文明監視員・ウルトラマンナイスのナ、ナ、ナ、ナイスな奮闘記 作:Sashimi4lyfe
たくさんの評価や感想、ありがとうございます!リアルでかなり忙しかったので中々次のお話しが投稿できず、前回の投稿からかなり間が開いてしまいました。
本当はこれからのお話しは長編になりそうなので3,4話一気に投稿したかったのですが、ここからの流れがなかなかまとまらなかったのでまずは序盤の今回のお話しだけ投稿することにしました。
ここからの展開を楽しみにしていただければなと思います。
雲一つない晴れ渡った朝だった。
朝日がまぶしくビルの合間から注ぎ込み、人々が職場や学校へと急ぐいつもの通勤路を歩きながら、いつものようにニュースを聞きながら輝は職場へと歩いていた。
―さて、続いてのテーマは突如T地区に姿を現した光の巨人、EO-04こと、ウルトラマンナイスについてです。視聴者の皆さまに改めてウルトラマンナイスについてアンケートを取りましたところ、約87%が好感的な印象を持っている、約3%が信用できない、そして約10%がどちらでもないという返答をくださいました。2週間ほど前のアンケートに比べ、皆さまの彼に対する評価がより好感的な方向へ変わっていったことが分かりますが、やはり本当にあの巨人を信じ切っていいのかという意見もありました。これについて異星人・地球外生命体による災害の専門家、
―えー、まぁ今のところ彼は我々に危害を与えるようなことはしてきていませんが、だからと言って信用しきってしまうのもいかがなものかと思います。我々の味方のふりをしてひそかに地球侵略をたくらんでいるやも知れませんからね。この前別個体の巨人が現れたばかりですし、この宇宙には彼らのような巨人がもっと存在している可能性がありますね。知らんけど。-
―なんだ、この紫蘭とかいうヤツは。偉そうに勝手なことばかり言いやがって。―
ナイスが紫蘭の意見に不満そうにヤジを飛ばす。
(仕方ないよ。君たちウルトラマンは僕たちにとってまだ未知の存在なんだ。)
輝がナイスを落ち着かせるように言った。と言っても、この会話は輝の脳内で行われているため、周りの人々には一切聞こえていない。
―それもそうだな…そのためにも私がもっとこの星の人たちを守らねば!-
(そうだね。実績が増えればきっとみんなも君のことを認めてくれるよ。)
―実績って…随分現実的な見方をするんだな…しかしそれには輝、君の力が必要だ。-
(僕の?戦ってるのはナイスの方だよ、僕は何にもしてないさ…)
―そんなことはない!私たちは一心同体、一つの体を二人で分け合っているのだぞ!現にこの前のテノとの闘いは君のアドバイスなしでは勝てなかった!―
(そ、そうかなぁ…)
照れながら輝が空を見上げると、何か異変に気付く。空からかけらのようなものが落ちてきたような気がしたのだ。
(…ナイス、あれ見た?)
―あれってなんだよ。もうちょっと具体的に言ってもらわないと…-
ピシッ!!
今度はナイスにもはっきりと見えた。にわかには信じられない光景だが、空にはっきりと亀裂が入ったのだ。
(なにがどうなって…)
バリィンッ!!!!
まるでガラスが割れるように、空に穴が開いた。いや、空が割れたのだ。空の向こう側から誰かが強引に空を突き破ってきたようだった。
空に空いた風穴はどんどん広がっていき、そこから異様な形をした物体が落下してくる。
機械なのか、生物なのか。それは輝にはわからなかった。体には毛と呼ぶには太すぎる突起物がびっしりと付いている。
―あ、あれは…間違いない…-
(ナイス、あの正体を知ってるのか!?一体ありゃなんだんだよ!?)
―あれは…ベロクロン…いや、ベロクロンに似てるけど違う。何者かに改造されたベロクロンだ!-
(だからベロクロンってなんだよ!怪獣か?)
―怪獣じゃない…あれは怪獣の上を行く生物兵器…-
謎の物体は目を開け、機械的な目玉をぐるりと回すと不気味な雄たけびを上げる。
―あれは…超獣だ!!-
グウオォォンン!!!!!
発された爆音とともに炎が超獣の口から噴き出る。瞬く間に街は火の海と化し、人々は逃げ惑うのだった。
「と、とにかくアイツをどうにかしなきゃ!」
―おう!私はいつでも準備OKだ!-
輝はビルの合間の路地に身を隠し、誰も見ていないか確認してからぺペペペンを引き抜き、天へと向ける。
「うおおぉぉぉ!!!」
ぺペペペンからの光に輝が包まれ、ウルトラマンナイスへと変身していく!
『ウルトラマン、ナーイス!!』
上空から巨人体へと変化したナイスは、超獣の頭部へと落下速度を生かして飛び蹴りをかました。
「キキキック!」
ドスンッ!!
キックは命中し、超獣は地面へと倒れた。
「超獣だろうが何だろうが、私が倒してやる!」
超獣が体を起こそうともがいている隙にナイスは超獣の上に馬乗りになり、連続チョップを食らわしていく。
「チョチョチョップ!」
しかしそれほどダメージが入っていなかったのか、ナイスの体はいとも簡単に押しのけられてしまった。
「く、くそう!」
急いで体勢を立て直すが、超獣はすでに立ち上がっており、背中からミサイルのようなものをナイスめがけて乱射してきた。なんとかバリアを展開して防ごうとするが、あまりの威力にバリアが打ち破られてしまう。
「グアァ!!」
たまらずナイスはビルに倒れかかり、ビルを崩しながら地面へと倒れた。
「し、しまった!」
慌ててナイスは体を起こし、誰も下敷きにしていないか確認する。幸いまだ早朝だったのでビルにいた人々は皆避難していたようだった。
「ふぃ…よかったぜ…」
「フハハハ!!!貴様もウルトラマンを名乗るだけあって人間には甘いのだな、ウルトラマンナイスよ!」
「何ッ!?超獣がしゃべった!?」
確かに超獣の方向からさっきの声は聞こえてきたのだ。
「我々は異次元生命体、ヤプロイド。貴様を抹殺するためこの生物兵器、ベロクロン
「抹殺…この地球を征服しようというのか!?」
「これから死ぬ者に我々の目的を教えても仕方あるまい。自分が死んだ意味も分からぬまま無様に散るがいい!!」
ベロクロンMK-IIはミサイルを再び浴びせかけてくる。それに対抗するべく、ナイスも光エネルギーを素早く腕に集め、敵めがけて発射する。
「ベリーナイス光線!!」
光線とミサイルはお互いに相殺しあい、ナイスは敵の総攻撃を何とかしのいだ。
―ナイス、今がチャンスだ!―
輝がナイスに脳内から語り掛ける。
―ヤツはきっとあのミサイル攻撃の後一定時間は動けないんだ!だからさっきはわざと君と会話することで時間を稼いでたんだ!-
「なるほど!よぅし、さっきのお返しだ!!」
ナイスは意識を集中させ、体中の光エネルギーを腕へと集中させる。
「今だ!」
光エネルギーの充填が最大級まで達したとき、腕をクロスさせ、必死の特訓の末編み出した必殺技を炸裂させる!
『ミレニアムクロス!!!』
ベリーナイス光線とは比にならないほどの勢いで光エネルギーが腕のクロスから放出される。光線は見事ベロクロンMK-IIに命中し、すさまじい爆音とともに辺りが煙に包み込まれる。あまりに大量のエネルギーを消費したためか、ナイスのカラータイマーが点滅を始めた。
「はぁ、はぁ…どうだ!私の最強の必殺技、ミレニアムクロスの威力は!」
勝利を手にしたと思った次の瞬間、
「何ぃぃ!?」
ミサイルの群れが煙の中からナイスめがけて突進してくる。何とかバリアを張ろうと力を籠めるも、エネルギーを使い果たしてしまったため展開できない。
「うわぁぁぁ!!!」
ミサイルの連射をもろに食らい、ナイスは倒れこんでしまった。
「う、うぅ….」
(だめだ、力が入らない…)
煙が晴れると、皮膚がはがれ、生々しい筋肉組織をむき出しにしたベロクロンMK-IIがナイスを睨んでいた。さっきの一撃はベロクロンMK-IIの外皮を焼き払ったが、内部までダメージを与えられなかったらしい。
―あんなになってまで戦えるなんて…-
「超獣は宇宙最強の生物兵器!!痛みや恐れなど感じぬ、我々の忠実なしもべなのだ!さぁ、とどめを刺せ、ベロクロンMK-II!」
ベロクロンMK-IIが口を開き、炎をため込んだその時だった。
HTDFの無人戦闘機たちが間一髪で到着し、ベロクロンMK-IIに一斉攻撃を仕掛ける。
「グギィィヤアア!!!!」
痛々しい悲鳴をベロクロンMK-IIが発する。戦闘機たちを撃ち堕とそうと空に向かって炎を吹くも、華麗なアクロバティックによってすべてかわされてしまう。
「ぐ、ぐぅぅ…」
立ち上がろうとナイスは力を振り絞るが、体を少し起こすのがやっとだった。
―もういいよナイス!あとはHTDFの人たちが何とかしてくれる!―
「私は…まだ…戦わなくては…」
そう言い残すとナイスは地面に倒れこみ、カラータイマーの光が消えてしまった。
―ナイス!?大丈夫か?なぁ、ナイス!!!-
ナイスの体は光へと変わっていき、しだいに輝の意識も薄れていった。
―ナ、ナイス…-
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目が覚めると、輝は病院のベッドの上にいた。腕を見ると、ナイスと同化した時と同じように点滴の針が腕に刺さっている。しかし今度は少し様子が違った。彗星と月子が自分の横で座りながら寝ている。よほどくたびれているようだった。
(何があったんだっけ…)
テレビに目を向けると、ニュース番組が流れていた。目を凝らし、画面に映っている見出しを何とか読もうとする。
「ウルトラマンナイス…死す…だって…?ウウッ!!頭が…」
強烈な頭痛と共にあいまいだった記憶が鮮明になっていく。
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戦いに敗れ、粒子状態と化したナイスは輝と共に空間をさまよっていた。なんとか残されたわずかな光エネルギーを集め、ナイスは輝と対話を試みる。
「輝…聞こえるか?」
「ナイス…?聞こえる、聞こえるよ!良かった、大丈夫だったんだね!」
「もう私に残された力はほんのわずかだ…すまなかったな、こんなことに巻き込んでしまって…」
「な、何言ってんだよ!まるでこれから死んじまうみたいじゃないか!」
「君は…生きろ…君の命まで果てさせる訳にはいかない…」
「お、おい!やめろって!何かいい策があるはずだ!」
「生きるんだ…君の家族のためにも…」
「やめろ!やめ…」
ナイスは残された力を使い切り、輝の体を実体化させ、輝の意識をその体へと宿したのだった。
「私がもっと強ければこんな別れにならずに済んだのだが…君と出会えただけでも私は…満足…だ….」
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「クッ…ウゥ…」
声にならない声で輝は涙を流した。友人が少ない輝にとって、ナイスは彼にとっても特別な存在だったのだ。
「ん…あっくん!?目が…目が覚めたのね!?」
輝の声で月子が目を覚ました。輝は顔を右腕で隠しながら震える声で答えた。
「あぁ…ただいま、月子…」
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一週間後。
輝は退院し、また今日もいつもと同じように通勤路をニュースを聞きながら歩いていた。
あの超獣、ベロクロンMK-IIはHTDFにより撃退され、その残骸を技術開発部が分析しているとのことだった。空が割れた原理など、あの日起こった謎の数々を解き明かす鍵になりうるかもしれないらしい。
(ナイス…本当に死んじゃったのかな。)
そう思いながら歩いていると、向かいの方から一人の青年が歩いてくる。赤、黒、白の独特なカラーリングをしたどこかの制服のような服を着ている。
「あなたが、夢星輝さん…ですか?」
急に本名で呼ばれ、輝は少し戸惑ってしまう。
「あ、はい…そう…ですが?」
「俺はソウマ・カイトっていいます。ちょっとお話があるんですが…」
「話?あの、失礼ですが、お会いしたことありますっけ?」
「ウルトラマンナイスの件について、と言えばわかってもらえますか?」
その言葉に輝はギクッとしてしまう。なぜこの男はナイスの話題を持ちかけてきたのだろう。
「説明するよりも目で見てもらったほうが早いので、一緒に来てくれませんか?」
彼の言葉に悪意は感じられなかった。輝はカイトの後をついていくと、薄暗い路地に案内される。
「あの…ここに何があるんですかね?」
カイトが不思議な形の機械を取り出し、ボタンをカチッと押すと塀に光の扉のようなものが浮かび上がった。
「さぁ、こっちへ。」
「いやいやいや、これって入ったらもう出られないヤツじゃないですか!」
入るのを嫌がる輝を説得するため、カイトは不思議なガジェットのようなものを右手首に着けると、カイトの体が光り、そこにはまったく違う宇宙人の姿があった。
(この人…見たことあるぞ!ナイスが一回見せてくれた人だ!)
「私の本当の名はウルトラマンマックス。私のことはナイスから聞いているかもしれないな。」
「あっ、はい!その節はどうも…」
「さぁ、誰か来る前にここに入ってくれ。」
そういうとマックスは光の扉の中に入っていった。それに続き、輝も恐る恐る扉の中に入ると、そこにはまるで鏡の世界のような光景が広がっていた。キラキラと光る光の中で、心地いい雰囲気が空間を満たしている。
「さて、本題に入ろう。私は部下のウルトラマンナイスを迎えに今日は来たのだ。」
「迎えに…ですか?」
「そうだ。彼は私と同じ、宇宙警備隊という組織に属していてね。彼が激闘の末敗れてしまったことを我々は聞きつけ、彼を我が故郷、光の国に連れ帰るため私は遣わされたのだ。」
「それが…ナイスは、もう…」
輝はぺペペペンを取り出し、寂しそうにつぶやいた。
「知っているよ。私は命を二つ持ってきたのだ。」
「はい?」
「今ナイスは、君の中で君を生かすために自らの光エネルギーを君の生命エネルギーに変えて君の中にとどまっている。彼を今君から無理やり分離させると君の命も果ててしまう。」
「ってことは…ナイスはまだ生きてる…ってことですか!?」
「あぁ。自らを犠牲にして君を生かすとは、君のことをよほど気に入ったんだろう。」
安心とうれしさのあまり、涙が輝の頬を伝う。
「良かった…本当に良かった…」
「うむ。ではこれから君たちを分離させよう。そのペンを貸してくれないか。」
「分離…?ナイスは帰ってしまうんですか?」
「そうだ。しかし心配ない。この地球にはまた他のウルトラマンが護衛に就くことが決まっている。」
「また…ナイスに会えますかね?」
その輝の問いにマックスは言葉を詰まらせてしまう。ナイスがこの地球に来て一か月足らずの期間だったが、彼と輝の間には強い友情が芽生えていたのだ。
「いつかまた会えるだろう。この宇宙は繋がっているのだから。」
そういうとマックスはぺペペペンを受け取り、少し念じるとぺペペペンが強烈に光り始めた。
「さぁ、これを君の胸にあてがってくれ。」
マックスの指示に従い、輝は光輝くぺペペペンを胸に当てる。すると光が輝を包み、体を満たしていくのを感じた。
「うわぁぁ!!!」
「大丈夫。もう少しの辛抱だ。」
だんだん輝の意識は遠のいていき―
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気づけば輝は同じ路地裏に立っていた。慌ててポケットに手を入れ、ペンを確認するとそれは元の青色のサインペンに戻っていた。
「ナイス…」
空を見上げると、彼方で星のようなものがピカリと光ったような気がした。
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