文明監視員・ウルトラマンナイスのナ、ナ、ナ、ナイスな奮闘記 作:Sashimi4lyfe
随分長い間投稿していませんでしたが、この一連の話しを全部一気に投稿しようという意地をなぜか張ってしまい、前・中・後編を全部執筆するまで今までかかってしまいました。
ちなみに異次元生命体ヤプロイドの由来は、おなじみのヤプールにオイド(-oid、ラテン語で「~を模したもの」の意味)を付けたものです。
何分文章量が多いので読みづらいかもしれませんが、自分なりに満足のいく話しになったつもりですのでお楽しみいただければ幸いです。
ナイスがベロクロンMK-IIに敗れてから、はや1週間の時が経った。
SNSではナイスの死を悲しむ投稿が一時流行し、人々は短い間であったが地球のために戦ってくれた英雄を称えた。とはいえ、何事もなかったようにいつものように地球は周り、時間は流れ、人々は元の生活へと戻っていったのであった。
しかし、ナイスの死がこれから迫りくる危機の予兆であったことを、人々は知る由もなかった。
晴れやかな晴天が広がる、すがすがしい昼のことだった。何の予兆もなく、大きな一本の柱が空から降り、都心の真ん中に爆音とともに突き刺さった。
明らかに何者かによって作られたその柱はそのてっぺんから何やら怪しい光を発し、その光は不自然な曲がり方をしながら空を覆っていく。世界中にその影響は及び、空は瞬く間に不気味なオーロラのようなぐにゃぐにゃと形の一定しない光に覆われていった。
そして、何かを映し出すようにその光がまとまった形になっていくと、人型の生命体の姿が空に現出される。
『地球人類よ、聞くがいい。我々の名は異次元生命体ヤプロイド。偉大なるヤプールの遺志を受け継ぐ者である。』
その生命体ははっきりと人の言葉をしゃべった。まるで頭の中に直接言葉を送り込んでくるように、その言葉はすんなりと人の耳に入っていく。
『我々がこの地球に来た目的は一つ。この地球に存在する宇宙鉱石、ビクトリウムのためである。大いなる目的のため、我々はビクトリウムの力が必要だ。そこで、我々は人類に要求する。この地球上のビクトリウムをすべて我々に献上せよ。』
人々は困惑した。一体何が起こっているのか。ヤプロイドとは誰なのか。なぜビクトリウムを欲するのか。質問ばかりが積もっていくが、空に映し出された幻影は淡々と話しを進める。
『我々はウルトラマンナイスを排除した。人類もろとも始末し、ビクトリウムを奪うのも造作のないことだ。しかし我々は貴様らに生き残る道を与えてやろうというのだ。24時間以内に少なくとも5千トンのビクトリウムをこの柱の下に献上するのだ。できなければ我々ヤプロイドに対する宣戦布告の合図とみなし、我々は人類駆除計画を実行する。賢明な判断を期待しているぞ。』
その言葉を最後に、ヤプロイドの姿が空からすっと消え去り、謎の光は柱の中へと戻っていった。
HTDFは、これに断固として抵抗する姿勢を表明し、地球上に点在する7支部すべての軍力を使いこれに対抗することを決定した。
怪しげな柱の周りを中心に、半径約100キロメートルの市街地を戦闘区域とみなし、日本政府はHTDFと連携し大規模な避難活動を行ったのであった。高層ビルはすべて地下に収納され、第三戦闘態勢に都市部は移行した。
23時間59分後。
刻一刻とタイムリミットが近づいてくる。現場にはカメラを搭載したドローンがを待機しており、その映像がテレビで生中継で放送されていた。その様子を、輝は月子と彗星とともに目を画面にくぎ付けにしながら見ていた。彼の住むマンションは幸い戦闘地域から離れた場所に位置しており、避難勧告は出されなかった。
柱は微動だにせず、まるでただの建造物のように建っている。
―後、10秒で24時間が経とうとしています。-
輝は思わず唾をのんだ。ごくりという音が部屋に響く。
アナウンサーが時間の経過をテレビから知らせてくれる。
5、
4、
3、
2、
1、
ゼロ。
突如、ドローンからの映像が途絶える。テレビ局のスタッフも動揺しているようで、砂嵐のようなノイズ映像の奥からスタッフたちのがやがやとした声が聞こえる。
「えぇっ!?ちょっと、どうなってんのよ!」
月子が思わずヤジを飛ばした。
―も、申し訳ございません!ただいま映像を...あっ、映像が戻りました!-
ノイズが晴れ、ドローンからの映像が再びスクリーンに映し出される。そこに映っていたのは、さっきまでぽつんと建っていた柱ではなく、人型の何かだった。
巨人、と呼ぶほうがいいのかもしれない。ひょろりとした体つきで、赤い目のようなものが頭部についており、体を前に傾け、猫背のような姿勢でただ立ちつくしている。体は金属製のような装甲に覆われており、特に目立った特徴はなかった。
巨人が少し体を動かした、次の瞬間だった。上空で待機していたHTDFの主力無人戦闘機、シムルグ079が一斉射撃を始める。地上部隊も引けを取らず、反電子砲を搭載したパンツァー23が同時発射を行う。
―ご覧ください!!人類の希望を背負い、HTDFの総攻撃が今行われています!巨人は微動だにしていません!!このままこの巨人を撃破することができるのでしょうか!?-
まるで怪獣映画のような光景に、夢星一家の面々はただ息をのんでその様子を見守ることしかできなかった。攻撃の第一波が終わったのか、HTDFの攻撃の手がいったん静まり始めた。巨人の姿は爆発による黒煙に包まれ、よく見えなかった。
黒煙が徐々に晴れ、巨人の赤い目の光がかろうじて見えてきた時だった。
『人類よ、あくまで我々に抵抗するというのだな。』
また、あの声だ。ナイスを葬った異次元生命体の声が輝の頭にこだまする。彼の脳裏にあの戦いの光景が蘇った。
(まさか、今度も…)
煙が晴れ、巨人の姿が露になる。金属製の体は熱で赤く変色しており、まるで溶岩を身にまとっているようだった。しかし、巨人は前より姿勢を一切変えていない。まるで先ほどの総攻撃が全く効いていないかのようだった。
『いいだろう。この星もろとも宇宙の藻屑と化すがいい!!さぁ、起動せよ、巨人超獣ラグナロンよ!!』
ラグナロンは口を開けると、周りの無人戦闘機たちを巨大な掃除機のように吸い込み始めた。一機、また一機とラグナロンの口の中に戦闘機が吸い込まれていく。そして、戦闘機が吸い込まれる度に装甲が元に戻っていくのだった。
残ったパンツァーとシムルグたちがまた総攻撃を開始するも、それらをすべてラグナロンは吸収し、どんどん前進していく。しかし、HTDFが用意していた対ヤプロイド用の防衛作戦はまだこれだけではなかった。
―ご覧ください!HTDFの新兵器、V-1729が積まれたヘリが戦闘区に到着しました!-
V-1729とは、ベロクロンMK-IIの皮膚組織の成分をHTDFが解析し、超獣を構成する異次元物質の化学構造を破壊するために開発した、対超獣用の新兵器である。それを積んだヘリがラグナロンから一定の距離を取り、V-1729を起動する。
まばゆい青色の光が砲口に集まり、ラグナロンに狙いを定めると、すさまじい勢いで青い光線がラグナロンに向け発射される。ラグナロンはそれを口で吸収しようとしたが、V-1729にはさすがにかなわないのか、口を開けたまま後ろへたじろいでいく。超獣の体勢が崩れ始め、口の周りの装甲がドロリと溶け始めた、その時だった。
突如光線の勢いが緩み、やがて一筋の光の波は消えていってしまった。V-1729を撃つためのエネルギーが果ててしまったのだ。それを嘲笑うように、ラグナロンの口がにやりと笑みを浮かべたかのように見えた。その直後、ラグナロンの口から発せられた炎によって頼みの綱だったV-1729を積んだヘリが炎上し、無様にも墜落してしまった。
それと共に、不気味な警音がテレビから発せられる。
―臨時ニュースです!!ただいま日本政府が本作戦における戦闘地域の拡大を発表しました!―
「臨時ニュース」という見出しが画面の上側に映し出される。
―ご覧の地域にお住まいの方は、HTDFの避難誘導員の指示に従って速やかに避難してください!HTDFは総力を挙げ、大規模避難用のコンヴォイを出動させています!繰り返します!日本政府は…-
アナウンサーがHTDFの表明を読み上げると同時に、拡大された戦闘指定区域のマップが画面に映し出される。そこには輝たちが今いるマンションも含まれていた。しかし、それだけではない。その周りの約50キロメートルほどの地域がすべて戦闘区へと指定されていたのだ。
(この家も、僕たちが住んできたこの町も、全部この超獣に壊されちゃうのか…一体…一体何を失えばいつもの平和な日々は戻ってくるんだ…?)
友、ナイスを奪われ、今ここに自分がいる家も住み慣れた町も失おうとしている今、輝の心に大きな闇が渦巻いていた。
「あっくん!!!」
気が付くと、月子が輝の肩をつかみ、必死に揺らしていた。
「しっかりしてよ!今は避難しないとでしょ!!」
「でも、家が…町が…」
「家ならまた探せばいい!町だってきっとまた元に戻るわよ!!あなたにはまだ死んでもらっちゃ困るんだから!!あなたは私の夫であり、すいちゃんのパパなのよ!!」
輝はゆっくりと彗星の方を見ると、彗星は輝と月子を見つめながら膝を抱えている。
「あの子のためにも、まだ生きててくれなきゃダメなの!ダメなのよ…」
月子が輝の肩をつかんだまま泣き崩れていく。彼女も今起こっている事態に相当なショックを感じているのだろう。それでも、彼女は一家の母として、娘のため、夫のためにやるべきことをしようとしているのだ。
「月子…」
その時だった。
ラグナロンがなぜか全身を止め、上を向き始めた。それに合わせてドローンのカメラもその方向を向いていく。
―落ち着いて避難してください!ただいまHTDFの…-
カメラははっきりと捉えていた。赤い球体が空の彼方から飛来し、その姿が見る見るうちに巨人の姿に変わっていくのを。
そして、その巨人は巨人の前に落下し、その衝撃で地面の土が吹き上がる。銀色の体に、赤いライン。そして胸の中央には青いカラータイマーがついている。
―な、何が起こっているのでしょう!?ウルトラマンナイスとは別の、光の巨人が現れました!!―
「月子、あれを…テレビを見るんだ!」
「だから今はそんな場合じゃ…」
ちらりと画面を見た月子の目はその光景にくぎ付けになった。
「あれは…?」
「ウルトラマンだ…ウルトラマンが来てくれたんだ…!」
「ウル…トラマン?」
ラグナロンはそのウルトラマンに向かい、口を大きく上げて威嚇するように雄たけびを上げる。
『なぜここに貴様がいるのだ、ウルトラマンエース!!』
そう、その巨人の名はウルトラマンエース。
銀河連邦をはるかに超え、異次元からの脅威から人類を守るために光の国から遣わされた平和の使者だ!