Labyrinth of the Violet   作:白波恵

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Epilogue
EndRoll


 

「それで、スミレの魔女はどうなった?本社にはいなかっただろう

クローン軍団を用いた都市との全面戦争を引き起こそうとしているという密告をもとに強襲して、赤い視線まで投入したというのに…

ほう、あの魔弾の雨が…

…彼女が都市の為に動く気持ちがあるのなら、いくらか評価を改めた方が良さそうだな

残ったクローン達は?全員、廃棄できたんだろうな」

 

「部長、お手紙です」

 

「誰からだ」

 

「リンバスカンパニー代表…ディアス、という方からです」

 

「…解体されたヴァイオレットカンパニーのあらゆる研究を買い取ったあの人か

………ふむ」

 

「如何いたしましょう」

 

「…問題はない

都市の星が特色になるのは前代未聞だが、こうして推薦されたのであれば断る理由もない」

 

(…金か)

 

「魔弾の雨は今どこに」

 

「外郭に飛ばされた後、現在都市に向かって帰還中とのことです」

 

「戻り次第確保して連れてくるように」

 

「了解しました」

 

「色は白…いや、銀…

新たな特色の誕生を、祝おうか」

 

 

 

「大丈夫なのかゲルダ

魔女狩り作戦で苦戦したと聞いていたが」

 

「ご心配痛み入りますユジン部長

確かにあのクローンは難敵でしたが、このように無事に帰還しました」

 

「お前を送り出して正解だったようだな

これからも期待している

…と言いたいところなんだが、君に手紙が来ている」

 

「手紙、ですか」

 

「差出人は…見ればわかるだろう、渡しておく」

 

「は、はい…

LCB…ファウスト……?」

 

 

 

「…」

 

「帰ってきてから浮かない顔をしているな、ナクワ

そんな暗い顔をしていたら、市民達まで不安にさせてしまうぞ」

 

「すみません、少し…昔を思い出していまして」

 

「同じ顔が無数に並んでいるのはそんなに恐ろしかったのか?」

 

「いえ、そういうわけではなく…

…私はどうしても、あの子にはなれないという現実に直面している次第です

あの子は凄まじかった、あのクローン達を次々と屠り…スミレの魔女も倒したと聞きます

私は彼女と同期ですが、彼女のように都市の星を倒した功績はありません

出世したいという欲求はありませんが…自分の不出来を痛感するばかりです」

 

「ふむ…そういや君の生還をまだ祝っていなかったな

よし、今夜は俺が奢ろう!いい店を知っているからな

近くにチキンの旨い店があるんだ

君は真面目過ぎる、君の美徳でもあるがな

今日くらい、飲んで気分を晴らそうじゃないか!」

 

「チキン、ですか…クリスマスでもないのに

ですが、そうですね、お供させていただきます」

 

 

 

「ジン!傷は大丈夫!?ごめん、僕のせいで…!」

 

「これくらい大丈夫よ、大袈裟なんだから…」

 

「本当…生きててよかった…!

そうだジン、僕達魔女狩り作戦生還を認められて階級が上がるんだって!」

 

「そうなの、それは嬉しいけど…まだまだ未熟ね、私達」

 

「そうだね…先輩たちにも未だ心配されるし…

で、でも、これからだよ!生きている限りまだまだ頑張れるよ!

お互い、強くなろうね」

 

「カミュ…そう、ね

あの人がまた道を踏み外した時、殴って止められるようになるくらい

沢山、頑張ろう、人生は長いんだし」

 

 

 

「魔女様…ああ、魔女様…ボクを置いて逝ってしまわれるなんて

楽園は終わりです、天使であるボク達も、神の子たるレイン様も…すべてがなくなってしまいました、奪われてしまいました…

魔女様…魔女様…ボクはまだ、貴方様の美しさを目に焼き付けきれていないというのに…!貴方様の理想郷は、遠い幻想となってしまわれた…

でも…ええ、でも…そう、そうです、そうすれば…一人…神の子でありながら不完全である人間に成り下がった、美しき魔女の遺児…

ふ…ふふふ…ええ、魔女様、エデンは諦めません、諦められません…いつか必ず、魔女様を再臨させてみせます…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人生は続いていく

 

どれだけ苦しもうと、どれだけ悲しもうと

 

唐突に終わりを迎える事もあれば、終わりに抗い続いていくこともある

 

その過程の中で、どう生きるか

 

苦痛に負け、嘆き、何も感じずに生きていては死んでいるのと同じ

 

転んで膝が痛くて泣いていても、何も解決しない

 

少しの勇気で立ち上がれば、その傷は経験となり糧となる

 

それの繰り返しこそ、人生

 

転ぶという事は進むという事

 

進むという事は目指すべきものがあるという事

 

何のために進んでいるのか

 

何を目指しているのか

 

貴方は考えたことがありますか

 

 

 

「ようやく都市が見えてきました…もう暗くなってきましたよぉ…E.G.Oの扱いもようやく慣れてきました…」

 

「え?あ、本当ですね、一番星

ああいうの、明星と呼ぶんですよね」

 

「銀色の、綺麗な星…私、星が好きです

都市の中にいるとあまり見えませんが、いつだって空の上で変わらずささやかに輝いている星達が」

 

「ずっと遠い過去から生き続けて、その輝きを届けてくれているんですよ

素敵ですよね…私もそうなれるでしょうか」

 

「…今のままで十分ですって?ふふ、なんですか、もう」

 

 

 

進むことは怖いかもしれない

 

傷付くことを恐れ、足元ばかり見ていつか立ち止まってしまうかもしれない

 

世界は危険だらけで、貴方を陥れようとするかもしれない

 

それでも、止まらないで

 

停滞は、不変は、死ぬのと同じ

 

本当に生きたいのなら、自分の心のままに

 

貴方はどうして生きたいのですか

 

貴方はどうして死にたくないのですか

 

理由を教えて

 

目標を教えて

 

 

 

「さぁ、帰ってきましたよ、都市に」

 

「これからもきっといろんなことがありますよね

でも、私は一人じゃないからきっと大丈夫」

 

「いろんな経験をして、苦しみながらも喜びを見つけていくんです

それがささやかな幸福だとしても、無ではありませんから」

 

「…今、生きていて幸せか、ですか?」

 

「……もちろん、私は今、生きていてとても幸せです」

 

 

 

 

 

生きていく、願いを見つけて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行きましょう、これからの人生を生きるために!」

 

 

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