文明監視員・ウルトラマンナイスのナ、ナ、ナ、ナイスな奮闘記   作:Sashimi4lyfe

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どこか頼りない一児の父、夢星輝

『ファンタジア・チェーンジッ!!』

 

映画館のスクリーンに女児アニメ特有の派手な変身シーンが映し出される。

今上映されているのは少女たちに大人気の女児アニメ、「劇場版ファンタジアガールズ・みんなで描こう、ハッピーエンド!」だ。観客の中には大きなお友達の男性たちも混じっているが、ほとんどは子連れの親子たちだった。

 

キャッキャとはしゃぐ娘の隣で、眠そうな目をしながら夢星輝はスクリーンを見ていた。

 

(ストーリーはまぁまぁだけど、エアコンが効いてて眠くてしょうがねぇや…)

 

そう思いながら輝はずずっとカップの中のドリンクを飲みほした。

 

(ちょっとトイレにでも行って顔洗ってくるか。寝るとまたすいちゃんに愚痴られるしなぁ…)

 

すいちゃんとは彼の娘、夢星彗星のことである。

 

「すいちゃん、ちょっとトイレ行ってくる。」

 

ぼそっと彗星に向かって輝がささやく。

 

「えぇ~?今ちょうどいいとこだよ、あっくん。」

「だから外でその呼び方はやめてって言ってるじゃん…すぐ戻るからさ。」

 

そう、彼は彗星から「あっくん」と呼ばれているのだ。彼の妻、夢星月子がつけたあだ名だったがいつのまにか娘にもその癖が移ってしまい、外出する際の彼の悩みのタネとなってしまった。

 

(ふぅ~。それにしても最近の女児アニメってストーリーが結構複雑なんだなぁ。)

 

用を足しながら輝は思った。

 

(たまにはこういうのも悪くないか。職場の人たちもみんなこの映画を見に連れて行かされたっていうし。)

 

手を洗い、顔を軽く洗っていたその時だった。

 

 

ウウゥゥ~ン!!!!

 

 

聞いたこともないような不気味なサイレンがモール全体に響き渡った。

輝の身の毛がよだち、思わず身震いをした。何事だと耳をそばたてて聞いていると、今度は恐ろしく遅いスピードで館内放送が行われた。

 

「異 星 人 が   急 接 近 し て い ま す   落 ち 着 い て   係 員 の 指 示 に 従 い   最 寄 り の シ ェ ル タ ー に   避 難 し て く だ さ い   異 星 人 が….」

 

まもなくして映画館の外から無数の走るような足音が聞こえた。みんな我先にと逃げ出そうとしているのだろう。

 

(や、やばい…すいちゃんと早く外に出ないと!)

 

トイレの外に出ると廊下は人であふれかえっていた。日曜の昼だからということもあって、映画館は混雑していたのだ。

 

(すいちゃんがいるのは7号館…一番奥の部屋かよ!ちくしょう、なんたってこんな日に!)

 

入り口も出口も人で詰まっているような状態の中、自分を押し込むようにして映画館の中をおぞきこむと、彗星が自分の席で膝を抱えながらぶるぶると震えていた。

 

「すいちゃん!!」

 

力の限り体を人の間に入り込ませ、7号館内に入り、娘へと駆け寄る。

 

「あっくん!!」

 

父の顔を見たとたんに彗星は泣き出してしまった。よほど不安だったのだろう。

 

「もう大丈夫、大丈夫だから。ここから早く出よう。」

 

彗星の手を引っ張るも、何か抵抗を感じ、輝が振り向く。すると彗星が両手を輝に向け、おぶってくれと言わんばかりに泣き顔で訴えていた。

 

「ったく…もぉ!!」

 

いらいらしながらも輝は彗星を背中に抱え、出口へと急ぐ。やっと映画館の外へ出れたかと思うと、今度はモールの出口も人であふれかえっていた。係員が必死に避難を促していたが、誰も彼らには耳を貸さなかった。

さらに不安をあおるように館内アナウンスは続き、そこにいる全員の顔がどこか青ざめて見えた。彗星の震えが背中から伝わってくる。

 

「くそっ。これじゃあ外に出られるまで30分はかかっちまうよ….」

 

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ナイスは街に響き渡る警報に気づき、いったん大気圏外に出て敵の姿をまず確認しようとした。

成層圏を出ると、そこには巨大な宇宙戦艦の群れがすぐそこまで迫ってきており、今にも大気圏に突入しようとしているようだった。

 

「このスケールの宇宙戦艦群…お目にかかるのは初めてだぜ….」

 

敵の数に唖然と立ちすくしていると、人口衛星が周りに集まりだし、なにやら砲撃の準備をしようとしているようだった。

 

「なるほど…だからあれほどの数の衛星が必要だったわけだ!待てよ、これほど異星人の侵略に備えているということは、もしかしてこの宇宙にウルトラマンは…」

 

ナイスが考えている間に衛星たちは砲撃準備を完了させ、敵艦隊に向け同時に無数の光線が発射された。

 

「うぉぉ、なかなかの威力だ!俺の弱光線ぐらいの威力はあるんじゃないか?」

 

宇宙圏内では音は発生しないため、まぶしい爆発の光と黒煙だけが巻き起こった。煙が消えかかったかと思うとまた砲撃が開始される。

 

二発目の光線が直撃したと思われた次の瞬間、黒煙の中から光の筋が現れ、それにあたった衛星は爆散してしまった。まもなくして黒煙が晴れ、敵の艦隊が再び姿を現すと、敵艦の数はまだ半分以上減っていなかった。

 

「あれほど食らってまだあの数が残っているのか…こりゃあ人間も苦戦するぞ…」

 

ナイスはマックスの忠告をしっかり覚えていた。

人類が死力を尽くして戦ったのにも関わらず、戦況が一向に有利にならないときにしか、彼は異星人との戦闘に干渉してはならないのだ。

 

「でも、これほどの戦力を持っているなら俺の力なしでもちゃんと戦えるかもな…」

 

ナイスは安心とがっかりした感情が入り混じった複雑な感情を感じていた。

そう考えている間にも衛星群と戦艦群との攻防は続いていた。

大気圏内にいれさせてたまるかと言わんばかりの人類の必死の抵抗。

着実に敵艦隊の数は減らせてはいるものの、まだ異星人側が優勢なのはナイスにも見て取れた。

 

ついに最後の衛星が破壊され、宇宙戦艦群が大気圏に突入する。

 

「やはりこのスケールの敵は退けられなかったか…って待てよ、この先にあるのって日本じゃないか!まったくなんで宇宙人はみんな日本を侵略したがるんだ!?」

 

ナイスはいち早く大気圏を抜け、地上200mほどの高さで状況を観察することにした。

大気圏外で起こった熱風のせいか、空が曇り始めていた。黒雲から敵艦が顔をのぞかせたかと思うと、それと同じタイミングで無数の戦闘機が敵艦に向かっていくのが見えた。よく見ると戦闘機には衛星に描かれていたものと同じロゴがついている。

 

『HTDF』―そう書かれてあった。

 

「それにしてもコックピットが見当たらないが…なるほど、無人戦闘機か!ははぁ、よく考えたもんだ。ん?建物の様子が…」

 

気が付くと彼の周りの高層ビルがどんどん縮んでいっていた。

 

「違う!これは地下に収納されて行ってるんだ!へぇ~、面白いことを考えたもんだねぇ。でも他の小さな建物たちはそのまま残るのか。」

 

感心しているのもつかの間、無人戦闘機による敵艦隊への一斉射撃が開始される。先ほどの衛星の光線砲ほどの威力はないが、数が多く攻撃の頻度が高い分侮れない威力を有していた。

 

「でもあの程度じゃああの数の艦隊は退けられそうにないな…ってことは俺の出番が来ちゃったかもしれんな!」

 

ナイスが調子に乗り始めた次の瞬間だった。

戦闘機に向けて発射された敵の光線が街に直撃した。

 

 

ドキューン!!!!

 

 

凄まじい爆音とともに、黒煙が立ち込める。

ナイスの耳には泣き叫ぶ人々の声がしっかりと聞こえた。

その悲鳴に、ナイスはこの下には地球人たちがいるのだという当然の事実に気づく。

 

「クッ!俺としたことが…自分の手柄ばかり気にしていたとは…」

 

体を実体化させ、応戦しようとするもうまくいかない。ナイスはまだ心の底から人類が死力を尽くしたとは思っていないのだ。

 

「くそぉ、死力を尽くすも何も、その最中に人が死んでるんじゃあ元も子もないじゃないか!ちくしょう、元に戻せ!頼む、俺の体を実体化させてくれ!」

 

その願いもむなしく、激戦は続いていく。

無残に撃ち落される無人飛行機の数々。大破される敵の戦艦。

そして巻き添えを食らい、破壊されていく街。

遅れて到着した陸上戦車の数々も戦闘に加わり、戦争の炎はどんどん激しさを増していく。

無数の砲撃を食らいながらも、じりじりと宇宙艦隊は地上からの距離を縮めてくる。

 

地上250mほどのところまで敵艦隊が降りてきた時だった。

 

敵艦隊の下から筒状の突起物が現れ、地上に向けて向きを変えたかと思うと、すさまじい速さで回転し、光線弾を発射し始めた。

 

その姿はまるで地獄のスプリンクラーのよう。射程距離が短いため、地上から一定の高さでしか使えない兵器なのだろう。街への被害は一層激しくなり、辺りが一面焼け野原になっていく。

 

ナイスはブレスの制御を必死に解除しようとするが、制御システムのメカニズムが分からない以上どうにもならなかった。なんとか実体化しようとナイスがあがいていると、耳をつんざくような少女の悲鳴が聞こえた。

 

「あっくーん!!!!」

 

なぜその声が他の悲鳴よりもはっきりと聞こえたのかは、彼にもわからなかった。

でもその声のするほうに向かわなくてはならない、そんな謎の使命感に押され、ナイスは地上へと急降下する。

 

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一体何が起きているんだろう。

そのことで輝は頭がいっぱいだった。

ふとそばを見ると、彗星が彼の体を揺さぶりながら泣いている。

 

(すいちゃん…そうだった…僕は…)

 

走馬灯のようにさっきまでの出来事がよみがえる。

 

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モールから何とか抜け出すことができた二人は、最寄りのシェルターに向かい走っている最中だった。無数の火の玉のようなものが頭上から降ってきて、周りの建物がどんどん破壊されていく。

早くシェルターに向かわなくては。

 

そう思うも、うまく走れない。彼のスタミナの限界が来たのだ。ばてながらも娘をおぶり、避難誘導員のこちらですよという誘導に従い、人の波にのまれるようにシェルターへ進んでいった。

 

「あっくん、あの火の球こっちに落ちてきてる。」

 

その彗星の言葉に気づき、上を見上げるとすぐそばまで火の玉が落ちてこようとしていた。

とっさに彗星を下ろし、彼女の体に覆いかぶさる。

 

 

ドグォーン!!!!

 

 

凄まじい爆音がし、彗星が目を開けると、服がぼろぼろに破けた父の姿があった。

 

「あ…あ…あ…」

 

言葉にならないような声で父の名前を呼ぼうとするも、あまりの衝撃に言葉が出ない。

よろりと輝が倒れこんだ時、彗星は心の中で光がすっと消えたのを感じた。

 

「あっくーん!!!!」

 

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(すいちゃん…ごめんな…僕がもっと動けてたら…)

 

誰かが近づいてくる。あの誘導員の人たちだろうか。

 

(どうか…すいちゃんだけでも…娘だけでも助けてやってくれ…)

 

彼らは彗星を自分の体から引き離し、シェルターの方へと急いで運んでいく。その間にも彗星はずっと泣き叫び、彼女の自分の名前を呼ぶ声だけが頭の中にこだましていた。

しかし意識は遠くなっていく一方だった。

 

(月子…すいちゃんを…頼んだよ…)

 

しだいに目の前が真っ暗になっていった。

もうここまでかとあきらめたその時だった。

赤い光が目に入ってくるのを輝は感じた。もう目を開けていられる力は残っていないはずなのに、はっきりと光が差し込んでくるのを感じる。

 

「おい…おい!聞こえるか、地球人よ!うまくいくといいんだが…」

 

しっかりと耳も聞こえる。

 

(あぁ…とうとう僕もあの世に来てしまったか。思えば短い人生で…)

「何勝手に死んでんだ!君はまだ生きている!」

(…!?)

 

その言葉に驚き、目を開けるとそこには銀色の巨人が立っていた。

 

(な、なんだぁ~っ!???何がどうなってんだ!??)

 

辺りを見渡すと、赤い空間にポツリと輝は浮かんでいた。どうやらまだ死んではいないらしい。

 

「驚くのも無理はない。しかし時間がないのだ。私に君の体を貸してくれ!」

(何言ってんだこいつ…それに、あんた誰?)

「うっ…馴れ馴れしいな、君…」

(それはこっちのセリフだ!初対面の相手に体を貸せだなんて…まさかお前、悪霊なのか!?)

「誰が悪霊だ!いや、自己紹介をしなかった私が悪かった。私はウルトラマンナイス。まぁ地球のピンチを救いに来たヒーローだと思ってくれ。」

(ヒーロー??お前が??うさんくさいなぁ…)

「えぇい、君が私のことをどう思ってるかなんて今はどうでもいい。いいか、よく聞け。君の命は今果てようとしてるんだ。君が生き残る手段はただ一つ。私と同化して、共に戦うことだ。」

 

あまりの急展開に、輝の頭はこんがらがっていた。

 

(同化…?戦う…僕がぁ?)

「そうだ!じゃないともっとたくさんの人が死んでしまう!」

(そんなこと急に言われたって…ん?僕の手が…)

 

輝は自分の手がどんどん透けていくことに気づいた。

いや、手だけじゃない。足も、腹も、体全体が透けて行っているのだ!

 

(お、おい!これってどういうことだよ!)

「だから時間がないと言っているんだ!いいか、今私と同化しなかったら君は死ぬ!君の娘さんにももう会えないんだぞ!」

 

その一言に輝は心を揺さぶられる。

彼にとって、他のことはどうでもよかったのだ。

ただ、また生き返って娘と妻の顔をもう一度見れる。

理由はそれだけで十分だった。

 

(わかった。僕は何をすればいい?)

「よぉし、よく言ってくれた。私は今から君と同化する。いいか、心を無にして、私を受け入れるんだ。」

(受け入れるって…)

 

心の準備ができぬまま、光が自分の中に入ってくるのを輝は感じた。

 

(う、うぉぉぉ!???)

「抵抗するな!もうちょっとの辛抱だから!!」

 

しかし、どこか心地いい感じがし、輝はそれをどう受け止めていいのかわからなかった。

すると徐々に視界が開けていき、意識がどんどん戻ってくるのを感じた。

 

「よぉし、これで準備オッケーだ!意識が戻ってくるぞ!」

 

まさに奇跡の瞬間だった。

 

夢星輝は今、命を吹き返そうとしているのだ!

 




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