文明監視員・ウルトラマンナイスのナ、ナ、ナ、ナイスな奮闘記 作:Sashimi4lyfe
ここはM78星雲、光の国。ウルトラの星とも呼ばれ、全宇宙の平和を保つ宇宙警備隊の本拠地である。宇宙警備隊に属し、真の平和を守るために奮闘する光の国の住人たちを人類はウルトラマンと呼んだ。
宇宙警備隊は様々な部署にわかれており、その中に別惑星の文明の発展とそれの保護を行う文明監査部がある。
そこへ一人のウルトラマン、ウルトラマンナイスが入部を志願したのは一か月ほど前のことだった。
彼は別のマルチバースでの活躍を宇宙警備隊に評価され、晴れて入隊のスカウトを受けてタロウ教官の厳しい特訓のもと一応一人前のウルトラマンになったのだが…
「はぁ…今時フォルムチェンジのできない俺のような冴えないウルトラマンは惑星防衛に就けないのかなぁ…」
ナイスがぶらぶらと歩きながらぼやく。入隊してかれこれ15年ほど経っていたのだが、命じられた任務と言えば科学技術局の資料の手伝いやこぐま座銀河のパトロールなど地味な作業ばかりだった。やりがいのある仕事と言えばたまに相方のウルトラマンゼアスとする漫才ショーぐらいだった。
彼がこの宇宙警備隊に入ったのはウルトラマンとして地球を守るためだったのに…
「よぉ!どうしたナイス?浮かない顔してよぉ?」
そう声をかけてきたのは同僚のゼアスだった。
彼とは一緒に漫才コンビを組み、心を通じ合わせた仲だったが、彼は特訓を繰り返していくうちににポテンシャルを発揮し、今やアンドロメダ銀河の惑星の大気洗浄を任されるようになった。彼の働きは高い評価を受け、今や「宇宙の洗浄者」としてちょっとした人気者になっていた。
「ゼ、ゼアスか!なぁに、ちょっと疲れただけさ。」
「嘘つくなよ。一緒にコンビ組んだ仲だ、お前の考えてることなんてすぐわかるよ。」
「やっぱりお前ならわかってくれるか、ゼアス!」
ナイスがほっとしたように返す。
「あったり前よ!あれだろ、技術局のメアリちゃんにふられたんだろ?」
「…違うよ!しかも俺が好きだったのメアリちゃんじゃなくてウィンダちゃんだし…」
ナイスの表情がまた暗くなってしまった。
「えっ、あ、そうだっけか…ハハハ!すまんすまん。」
笑ってごまかそうとするも、すさまじく気まずい空気をゼアスは感じ、コホンと咳払いをして話を切り替える。
「ところでさ、文明監査部がスケールアップするって話聞いたか?」
「いや、初耳だけど…」
「ほら、最近さ、別の宇宙、つまりマルチバースの地球で色々物騒なことが起きてるって話、よく聞くだろ?だからそれに合わせてうちの文明監査部も規模を広げてより多くのマルチバースの地球を守ろうってことらしいぜ。」
始めはうつむきながら聞いていたナイスも少しづつゼアスの話に聞き入っていった。
(もしかして、他の宇宙でなら地球防衛も夢じゃないかも…!)
「ん?どうしたナイス?」
ナイスは黙り込んで何か真剣に考えているようだった。
「よし、俺決めた。文明監査部に入部志願する。」
「えぇっ!?もしかしてお前…」
「他の宇宙だったとしても、俺は地球を守りたい。そのために俺はウルトラマンになったんだ!」
決心したように彼は言った。
「…そうだったもんな。お前、先輩方にあこがれてご両親の反対を押し切ってTOY一番星から一人出てきたんだもんな。よし、俺の知り合いに文明監視員の奴がいるから紹介してやるよ。」
「ゼアス、お前….」
「いいってことよ!その代わり、技術局の子との合コンには絶対誘えよな!」
「おう!何回でも誘ってやる!恩に着るぜ、相棒!」
それからめでたくナイスは文明監査部への入部が決まり、基礎的なトレーニングを受けた後、過去の飛球防衛の経験を買われてか別のマルチバースの地球防衛を任されることいなった。
今日は彼の晴れ舞台。大先輩の文明監査員、ウルトラマンマックスから目的地の指定と、別宇宙で監査活動を行うための最後の指導を受けてから地球へと旅立つのだ。
プラズマスパークの光がまぶしく輝く文明監視部の中庭でそれは行われた。
「よし、ナイス、ちゃんと休息は取ってきたか?」
マックスがナイスの体調を確かめる。
「それが、緊張して中々落ち着けなくて…」
「ハハハ。私も最初はそうだったよ。しかし、君の経験があればうまくこなせるはずだ。」
ナイスの緊張をほぐそうとマックスがナイスの方をポンと叩く。マックスの手の感触を感じ、ナイスは少し落ち着いた。
「さて、本題に入ろう。君がこれから行くマルチバースは平行宇宙N-51といい、まだコードネームとしてしか名称が付いていない。それほど我々もその地球がどのような文明を有していて、その宇宙にどんなウルトラマンがいるのかもわかっていないのだ。」
「未開の地…というわけですね。」
(うぉぉ!!なんかワクワクしてきたぞ!)
「そういうことだ。危険を伴う任務なので、我々からも君にプレゼントがある。右手を出したまえ。」
ナイスが右手を前に出すと、マックスは手をその上にかざし、少し念じたかと思うと彼の手首には赤とシルバーのラインが入ったブレスレットがはめられていた。
「こ、これは?」
「科学技術局長のウルトラマンヒカリが自ら設計した間宇宙移動用装置、アナザーブレスだ。この任務において君を大いに助けてくれるだろう。」
「てことは、ジャック先輩みたいにこれを武器にして…」
「いや、武装用ではない。あくまで監査員としての任務を進行するための道具だ。」
(なんだ、ウルトラスパークとかできないのか…)
それを聞いてナイスのテンションが明らかに下がったのをマックスは感じた。
「ま、まぁそう落ち込むな。それがあれば様々なマルチバースを行き来できるし、粒子状態にとどまって感知されずに監査作業を行うことができる。もちろん、私たちがやってきたように、有事の際には人間と同化し、共に戦うことも可能だ。」
それを聞いたナイスは気を取り戻した。あぁ、あの王道の「勇気ある人間との同化」をできるのだと心をワクワクさせた。
「ただし、人間と同化する際、またはその文明に干渉する前に三つ条件を課しておく。この三つの条件を君自身がクリアしたと心の底から信じない限り人間との同化はできないようにそのブレスは設計されてある。」
その「条件」とはこの三つだった。
一つ。人類が死力を尽くして戦ったのにも関わらず、戦況が一向に有利にならないとき。
一つ。人類同士の争いによって起きた戦いではないとき。
一つ。守るに値する、勇気ある人間の命が尽きようとしているとき。
「繰り返すが、この三つを君が心の底からクリアしたと思わない限り、量子状態は解除されず、君はその文明に干渉することができない。それと、人間と同化したときに変身のトリガーとなるアイテムを使用しないと変身できないようになっている。いざという時に素早く変身できるよう、目立たず持ち運びやすいものがいいだろう。」
「変身アイテム、ですか…なるほど、わかりました。」
「まぁ、私からは以上だ。N-51の座標はもうブレスにセットしてある。ブレスの使い方はブレス自身が教えてくれるだろう。さぁ、準備ができたら行くといい。行き詰った時や、苦難とぶつかったとき、ウルトラの光が君を導いてくれるだろう。」
「マックスさん…ありがとうございます!では…」
飛び立とうと気持ちを決めたその時、彼はふと思いとどまった。
「あの、先に挨拶しておきたいヤツがいるんです。その後でも構いませんか?」
「あぁ、別にいいが…」
彼が挨拶をしておきたかった相手、それは相方のゼアスだった。彼らが初めて会った場所、特訓場の前の公園へ、彼は無意識に足を運んでいた。
彼はそこで空を見上げていた。
「やっぱりここにいたか。」
ナイスの呼びかけにゼアスはゆっくりと振り返ると、軽く失笑しながら答える。
「どうせなら、ここでお前の飛び立つ姿を見てやろうと思ってね。」
「相変わらずキャラに見合わず粋なことをするねぇ。」
「お前こそ、早く行かなきゃいけないんじゃないのかい。」
「いや…ちょっと礼を言っとかなきゃなって思ってね。」
「やめてくれよ。水臭い。」
苦笑しながらゼアスは下を向く。
そこにすっとナイスの手が差し出される。
「お前が俺の相方で本当に良かった。それが伝えたかっただけさ。」
「…」
やけくそにゼアスはその手を握る。
「えぇい、アンドロメダで仕事をしてると目に硫黄が入って涙が出やすくなっちまう。ちくしょう、頑張って来いよ。お前が帰ってくる頃にはアンドロメダ中の惑星をピッカピカにして待ってっからな。楽しみにしてやがれ。」
「…あぁ!お前が磨き上げた銀河を見るのが楽しみだぜ!じゃあな。また会う時まで。」
「おうよ。行ってこい!」
仲間の視線を背中に受け、ナイスはM78星雲の宇宙へ飛び出していく。まっすぐ飛んでいくうちに、右手のブレスが赤く光り、自分の体が光へと変わっていくのを感じた。飛び慣れた星々の大海原が引き延ばされていき、虹色の光に包まれた不思議な空間の中に入っていく。なぜか恐れは感じなかった。このまままっすぐ飛んでいけば、必ずたどり着ける。そんな根拠のない自信が彼を動かしていた。
どれくらいたっただろうか。気が付くと目の前に再び星々が現れ始め、地球が目の前に現れた。
「あれが、この宇宙の…N-51の地球…」
彼がかつて守った、ウルトラマンにとってかけがえのない星。あの星をまた守れるのだと思うと、様々な感情が彼の胸にこみあげてきた。
「へっ。いけねぇ。俺の任務はこの星の文明監査だったな。」
ナイスが地球に近づいていくと、いくつもの衛星らしきものが地球の周りをまわっていることに気が付く。
「人工衛星か。それにしてもすごい数だなぁ。こんなに衛星を作ってどうするんだろう?」
しかし、地球の外見は彼の記憶通りだった。青い海に緑の大地。その上を雲が覆い、まるで宇宙に浮かぶ宝石のようだ。
「いやぁ、いつ見ても地球は美しい…どれ、ここの地球人がどんな文明を持ってるか、さっそく調査と行きますか。」
スピードを上げ、大気圏内へと入っていく。アナザーブレスのおかげで体を粒子状態のままにとどめられているため、空気抵抗が全くなく、とてもスムーズに飛行できる。
「手始めに日本から始めるか。それにしても、なぜ我々の同胞はみんな日本ばかり守ってきたんだろう。まぁいいや。どれどれ…」
成層圏を通り過ぎ、中間圏に入っていくにつれて視界が開け、日本の街並みが見えてくる。
「な、何だこりゃぁ~っ!!??」
そこには、彼が覚えている街並みとは全く違う光景があった。
400mはありそうな高層ビルが林のように建っており、その合間を旅客機を通り抜けている。ビルの表面は大きなスクリーンのようになっており、様々な広告が映し出されていた。地面の上は無数の自動車が地面から車体を少し浮かせながら走っている。電気自動車なのだろうか。電車も走っているが、モノレールのようにやはり少し車体を浮かばせながら、ビルの合間を縫うように走っている。
「こ、これが地球…?来る星を間違えたんじゃないか…?」
そう。この宇宙にはウルトラマンが存在しない。
人類は自分自身の手で異星人や地球外生命体から自分の星を守ってきたのだ。
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