この話の直前にアニメ版第1話~4話前半までと似た出来事が起こった設定です。
水が地表の7割を占めるとある星。そこには、セイレーンと呼ばれる謎の存在の侵略を受けていた。人々は、セイレーンに対抗すべく、軍事連合組織『アズールレーン』を結成。別世界の艦船の魂を宿した少女達『KAN-SEN』を主力とした艦隊を編成し、セイレーンとの熾烈な戦いを繰り広げていた。
しかし、アズールレーンの2国家、鉄血と重桜は、セイレーンの技術を取り入れた組織『レッドアクシズ』を結成し、アズールレーンと袂を分かつ。
世界は、アズールレーン、レッドアクシズ、セイレーンの3勢力に別れて争う混沌の時代を迎えることとなった。
これは、そんな時代に生まれた1人の少年の物語である。
ここは、重桜陣営にある母港。ここに新たな指揮官が着任することになる。
「…ということで、君には我が艦隊の指揮官として着任してもらう」
「……」
廊下を歩く二人の人影があった。一人は重桜艦隊の元帥補佐、立花ユウゴ。もう一人は、この艦隊に新しく配属される指揮官、鷹山チヒロだ。
「…………」
チヒロは険しい顔をしながら立花の後ろをついていく。やがて、二人はある部屋の前に立ち止まる。
「ここが君の執務室になる。中で君の秘書艦が待機している。その後は好きに過ごしていい。今のうちに親交を深めておくのもいいだろう」
そう言って立花はその場から去っていく。残されたチヒロは立花を軽く睨むように見ると、ドアノブに手をかける。そして扉を開けると、部屋の中に入る。
中には一人の少女がいた。銀髪のポニーテール、丈の短いノースリーブのセーラー服のような衣装に身を包んだ小柄な少女だった。彼女は入ってきたチヒロに振り向くと、表情を変えずに口を開く。
「指揮官……ですか?」
「……」
チヒロは無言のまま。やがて少女の方から手を差し出す。
「綾波…です。鬼神とよく言われるのです。」
チヒロは差し出された手を見ると、軽く微笑んで綾波の手を握る。
「鷹山……チヒロだ」
軽く自己紹介を済ませたあと、チヒロは窓から外を眺める。
「今日から俺は重桜艦隊……レッドアクシズの指揮官になったわけだ……」
「……」
「セイレーンだけじゃない、状況によってはアズールレーンとも戦うことになる……。」
「………」
それを聞いた綾波は少し俯きながら黙り込む。
「………出来ることなら戦いたくない」
その言葉を聞いて綾波は驚いた様子で目を丸くする。
「……って顔してるな。何かあったか?」
綾波は思い詰めたような表情をする。
「……実は綾波、1か月前のユニオン襲撃に参加していたのです。」
それを聞いたチヒロはわずかに険しい表情を見せる。
1か月前のユニオン襲撃。それはアズールレーンを離反した重桜艦隊による、ユニオンへの奇襲攻撃だった。結果として奇襲は失敗し、首謀者の赤城、加賀は今もなお重桜を離れ行方をくらませている。
この事件により、アズールレーンとレッドアクシズの対立は決定的なものとなった。
チヒロにとっては、自分が指揮官になる目的を変えた事件でもある。
「……それで?」
「その時……綾波はユニオンの母港に潜入して、赤城さんたちに情報を流す任務を任されたのです。」
「……」
「でも、潜入中にアズールレーンの子と出会ってしまって、あまり情報は流せなかったのです。」
「………」
「あの子たちはとても優しかったです。素性もわからない綾波に普通に接して、とても楽しそうでした。」
「……」
「だから……もしまた会えたら、今度はちゃんとお話ししたいのです。」
「……でも、現実はそう簡単じゃない。レッドアクシズとアズールレーンに別れてる以上、敵同士だ。それに、俺達は戦争をしているんだ。情けをかけていられるほど余裕はない。」
「わかっているのです。それでも……!」
「………なら、逃げるか。」
「えっ……」
チヒロの言葉に綾波は再び驚く。
「俺も、アズールレーンとレッドアクシズの戦争なんぞに加わるなんてまっぴらごめんだ。」
「……」
「俺はセイレーンを一匹残らず狩り尽くすために指揮官になったんだ。こんなことをするために指揮官になったんじゃない」
「……」
「指揮官になったばかりだが、俺は今日重桜を抜ける。そのためにお前の船が必要だ。その気があるなら、今日の夜、港で待ってろ。」
それだけ言うと、チヒロは部屋から出て行く。残された綾波は呆然としながらその後ろ姿を見送る。
「綾波……は……」
その夜、チヒロは荷物と食料を持って港に走る。「はぁ、はあ……」
息を切らせながら、チヒロは港に着く。そこにはすでに綾波の姿があった。
「来たか……」
「本当にするのです?重桜を裏切るのですか?」
「さっきも言ったぞ。俺は戦争なんぞに手を貸す気はない。そんなのはセイレーンを狩ったあとでやればいい」
「……わかったのです。」
綾波はそう言って、自分の船に案内する。
「……艦艇を見るのは久しぶりだが、駆逐艦といってもでかいもんだな」
そう言うと、チヒロはそそくさと船に乗り込む。
「も、もう乗るのですか!?」
「早くしろ!追っ手が来てからじゃ遅いんだぞ!」チヒロに急かされ、綾波は慌てて自分も乗り込み、船を発進させる。
「よし、出せ!」
「了解なのです!」
綾波が船のエンジンをかけると、船はゆっくりと動き出す。
一方その頃、懐中電灯を持った人物が、綾波の艦艇の中を探索していた。
「スゲエ……直に見るのは初めてだが、こんなのが背負えるサイズにまで圧縮されるのか……」
彼の名は永瀬ヒロキ。チヒロの友人であり、重桜艦隊の整備兵である。彼はこの日、好奇心に駆られて、KAN-SENの艦艇内に忍び込んだのだ。
「鉄血には直接セイレーンの技術を応用してるらしいが、そっちもいつかお目にかかりてぇもんだ」
そう言いながら艦内を見て回っていると、艦艇全体が揺れ動き出した。
「ん?なんだ……まさか動いてんのか!?」
ヒロキは急いで外の様子を見に行く。既に、艦艇が重桜の母港から発進した直後だった。
「船が出港してやがる……一体誰が動かしたんだ!?」
ヒロキは不思議に思い、艦首の方に回る。すると、そこにいたのは……。
「あれは……チヒロか?」
「ふぅ……なんとか逃げられたのです」
「夜明けまでは真っ直ぐ進んでくれ。その後は……」
「チヒロォ!」
突然大声を出され、綾波は思わずビクッとする。
「な、何事なのですか!?」
チヒロは声がした方を振り向く。そこには、懐中電灯を手に持ったヒロキがいた。
「ヒロキ!?お前なんで……?」
ヒロキはチヒロの胸ぐらを掴み叫ぶ。
「なんでじゃねえよ!お前何やってんだ!こんなことしてタダで済むと思ってんのか!」
「わかってるよ!でも重桜にいてもセイレーンを狩れないだろ!」
「だからってどうすんだよ!ユニオンにでも亡命するつもりか!?」
「違う!ユニオンに行っても立場が変わるだけだ!それにマトモに扱われるかもわからないからな」
「だったらどうすんだよ!」
「行く当てはある。昔、母さんから聞いたことがあるんだ。どこの陣営にもつかない、地図に載らない島があるって」
「……そんな場所があるわけないだろ」
「あるさ。俺の母さんの故郷だ。そこなら、アズールレーンともレッドアクシズとも関わらずにセイレーンを狩れるはずだ」
「……」
「この際だ。ヒロキ、お前も来い!」
「はぁ!?なんで俺まで!」
「どうせもう重桜には戻れないんだ。それに人数は多い方がいいからな!」
「お前だからって……!」
「大丈夫!食料はたくさん持ってきた!4割がたゼリーだけどな!」
「ウチの指揮官はギガトン級のバカだアアアアアアアァァァァァ!!!」
ヒロキは頭を抱え絶叫した。
一週間後。
「………あれから一週間、水平線しか見えやしねえ……」
ヒロキは呆れた顔で海を見渡す。そこに綾波がやって来た。
「あの……ヒロキさん」
「あん?」
「その……ごめんなさいです」
「……なんでお前が謝んだよ」
「だって……」
「もういいよ。アイツのセイレーン嫌いは筋金入りだからな。」
「……ヒロキさんは、指揮官とお知り合いなのです?」
「あぁ、ガキの頃からの付き合いだ。」
「指揮官は、どうしてあそこまでセイレーンを憎んでいるのです?」
「……アイツは母親をセイレーンに殺されてんだ。」
「えっ?」
「元々、アイツは親父が指揮官でな。それもあってガキの頃から指揮官になるって言ってた。」
「そうだったのですか……」
「だが、5年前だったか、チヒロの親父の任務に母親も同行することになったらしい。」
「同行?どうしてなのです?」
「さぁな。だが、その時にチヒロの母親はセイレーンに襲われたらしい。」
「そんなことが……」
「その時に母親が庇ったおかげで、父親は助かったみたいだがな。それ以来、チヒロはセイレーンを毛嫌いするようになったんだ。」
ヒロキは食料のゼリーを吸いながら言う。
「アイツの家は近所でも有名な仲良し家族だったからな。母親の死が相当応えたんだろうよ。」
「……」
「まぁ、それでこんなことするたぁ思わなかったがよ……」
と、苦笑いをしながら、艦首でゼリーを美味しそうに吸うチヒロを見る。
「しかし、本当にこの先に島なんてあるですか?」
「知らね。もうここまで来たら破れかぶれだ」
その時、チヒロがハッとしたように海を見渡す。
「どうしたのです?」
「来るぞ!」
すると、先ほどまで晴れ渡っていた空が急に曇り始め、禍々しい船が綾波の艦艇を取り囲む。
「んだこりゃ!?」
「まさか、鏡面海域です!?」
「知ってんのか?」
「セイレーンが作り出した特殊な空間のことです!ここではセイレーンだけじゃなく艦船のコピー体……『駒』が出現するのです!」
「おいおい…どうすんだよ!」
「セイレーン………!!」
チヒロは怒りに満ちた顔でセイレーンを睨み付ける。その左目は稲妻を走らせ、金色に光っている。
「綾波!艤装を展開しろォ!」
「ちょっと待てチヒロォ!」
「なんだよ!?目の前に敵がいるんだぞ!」
「今俺たちはその艤装の上に立ってんだぞ!?艤装を展開したら俺たちは海に投げ出される!」
「……あっ」
「……お前ホントバカだろ!」
「……ッ!なら今は逃げるぞ!」
「逃げ切れると思うのか!?」
「やって見なければわからないだろ!」
「無茶言うなァ!」
「とにかく、このままではまずいのです!早く逃げるです!」
「やべえぞ!こっちに主砲向けてきた!」
その時、突如爆撃機が飛来して、セイレーンの艦隊に向かって爆弾を落とす。
「なんだ!?」
「あれは……ユニオンの空母部隊です!」
「ユニオンだと!?」
爆撃機が飛んできた方向を見ると、そこには銀髪のKAN-SEN……エンタープライズがいた。
「ユニオンのエンタープライズ!?なんでここに!?」
それだけではない。今度は雷鳴のような轟音が響き、砲撃音と共に、砲弾が降り注ぐ。
ヒロキは砲撃が飛んできた方角を見た。すると、そこにいたのは、巨大な剣を構えた、少女のような体格のKAN-SEN、ウォースパイトがいた。
「あの格好…まさかロイヤルか?」
「どういうことだ……まだ重桜からそう遠くはないはず…」
そして、今度は魚雷がセイレーンの艦艇を貫いていく。
「あれは……重桜の駆逐艦だ!」
「え?」
「あれ?綾波だ!おーい!」
「あれは……吹雪!?」
そこにいたのは綾波の姉、特型駆逐艦ネームシップの吹雪だった。
「どうなってる……?なんでユニオンと重桜の艦が一緒にいるんだ……?」
「わかんねえ……」
3人は呆気にとられている。
「吹雪、すまないが、今はセイレーンを殲滅するのが先決だ」
「よーし!」
突如現れた3人のKAN-SENは、セイレーンを次々と沈めていった。
その様子を見ていたヒロキは呟く。
「すげぇ………」
数分後、セイレーン艦隊は全滅していた。
そして、エンタープライズが綾波の艦艇に近づき、チヒロの顔を見ると、少し懐かしむような顔をして、口を開いた。
「教えてくれ」
「え?」
「あなたが……私たちの指揮官か?」
「……は?」
その後、彼は知ることになる。この出会いが、やがてセイレーンとの戦いだけでなく、アズールレーン、レッドアクシズの戦争をも終わらせることになろうとは。
Q.タイトルのRe:LIFEって意味あんの?
A.ないよ。