××××年11月20日
「……俺達、付き合うことになった」
「………………えっ」
時は十分ほど前に溯る
夕食は外食にしようとローランから誘われ、イナはうきうきとした足取りでローランについていった
アンジェリカにちゃんと謝れたのか、その日の夜に聞いてみたものの帰ってきたのは何かを隠すような生返事と取り繕うような饒舌
何かあったな、と察してはいたものの、翌日…つまるところ今日、日中アンジェリカとローランは何も変わりのない様子だったのだ
考えすぎだろうかとイナが一人考えていれば、目的の店に到着した
そこはイナのお気に入りの、餃子の美味しい店だったためイナのテンションは一気に高まる
「ローラン!早く入りましょう!」
「まぁ待て待て、席は取ってあるからよ」
暖簾と引き戸を通り抜け、香ばしい炒め物の香りが鼻腔をくすぐる
「ほらイナ、二階席だぞ」
カウンターやテーブル席の多い一階と違い、二階は座敷席が多い
イナがローランについて二階へと上がると、既に何席か埋まっている中で一際目を引く白と黒のコントラストが見える
「あ、ローラン、イナ〜!」
それは、無邪気な笑顔で奥の座敷席から手を振るアンジェリカだった
「遅かったですね、待ちくたびれました」
「悪い悪い」
「あ、あれ、なんでアンジェリカが…?」
一人困惑するイナを置いて、ローランはアンジェリカの隣に座る
そうなれば必然的にイナはテーブルを挟んだ向かい側に座るしかないのだが、イナはまず違和感を覚える
あのローランが、わざわざ進んで女性の隣に座るのか?
そう疑念を抱いてしまえば、その日の違和感は次々と湧いてくる
アンジェリカが普段よりも僅かに距離を詰めて歩いていた二人の後ろ姿
嬉しそうに笑うことが僅かに増えたローラン
「まぁ流石に察しのいいイナならもうわかるとおもうんですけど…」
アンジェリカがそう話し出した時、ローランがアンジェリカを制止する
「いや、ここは俺から
一応こいつの保護者の身だしな」
わざとらしく咳払いをした後、ローランはイナを見据えて姿勢を正す
真面目なローランの雰囲気に圧倒され、イナも正座のまま背筋を伸ばす
「……俺達、付き合うことになった」
「………………えっ」
そして、冒頭に至る
付き合う、それは先日ローランと話していた「恋人」という関係性になったということだろう
「……えっ」
勢いよくアンジェリカの方を見るイナ
照れ臭そうに頬に手を添え微笑むアンジェリカ
「えっ」
再びローランへと顔を向けるイナ
照れ臭そうに頬を掻くローラン
「……」
恋愛相談を聞いたのは一週間以内の話だ
テンポが早い
「ち、ちなみに…どちらから?」
イナは恐る恐る両名のどちらからそういう話を持ちかけたのか聞いてみた
「あ、私からです
ローランってば、珍しく自分から昼食に誘ってくれた先が居酒屋だったんですよ?」
「あっおいそれ言うなよ!」
「…………」
そらそうだ、イナはローランに謝罪をさせるためにローランが美味しいと思う店へ誘えと言ったのだ
アンジェリカはイナが思う以上に行動力のある女性だった
それとなく二人きりの時間を増やし距離を縮める算段のはずが、目の前に座る女はその段階をすっ飛ばしてきた
本来ならローランだってまともな場所で伝えようとしていたのだろう、一昨日の夜にボヤいていたのをイナはよく覚えている
しかし、思うところは多々あれど…イナにはまず、伝えるべき言葉がある
「…何はともあれ、おめでとうございますローラン、アンジェリカ
私はお二人のこれからを祝福しますよ」
「あ、あぁ…ありがとな、イナ」
「ありがとうございますイナ」
イナにとって、大好きなローランとアンジェリカが想い合う恋人同士になることは喜ばしいことこの上ないのだ
…そう、イナにとってはの話だが
「問題は…どう兄さんに話すか、ですね」
アンジェリカが頭を抱えながら深い溜息をついた
その心中はイナも半分ほどなら推し量れるだろう
妹であるアンジェリカに対しこれ程かというレベルで重い感情を持つアルガリアのことを思い浮かべる
ただでさえアンジェリカを溺愛しているアルガリア的視点を考えると…どこぞの馬の骨が恋人になることは愚か、その相手はアンジェリカに重傷を負わせたという認識であろうローランなのだ
地獄絵図になる未来しか見えない
「イナ、なんとか仲介役になれませんか」
「いや、何故私ですか?アンジェリカが止めればアルガリアも…」
「私が入ると拳が出かねないので…そして私も怪我が完治しきってるわけじゃないので、押し負ける可能性が高いんですよね」
「でも私も完全に大丈夫とは言い難いのですが…」
元々イナはアルガリアに追われてる身だった
一度目は見逃してもらい、二度目はアンジェリカ直々の頼み故に手出しはされなかった…だがアルガリアはスミレの魔女の手先と言っても過言ではない(と思われる)
だから、どうすべきかイナも迷っている
二人共、血染めの夜の討伐にて負傷し、未だ完治仕切っていないのだ
ローランやアンジェリカの包帯の交換などはここ三ヶ月イナが処置している
だからこそ二人の傷がどれほど癒えているか、イナもよく知っている
今アルガリアが二人の関係性を知れば、確実に血祭りになる(主にローランの)
それを止められる術が今はなく、ここは二人が完全に治癒されるまで秘しておく方が最善策だろう
「やはりここは今のところアルガリアに黙っておく方が…」
「俺に、何を黙っておくって?」
イナの頭に優しく手が置かれる
目の前のアンジェリカとローランは驚いたように目を見張り、イナは冷や汗が止まらない
最悪の状況だ、というかなんでここにいる
その場にいる三人…イナ、ローラン、アンジェリカは共々にそう思ったことだろう
イナの頭を撫でる手の主がそのまま続ける
「久しぶり、という程でもないかな
割と早い再会になったね」
声の主…アルガリアは、冷ややかな微笑みを携えながらその場に佇んでいる
お久しぶりです
白波恵です
久しぶりの投稿ラッシュ、一年ぶりの更新にも関わらず皆様たくさん読んでいただきありがとうございます
Library of RuinaSwitch版PS4版移植、日本語版発売おめでとうございます!見事私もようやく図書館を手に入れることが出来ました
推しのネツァクさん、アルガリア、ローラン共に素敵なお声でTwitterで情報が出る度に狂喜乱舞していました
進捗的には文学の階を解放したところで、まだまだ先は長いですね…遊び甲斐があります!
推し以外のキャラクターも魅力が更に溢れていて、現在プレイしているストーリーまでだとピエールなんか凄く好みの演技で声優さんの凄さが体感出来ましたね
出血デッキが楽しくてたまりません
図書館語りはこの辺りにして、まずは感謝を
先程も述べたようにたくさん読んでいただきありがとうございます、皆様の評価のおかげで見事赤色を獲得しました!やったー!
これからもたくさん更新していきます、よろしくお願いします
そして誤字報告ありがとうございます…!
常々気をつけてはいるものの、私とても誤字脱字をしてしまう文字書きとしては酷い欠点を持ち合わせているので、誤字報告は本当に助かります…!
誤字報告を含め、お気に入り登録や評価、コメント等も是非是非いただけると嬉しいです!
これからもLabyrinth of the Violetをよろしくお願いします!
〜p.s.〜
白波恵はリンバスではシンクレアが推しです