XXXX年7月25日
「面接練習であれほど対策したのに、いざ「フィクサーとして目指すべき目標は?」と聞かれて「都市では無駄に死ぬ人が多いのでそれを改善すべく心血を注ぎたいからです」と答える奴があるか
馬鹿馬鹿しいと鼻で笑われたであろう」
「うっ…だ、だって気がついたらそう口にしていたんです
面接なんてやったことないし…」
「あー、L社には裏口入社みたいなものであったな…」
認定試験、一次試験から早一週間後
本日は一次試験の合否発表が届く日である
のだが、無二はイナの面接のダメっぷりに何度も溜息を零してはグチグチと小言を言ってくる
「筆記の方は懸念しておらぬが、あぁ…面接…あれほど圧迫面接さえも練習しておったのに…」
「昔の私なら圧迫面接を圧力面接にしてましたね
面接官の頭を机に押し付け…」
「そういう物騒発言は良い!全く!」
不安に駆られる無二とは正反対に、イナは随分と余裕そうな様子で知らせを待っていた
そんなことをしているうちに、フロントからの内線着信が届く
到着した手紙は前回とは違い、比較的薄いものとなっていた
「こ…これは…まさか不合格通知では…!?」
「さぁ、どうでしょう」
震える無二を他所にイナは慣れた手つきで封筒を開いていく
三つ折にされた紙を開いて一通り目を通し…イナは、満面の笑みで無二を見下ろす
「ふふふ…無二、結果見たいですか?見たいですよね?」
「なんかもう理解したからよい」
イナの一次試験の結果は…見事合格
面接でも筆記試験でも合格点を大幅に超え、満点を叩き出していると手紙には記載されていた
「次は二週間後の二次試験ですね
当日はまた3区のビルに集合、試験内容の発表だそうです」
「フィクサーはあらゆる仕事を請け負う便利屋じゃからな、どんな試験内容であっても対応できるよう備えておくように」
「はいはい」
すっかり冷静さを取り戻した無二はイナにアドバイスをし、イナはそんな無二に呆れながら返事を流す
確かに、実技試験とはいえフィクサーはあくまで「便利屋」、あらゆる仕事を請け負う職であるためどんな試験内容を出されるかはわからない
もし備えていたとしても、もしかしたら突拍子もない内容を出されるかもしれない
そのことを念頭に起きながら、二週間を過ごした
そして、実技試験当日
「皆様、お集まりいただきありがとうございます
そして、一次試験合格誠におめでとうございます」
試験監督であろう協会のフィクサーがビルのホールに設置されているステージの上で挨拶を行う
イナはいつでも臨戦出来るよう動きやすいパンツスタイルで赴き、得物を持たないのも不自然な為ナイフホルダーにいくつかの武器を仕込んで身につけている
同じ試験会場で一次試験に臨んだのは約三十人程であったが、今この場に揃っているのはたったの十三人であった
(かなり減ってますね……ん?)
その十三人の中には、一次試験の日にイナに突っかかってきた危うい少女もいた
(ふーん、少なくとも馬鹿ではないのですね)
一次試験の筆記合格ラインは七割、そこに面接での得点が六割…その基準値を超えて、一次試験が突破できる
(あの態度と事前に忠告されたこともありより厳しく注視されていたのかもしれないのに…それを突破できるのは、なかなか実力があるそうですね
まぁ、やはり危なっかしいことには変わりありませんが)
イナは少女から視線を逸らし、周囲の他の受験者を見渡す
(殺し屋、傭兵上がり、シェフ…配達員
経歴こそバラバラですが、この都市でこの職を目指すだけのことはありますね
それぞれ得意な戦法が違い、得意とするモノが違う
試験内容如何では遅れを取りかねない可能性もあるのですね)
イナが一人分析をしていると、監督役のフィクサーの挨拶が終わり、他スタッフから一つの封筒を受け取る
「それでは、本日の試験内容を発表致します」
封筒の封を解き、中から一枚の紙が引き抜かれた
イナを含めたその場の参加者全員の空気が張り詰めたような雰囲気が広がる
「第七十三回、フィクサー認定試験実技内容は…
人探し、です」