Labyrinth of the Violet   作:白波恵

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A step towards a dreamⅢ

 

「それで、それでですねっ、私ともう一人の参加者の女の子…ゲルダって言うんですけど、私とゲルダは試験対象を洗脳した都市伝説家取りに拉致されてしまって

ほんと凄かったんです!いろんな虫がブワーッと」

 

「なんだそれ、気持ち悪過ぎるだろ」

 

アンジェリカも目覚め、久々の再会を果たしたイナ達は二年間の思い出話に明け暮れていた

 

残念ながら都市の星討伐に伴う後始末でアストルフォやオリヴィエはいないのだが、ベッドから出られないローラン、アンジェリカに「話を聞きたい」と頼まれイナは全身を使ってこれまであった出来事を伝えている

 

そんな様子を、アルガリアは扉横の壁に凭れかかりながら静かに見ていた

 

「人間が寄生虫に犯されてたり、人の体から巨大な蟷螂が産まれたり…本当に身の毛もよだつ経験でした」

 

「でも、イナが無事で何よりです

そうですよね?ローラン」

 

「え?あ、あぁ…そうだな」

 

「残念ながら都市伝説の討伐は割り込んできた他の参加者にしてやられましたが…私も晴れて正式なフィクサーになることが出来ました!

見てください!」

 

自慢げに胸を張り、イナは胸ポケットに繋いだチェーンからカードケースを取り出す

 

そのカードケースには9級フィクサーとしての身分証が入れられていた

 

「おぉっ!やったじゃないか」

 

ローランは横に座るイナの頭をぐしゃぐしゃと撫で、イナは嬉しそうに頬を染めて笑う

 

「それもこれも、アルガリアが私を鍛えてくれたおかげなんです」

 

「アルガリアが?」

 

アンジェリカが入口側にいるアルガリアへ視線を向ける

 

普段真意の読めない微笑みを携えるアルガリアが、やけに仏頂面でいる様がなかなか珍しく、アンジェリカは溜息を吐いた

 

「兄さん、いつまで拗ねてるんですか」

 

「……」

 

「これくらいの傷、どうってことないんですから

いい加減機嫌直してください」

 

「…俺はこれで失礼するよ」

 

アンジェリカの言葉にも表情を変えることなく、アルガリアは医務室の扉に手を掛ける

 

「あっ…アルガリア、待ってください!」

 

そんなアルガリアの背中を、イナは呼び止める

 

「あの…もう、行くんですか?」

 

「どうして止めるのかな

俺はここの人間じゃないんだよ」

 

「それは…そうなんですけど」

 

椅子から立ち上がったイナは、心配そうにアルガリアを見つめる

 

先程縊り殺されかけたにも関わらず、イナはアルガリアに気をかけているのだ

 

「あの…二年間、ありがとうございました

沢山迷惑かけたし、本当にお世話になりました

また…その、また、会えますよね…?」

 

「…馬鹿だなぁイナは

今回君を引き取ったのはアンジェリカの頼みだったからっていうの、忘れないでよね」

 

それだけ言い残し、アルガリアは医務室から出ていってしまった

 

アルガリアは元々イナ…レイン575を狙うフィクサーの一人なのだ

 

与えられた任務を放棄し妹の頼みを優先したから、今回はイナを守護していたに過ぎない

 

次会う時こそ…本当に命を狙われるのかもしれない

 

(…本当にそのつもりなら、私を育てる必要が無いのに

本当にわからない人)

 

 

 

チャールズ事務所を後に車へと乗り込んだアルガリアは、動き出す車に揺らされながら溜息を吐いた

 

「珍しいですね、アルガリア様が溜息など」

 

「…純粋無垢な少女って扱いが難しいよね」

 

「拠点を近くに移動させますか?」

 

「まさか、むしろもっと遠くに行こう」

 

そんな会話を続けながら、車は遠のいてく

 

そんな車が見えなくなるまで、チャールズ事務所の窓からイナは覗き見ていた

 

 

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