フェアリーフェンサーエフ~元ドルファ四天王の旅~ 作:ゆるポメラ
前回の続きになります。
それではどうぞ。
ロロからの情報でビューイの谷にやってきたレイル達。
「……気のせい、か」
「どうしたの? あ、そうか。確か……」
「…また襲ってくるかもね」
ファングが何かの気配を感じた事に疑問に思ったアリンとレイルが訊く。だがその疑問は直ぐに分かった。
前の世界と同じパターンならば、もしかしたら、彼女が自分達を付けているのかもと。
その事に気をつけながら先に進むのであった。
◇
「……殺」
「……(付いてくる気配は変わりなし)」
しばらく進んでるが、相変わらず自分達を付いてくる気配を感じながらレイルは観察していた。
「今……聞こえたな。どこだ、どこにいる?」
「さっきから、何をキョロキョロとされてますの? 挙動不審者は通報されてしまいますわよ?」
「うるせーな……俺には俺なりの考えがあるんだよ」
ティアラの言葉にファングはちげーよと否定する。何も知らない彼女からすれば、ファングの行動がそう見えても仕方ないのだが……
「我らを狙っている者がいるな……斬るか?」
「この感じ、1人……みたいだけど」
「流石にアポロとマリーも気づくよね。で? ファングはどうしたいの?」
流石にアポローネスとマリアノも自分達を狙っていると思われる視線には気づいたようだ。とりあえずファングに意見を訊く。
「俺はそいつと戦いたくない」
「だよね。僕も正直言うと、ファングと同じ意見だし」
「……(ツンツン)」
「レイル~、ホロンが
するとホロンが何か訴えてきたので、視線を向けると、クララが通訳してくれた。
「多分、ビューイの谷に生息してるモンスターだろうね。ホロンが獰猛な視線って言ってるから……鳥獣系のモンスターだね」
「俺ら狙われてんのか?」
「……どうだろうね。とりあえずこのまま先に進もう」
とりあえずモンスターの行動次第という形で放っておく事にした。
◇
「確かこの奥にフューリーがあるんだったな」
「なんで分かるんや?」
「……勘だよ、勘!」
ビューイの谷の奥まで進んだ一行。前の世界の事を知らないガルドにファングはフューリーがこの奥にあるのは勘だと言った。
「確かにフューリーによる空気の変化が感じられる」
「そうね」
「え、マジで?」
アポローネスとマリアノの言葉にファングは目が点になった。レイルはそんなファングを見て苦笑い。
「まあいいや。とにかく、この先に行く前にあいつに出て来てもらう」
「ん? なんやあの耳の生えた岩」
「あの特徴的なお耳は……!」
そしてガルドはある物体を発見する。そこには不審な
「出て来いよ、
「殺殺殺。殺殺殺」
「気配を消していたのによく分かったな。とエフォールは申しております。お久しぶりですね、皆様」
ファングの言葉に岩陰から、うさ耳フードを身に付けた少女、エフォールとパートナー妖聖の果林が現れた。
「……(パタパタ)」
「あー、果林ちゃんだー。今日も可愛いくて絵になるねー。……って、あのねぇ……」
「~~~~~っ!?」
「むう~~~!」
「マリー。ちょっとクララを押さえといて。荒れ狂う何かに目覚めそうだから」
「もう押さえてるわ。クララ、少し落ち着きなさい」
「は~な~してくださ~い!」
レイルの肩でホロンが果林に手を振りながら何かを訴えている。そして溜息しながらも通訳するレイル。そしてそれを聞いて顔を紅くする果林。頬を膨らませながら暴れ出すクララを押さえるマリアノ。
「殺、殺殺殺殺。殺殺」
「お前らから受けた屈辱は忘れてない。人の事を痛いだのなんだの言いやがって。そこのフリフリミニワンピース着た奴の方がよっぽど痛いし!との事です」
「誰の事を言ってるんだろうね?」
エフォールが指摘してるフリフリミニワンピースを着た奴は誰の事だとばかりに首を傾げるレイル。
「ティアラに言ってるんじゃないの? この中でフリフリミニワンピースなんて着てるの、この子だけだし」
「お姉様!? まさか私に向かって言われてたんですの!? このお嬢様スタイルが痛い!?」
「というか、もう少しスカート丈の長さは何とかならなかったの? 今更だけど」
「あの、お姉様、真顔で説教は……」
姉であるティルアの指摘に軽くショックを受けるティアラ。しかも軽く妹と説教も混ぜながらである。
「殺殺! 殺殺殺殺!」
「エフォールを痛い子呼ばわりした事、死んで後悔させてやる!」
「結構傷付いてたのね……」
明らかに怒ってるエフォールを見て、アリンが呟く。
「殺!」
「フェアライズ!」
そしてエフォールは必殺の鎧を身に纏った。その姿は全翼機のような翼と肩キャノン、足には姿勢制御用のアンカーが装備されていた。
「…ファング。みんなも悪いけど、エフォールの相手は僕がするから手は出さないで」
『!?』
ファング達が武器を構えると、レイルがファングの前に出て制した。
「だけどよ……」
「分かってるよ、大丈夫。それよりも周りのモンスターの気配が強まったから、そっちに気を配ってほしい。僕もなんとかするけど」
「ファング君、あの子の事はレイル君に任せよう。いざとなったら、私達が助けに入ればいいだろう?」
「ああ、分かった……」
ハーラーの言葉もあって、他のみんなもなんとか納得してくれたようだ。そしてレイルはエフォールの前に立ち……
「ホロン、ティルア、シャル、ミュイ」
「……(コクコク)」
「「フェアリンク!」」
「ミューイ!」
自分のパートナー妖聖とフェアリンクをする。妖聖は光となりレイルの元に集まる。
「…少しだけ本気で相手をしてあげる。掛かってきなよ」
「殺!」
その言葉を合図にエフォールはレイルに向かって突っ込んだ。彼女のフューリーフォームの特性なのか、突進する時の推進力が格段に飛躍していた。
「ふーん、直線的な推進力は一番速いみたいだね。けど……」
「っ!?」
「こうやって軌道をずらせばいいだけの事だよね?」
レイルが全翼機部分に触れた途端にエフォールはバランスを崩して、倒れかけるがなんとか踏ん張り上空に逃げる。
「レイルはん、今何したんや? 触れた途端にあの嬢ちゃん、バランス崩したで……」
「恐らく軌道をずらす事で相手の勢いを完全に殺したのだろう」
「どういう事だ?」
「簡単な話、一時的とはいえ相手を完全に無力化させたのだ。スピードの軌道をずらされてしまえば、ほぼ無防備に近い状態だからな」
ガルドとファングの疑問に答えるアポローネス。現にエフォールが倒れかけたのが証拠だと付け足す。
「殺!」
『アタックエフェクト『シューティングスター』』
エフォールの持つ弓から魔力が注ぎ込まれた氷の魔矢がレイル目掛けて放たれた。場所がビューイの谷もあってか風の影響で魔矢の速度が上がっているのは明白だった。
「……」
「さ、殺!?」
しかしどういう訳か放たれた魔矢はレイルに当たる前に砕け散ってしまった。これには撃った本人であるエフォールでさえも驚かざるを得なかった。
「ファング、それにみんな。今から使う魔法、そっちにも被害がちょこっとだけ出るかもだから、先に謝っとくよ」
『は?』
すると突然レイルは何故かファング達に謝ったのだ。そんな皆の反応をよそにレイルは空中にいるエフォール目掛けて両手を上げ……
「……『グライネス』」
「さ、つ……!?」
『こ、これは……重力!?』
「なんだ、これ……!? 身体が……」
「重くて、動けない……」
「どういう原理……なんですの、この魔法は……」
「多分、地属性の初級魔法『グライブ』と闇属性の初級魔法『ダクネス』を組み合わせた重力を発生させる魔法……だね。初級魔法なだけマシだけど」
「これで初級魔法って、無茶苦茶もいいところやんけ……」
「こちらにも影響が出るとは言っていたが……これ程とは……!」
「ちょっとどころじゃないでしょ、レイ……」
とどめの魔法を放った。
『グライネス』と呼ばれたその魔法の正体は、いわゆる重力そのもので、エフォールだけでなく、ファング達にも影響が発生した。何かに押しつぶされそうな感覚で身体が重くて動けない。
そして空中でグライネスの影響を強く受けているエフォールは重力の力に耐え切れず、地面に落下する。
「さ……つ……」
叩きつけられるのと同時にエフォールのフューリーフォームが解除された。
「う……く……。殺! 殺! 殺!」
「エフォールは負けました、どうぞ、私を殺害なさりやがってください、と申しております」
「「……」」
負けを認め自分を殺せというエフォールに、レイルはファングに目を合わせる。彼も同じ事を思ってたのか、彼女の通訳をする果林にも正直、2人は呆れるしかなかった。
「あー、もう! とりあえず、バハスのおっさんが作ったスイーツを食え!」
「…………殺?」
「理解不能、と申しております。……毒殺狙いですか?」
「毒なんてセコイもん入ってねえよ。作るのはムサいおっさんだが、正真正銘、極上のスイーツだぜ」
ファングはそう言ってバハスに頼む。
「ほう、そういう事なら……チョコクッキーぐらいしかないが、これでいいか?」
「よし、エフォール! 四の五の言わず、黙ってこのクッキーを食え。話はそれからだ」
バハスから受け取ったチョコクッキーをファングはエフォールに渡す。
「……殺」
「一口だけなら、と申しております。個人的には見知らぬ人からの施しは、エフォールにオススメできませんが……」
そして少し戸惑いながらも、チョコクッキーを口にするエフォール。
「どうだ、どんな気持ちだ?」
「……おい、しい」
「美味しい、とエフォールは……えっ!? エフォールが
エフォールが普通に喋った事に驚く果林。
「俺達と一緒に来たら、いつでもこの美味しいもんが食えるぜ? どうだ、俺達の仲間にならねえか」
「なか、ま……」
「ただの同行者って事でもいいわよ。あなたの行く先々に偶然あたし達がいて一緒にご飯を食べる。それならどうかしら?」
「……」
ファングとアリンの提案にどう反応すればいいのか、戸惑ってるようだった。
「エフォール……戸惑っているのですね。無理もありません。エフォールは戦う事しか教えられませんでした。戦う以外に生き方を知らない……そう育てられたんです」
「……(戸惑う理由はそういう事か。それにバハスさんのチョコクッキーを食べた時のエフォールの表情……もしかして……)」
前の世界でも思ったが、初対面の時もフェンサーには興味がないと言ってたくらいだ。
ただ1つ分かった事がある。それはエフォールがチョコクッキーを食べた時の表情だ。それを見て、まだ確証がない訳ではないが、レイルは故郷に居る
「でも私はずっと、普通の女の子みたいな楽しみをエフォールに知って欲しかったんです!」
「果林……」
「エフォール、この方達と共に行きましょう。そうしたらあなたは変われるかもしれません!」
「……果林が、そこまで言うなら……」
こうしてエフォールと果林が仲間になったのであった。
「それなら今晩はエフォールと果林ちゃんの歓迎会だね。って言っても、諸事情で今日は鶏肉料理がメインになっちゃうけど……」
「諸事情? もしかして鶏肉が今日食べないとダメになっちまうとかか?」
「ああ、それはね……」
ファングに理由を聞かれたので、まずそれを説明せねばなるまい。
「……(ルンルンルン♪)」
するとホロンがスキップをしながら3種類の鳥獣系モンスターを大量に担いでレイルの元に戻ってきたのだ。
「こいつは……サンダーバードだね」
「ああ。それにスパルナ、コカトリスもいるではないか。どれもビューイの谷に生息しているモンスターだぞ」
ハーラーとアポローネスがホロンが持ってきたモンスターを観察する。3隻共、白眼をむき泡を吐きながら、完全に気絶していた。
「こんなにたくさん気絶してるのって、もしかして……」
「えっとね……」
アリンの推測通り、このモンスター達はレイル達に獰猛な視線を放ってた正体であり、エフォールとレイルが戦っていたところを割り込んで奇襲を狙うつもりが、レイルの魔法に巻き込まれてしまい、こうなったとの事だ。
「レイ……貴方ね……」
「あはは……」
ジト目でこちらを見るマリアノにレイルは苦笑いで返す……のだが、この後、マリアノに軽く説教されるレイルのであった。
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。