フェアリーフェンサーエフ~元ドルファ四天王の旅~ 作:ゆるポメラ
前回の続きになります。
ドルファの立食パーティ回になります。今回も少しオリジナルにしています。
ちなみに最後に本作品のメインヒロインもチラッと出ます。
それではどうぞ。
「……やば。寝坊しちゃった。あ、ティアラおはよ」
「おはようございます、お義兄様」
カダカス氷窟のフューリーを回収して次の日の朝。
未だに眠い目をこすりながら、ティアラに挨拶するレイル。今日は珍しく寝坊してしまったのだ。
「……にぇむい」
「ほら、レイ。こっちに来て?」
「……ん」
フラフラと動きながら朝食をテーブルに置くと、ティルアが現れ自分の膝にレイルを座らせた。
「あの、お姉様……何してるんですの?」
「え? 何って……寝ぼけてるレイのお世話よ。えへへ、ぬいぐるみみたいで可愛いでしょ♪」
ギューっと、レイルをハグしながら妹の質問に答えるティルア。
「あんまりやり過ぎると、お義兄様に嫌われますわよ?」
「うっ! ……だって、レイってば、病気的な抱き心地なんだもーん! しょうがないでしょ~! 頬っぺだって、肉球みたいにぷにぷになんだし~!」
「具体的な例えですわね……」
そんな事を話してると、この宿の女将であるミツボがやって来た。
「おやおや。坊やが寝坊なんて珍しいね? ところで、坊やを膝に乗せてるお嬢ちゃんは?」
「あ、初めまして。私はレイの婚約者で、ティアラの姉のティルアです。妹がお世話になっております」
「あら! 坊やの婚約者だったのかい。年は離れてるのかい?」
「いえ、レイは私と同じ24歳です」
「おやまあ! 大人びた坊やだとは思ってたけど……」
ここでミツボ、レイルがティルアと同い年だという事に驚く。
「あ、そうだ。忘れてた。ティアラ、あんたに手紙が届いてたよ」
「手紙ですか?」
「はい、これ」
ミツボはティアラ宛ての手紙を渡すと、去り際にティルアと何かを話していた。
「ミツボさん、面白くて優しい人ね? 」
「ええ。お姉様の事も気に入ってましたし」
「そういえばティアラ、手紙って誰から?」
ティルアに言われ、封筒を開くと、中身は招待状だった。
「招待状……? ドルファから……」
「ドルファ? ドルファって……あそこの黒いビルみたいなやつで、ドルファ・ホールディングスとか言われてるやつ?」
「ええ」
「それじゃあ昔レイが話してた
「お義兄様が……ですか?」
それを聞いたティアラは初耳だった。
ティルア曰く、レイルは4年前まではドルファで働いてたとの事。チラッとレイルに目を向けると、ティルアに寄りかかって寝ていた。
「ただ今でも、腑に落ちないのよね……」
「? 何がですか?」
「ティアラはまだ小さかったから知らないと思うけど、当時のレイは
そう訊かれたティアラは、最近の広告をティルアに見せた。
そこにはドルファ・ホールディングスの社長、
「……ふーん。
「え? このお方、元々副社長だったんですか?」
「レイが辞めるまではね。それに辞めた今でもドルファが運営する孤児院に、こっそり顔は出してるの。レイって、面倒見が良いし、ああ見えて子供好きなところもあるし」
確かにレイルは面倒見が良い。
それこそティアラも昔レイルに可愛がってもらった程だ。今でも子供扱いされるが。
「レイの事だから、この招待状のパーティも行くでしょうね。気配を消しながらだけど」
「気配を消す……?」
「今日行った時に分かるわよ」
姉が言ってる気配を消しながらのパーティに参加というのが、どういうものかティアラには想像がつかなかった。
◇
「うわ、すごーい……人がいっぱい」
「流石ドルファ主催のパーティですね。集まってる人達のほとんどが街の名士ですわ。……それにしても、お姉様が言ってた通り、周りの人達……お義兄様に全然気づいてませんね」
「……僕の場合は色々あるから。それに気配を完全に消しとかないと、ご飯にもありつけないよ」
パーティー会場の様子に目を輝かせるアリン。ドルファ社内の一室とはいえ、会場は細部まで徹底的にこだわっていた。来客も上流階級の人が大半だった。
そしてレイルの溜息交じりの言葉にティアラは苦笑い。パーティー会場に入った途端、ティアラ達以外、誰もレイルの存在を認識してないのだ。
まさかまたここに来るなんてレイルは思うのと同時に、気配を消してるとはいえ、見つかったりしないか不安だった。
「ねぇ、ドルファって世界でも有名な大きな会社なんでしょ? なんであたし達を招待してくれたの?」
「それは私達がフェンサーだからですわ。きっとどこかで噂でも聞いたのでしょう」
「そういえば、あたし達以外にもあちこちにフェンサーがいるわね」
「!(ペチペチ)」
「……何? ホロン。あ、ソーヨル草原で僕達のお弁当を奪ったちんぴら発見。ティアラ、僕ちょっとあいつを
「お義兄様、お気持ちはお察しますが、落ち着いてください」
「ホロンも落ち着きなさい」
ホロンがソーヨル草原で自分達のお弁当を盗んだちんぴらを発見し、レイルがホロンをフェアリンクさせようとした寸前に、ティアラとアリンは2人を押さえた。
「とまあ、フェンサーは特殊能力者。この世界では稀有な存在です。誰もがその能力を欲し、有効に利用、活用したいと思ってる……」
「ふーん……」
「……(ま、第3者から見たら、そうなるよね)」
その理由を聞いて、レイルは今のドルファもそうなのかな?と思った。
「ま、飯が食えるなら俺は何でもいいぜ……げっ、あいつはあん時の……!」
「どしたの、ファング?」
何かを見つけたファングにレイルが視線を向けると、クラヴィーセ洞窟で会った暗殺者とそのパートナー妖聖、エフォールと果林の姿が。
「見つかったら面倒な事になりそうだな」
「こういうのは無視した方がいいよ。あんま見てると、気づかれるよ。向こうは暗殺者なんだしさ」
「そうする。兄貴、なんか飲むか?」
「あ、じゃあそこのフルーツジュース取ってくれない?」
エフォールと果林に見つからないように、対処法をファングに教えつつ、彼から飲み物を受け取る。
「皆様、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。ドルファ・ホールディングスのパイガでございます。総帥の花形に代わりまして、厚く御礼申し上げます」
「……(あ、パイガのとっつぁんだ。また渋さに磨きがかかった気がする)」
眼鏡を掛けた男、パイガ・パイロンの姿を見たレイルは懐かしさを覚えた。よく彼の妻や子供の愚痴を聞かされたのをレイルは今でも覚えてる。最近はどうなのだろうか?
「ご存知の通り、我が社は衣食住、皆様の生活に関わる様々な事業を展開しております。また社会貢献もドルファが目指す所で、
「……(あの口調からすると、孤児院の運営は今でもやってくれてるみたいだな)」
自分が辞めてからも孤児院の運営はどうなるかと不安だったが、ひとまず安心だった。ひとまずはだが。
「『みんなの心に太陽を!』それがドルファの精神なのです」
「フン……いい話過ぎて嘘くせぇな」
食事をしながらパイガの演説を聞きながら呟くファング。
「いいえ、社会貢献の話は事実ですわよ。世間からの評判も上々で、フェンサーの就職したい企業ナンバーワンですわ」
「ま、飯の味は信用してやってもいいが……」
「でも『みんなの心に太陽を!』っていう目標は、4年前まではそうだったんだよ。今はなんか……それさえも僕は怪しく感じるよ。なんか疑心暗鬼になりそう……」
「兄貴……」
「お義兄様……」
ティアラとファングの感想に、複雑そうな表情をしながらも同意するレイル。
「今宵は皆様と親睦を図りたく、このようなパーティを催させていただきました。どうぞご存分にお楽しみくださいませ」
そしてパイガは皆様にはピアノの演奏を楽しんでいただきましょうと言って、ピアニストを紹介する。
「ミスター・
「……っ!(あ、シャルマンだ)」
まさかのピアニストが、知り合いの弟だったという事に驚くレイル。
『…………』
「シャル、大丈夫?」
『ええ、平気よ。少しびっくりしただけだから』
「ならいいけど、あんまり無理しないでよ?」
『……うん。ありがと、レイ』
レイルの隣でシャルマンを複雑そうな表情で見るシャル。
実を言うと、彼女はシャルルランザ家の次女であり、シャルマンは彼女の生き別れの弟である。何故生き別れなのかというと、家でのいざこざ問題のせいで離れた家で済む羽目になったからだ。
『とりあえずレイ、パーティ楽しみましょ? せっかくなんだし』
「……そうする」
とりあえずレイルは、ティアラに少しだけ別行動するね?と声をかけておいた。
◇
「……ピアノを聴きながら、ご飯を食べるなんて久しぶりな気がする」
「……(コクコク)」
レイルは2階のテラス付近で、シャルマンが弾くピアノを聴きながら、持って来た料理を楽しんでいた。
勿論、気配を消しながらだが。
「あれ? なんかドの音がズレてるな。さてはあのピアノ、修理に出してないな」
「……(コクコク)」
僅かな音色の違和感に気付くレイルとホロン。
シャルマンが演奏を間違えたりしないのは、レイルが一番知ってるので、彼もドの音がズレてる事に関しては、演奏してる際に気付いてるだろう。
「……音楽かぁ。マリーのハープが恋しく感じるよ。……てか今更だけど、パイガのとっつぁんが居るって事は他のみんなも居たりしないよね?」
ハープの演奏が得意な同い年の彼女を思い出すと同時に、前の職場の人達がいないか焦るレイル。先程、演説をしてたパイガが良い例だ。アポローネスは来てないだろう。だって彼の性格上、こういう場所は慣れないって言いそうだから。
「……(ツンツン)」
「何? あ、花形副社長……じゃなかった、今は社長か。渋さに磨きがかかったと同時に……なんか……老けたね」
「……(コクコク)」
「ぶえっくしゅっ!! おぉ、これは失礼……誰かワシの噂でもしてるのか?」
ホロンがドルファの総帥である花形を発見した。何やら上流階級の人達と話してた。思った事をレイルが呟くと、花形がくしゃみをした。それを見て、危うく笑いそうになるレイル。
「うえ、ひっく……ふえ~ん……」
「?」
すると隣から泣き声が聞こえてきた。しかも聞き覚えのある声。
「ひっく……ふえ~ん……」
振り返ると、白くて丸い猫みたいな物体に角と
「……(ちょっと待って!? なんでクララがこんな所にいるの!?)」
「……(あわわ)」
予想外の人物……というか、妖聖の姿を見て、レイルとホロンは焦る。その理由は単純だ。自分達は気配を完全に消しているが、唯一、自分達の存在に気づけるのがクララだ。
「ふえ~ん……マリアノ様~、どこにいるんですか~……」
「……(しかも迷子!? あのクララが迷子って、滅多にない筈なんだけど!?)」
レイルが心の中で突っ込んだ時だった。
「ふえ~ん…………あっ……」
「……(どうしよ、目が合っちゃった)」
クララと目が合ってしまったレイルとホロン。そして数10秒後。
「ふえ~ん……! レイル~っ!!」
「しー! クララ、分かったから泣き止んで! 僕、見つからないように参加してるんだから!」
「……(あわあわ)」
知り合いを見つけて安心したのか、クララは泣きながらレイルめがけて突進……というか、軽いタックルをしてきた。
◇
「……落ち着いた?」
「うん……」
なんとかあの手この手でクララを泣き止ませたレイルとホロン。正直、気配を消しながらだったので、かなり大変だった。
「……(スッ)」
「くれるの?」
「……(コクコク)」
「ありがと~♪ はむはむ……」
自分用に取っておいた生ハムメロンをクララに進めるホロン。それを嬉しそうに食べるクララ。説明しておくが、妖聖クララは
「……でも、クララが迷子なんて珍しいね? マリーと一緒じゃなかったの?」
「うん。最初はマリアノ様と一緒だったんだけど、わたしがちょっと目を離したらいなくなってて……」
「あ~……それで迷子になっちゃったのか。パーティで迷子になるのって、人が多ければ多いほど迷子になりやすいもんね……クララが不安になるのも分かるよ」
「……(コクコク)」
クララが迷子になった理由を聞いたレイルとホロンはうんうんと頷く。
「そういえば、クララ。最近のマリーはちゃんと休んだりしてるの?」
「えっとね~、レイル達がいなくなってから、ここ最近まで、マリアノ様はお仕事の時以外は
「……(え? マ、マリーが……ひ、引きこもり?) 気分転換とかで、どこかに行ったりしないの? 孤児院以外で」
「全然~。わたしも誘ってるんだけど、上手くはぐらかされちゃうっていうか……」
自分がドルファを辞めた後、レイルはクララの主であるマリアノについて訊く。しかし返ってきた言葉は仕事づくめだとの事だった。昔はよく休日の時は、レイルとマリアノ、そのパートナー妖聖であるホロンとクララの4人で出かけて過ごしたものだが。
「……(ハァ)」
「え~!? こ、今度は、わたしとふ、二人っきりでって……うぅ~……」
「……(ホロンとクララのやり取りを見るのも久しぶりだなぁ)」
ホロンにそう言われ、照れてる様子のクララを見て思うレイル。実を言うと、クララはホロンに恋心を抱いている。そして当のホロンはそれに全く気付いてないのだが。
「ん? ねえクララ。あれ、マリーじゃない?」
「え~? どこどこ~?」
「ほら、あそこ。ここから見て、左端のところ」
「ほんとだ~! マリアノ様だー!」
そんな妖聖を見て和んでいた時、レイルは見覚えのある黒いドレスに身を包んだベージュ色寄りの髪の女性を発見した。念の為、クララに確認を取ってもらったところ、捜していた人物で合っていたようだ。
「それじゃあ、わたし、マリアノ様の所に戻るね~」
「うん。次は迷子にならないように気をつけてね? もしマリーに何か訊かれたら、同じ迷子になってた人が話し相手になってくれたって、クララの方から上手く話を誤魔化しといて」
「え~? レイルの事、マリアノ様に言わなくていいの?」
「……うん。マリーも元気そうだし、それにクララだけが知ってくれれば僕らはそれでいいからさ」
クララが心配そうな表情で言うが、レイルはそれでいいと言った。何せ、自分がドルファを離れた本当の理由を知ってるのはクララなんだから。
「あ、そうだ。クララにこれあげるよ」
そう言ってレイルは1枚の紙とチケットをクララに渡した。
「これなあに~?」
「僕がドルファに在籍してた時に、よくホロンとお茶してた行きつけの喫茶店。カヌレとシフォンケーキが美味しいから、今度マリーと一緒に行ってみてよ」
「わあ~。ありがとー♪ これだったらマリアノ様も行ってくれると思う」
受け取ったクララは嬉しそうにお礼を言うと、レイル達にバイバイしながら、自分を捜してるマリアノの元へ戻って行った。
「……さてと。ティアラには別行動する際に、状況によっては先に宿に戻ってるって言ってあるし、戻ろっか?」
「……(こくり)」
そしてレイルとホロンは、再び気配を消しながら、パーティー会場から出て行くのであった。
◇
「マリアノ様~!」
「クララ。どこに行ってたのよ。随分捜したのよ?」
「すみませ~ん。人が多くて迷子になっちゃって……」
「でも無事に見つかって良かったわ」
無事に主であるマリアノの元に辿り着いたクララ。迷子になってたパートナー妖聖が無事に見つかった事に安心するマリアノ。
「? クララ、それは何?」
クララが器用に持ってる物に気付くマリアノ。
「わたしがマリアノ様を捜して迷子になった時に、わたしと同じ迷子になってた人から、話し相手のお礼にって貰ったんです」
別に嘘は言ってない。クララはレイルの事は伏せといた。
「そう。その方は今も居るかしら……お礼を言いたいのだけれど……」
「マリアノ様を見つけてくれた時に、パートナー妖聖の子に急かされて一緒に帰っちゃいました。入浴前に早くプリンを食べるって言ってました」
「ふふ……何よそれ。面白い妖聖ね……」
それを聞いて、くすりと笑うマリアノ。
この理由はホロンがクララに帰る理由はこんな感じで言って欲しいと言われたのだ。好きな人から?の頼みなので、直ぐにクララは首を縦に振ったが。
「これは……喫茶店かしら? えっと……あら、
クララが貰ったと思われる1枚の紙とチケットを受け取り、書かれてる内容を読むマリアノ。
「その人の行きつけだった喫茶店みたいです。カヌレとシフォンケーキが美味しいって言ってました~」
「せっかく頂いたのだし、今度のお休みの時に行きましょうか。クララ」
「! はい~♪ その人も喜ぶと思います~♪(やった~♪ レイル~、マリアノ様、喜んでるよ~♪)」
嬉しそうなマリアノの反応を見たクララは、多分もうこの場に居ないレイルに感謝するのであった。
読んでいただきありがとうございます。
……クララの一人称が特に大変だった。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。