文明監視員・ウルトラマンナイスのナ、ナ、ナ、ナイスな奮闘記 作:Sashimi4lyfe
ナイスが気が付くと、そこには見慣れた光景が広がっていた。
光輝くプラズマスパークに、空を飛び交うウルトラマンの数々。
ここはM78星雲、光の国。ウルトラマンマックスによって連れ戻されたナイスは、とある施設のベッドに横たわっていた。
「一体、何が…」
「あっ、目が覚めたんですね!」
声のするほうを見ると、一人のウルトラウーマンが立っている。胸には赤十字団のシンボルバッジを着けているため、ナイスはここが赤十字団の治療施設だと分かった。
「ちょっと待っててくださいね。マックスさんを呼んできますから。」
「ゲッ!マックスさんを!?」
(まずい、絶対怒られる…)
「どうかしました?」
「い、いやぁ、なんでも…」
そのウルトラウーマンはナイスの病室を後にすると、間もなくしてマックスがナイスの病室に入ってきた。
「ようやく目を覚ましたようだな、ナイス。」
「は、はい、その件はどうも…」
憂鬱そうにナイスは挨拶をする。
「なぜ自分が今ここにいるか、覚えているか?」
「え、えぇと…超獣ベロクロン
「それだけじゃないだろう。君は私との制約を破り、アナザーブレスの制御を無理やり解除して夢星輝という地球人と同化した。違うか?」
「は、はい…」
(やばい…やっぱり説教されちゃうよ…)
「君のそのとっさの判断が良好的な結果を生むことになったのだが…規律に違反する行動をしたことに変わりはない。」
「良好的な結果?」
「あぁ。あの異次元生命体、ヤプロイドの存在を君が明らかにしてくれた。近頃我々も亜空間にて異常なエネルギーの発生を観測していたところだったんだ。恐らく奴らが原因だろう。」
「そ、そうですか。」
こっぴどく叱られることを予想していたナイスは少し驚いていた。しかし、それ以上にベロクロンMK-IIに敗れた屈辱が彼の脳裏に渦巻いていた。圧倒的な力の差を見せつけられ、彼のプライドはズタズタにされていたのだ。
「まぁ、とにかく今は安静にしておくことだ。回復し次第、君には引き続き地球の文明監視、および防衛に当たってもらう。今回のような無茶な行動は起こさぬように。」
「…あの。一つ質問いいですか?」
「なんだ?」
「自分の持つ全てを出し切って戦っても勝てなかった時って…どうすればいいんでしょう?」
「…」
マックスはナイスが何を言いたいのか察しが付いた。実はアナザーブレスにはセキュリティシステムが内蔵されている。ナイスがブレスの制御を力づくで解除した時から彼の行動はブレスによって記録されており、その一部始終をマックスは把握していたのだ。
「超獣は宇宙警備隊の戦闘員でも手こずるほどの強敵だ。超獣と初対面であそこまでやりあえたのはなかなかだと思うぞ。」
「…なんだか力の差を思い知らされた気がするんです。私のようなウルトラマンもどきでは地球を守れはしないと。」
「ナイス…そうか、君は光の国の生まれではないのだったな。」
ナイスは元々別宇宙のM78星雲に位置する、TOY1番星という惑星で生まれた光の巨人であり、元からウルトラマンではないのである。ウルトラマンという存在に憧れ、ウルトラマンを名乗りながら地球を守ろうと奮闘していた時にたまたまその宇宙を訪れた文明監視員にその才能を見込まれ、宇宙警備隊にスカウトされたのだった。
「やはり私はおとなしく文明監視に努めていればよかったんですね。あんな思いあがったことをせずに…」
「本当にそう思うのか?」
「えっ?」
「あの青年、夢星輝は君がまだ生きていると知った時、涙を流して嬉しがった。あれほどの友情を人間と君は紡ぎあげたのだ。」
「輝が…?」
「彼との出会いは君をも大きく変えたはずだ。ウルトラマンを名乗るのであれば、彼のためにもう一度立ち上がろうとどうして努力しない?」
厳しくも気持ちのこもった言葉にナイスは返す言葉が見つからなかった。
「自分の非力を憎むのであれば、力を付ければいい。難しく考えすぎないことだ。」
(輝…君のためにも…ここで折れるわけには…)
ナイスの心の中で渦巻いていた暗い気持ちはどこかに消え去り、燃え盛るような闘志がメラメラと巻き起こっていた。
「マックスさん…誰か稽古をつけてくれるいい相手を知りませんか?」
マックスはナイスの闘志を感じ取ったのか、軽くうなずいてから答えた。
「いて座Z94星に、一人修業にいそしむウルトラマンがいる。そこに行けば君をいい具合に鍛え上げてくれるだろう。」
「Z94星ですね…ありがとう、マックスさん。私は必ず強くなって来ます!!」
ナイスは決心した。もう二度と自分を信じてくれた人を悲しませるようなことをしないと。そのためにも、もっと強くならなくてはいけないと。
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いて座Z74星。
ビッグバンとともに生成された、宇宙に四つしか確認されていないホワイトホールの反重力圏に位置する無人の惑星である。
ホワイトホールとは、重力と対をなす反重力が時空の一点に収束する時に生まれる天体の一つ。重力がすべての物体を中心へと引きつける力であるのに対し、反重力はあらゆる物を反対方向へと押しのける力を持つ。そのため、ホワイトホールのある場所には光の屈折が引き起こすオーロラのような何とも神秘的な光景が見られるのである。
M78星雲から約二十万光年離れた場所にあるこの惑星へ、ナイスはウルトラマンヒカリに修復してもらったアナザーブレスの力を借りてやって来た。
「ここがZ94星か。うわっ、ホワイトホールがこんな近くに!すげぇ、いつかは観光に来ようと思ってたけどこんな時にお目にかかれるとはな...」
ナイスは粒子状態を解除し、一旦Z94星に着陸する。惑星の表面には生き物一つ見つからない。恒星も近くに存在しないため、気温は極端に低く、さらにホワイトホールの反重力のせいで体が地面に押し付けられているような感覚が常に彼を襲う。
「さ、寒い…それに歩きづらいったらありゃしないぜ…こんなところに誰がいるっていうんだ…」
「何の用だ?」
突然後ろから声がした。さっきまで後ろに誰もいなかったはずなのに。
「だ、誰だ!」
慌てて振り向き、ナイスは戦闘態勢に入ると、そこには銀色のマントに身を包んだウルトラ戦士が立っていた。
「俺が先に質問したのだ。俺に何の用だと聞いている。」
(まさか…この人は…ウルトラマンレオだ!!マックスさんの言ってたウルトラマンってまさか…)
あまりの驚きと感激のあまり、ナイスはうまく質問に答えられなかった。
説明しよう!
ウルトラマンレオとは、獅子座L77星出身のウルトラ戦士。かの有名なウルトラセブンの弟子であり、あのウルトラマンゼロを鍛え上げた宇宙拳法の達人である。
「わ、私はウルトラマンナイスと言います!ウルトラマンマックスにあなたがここにいると聞き、ここまでやって来ました!」
「マックス?あぁ、あの男か…それでお前は奴の何なのだ?」
レオは言葉では説明できない、独特の威厳とプレッシャーを放っていた。歴戦を戦い抜いた、孤高の戦士が持つ固有の雰囲気なのだろうか。しかし、ナイスは彼のオーラに押されてばかりではいなかった。
(気をしっかり持て!ここに来た理由を忘れるな!)
気を引き締め、大きく頭を下げてナイスはレオに弟子入りを志願する。
「お、お願いします!私を弟子にして下さい!」
「何ぃ?」
「私は強くなりたいんです!」
「ふん、マックスの奴め、この俺にお前を鍛えさせろと言うわけか…奴には借りがあるからな…おい、ナイスとやら。強くなりたいといったな。」
「はい!もっと力が欲しいんです!」
「どれ、俺といっぺん戦ってみろ。」
「あ、あなたとですか!?またまた御冗談を…」
「嫌なら帰ってもらおう。俺は冗談が嫌いだ。」
ナイスは緊張で固まった体を引き締め、戦闘の構えを取る。
「で、では、お願いします!」
レオはぴくりとも動かず、じっくりとナイスの動きを観察しているようだった。彼の鋭いまなざしからは宇宙拳法の達人の名にふさわしい、突き刺すような洞察力が感じられる。
「行くぞぉ!!」
その言葉と共にマントが投げ飛ばされたと思うと、一瞬の間にレオはナイスとの距離を詰め、ナイスの正面まで近づいていた。
「うわぁ!?」
パニックに陥り、ナイスは反射的にレオめがけてパンチを繰り出す。それをいとも簡単にレオは弾き、余った左手でナイスに一発強烈な突きを食らわす。
「ぐぇっ!!」
その一発はナイスを思わず後ずさりさせるほど強烈だった。その様子をレオは呆れたように見ながら言った。
「何だ、もっと鍛えがいのあるヤツをよこして来たかと思えば…これでは一から全部鍛えなおすのと同じではないか。」
これでもナイスは精一杯戦っているつもりなのだが、異常なほどの気温の低さと反重力の影響でうまく体が動かせないのだ。
(一体どんな鍛え方をしたらこんな星でこんなに動けるんだ…)
ナイスに体制を整える間も与えず、レオは追撃を開始する。空高く飛び上がり、ナイスめがけて急降下し、飛び蹴りを繰り出した。
それを転がることでかろうじて避けたナイスだったが、すぐさまレオに脇腹を蹴られ、まるでキックを受けたサッカーボールのように蹴飛ばされてしまった。
(うっ…この人…殺しに来てるんじゃないか?)
痛む体をなんとか起こし、ナイスはエネルギーを両手に集中させる。
(むこうがその気なら…こちらも容赦はしない!)
レオめがけ、腕をクロスさせ最強の必殺技が放たれる!
「ミレニアムクロス!!!」
しかし、それをレオは軽やかにバク転でかわしてしまう。なんとか命中させようとナイスはレオに標準を当てようとするが、あまりの動きの速さに腕が付いていけない。
そしてとうとうエネルギーが尽きてしまい、ミレニアムクロスがナイスの腕から徐々に途絶えていく。
「グッ…はぁ、はぁ…」
息を切らしながらナイスは光線の構えを解除し、必死に立ち上がろうとするが力が入らない。レオはナイスがミレニアムクロスを外した際に破壊した岩場をしめじめと見ていた。
「光線の威力はまぁまぁのようだが…使い手がこうではまともに使いこなせまい。」
「その言い方は…やめてもらえませんか…」
ナイスは息切れしながらも言い返す。レオはミレニアムクロスをナイスが誰かから譲り受けた技だと思っているようだ。
「ほう、この俺に口答えするか。」
「この技は…私がザゴン星人を倒すために必死に身に着けた必殺技だ…誰かに教わって身に着けた技なんかじゃない!」
「何、お前がこの技を…」
レオはナイスの言葉に驚いた様子だった。レオは知っているのだ。あれほどの威力の光線技を自分で身に着けるには、どれほどの努力が必要なのかを。
「ただの腑抜けた奴だと思っていたが…なかなか面白い男ではないか。よし、合格だ。」
「合…格?」
「お前は守るべきものを守るため、覚悟を決めてきた男と見た。俺とて暇ではない。お前がただ力を求めてやってきた奴だとすれば、すぐに追い払うつもりでいた。」
「ってことは...?」
「何をしている。修業を始めるぞ!」
「は、はい!ありがとうございます、師匠!」
ナイスはレオに向かって何度も頭を下げた。
「言っておくが、俺の修業は厳しいぞ!覚悟しておけ!脱落は許さんぞ!」
「はい!決してそのような真似はしません!!」
それからレオによる猛烈な特訓が始まったのだった。
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レオ曰く、ここZ94星は彼のトレーニングにうってつけの惑星らしい。
ホワイトホールによる反重力は体にかかる負担を増加させるだけではなく、時空を膨張させる働きがあるので、ここでの一か月は反重力圏外の一日に該当するそうだ。さらにエネルギー源となる光エネルギーも制限されているため、スタミナ持続の特訓にもなるらしい。
「だ、だからって、こんな特訓….無茶ですよぉぉ!!」
「黙れぇ!愚痴は終わってからいうものだ!!」
レオがナイスに課した一日のトレーニングメニューは想像を絶するものだった。
まずはZ94星の周りを1000周。ただでさえ反重力の影響で飛びにくいのに、Z94星の直径は約12.7万キロメートル。地球の直径の約十倍である。
それが終わると、体の疲れが癒えぬまま、今度はレオとの実戦訓練が始まる。訓練とはいえ、レオの戦闘能力はすさまじく、毎回ナイスは半殺しにされてしまう。これでも彼は手を抜いているつもりらしい。
これが終わって、やっとエネルギー補給のために小休止が許される。レオの監視の元、一番近くの恒星、いて座
しばしの休憩もつかの間、十分なエネルギー量を補給するとすぐにレオにZ94星に連れ戻され、今度は3万トンの岩を抱えたままレオの攻撃を避ける訓練が行われる。
「う、うわぁ!!!く、来るなぁ!!!」
「逃げるなナイス!!逃げるんじゃない!!!」
そう言いながらレオはナイスに容赦なく襲い掛かるのだった。その姿はまるでジープで隊員を轢き殺そうとする某防衛チームの隊長のよう。この特訓を終えてやっとナイスの一日が終わるのである。
苦しい訓練の中、ナイスは幾度となく倒れ、今度こそもう駄目だと思うことがあった。体に力が入らず、両手両足ともピクリとも動かせない状態になった時だった。
「どうした?早く立たんか!!」
「も、もう駄目です…体が動かせません…」
「力が欲しいのではなかったのか!!」
「もう…限界です!!」
「うるさい!!お前はまだ立てるはずだ!!」
「た、立てません!私には…私にはできないッ!!」
「黙れぇ!!」
レオは地面に倒れこんでいるナイスに近づき、見下しながら言い放つ。
「いいか、この宇宙は残酷だ。自分の信念を貫くには自分を拒むものより強くある他に方法はない!!お前が強くなりたいのも、それを心のどこかで認めているからだろう!」
その言葉はナイスにとってとてつもなく説得力のあるものだった。テノが言っていた言葉が彼の脳裏をよぎる。
―この宇宙の絶対的な法則―それは力を持つ者が持たざる者たちを滅ぼし、生き残ることができるということだ。-
その主張が間違っていることは彼は直感的にわかっていたが、なぜそれが間違っていたのかをナイスはわからないでいた。しかし、今彼は理解した。
この宇宙では、勝者の主張こそが真理なのだと。そのためにも、彼らウルトラマンは勝ち続けなければならないのだ。
「お前がどんな理由で、誰を守ろうとしているのかは知らん。しかし、誰かを守ろうとする意志を貫き通すには強くある他ないのだ!!さぁ立て、立つんだナイス!!」
「うぉぉぉ!!!!」
ナイスの体からもう使い果たしたはずのエネルギーが湧いてくる。よろめきながらも、彼は戦闘の構えを取り直し、レオを睨みつけた。
「よし、もう一度だ。行くぞナイス!!」
「はい!準備はできてます!」
過酷なレオとの特訓の中、ナイスは確実に強くなっていった。彼がどれほど強くなったのか、彼自身もまだ気づいていなかったのだった。
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