもいいよね?」
クラヴィーセ洞窟に着いて、ティアラに説明するアリン達。
「……どう思います? キュイ」
「キュイ、キュイキュイ!」
「アタシの中であなた方の不審者レベルはマックスに達しているの! ちょっとやそっとの事では信用出来ないわ!と、キュイは申しております」
「って、ハマっちゃってんのかい!」
果林の通訳にハマったのだろうか何故かティアラはキュイの通訳の真似をしていた。それに突っ込むアリン。
「……こら、ティアラ。大袈裟に脚色するんじゃないの。キュイはそこまで言ってないから。今のところ半信半疑しか言ってないじゃんか……」
「あ、そっか。レイルはキュイの言葉が解かるって、前の世界でも言ってたもんね」
「そういや言ってたな」
「え、ええっ!?」
まさかの言葉に驚くティアラ。
「……全く。キュイが他の人に喋れないのをいい事に、都合よく脚色するんじゃないの。その辺、パートナーとしてどうなの? キュイが精神的に傷つくとか考えないわけ?」
「ご、ごめんなさい……」
「そういう事をあんまり続けてると、元々悪気もないキュイが色んな人に殺される立場になるんだからね? 嫌でしょ? そういう事になったら」
「は、はい……以後、気を付けます……」
「…ん。分かればよろしい。ごめんねキュイ? ティアラに強く言っちゃって」
「キューイ♪」
「キュイは優しいね。ほらティアラ。そんな落ち込んでだ顔してると、せっかくの可愛い顔が台無しになるよ? 笑顔、笑顔♪」
「え? あ……はい♪」
「「……((こ、怖え(い)……! さっきの兄貴(レイル)、目が完全に笑ってなかった……!))」」
この後、ティアラに謝られたファングとアリンは気にしてないと笑いながら返した。そう返した理由は、先程のレイルが怖かったからというのもあるが。
「確か……キュイに似た生き物と過ごしてたって言ってたよね? どんな子なの?」
「ちょうどいい機会だし、3人に紹介しておくよ。ミュイ」
「ミュイミュイ!」
レイルが呼ぶとミュイが姿を一同の前に現した。
「似た生き物っていうか……色違いじゃねえか!?」
「ほんとだ。しかも大きさもキュイと同じだ……」
「ほ、本当ですわね……強いて言うなら、身体の色が薄紫色で瞳の色が金色というところでしょうか……でも、外見がキュイにそっくりな妖聖を見るのは初めてです」
ミュイを見たファング達は予想通りの反応だった。
「ちなみにミュイの正式名称は、
「ミューイ♪」
「うん。よろしくね。ミュイ」
「こちらこそよろしくお願いしますわ」
「キューイ♪」
女性陣は仲良くなるのが早いなとレイルは思った。
「そういえば、エフォールの服装が変わってたよね。過去に戻ってきた筈なのに、どうして前と違うんだろ?」
「言われてみれば確かに妙だな。この先で会ったら本人に直接聞いてみるか」
「僕も異論なし。そうしようか」
もしかしたらこのタイムスリップについて、新しい事が分かるかもしれないと思ったレイル達は先に進むのだった。
◇
しばらく進み、そろそろフューリーがある最奥近くまで行くと、どうやら先客が居た。
「よし、フューリーを手に入れたぞ! これでボーナス増額間違いなし!」
「ボーナスはいいけど、私は戦いたいのよね~。あなたって小心者で直ぐに逃げ出しちゃうから、全然戦う機会がなくて太っちゃいそう」
その正体はドルファ四天王の1人、パイガとパートナー妖聖のビビアだった。
「ふん、賢い人間はそう簡単に剣は取らないものさ」
「殺っ!」
「うわっ!?」
何者かの襲撃にパイガは寸前のところで避けた。
「こんにちはー! こちらエフォール、私はパートナー妖聖の果林です。エフォールに目を付けられた貴方達、気の毒ですが死んでもらいます」
襲ってきた者の正体はエフォールだった。
「来た来た! 私の出番ね」
「あら、平凡なサラリーマン面して、ずいぶん過激なお姉さんを連れてますね。なんだかいやらしい」
「仕方ないだろう! 妖聖は自分じゃ選べないんだ。こいつの格好のせいで、道行く人からも妻子からも冷たい目で見られてるんだぞ!」
「とか言って、嫌いじゃないくせに♪」
ビビアの格好を果林に指摘されたパイガは反論するが、ビビアが余計な事を言ってしまう。
「殺、殺殺殺殺! 殺殺、汚殺殺!」
「ええ、汚らわしいおじさんはさっさと片付けましょうか」
「……(なんかパイガのとっつぁんが可哀相に見えてきた)」
どのタイミングで出ようかなと思った考えてたら、ファングがエフォールに声を掛けた。
「やっぱりいたな、エフォール! それとお前は……誰だっけ?」
「お前こそ誰だ!」
「……(今のパイガのとっつぁんの突っ込み、キレがあったよね……)」
「……(コクコク)」
物陰に隠れながら思わず感心してしまうレイルとホロン。
「まあいいや。それよりエフォールに聞きたい事があるんだ」
「?」
首を傾げるエフォール。
「よし、今のうちに……!」
「え~、逃げちゃうの~? せっかく戦えると思ったのにぃ……」
「!」
そしてその隙にパイガは逃げて行った。
「……殺! 殺殺殺殺!」
「お前のせいで獲物が逃げた。どう落とし前つけてくれんだよ。と、エフォールは申しております」
どうやらお怒りのようだった。さて、どうしたものかとレイルは考える。ファングに悪気はないので彼女とは穏便に済ませたいものだ。
「うーん、落とし前ねえ……どうしようかなぁ?」
「えっと……レイル? 出来れば穏便にね? 前みたいのはちょっと……」
「俺が言うのもなんだけど、俺からも穏便に頼む」
「? いや、穏便に済ます予定だけど……」
それを聞いたファングとアリンは安心した。またあの物騒な『お仕置き』を見るのはごめんである。
「それで落とし前だっけ? これで許してほしいな? ホロン?」
「……(スッ)」
そう言うと、レイルの頭に乗ってたホロンがエフォールと果林の前に降りてきて、2人にアイスキャンディーを渡した。ホロンの顔が形になってる水色のアイスキャンディーを。
「これを……私達にくれるんですか……?」
「……(コクコク。ひそひそ♪)」
「~~~~~っ!?」
「殺?」
「な、ななな、なんでもないです!」
心なしか果林の顔が紅い。エフォールも彼女の様子がおかしい事に首を傾げていたが、果林はなんでもないと首を振っていた……
「ほら、ファング。今のうちにあれを聞いといたら?」
「そうだった。エフォール、お前なんでそんな服着てんだよ」
アリンに言われ、ファングはエフォールの服装について訊ねる。
「可愛いでしょう、私が選んだんです。エフォールにはもっと女の子らしいものに興味を持って欲しくて」
なんとエフォールが着てる服は、果林が選んであげたらしい。なるほど、それでうさ耳フードだったのかとレイルも理解した。
「でもそれを着るのは、なんつーか……だいぶ勇気いるよな。自己主張が強いっていうかなんつうか……俺だったら金を積まれても着れないね」
「ファング、そんな痛い子を見るような目で見たら失礼よ。あたしも着れないけど」
「そうです、失礼ですわ。まあ私も着れませんが」
男性であるファングは兎も角、女性であるアリンやティアラも着れない……らしい。
「そう? 僕とホロンは普通にエフォールの服着れるけど?」
「……(うんうん)」
『あー、確かにレイとホロンなら普通に着こなせそうね。尤もホロンの場合、
『そうね。違和感ないし』
『ミュイミュイ!』
「「「えっ……?」」」
レイルの一言に同意するホロン、頷くティルアとシャル、そしてミュイ。それを聞いて口をポカンと開けるファング達。
「…………殺!」
場の空気に耐えかねたのか、エフォールは洞窟の外へと消えていった。
「ああっ、エフォール! 行かないでください! エフォールは痛い子なんかじゃありませんよー!」
そして果林もエフォールを追いかけていった。
「……結局、前回と同じような感じになっちゃったわね」
「あいつとの付き合い方だけは、何回やり直しても分かる気がしねえ」
「まあ、こればかりはね。しかも律儀にホロンがあげた手作りアイスキャンディーは持ち帰ってくれたみたいだし……」
「……(コクコク)」
なんか未だに遠くから果林の『エフォールは痛い子なんかじゃないですってばー!』と聞こえた……気がした。
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。