文明監視員・ウルトラマンナイスのナ、ナ、ナ、ナイスな奮闘記 作:Sashimi4lyfe
と言ってもちょっと遅れてしまいましたね。皆様はどのようにクリスマスをお過ごしになりましたか?
僕はカナダに住んでいるのですが友達と鍋パーティをしました。友人の多くは「鍋を囲んで食材を煮たそばから食べる」という習慣がなく、色々指導(?)しながらおいしくいただきました。
日本も寒くなってきたようですので皆様もお体に気を付けてお過ごしください。
Sashimi4lyfe
「それじゃ、行ってきま~す。」
一言挨拶をして輝は自宅の玄関から出る。
宇宙人の襲撃からはや1週間。街はかなり甚大な被害にあっていたが、政府の地球外生命体災害復興プログラムによってあっという間に町は元通りになり、いつもと変わらない日常が戻ってきた。
輝はイアポッドを付け、スマホから流れてくるニュース配信を聞きながらいつもの通勤路を歩く。社会人ならみんな聞いている人気のニュース番組だ。
『HTDF日本支部の総司令官、倉石氏によりますと、今現在EO-04の正体ははっきりとしておりませんが、知的生命体である可能性が高いとのことです。』
(またあの巨人の話か。)
EO-04とはHTDFによって命名されたウルトラマンナイスのコードネームのことである。輝にはナイスと同化したときの記憶が全くなかったが、彼にはあの巨人に対して根拠のない親近感を感じていた。
『視聴者の皆様に対してEO-04、通称「銀色の巨人」についてアンケートを取りましたところ、約44%が好感的な印象を持っている、約10%が信用できない、そして約46%がどちらでもないという返答をくださいました。これについて異星人・地球外生命体による災害の専門家、
耳から流れてくるニュースを聞き流していると、高校の制服を着た男の子が他の男子3人に囲まれているのに気が付く。
「オイ、ぶつかって来ておいてすいませんだけじゃ済まねぇだろ。謝るときはもっと誠意をみせるもんだろ、えぇ!?」
イアポッド越しからでも聞こえてくるほど大きな声でガタイのいい男が怒鳴り散らす。
「ご、ごめんなさい…」
(うわ、タチが悪そうなやつらだな…ここはなるべく目立たないように通り過ぎよう。あの子には気の毒だけど…)
「それじゃあ心がこもってるとは言えねぇなぁ。オイ、今いくら持ってる?量によっちゃあ許してやってもいいぜ。」
「も、持ってるって何を…」
「金に決まってんだろこのボケナス!財布出しやがれ財布!」
「は、はい…」
ちょうど輝が彼らの隣を通り過ぎようとした時だった。彼の左胸が急にうずき出す。
(うっ…いてて…何だんだ今度は…?)
痛みを無視して歩こうとするも、今度は目の前が白くなっていく。輝の意識は遠のいていく一方だった。しかし、心の奥のほうから別の誰かの意識が昇ってくるのを感じた。
輝の体が一瞬ぐったりとなったかと思うと、はっと目が覚めたように姿勢を正した。
(ふぅ。うまくいったな。やれやれ、見損なったぞ、輝。)
ナイスは体をちゃんと動かせることを確認し、肩をぐるりと回して体の感覚を確かめた。
説明しよう!
アナザーブレスの制約を力ずくで解除し、夢星輝と同化したウルトラマンナイスは輝と同時に意識を保つことができず、どちらかの精神を眠らせることでしか活動できないのだ!
目の前の悪に目を背ける輝にナイスは我慢の限界を感じ、やむを得ず彼の意識を強制的に自分の意識と入れ替えることで、一時的に輝の体を乗っ取ったのである!
(乗っ取ったとは人聞きが悪い!てかお前誰だよ。まぁいい、今はこの青年を助けなくては!)
ナイスは不良三人組に歩み寄っていく。
「やい、君たち!そこらへんにしといたらどうだ。この子は謝ってるじゃあないか。」
「ン~?誰だこのおっさん?」
「おっさん、引っ込んだほうが身のためだぜ。」
『おっさん』という言葉にナイスはカチンときた。年齢をいじられることが彼のコンプレックスなのである。
「誰がおっさんだ!!!私はこう見えてまだ一万歳前半なんだぞ!」
意味不明なナイスの発言に不良たちも思わずぽかんとしてしまう。
「誰だか知らねぇが、あんまりでけぇ口叩くとけがするぜ、お っ さ ん。」
わざとゆっくりと不良の一人がナイスを挑発する。
「やってみろッ!!正当防衛なら私にも戦闘許可が出ている!」
その瞬間、一番ガタイのいい男がナイスに向かって拳を振りかざした。
しかし、それをナイスは片手で受け止める。
「へっ!?」
男の顔から焦りが見て取れた。
「宇宙警備隊で鍛えたこの体を舐めるなよぉーッ!!」
不良の手をつかんだまま体をひねらせ、不良の胴体にハイキックを浴びせかける。
「キキキック!!」
あまりの勢いのキックにたまらず不良は倒れこんでしまった。
「ヒ、ヒエェーッ!!!」
後ろで様子を見ていた不良たちが急いで逃げ出す。
「お、おいてめぇら!俺をおいてくなぁ!ちくしょう、覚えてやがれ!」
床に倒れていた不良も慌てて起き上がり、一目散に逃げていった。
「フン!2千年早いぜ。」
背広の襟をシュッとただし、ナイスは逃げていく不良を鼻で笑った。
「あ、あの…ありがとうございます…」
さっきまでおどおどしていた青年が頭を下げた。
「いいってことさ!じゃあな、また会おう!」
親指ポーズをさわやかに決めると、ナイスは再び歩き始める。
(おっと、そろそろ輝とバトンタッチしないと…)
意識をすとんと落とし、自分の中の輝の意識を目覚めさせる。
(…!?今のは…)
輝が気がつくと、元居た場所に戻っていた。
振り返るとさっきの青年がまだこっちを見ている。
(さっきのって…僕がやったのか!??)
ナイスが使っていたのはあくまで輝の体であるため、輝にはさっきの出来事の一部始終がはっきりと見えていたのだ。
(僕の中に別の誰かがいるのか…ていうか、なんかめっちゃ恥ずかしいセリフ言ってなかった!?)
自分が絶対に言わないであろうセリフを言っていたことに輝は赤面し、せかせかと駅へと歩いて行った。
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午後12時44分。
輝は会社近くの公園で月子の作った弁当を平らげ、コーラを飲みながらほっと一息ついていた。
(それにしても、今日の朝はなんか変だったなぁ。なんだか自分の意志と関係なく体が動いてる感じで…)
不思議と輝は恐怖を感じなかった。他人が自分の体を動かしていたのにもかかわらず、なぜかそれを許していた。
(でも別に嫌じゃなかったんだよなぁ。それより誰なんだろう、僕の中にいる人って。)
そうぶつぶつと考えながらコーラを堪能していると、ベンチの上に置いた弁当箱がカタカタと音を立てていることに気が付く。
(なんだ…?地震?)
揺れはどんどん激しさを増していき、近くを歩いていた人たちが倒れこんでしまうほどだった。
揺れがピークに達したと感じた次の瞬間、少し遠くの場所から得体のしれない物体が地表を突き破って姿を現した。
(地下開発ドリルが間違って地上に出てきたのか…?いや、あれは明らかに機械じゃない…)
その物体はよく見ると輝が子供の頃よく見た怪獣映画にでてくる怪獣に似ていた。黒い体に一本の角が頭のてっぺんについており、しっぽのようなものが後ろについている。
そいつが天に向かって口を開けたと思った次の瞬間だった。
グアオゥォーーン!!!
生物が発したとは思えないような雄たけびを放った。それに続くようにあの不気味なサイレンが街中に響く。
あまりの防音のオンパレードに人々はパニックに陥り、最寄りのシェルターへと一目散に駆け出していく。
一方、輝は恐怖で身ががちがちに固まり、何をしていいのかわからなくなっていた。気が動転し、辺りを見渡すと逃げまとう人たちに気づき、正気を取り戻す。
「そ、そうだ、とりあえず逃げなきゃ!」
荷物をバッグに押し込み、走り出そうとしたその時、また胸のポケットがうずき始める。
「ぐっ…またかよ!?」
しかし今度は意識は遠のいていかず、胸に入っているサインペンが気になってしょうがなくなった。恐怖心はいつの間にか消え去っており、ペンをポケットから取り出し、それを輝はまじまじと見つめる。
「このペン…このキャップを抜けと言うんだな?」
キャップを引き抜こうとした次の瞬間、誰かの足音に気づき、とっさにペンを隠す。
「ここは危険です!早くシェルターへ…」
声をかけてきたのはこの前の人命救助隊員の男だった。彼の顔を見た瞬間あの時の記憶がよみがえる。そう、彼の名前は米田誠司。彼の名前を輝は知らないが、彼の顔ははっきりと覚えていた。
この男と初対面で疑似キスを交わしたことも。
「あ、あぁぁ!!アンタか!」
「アンタかじゃないですよ!早く避難してください!あれが見えないんですか!」
誠司は怪獣を指さして訴えかける。
「わかった!わかったから!トイレ行ったらちゃんと避難するから!」
輝はとっさの嘘でごまかそうとする。
「それどころじゃなーい!シェルターにトイレはちゃんとありますから!それまでちょっと辛抱…」
ふと彼が怪獣に目をそらすと、怪獣が逃げようとしていた女性を手でつかみ、顔に近づけながらぎろりと大きな目で見つめていた。
彼は一目でわかった。あれは食事にありつく前の獣の目だと。それに女性も感ずいたのか、必死にもがきながら叫んでいるように見えた。
(あのままじゃあの人が食われちゃうよ!他の班の奴らは一体何をしてるんだ...いや、考えてもしょうがない。ここはまず自分にできることを…ってあれ?)
輝だけでも助けようと振り返るとそこに輝の姿はない。
「まさか…本当にトイレに!?あの人頭おかしいんじゃないのか!?」
そんなはずはなく、輝は近くの茂みの中にひっそりと隠れていた。輝は彼が通り過ぎていくのを確認すると、ペンを胸のポケットから取り出し、キャップを勢いよく引き抜く。
するとペンの先端がピカリと光り、輝を包み込んでいく。無意識に輝はペンを宙に向けていた。
「うおぉぉ!!!!」
『ウルトラマン、ナーイスッ!!!!』
輝の体さえも光と化していき、大きな光の球体となった。その球体は怪獣めがけて電光石火のごとく飛び去っていき、怪獣の口に投げ込まれようとしていた女性を怪獣の手から奪い取った。
その女性が目を開けると、彼女は巨人の手のひらの上にいた。
その手は赤く、大きく、どこか温かみすら感じた。
「危ないところだった。もう大丈夫だ。」
ナイスは女性を落ち着かせるように語り掛けた。
「しゃ、喋ったぁぁ!!???」
ナイスは少し念じると、その女性の周りに光のシャボン玉のようなものができ、彼女はシャボン玉とともにふわふわとシェルターへと運ばれていった。
「ふぅ。5年前の忘年会で披露したこの一発芸がこんな役に立つとは…さて、怪獣退治と行きますか!」
ナイスが怪獣に向かって身構えると、それに応えるように怪獣もナイスに向かって雄たけびを上げ、ナイスに体当たりを仕掛けてくる。
「むっ!ぐぐぐ…」
それを力ずくで抑えようと踏ん張るも、怪獣の力に押され倒れこんでしまう。
「ぐあぁぁ!!」
大通りにナイスの体がたたきつけられ、大きな地響きが街に響き渡る。
「グウオァァアア」
怪獣は殺意に満ちたうなり声をあげ、覆いかぶさりながらながらナイスに噛みつこうとする。
「やめろぉぉ、狂犬病にでもなったらどうするんだ!」
ナイスは怪獣の額と角を抑えながら必死にあがいた。
敵の重心が横にずれた瞬間、隙をついてナイスは逆に敵に馬乗りになり、頭部に強烈なチョップをかます。
「チョチョチョップ!!」
しかし一発食らわせたはいいものの、その後の溜めが長く、角から発射されたビームをもろに食らってしまう。
「うわっ!?」
その隙に怪獣はナイスを押しのけ、体勢を立て直すと、ビームを再びナイスに向けて放った。するととっさにナイスはバリアを展開し、ビームを受け止める。
「二度も同じ手を食らうか!」
ナイスは体勢を立て直すと、左手を腰のあたりまで引き、それに右手を合わせて光線の構えを取る。しかし、間髪入れず怪獣もビームを発射する。
ナイスにまたビームが直撃するかと思われた次の瞬間、ナイスはひゅっと跪いて素早くビームをかわし、
「ミレニアムショット!」
光線弾を怪獣の角めがけて発射した。それは見事命中し、怪獣の角はあっけなく壊れてしまった。
「よっしゃあ!決まった!!」
歓喜するナイスだったが、それに激怒したのかまた怪獣は体当たりを仕掛け、ナイスはまた倒れこんでしまう。それと同時に、ナイスのカラータイマーも瞬き始める。
「い、いかん。調子に乗ってしまった…」
急いで体勢を立て直そうとすると、今度は怪獣のしっぽによる遠距離攻撃を頭部に食らい、再びダウンしてしまう。
「くぅ…このままでは…」
「ギャアアカカカ」
その様子を喜ぶように怪獣は不気味な音を立て、ナイスに迫る。ナイスにまたしっぽが振り落とされようとしたその時だった。
ドガガガガという連射音とともに、一瞬にして怪獣のしっぽが切られ、地面に落ちた。
ナイスが上を向くと、無数の無人戦闘機が空を舞っている。
「おぉぉ、ナイスサポートだ、HTDFのみんな!」
ナイスは戦闘機に向かって親指ポーズを作ると、むくりと立ち上がり、腕をN字に広げた。虹色の光を両手に集め、それをクロスさせると頭を傾げながらとどめの必殺光線を放つ。
「ベリーナイス光線!!」
光線は怪獣に命中し、あまりの威力に声も出せずに地面に倒れこんだと思った次の瞬間、とてつもない爆音とともに木っ端みじんに吹っ飛んだ。
「はぁ…はぁ…なんとか勝てた…」
ナイスは疲れ果てた体を癒すため変身を解除しようとしたが、さっき助けた女性の声に気が付いた。
「あの!!お名前、聞いてもいいですかぁー!!」
手をメガホンのようにして口に当てながら彼女が叫ぶ。ナイスは親指ポーズを作り、とびっきりのイケボで答えた。
「私の名はナイス。ウルトラマンナイス!」
そう言い残すとナイスは変身を解除し、輝の姿へと戻っていった。
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「…はっ!」
輝が気が付くとさっきまでいた公園の茂みの中にいた。
右手にはさっきキャップを引き抜いたサインペンがある。しかし、なぜかキャップが付いたままになっていた。
(なんだんだろうな…このペンの色が変わってから身の回りで変なことばっかり起きてる…あっ!怪獣!怪獣が来てるんだった!)
慌てて茂みから出てさっきまで怪獣がいた場所を見ると、HTDFのヘリが何台か飛び回っているだけで怪獣の姿はどこにもなかった。
「あれ、おかしいな…?さっきまで怪獣が…」
念のためスマホを開くと、「緊急事態宣言」と「緊急事態宣言解除」というメッセージが届いている。
「じゃあ確かに怪獣は出たんだ…でもどうして…」
状況を把握するためニュースアプリを開くとあの巨人が怪獣と戦って勝利した画像が載っていた。
「未確認生物がT地区に出現。EO-04によって撃退される…あれ待てよ…この巨人が現れた時の僕の記憶がないってことは…もしかして僕が…?」
輝は色々と妄想を膨らませていた。
「そーんなことないか!あ、やっべ、もう昼休み終わっちゃうな…」
輝はせかせかと職場へと戻っていくのだった。
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