xxxx年xx月xx日
外郭・xxxx
暗い地下深く
足元さえ見えない場所に、彼は立つ
「もう時間切れだ」
暗闇に声が響く
「偽物の杯による祈願成就は制限時間制…最初に言ったこと
僕の力で都市を騙すことは出来ても、世界そのものはまだ掌握できていないんだ
わかるね?泥人形」
話しかけている者が手に持つ金色の杯が、灰となって散っていく
「あと一ヶ月だったのにね、お前の子供が生まれるの
いや、泥人形の子どもってどんなのよ、一応人間の形にはなってるみたいだけどね?
もうお前は二度と肉の体を得ることはない、多分ね
でも、そんな希望はあげないよ
知ってるだろ、お前は僕の事を
哀れな人形、こんな世界じゃなきゃ愛するあの女と共にいつまでも幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし…で済んだのにね」
彼は足元を見降ろして話し続ける
何かが蠢く
「自分の痕跡を残せて嬉しい?それとも、あの女を
おめでとう、僕が用意した幸福を享受できて
お前は数年もの間、人間らしい喜びの時間を得られただろう
僕はお前自身には恨みはないけど…あの女は絶対許さないって決めてるから」
ボロリ、と何かが崩れる音がした
彼の足元には、土が広がり始めた
「 」
言葉にならない声が響く
静かで、それでいて突き刺さるような地の底から響く地鳴りのような声
そんな声に、彼は何の感情も見せなかったその冷たい顔を歪ませ、どこまでも意地の悪い悪辣な笑みを表した
「く…ふふ…あはは…あは、あっははははははは!!はははははっ!!あっはははははははははははははははははははははは!!!!」
空間中に笑い声が響く
そこが狭いのか広いのかは定かではない、しかし、その身の毛がよだつような笑い声は確かに空間全体を埋め尽くし、支配した
「ははは…はー……そう、そうだよ!お前を人間にしたのは僕が勝手にやったこと!
あの女に今まででより一層の絶望を与えるためのシナリオ、その展開のため、お前を勝手に人間にした
魔女、なんて異名はガラじゃないんだ
そう…詐欺師の方が性に合ってる
これからはプリテンダーとでも名乗ろうかな?なーんて…」
笑い尽くした彼は、再び足元を見やる
そして、愉快そうな笑みを消し去り、冷ややかな視線を向けた
「…なんだ、もう死んだのか
つまんな」
彼は衣類の下に崩れ落ちている土塊の中から、ひとつだけ摘まみ上げる
「さよなら、彼女の運命
今からお前の大切なあの女を…誠心誠意、ぶっ壊してやるから」
「そのために、僕はこの世界でも生まれたんだからね」