(前に歴史の階が倒してくれたブレーメンの音楽隊のコアページ、ちょっと露出が多いけど案外可愛くて好きなのよね)
残る司書はイェソドとココのみだが、ゲストも二人
ユジンとゲルダは、仲間の死の苦しみを押し殺して武器を構える
鬼気迫る殺意の圧にココは武者震いをしながらも、血に濡れた剣を手に拳を握り締める
「イェソド様、安心してください!私、頑張っちゃいますから!」
「貴方一人に任せっきりになるわけにはいきませんよ」
司書補ココは、ロボトミーコーポレーション時代からイェソドの元に配属されることが多かった
それは最後の周期でも変わらず、ココは情報チームのチーフとしてひたすら幻想体達を管理してきた
何故情報チームだったのか
…それは、解放されていく各チームの配置問題にある
上層の中でも情報チームは真ん中に位置し、さらに中層へ移動するエレベーターも情報チームに建設されている
階層を超えての移動がしやすいということ
階層を超えて移動するということは、その部門内だけで対応できない問題を解決しに行くということ
他部門への異動も多かったロイドやカウレス…他の職員達と違い、ココは上層全体の要となる職員だった
それほどの実力を持ち合わせていたのだ
元々巣の中で戦いとは無縁の人生を歩んできた彼女がそこまで登り詰められたのは、その分潜在能力が高かったということ
E.G.Oへの適応力、幻想体への適応力
そして…死への適応力
笑顔と輝きの裏に隠された、彼女の本性
「お、らァ!!」
「あは!凄い凄い!力強くてそれでいて身軽で…情熱的なダンスが上手そう!」
ゲルダの攻撃を受け流し、ココは距離を詰める
生まれた隙を逃さず、ココは刀を構える…しかしそれを読んだゲルダは防御の体勢をとる
しかし飛んできたのは刀による斬撃…ではなく、脚による蹴りだった
想定の外からの攻撃により守りきれず、ゲルダは横腹を蹴られ吹き飛ばされる
「ゲホッ、ゲホッ!」
「ゲル…」
ユジンが吹き飛ばされたゲルダへ駆け寄る前に、ココがユジンに斬り掛かる
迎撃したユジンはそのまま刀で受け止め、押し返す
「っと…流石に力じゃ敵わないなぁ」
「…驚いた、他の者達と比べここまで力の差を持つとは」
ココは最終的にALEPHクラスの幻想体のE.G.Oを身にまとっていた程のベテランエージェントになっていた
借り物の自我とはいえ、装備者の能力値が低ければ侵食されてしまう危険な代物であるE.G.Oを、ココはいつも身にまとい幻想体や試練を鎮圧していた
怪物と人間ならば、当然人間の方がまだ戦いやすいだろう
「げほ…ユジン部長、すみません…あたし、まだやれます」
「問題ない…あの金髪の女性が厄介だ
リーダー格の男を狙おうにもあの女性が庇う
先に彼女を仕留めるぞ」
切れた口の中の血を吐き捨て、ゲルダは立ち上がった
その鋭い眼光に、ココは絶えず笑顔を見せた
「君…褐色の君、憧れの人いるでしょ?」
「はぁ…?」
「私わかるよ、同じ目をしてるもの
憧れっていうのはね、希望なんだよ…希望があるから立ち上がれる
「…頭イカれてるのか、お前は」
肯定も否定もせず、隠す
この戦いの中で無意味な語らいをするほどゲルダに余裕はない
憧れている相手がいる、それを希望に失血による意識消失を耐える
「ユジン部長、あたしが道を切り開きます
その隙に、どうか…他の仲間達に報いるためにも、どうか」
「…わかった、その覚悟を私が背負おう」
ゲルダは持っていた刀を捨て、ココに向かって突進する
得物を投げ捨てたことによりココは予想外の行動に動揺し、一瞬の隙を突かれ、ゲルダはココの胴体にしがみついた
「きゃ!?な、何!?熱烈なハグ…!?」
「バーカ!んなモンすっかよ!」
ゲルダはそのままココを離さず、奥の手を使う
彼女は体内にあらゆる刃物を仕込んでいる
基本、武器を手に持つ必要がなく…暗殺において有能な特技をシ協会に買われた
かつて裏路地で捨てられた赤子だったゲルダは悪徳な大人に拾われ、改造施術を受けた
その施術中に有毒性のある粉塵を吸収し彼女は皮膚が赤黒く爛れる病気を発症させてしまうも、施術により「人を殺す」為の技能を手に入れた
そして…刃を出すのは、何も口や指先からだけではない
「針山の餌食になりやがれッ!」
ゲルダがそう叫ぶと、彼女の肋骨から無数の針が伸び、胴体の肉と皮を突き抜けてココの体をも貫いた
「ぐ…ぅ…!」
「っ…!あ…が…!」
針は四方に伸び、抜くにしても無理矢理離れればココの体の肉が裂かれてしまう
もちろんゲルダは逃げることを許さないが…蓄積したダメージと針山による肉体の損傷は、今すぐに呼吸を止めてしまいそうなほどに彼女を追い込んでいる
ココはゲルダを引き剥がそうと彼女に刀を突き立てる
自分を巻き込まないよう横から、腹部を一直線に
内臓を貫かれゲルダは血を吐くも、未だ虫の息のままココから離れない
「こ…の…離れ、なさいよ…!!」
「ハッ…誰が…離すもんか…!」
何度も、何度も…ココはゲルダを切り刻む
ゲルダがただひたすら根性ひとつでココを拘束している間に…ユジンはイェソドへと向かう
イェソドはココを救出に向かおうとするも、ユジンの攻撃を防ぐために防御の姿勢をとるも…
「死は、あらゆるものに訪れる」
回避不可能な死の一撃
一刀両断、正しく即死と言うべき一太刀がイェソドを断つ
「な…ぁ…」
「い…イェソド様!!」
袈裟斬りされたイェソドは光となり、司書側で残るはココだけとなった
「さすが…ユジン部長…これ、で…」
しかしココを拘束していたゲルダも力尽き、針諸共光となって本へ変わる
「ゲルダ…お前の覚悟、見届けた
さて、最後の戦いだ…お互いの消耗も激しい
この一撃で決まるだろう」
「…とてもかっこいい人なのね、貴方
でも…こっちも負けられないの…!」
血を多く失い過ぎたココは、朦朧としながらユジンを打ち倒そうと踏み出した
その時、いつかの記憶がフラッシュバックする
「このE.G.Oは今日から情報チームココの担当となりました」
モノトーンチックなシンプルな外套とスーツ、二丁の拳銃
撃てば蝶が舞い、穏やかな死で相手を救済する慈悲の弾丸
これは、前日まで
「これ、彼女のお下がりってことですか?」
あの子はこの施設で一番強い、本当に
足の速さなんて特に誰も敵わない
そんなあの子がこの装備を手放すということは…より強い装備が与えられるのかもしれない
先日、この施設には最高ランクの危険度を誇る幻想体が収容されたのだ、きっとその怪物から新たに抽出されるE.G.Oは相当強力なものなのだろう
「…というより、譲渡と言えばいいのかしら」
まだ目を開けていた頃のアンジェラ様は、少し困った様子で微笑んでいた
「彼女はE.G.Oの装備を拒んだわ
最初に支給される、何の変哲もない…ただのスーツと警棒だけで、今日
「……えっ」
それを聞いた時、まるで直前まで楽しく歓談していた友人の上半身が消えた時のような驚きの声が出てしまった
いくら強いとはいえ、ただのスーツと警棒で幻想体達を管理しようとするなんて、あまりにも無謀すぎる
死にに行くのと同じことだった
「な、なんで…いや、直接聞いてきます!」
「いえ…ダメよ、もう時期始業時間になるわ」
「そ、それでも受け取れません!他のE.G.Oがあるはずですよね、そちらを…」
「今日は最大限の職員を補充してあるの、もう他に余っているE.G.Oはないわ」
申し訳なさそうな顔をされるアンジェラ様に、それ以上何も言えなかった
手に持ったE.G.Oに袖を通すのに、納得するまでに少しだけ時間をかけて…
このE.G.Oの名は、「崇高な誓い」
それまで、誰かの命を使って生き延びていただけの彼女が…誰かの命を守ろうと変わったあの日から身につけていたもの
彼女に…レインに、とってもとってもピッタリだったのに
私がそれを引き継ぐなんて到底無理な気がした
勝手なプレッシャーを感じて、それでも仕事は始まってしまう
その日はいつもと全く違った
何の前触れもなく首が消えた職員、収容違反で脱走する幻想体達
阿鼻叫喚が拡がる施設の中…動かなきゃ、と思った
重圧とか関係なく、一人でも多く助けたいって
その為なら…大きな黒い蛇を前にしても怖くなかった
助け出せたんだ、私は
君から貰ったE.G.Oで、君を助けることが出来た
ボロボロになりながら危険な幻想体達と殴り合うとか、本当に正気じゃないなぁ、なんて思いながら…うん、あの時君を助けられて本当に良かった
だってあの子は、彼女は、君は…私の憧れなんだもの
それからもずっと、私は君のようになりたくて頑張ってたのよ
強く、強く、強く…
「強さを求めるには、些か狂気的だな」
ココの目の前には、心臓を貫かれ血塗れになったユジンが倒れている
「君は恐らく気付いていないのだろうが…君は、潜在的に血と暴力に飢えた獣らしい」
ユジンに突き刺さった剣を引き抜き、ココは後退る
頬に手を当てて見れば、返り血と共に吊り上がった口の感触が伝わってくる
笑っているのだ、
いつも笑顔を絶やさず…楽しい時も、険悪な時も…誰かを傷つける時も
初めて人を殴り殺したあの時も、彼女は笑っていた
シ協会南部2課の部長が命を落とし、本になっても…彼女は歪んだ口元を直すのに必死で、それにすら気が付くことはなかった