Labyrinth of the Violet   作:白波恵

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ZweiⅠ

 

ツヴァイ協会

 

理念は「貴方の盾」、護衛や保護、防御専門としているフィクサー協会である

 

協会にも古今東西の支部があり、ここ南部6課もまた日々業務に勤しんでいる

 

協会という公認されたフィクサーほど仕事は回されてくるもので、ツヴァイ南部6課のフィクサーであるジンもまた上司から命じられた仕事を終え協会本部へと帰還してきたところだった

 

「お疲れジン、一般人を最優先で保護するいい動きだったぞ」

 

「ありがとうございます、先輩」

 

ジンは数年前にツヴァイのフィクサー認定試験を受け、複雑な事情ながら生存者として無事フィクサーとなることができた

 

任務を終え控室へ行こうとするジンの前に、一人の青年が現れる

 

「お疲れさま、ジン

今回も大活躍だったみたいだね」

 

「カミュ」

 

カミュはジンと共に認定試験を生き残った一人であり、両者はその時の経験からツヴァイ協会勤務を希望し、数年の実績を経て7級フィクサーとして勤めていた

 

「大活躍なんてものじゃないわよ、ただ正しく守るべき人を守っているだけ」

 

「それでも十分だよ、自分のことでいっぱいいっぱいな俺と比べたら…」

 

「私だって、昔はそうだったもの

貴方ならよく知っているでしょ?」

 

過去のフィクサー認定試験において、ジンとカミュは先輩となる二人のフィクサーと一緒のチームを組んで護衛対象を守る任を負っていた

 

その時のフィクサーに感銘を受け、ジンはそれまでの考えを改め今に至る

 

「あの人達のお陰で、私は今少しだけど自分を誇れている

そしてそれは、貴方のお陰でもあるのよ」

 

「俺?何かしたかな?」

 

「…はぁ、もういいわ

ところで、頼んでおいた調査のほうはどうなの?」

 

ジンの質問にカミュは深刻そうな顔で一枚の写真を取り出した

 

「ピアニスト事件、ピアニストを討伐した「黒い沈黙」以外の唯一の生存者…イナさん

病院で療養して退院した後、行方が分からなかったけれど…どうやら最悪な人物と行動を共にしてるみたい」

 

そこには、認定試験で自分達を導いてくれたフィクサー、イナの後ろ姿と…

 

青い外套に身を包み、大きな鎌を携えた男、特色「青い残響」が共に並んでいる姿が映し出されていた

 

「一体どこに行ったのかと思ったら…よりにもよって、あの青い残響と」

 

「青い残響は最近特に悪い噂をよく聞くから、心配だけど…」

 

「…きっと大丈夫よ、あの人のことだもの」

 

何か事情がある、そう信じているジンは廊下の先で何人かが揉めている様子を視認する

 

そこにいるのは南部6課における先輩であるイサドラとジュリア…そして南部6課のフィクサーではない男が、土下座をしている光景だった

 

「な、なんだろう…?」

 

「依頼人が必死に頭を下げてるのかしら…所詮うちも慈善事業じゃないからね」

 

二人が気になり近くへ歩み寄ると、イサドラが懐から通信機を取り出し、何かを読んでいる

 

聞き耳を立てると、どうやら上層部からの通達案件らしい

 

「ハナ協会が図書館を都市伝説級の事件に指定したわ」

 

それを聞いた瞬間ジンとカミュはお互いに顔を見合わせる

 

図書館、最近裏路地で噂になっている都市災害の一種

 

何かを求めてる者の元へ届く招待状にサインすると扉が現れ、その先にある図書館で望む本が手に入るのだとか

 

都市災害にはランクがあり、今ハナ協会が認定した都市伝説は決して高くはないが、協会が取り組むべき案件の最低ラインでもある

 

それが通達されたということは、つまり…

 

「イサドラ先輩」

 

カミュが止める間もなく、ジンがイサドラへ声をかける

 

「じ、ジン、貴方帰ってきていたの」

 

「今の話は本当ですか

図書館が都市伝説に指定された…となると、我々ツヴァイ南部6課も図書館へ突入すると?」

 

「話を聞いていたの…まだ確実にそうなるとは限らないわ

今は都市伝説級に指定されただけ、これからうちの支部がどう動くかはまた別の問題だから…」

 

「私が先遣隊として斥候に行ってきます」

 

その言葉を聞いた全員が驚いた顔でジンを見た

 

「ちょ、ジン!?何を言ってるんだ…!?」

 

「カミュは残って頼んだ案件の調査を続けて

今後南部6課が図書館に行くことになっても、事前調査の情報は必要になるでしょう」

 

「それはそうだけど…生半可な仕事じゃないわよ」

 

「協会に勤めてあらゆる仕事を受けさせてもらいましたが、どの仕事も生半可なものではありませんでした」

 

ジンの真っ直ぐな視線に根負けしたイサドラは溜息を吐き、ジンの要望を聞き入れた

 

「…仮の先遣隊のチームを編成するわ、第三会議室で待っていなさい

サン、その招待状は今持ってたりする?」

 

 

 

サンという男性から譲り受けた招待状にサインしたジンを含めた先遣隊は、現れた扉の先を潜り抜ける

 

そこは柔らかな灯りと不思議な灯りに包まれた空間で、壁一面に本が敷き詰められた本棚が続いている

 

「ここが…図書館」

 

思った以上に殺伐としていない空間に気を取られていると、階段の先からとある女性が現れた

 

「歓迎いたします、ゲストの皆様

私はこの図書館の館長兼司書のアンジェラと申します」

 

人間の形をしているのに、どこか人間味を感じない声と視線、仕草

 

しかし丁寧な出迎えに、ジンはチーム代表として礼儀には礼儀で応えた

 

「ツヴァイ協会南部6課所属、6級フィクサーのジンです

ここにあるルルとマスという方の本を回収しに来ました」

 

「ええ、それなら確かにこの図書館にあります

どうぞこちらへ、この先で司書達が皆様を接待いたします

どうか、貴方の本が見つかりますように」

 

誘導された階段の先を進んでいくジン達は、本の山が積み重なった灰色の階に到達した

 

広々とした空間は、如何にもこれから戦闘しますよというような雰囲気を醸し出しており、実際にジン達が上ってきた入口のさらに先の地点に、三人の人間が立っている

 

中央の黒尽くめの男は同じく黒い剣を携え、ジン達に相対している

 

「よし、お互い思うところはあるかもしれないが…やるか」

 

彼らがアンジェラが言っていた司書であり、招待状に記載されていたように接待とは殺し合いなのだろう

 

今回の目的は、勝てれば先ほど言った通りルルとマスという人物の本を手に入れることだが…分が悪かったら、一人を逃がして情報を協会へ届けることが優先される

 

ジン達も武器を構え、戦闘が開始される

 

ジンが相手全員からの攻撃を集中させている隙に、チームのメンバーが司書へ攻撃を仕掛ける

 

二人に攻撃は通るものの、黒い男には攻撃を防がれてしまう

 

「くっ…」

 

「やるな、お前

仲間を守るのは、ツヴァイならではか?」

 

「私は…守られてきて今ここにいる

だから、今度は私が守る番だ」

 

一人の司書の攻撃をカウンターで切り返し、相手は混乱する

 

その隙を逃さず畳みかけると司書の一人は光の紙となり散り散りとなっていった

 

あれが「本になるということだろうか」と分析している間もなく、背後で仲間の叫び声が聞こえた

 

ジンが振り向けば、黒い男に貫かれ、本になってしまった仲間の姿が映る

 

「立派な志だ…だがな、現実はそう優しいもんじゃない

守る間もなく失うこともあるんだよ」

 

黒い男がもう一人に手を掛けようとしたところを、ジンは間一髪で庇う

 

しかし、庇った際に致命的な負傷を負いジンは動けなくなってしまう

 

「行ってください!この司書達は…()()()()()()()()()()使()()()()()!」

 

ルルとマスの本を探しに来る前に二人の特徴を聞いていたジンは、今受けた攻撃が炎を纏っていたことを体感した

 

傷口が火傷を負い、その攻撃の特徴はルルの燃えるバットの攻撃方法と類似していた

 

その事からジンは、この図書館の司書達は倒したゲストの本を使ってゲストの能力を流用していることを見抜いた

 

そして、その情報を協会へ伝える為に庇った仲間を逃がす

 

生き残った一人は図書館から離脱し、ジンは目の前に立つ黒い男を睨み付けた

 

「悪いがこっちも命賭けてるんだ、恨むのは結構だがお互い様ってことで」

 

「…首を洗って待ってることね、すぐにツヴァイ協会が貴方達を討伐するから」

 

そう言い残したジンは黒い剣で斬り付けられ、体が光の本へと変わっていった

 

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