Labyrinth of the Violet   作:白波恵

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White noiseⅢ

 

生命は生き残るために必要な要素がある

 

それは三大欲求とされ、そうして長い歴史の中であらゆる生命が生き延びてきた

 

生きるためのエネルギー補給、食欲

 

生存の為の休息、睡眠欲

 

自分の種を後世へと残す性欲

 

この三つがあってこそ、人間を含めた生命は今日まで自らの種族を残してきたのだ

 

しかし、これらはあくまで「必要最低限の欲」に過ぎない

 

より過剰な欲を求めれば、生命は自滅をする

 

より長く生きるために、自ら自分の生命活動をコントロールしなければならない

 

怪我も病も未然に防ぎ、自分の外からの襲撃にも対応出来るように

 

何より、「生きたい」という心こそ…生きるには必要不可欠なのだ

 

 

 

「反復、15538回目」

 

リセットされた一日目、黒い泥のようなコーヒーの苦味はヴィオラの脳に程よい刺激を与えてくれる

 

前回は惜しかった、と思ってもいないことを思い浮かべながらも、また「初めて」管理人職に就いたXをディスプレイ越しに眺める

 

瞳を閉じたアンジェラが、貼り付けた微笑みで管理人Xを出迎える

 

ああ、この一日目に辿り着くまで一体幾つの屍を積み上げてきたのだろうかと想像する

 

湖に放り込めば底に死体が積み重なり、それはもう腹が捩れる光景になるだろう

 

しかし、ヴァイオレットに殺人という趣味も無ければ人間が死のうが生きようが「使える」か「使えないか」の分別しかできないのだ

 

それは、自分の命ひとつとってそうだった

 

「軌道修正は必要かもしれないな

あぁ、時間は沢山あるが無駄に時間はかけていられない」

 

傍らに揺らめく白い触手を、ヴィオラは自分の白い手で撫で上げる

 

「…当然、六本目の目処はついている

その為にもここを離れる訳にはいかないし、何より光の種シナリオは僕()の悲願のためにも必要だからね」

 

撫でられた触手は床へと沈んでいき、周囲は静寂に包まれる

 

「…さて、また暫くは管理人くんの働きを観察するとしようか」

 

ヴィオラはディスプレイへと向き直し、手を組んでは顎を乗せて心底楽しそうに笑った

 

 

 

「…そう、これらは全部、私が奪われたモノ

産まれたばかりの赤ん坊の頃、世界の平和の為にくべられたもの」

 

「必要だと思っていないけど…それでも、奪われたままで放置するのは悔しかった」

 

「だから、せっかく不完全ながらに生き返ったとしても、取り戻したかった

私の運命力、私が生きれなかった私の幸福」

 

「けど…そう、けど、私が取り戻してもそこから先は思いつかなかった

私に運命力が戻ったとして、私が既に死んだことに変わりなんてないんだから」

 

「私自身の使い道、どうしたいか、どうしていきたいかなんて…とうの昔にわかんなくなっちゃってた

なら、私が持ってても宝の持ち腐れってやつなんだよね」

 

「ならさ…私はこの世界に私の運命力を使ってほしい」

 

「より幸福に、より幸運に…より、私以外の誰かが笑ってくれるなら」

 

「…結局、私は自分の幸せより他人の幸せの方が満足する狂人らしい」

 

「やっぱり、100年前の救世主サマと血が繋がってるだけあるんだな」

 

「ごめん、▇▇…これからはもう、私の為に頑張らなくていい

私が幸せになる世界なんて求めなくていい

これ以上貴方が磨り潰れる必要なんてない」

 

「私は、これで満足するから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなの、受け入れられるわけないだろ」

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