文明監視員・ウルトラマンナイスのナ、ナ、ナ、ナイスな奮闘記   作:Sashimi4lyfe

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平均以下のクソザコ野郎さん、右乃と左乃さん、

貴重なご感想本当にありがとうございます!

投稿し始めた時は誰も読んでくれないんじゃないかと不安でしたが、お気に入りに入れてくれた方々やご感想をくれた方々のおかげでこれからも好きな作品が書けそうです!

お体に気を付けて、良い年末をお過ごしください!

Sashimi4lyfe


こんな僕がヒーローでいいのかな?

「ただいま~」

 

仕事から帰ってきた輝が玄関のドアを開ける。

 

「あっくんお帰り~。こらすいちゃん、『お帰り』は?」

「お帰りー。」

 

月子の声がキッチンから聞こえる。玄関からリビングに入ると彗星の目はテレビにくぎ付けになっていた。

 

「またこのアニメ?よく飽きないもんだなぁ。」

 

彗星が見ているのは彼女の大好きな女児アニメ、ファンタジアガールズだ。NETFLEXというドラマ配信アプリで全話限定配信をしており、それを毎日狂ったように見ている。

 

「すいちゃんが見てる間はあたしも好きなドラマが見れないから困っちゃうのよね。」

 

玉ねぎをスライスしながら月子がこぼす。まるで輝に「早く見るのをやめさせてくれ」と言っているようだった。

 

長年の付き合いからそれを輝は察し、彗星にアニメを見るのをやめさせようと諭す。

 

「ほらすいちゃん、僕が帰ってきたら見るのを休憩するって約束だろ?」

「えぇ~?でもそれからずーっとあっくんたちが好きな番組しか見れないじゃん。」

「さっきまですいちゃんだってずっと見てたじゃないか。いうこと聞かないと今週の土曜日にお食事連れてってやんないぞ。」

「ちぇ。ふこうへいだよこんなの!」

「不公平って…そんな言葉どっから習ってきたんだ?」

「ファンガーからだよ。あっくんこんな言葉も知らないの?」

 

ファンガーとはファンタジアガールズの略称である。

 

「こ、こら!今僕を馬鹿にしたな!」

 

少し生意気な態度をとる彗星を軽く叱ろうと輝は声を荒げたつもりだったが、少し大きな声が出た程度だった。それを聞いていた月子がくすっと失笑する。

 

「あーっ!月子まで!」

「ごめんごめん。なんか可笑しくって。」

 

月子に続くように彗星もくすくすと笑いだす。それを見て輝はこの状況が馬鹿らしくなってしまい、まぁいいかと軽く笑い飛ばした。

 

「さて、リモコンは僕がいただくぞぉ。」

「あっ、ずるーい!」

 

リモコンをソファーからひょいと拾い上げ、ニュースチャンネルに切り替える。案の定、ニュースではまだ昼起きた出来事を取り上げていた。

 

『-入った情報によりますと、巨人が助けた20代の女性は巨人がはっきりと日本語で発声していたと供述しており、巨人は「ウルトラマンナイス」と名乗った模様です。』

 

(ウルトラマン…ナイス?)

 

「あぁー!!そうそう、この巨人ね、あっくんが言った通りの名前だったのよ。ねぇ、なんで彼の名前を知ってたの?」

「あっくん、この人とお友達なの?」

「い、いや、別に…なんか彼を見た瞬間この名前じゃないかって…」

 

(なんで僕はこの巨人のことを知ってるんだ?そういえばこのサインペンもこの巨人と似た色をしてる…)

 

「ちょ、ちょっとトイレ!」

 

慌ててペンを確認しようとトイレへ輝は駆け込んだ。

 

「ふーん。変なの。」

 

 

輝は便器に座りながらペンをまじまじと見つめると、確かにナイスと同じ色をしていることに気づく。

 

(ってことは…僕が本当に…?)

 

それを確かめるべく恐る恐るペンのキャップを抜こうと力を入れる。

 

(あれ?抜けない…)

 

いくら力を入れてもキャップが抜けない。

 

(おかしいな…あの時は簡単に抜けたのに…)

 

しばらくキャップをどうにか外そうとあれこれ試したが、キャップはびくともしなかった。

 

(ふぅ…まぁ今は諦めるか。あれこれ考えてもしょうがないや。)

 

トイレから出てきた輝はソファーに座り、とりあえずニュースを見ることにした。

 

「ねぇあっくん、結局あのおっきな人とお友達なの?」

「い、いや、知ってるわけないじゃん。」

 

彗星を適当にごまかしながらニュースに耳を傾ける。

 

『さて、今日昼頃現れた巨大生物についてですが、HTDFの調査によりますと、先週襲来した異星人による攻撃で地盤が刺激され、地下およそ2キロメートルに眠っていた5000万年前の巨大生物が衝撃で目を覚ましたと考えられています。他にも似たような古代生物が地下に眠っていないか、HTDFは総力を挙げて最先端のソナー技術を駆使して捜査を続けるとのことです。これについて異星人・地球外生命体による災害の専門家、紫蘭家堂(しらんけどう)先生にご意見をお聞きしたいと思います。紫蘭先生、よろしくお願いいたします。』

 

『よろしくお願いします。えー、地球はこれまで人類史に残っているだけでも7回異星人や地球外生命体による襲撃を受けていますからね。まぁ人類が住む前の地球にこのスケールの地球外生命体が住んでいたという説もあるでしょう。知らんけど。』

 

『なるほど。貴重なご意見をありがとうございます。それではHTDF日本支部総監督、牧野氏による記者会見をご覧ください。』

 

「怖いわー。すいちゃん、あんなのがうちの地下から出てきたらどうする?」

 

月子が彗星を脅かすように言う。

 

「うーん、たぶんウルトラマンナイスがやっつけてくれる!」

 

(げっ、もう名前覚えたのか…)

 

ナイスの名前を聞くたびになぜか輝はビクッとしてしまうので、彗星に名前を憶えられたのは少し気まずかった。

 

「そうね。そうだといいわね。それにしても正義のヒーローって本当にいるのね。」

「正義のヒーロー?」

「だって、悪い奴が街を荒らしてるときに現れてそいつを退治してくれるんでしょ?まるでウルティメーターみたい。」

 

ウルティメーターとは少年アニメ「電脳戦士ウルティメーター」に出てくるキャラクターで、月子が大好きなアニメの一つである。実は輝もこのアニメの熱烈なファンで、ウルティメーターがきっかけでこの二人は知りあうことにだったのだが、それはまた後の話。

 

「ウルティメーター、か。確かにそうだよな。」

 

(僕がもし本当にウルトラマンナイスだったなら…)

 

ぶつぶつと考えことをしながら輝はテレビをぼーっと見続けた。

 

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その日の夜のことだった。

 

彗星と月子とともに床に就き、輝がちょうど心地よく眠りについた時だった。

目の前が急に明るくなり、赤っぽい光が目に差し込んでくる。どこかは思い出せないが、どこでか確かに体験したことがある感覚だ。

 

「輝…聞こえるか…輝…」

 

かすかに自分を呼ぶ声が聞こえる。ふと目を覚ますと、目の前にあの銀色の巨人、ウルトラマンナイスが立っている。

 

「う、うわぁ!なんだよ、びっくりしたぁ。」

 

突然の出来事に輝は驚いてしまった。

 

「なにビビってるんだ。私と君は同じ体を分け合っている仲じゃあないか。」

「君は…ウルトラマンナイス!?なんで僕の夢の中に!?」

「そんなフルネームで呼ばなくてもナイスって呼べばいいさ。なぁに、私と同化したときの記憶がないようだったから思い出させてやろうと思ってね。」

「そ、そうか…じゃあやっぱり僕の中にいた人は君だったんだな。」

「私も今回は少々乱暴に君と同化したからな。だから同化したときの記憶がないのだろう。よし、最初から話してやろう。」

 

ナイスが手のひらを広げると、ソリッドビジョンのように立体的な映像が彼の手から映写された。そこには見たこともない青く美しい惑星が映し出されていた。

 

「これは?」

「M78星雲、光の国。まぁ私の出身地だと思ってくれ。もっとも、この宇宙では存在しない惑星だがね。」

「この宇宙…ってどういうことだよ?」

「マルチバース理論というものがあってだな...とにかくこの世には今私たちがいる宇宙のほかにも色んな宇宙が共存してるんだよ。」

 

(マルチバース理論については詳しいことは私もよく知らないんだけどね。講義中寝てたから。)

 

「あぁ!平行宇宙ってやつ?マジか!本当にあったのか!」

 

平行宇宙の概念自体はこの宇宙でもSFなどのフィクションで取り上げられており、今やだれもが知る抽象的な概念となっていた。

 

「本当にあるとも!私は別の宇宙からこの宇宙にやってきたのさ。」

「すげぇ…こんなことが本当にあるんだな…ん?待てよ?じゃあナイスはこんなとこまで何しに来たんだ?僕たちを救うため…とか?」

「むむ…ちょっと答えづらい質問だな。まずはウルトラマンの存在について教えてやろう。」

 

ナイスは今度は無数のウルトラ戦士たちの映像を手から映し出した。

 

初代ウルトラマン、ウルトラマンティガ、ナイスを鍛え上げたウルトラマンタロウ、そして相方のゼアスなど、様々なウルトラマンを思いつく限り映し出す。

 

「みんなナイスみたいな見た目をしてる…君の仲間なのか?」

「そう。私たちウルトラマンは宇宙警備隊という宇宙の平和を守る勇士たちの集まりに属していて、日夜問わず悪と対峙してるのさ。」

「じゃあ、君はこの地球を守るために遣わされたヒーローってこと?」

「ま、まぁそういうことだ。」

 

(やばい…言えない…文明監視の任務をほったらかして規律も破って輝と同化しただなんて…)

 

そう、本当はナイスが輝と同化していること自体が隊律違反なのである。アナザーブレスの制御を力ずくで解除し、マックスの忠告を無視して輝と同化しているのだから。

 

「そ、そうだ!君がどうやって私と同化できたのか見せてやろう。」

 

今度は輝がぐったりと倒れこみ、その横で彗星が号泣している様子が映し出された。

 

「これは…僕?」

「そうだ。君は娘さんをかばおうと我が身を犠牲にしてまで重傷を負った。私はその姿に感動し、君に私の命を分けてやろうと決意したのだ。」

 

シーンが切り替わり、輝がサインペンのキャップを引き抜いてナイスに変身する様子が映し出された。

 

「ああやって僕は変身してたのか…って待てよ?なんで僕のペンをわざわざあんな風に変えたんだ?」

「そりゃあ変身アイテムだもの。ただのペンの見た目にしておくのはつまらないだろう。」

「変身アイテム?何の話だよ。」

「いや、ウルトラマンというのはだね、人間と同化するとなにかトリガーとなるアイテムを駆使しないと変身できないものなんだよ。そのためには隠しやすいちょうどいい大きさなものがちょうどいいんだけど、君の胸ポケットにたまたま入ってたそのサインペンがちょうどよかったんだ。」

「えぇ~?そんな理由?」

 

輝は明らかに腹を立てているように見えた。

 

「なんだ、そのリアクションは…」

「そのペン、月子がせっかく買ってくれたんだぜ!しかもビクトリウム製だったのに…」

「何、ビクトリウム!?」

 

説明しよう!

 

ビクトリウムとは、アフリカのナイジェリア付近で採掘できる鉱石のことである。

 

およそ400年前、ある隕石がアフリカ中央部に落下した際、超高熱の隕石が地球の地殻と激突したことで化学反応を起こし、辺りの地表をビクトリウムに変換させてしまったと言われている。

 

電子機器や電気自動車、軍事兵器にも使用されている多彩な活用ができる貴重な鉱物として重宝されているが、その美しい見た目からアクセサリーに使われたりもする。

しかし、ナイスがいた宇宙にもビクトリウムは存在し、地球の地下に隠された未知のエネルギーを秘めた鉱物と伝えられており、その力を駆使して戦うウルトラ戦士がウルトラマンビクトリーである。

 

ウルトラマン達が持つ光エネルギーはビクトリウムと特に相性がよく、輝のサインペンはナイスの光エネルギーに反応し、ナイスのエネルギーを蓄えた変身アイテム、ぺペペペンへと変換させたのだ!

 

「だからあんた誰だよ。しかし、まさかそのペンにビクトリウムが含まれていたとは…」

「じゃあしょうがないか…ナイス、最後にもう一つだけ聞かせてくれ。」

「どうしたんだ、改まって。」

「その…言いにくいんだけどさ。これって僕がヒーローになったってことなのかな?」

 

輝の言葉にはどこか迷いがあった。

 

「そう…だな。君は今、正義のヒーロー、ウルトラマンナイスを体に宿している。いざという時はそのぺペペペンを使って私に変身し、悪と戦うのだ!」

「僕じゃだめだよ。」

「え?」

「僕みたいな人間はヒーローにふさわしくなんかないよ。君も見てただろ、今朝の出来事。」

 

ナイスは今朝の出来事を思い出した。輝は不良に囲まれている青年を無視し、通り過ぎようとしたのだ。

 

「輝…」

「君が代わりに動いてくれなきゃ、僕はあの子を見捨ててたんだ。君が僕を助けてくれたのは本当に感謝してるけど、もっと他にふさわしい人がいると思うんだ。僕を必死に助けようとしてくれたあの救助隊員の人とかさ。」

 

「甘ったれるなッ!!!」

 

「へぇっ!?」

 

突然ナイスが大声を出したので輝は思わずビクッとしてしまった。

 

「いいか。君は確かにあの場を通り過ぎようとした。しかし、君の心の底で君はあの子をかわいそうだと、救ってやりたいと思っただろう。その気持ちがヒーローになるための第一歩なんだ!その気持ちさえ捨ててしまったら、君は愛する人を、月子さんや彗星ちゃんを守ろうとする心さえ失ってしまうんだぞ!」

 

輝の心にナイスの言葉は強く刺さった。説教をされているのに、どこか温かい感情が彼の心の中にあふれていた。

 

「誰だって初めからヒーローなんかじゃないんだ。でも大切なのは、『自分がなりたい自分』に向かって日々一歩ずつでも歩いていくことなんだ。私だってはじめっからウルトラマンとして生きてきたんじゃないんだぞ。」

 

その言葉は輝に希望を与えてくれた。もしかしたら、彼となら子供のころ描いていた大人の自分に近づけるかもしれない。そんな気持ちが彼を満たしていた。

 

「僕も…なれるかな。君みたいに…正義のヒーローに。」

「あぁ。きっとなれるさ!」

 

ナイスは親指ポーズを作ってみせた。単純なジェスチャーのはずなのに、それはなぜか輝を落ち着かせてくれた。

 

輝もナイスに向かって親指ポーズを作る。その次の瞬間、

 

「ほら、起きて!起きてってば!もう朝よ!」

「ん?んん…」

 

月子に体を揺さぶられ、輝は目を覚ました。あくびをしながらパジャマのポケットを探ると、あのペンがズボンのポケットに入っていた。

月子と彗星に見られないようにトイレに入り、ペンを見つめながら輝はつぶやいた。

 

「ありがとう、ナイス。」

 

ペンのキャップがきらりと光ったように輝は感じた。

 




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