Kung-Fu / Box   作:勿忘草

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今回は鉄健の話です。
時間軸としては長枝がジョンス・リーと戦う前日です。


『ハンターズ・ボルテージ』

サンパギータ・カイとの戦いから数日後……次の標的は特に決まってはいない、一桁ランカーならばそれだけで満足だ。

 

俺は林が生えている場所へ居た、当ても無くただ相手を探していたのだ、人ナビをとられている今の状態では満足に見つけることもままならない。

そんな中後ろに気配を感じる、振り向くとそこに居たのは深道ランキング元七位『深道信彦』だった。

 

「楊鉄健だよな?」

「あぁ、そうだがどうかしたのか」

 

深道信彦が俺の名前を聞く、俺はその質問に同意をしながら構えを作り始めていた。

 

「ランカーを狩っているって聞いてな、悪いが着いてきてもらう」

「もし嫌だといえば?」

「当然『実力行使』だな」

 

そう言ってポケットから何かを取り出す、俺はその動きを見て即座に踏み出していた。

 

「速いが甘いっての」

 

フィンガースナップをすると火花が散る、何かと思えば花火だったのか!!

 

「くっ……」

「目晦ましになったか……さぁ、蹴りで鼻血の海に沈むんだな!!」

 

そう言って駆ける音が聞こえてくる、花火のせいで深道信彦が見えていない、すると一瞬目の前が真っ暗になると次にきたのは大きな衝撃だった。

 

「がっ……!?」

「クリーンヒットォ!!、俺もやる時はやるんだぜ、どんなもんだ!!」

 

顔面に良い蹴りが入ってしまう、鼻は折れていないが血が出ているのは分かった。

少しばかり後ずさりをしてしまうが相手との距離感が分かった、駆ける音を計算に入れれば至近距離ではない、おおよそミドルレンジと言った所だ。

 

「まだ海には程遠いからな、もう一発いっとけよ!!」

「くっ!!」

「防御しても遅いんだよ、もう一発ぅ!!」

 

どうにか声のおかげで後ろに下がって衝撃を緩めたが、それでもやはりダメージはある、鼻は折れていないが結構血の方は出ているな、口の中で鉄の味がしている。

 

「どんな気分だ、着いてくる気になったかよ!!」

「好き放題言いやがって……」

 

花火の時に瞬きをしなかった為まだ目がチカチカする、チカチカする原因は花火だけではなく蹴りのせいもあるかもしれない、しかし深道信彦の姿はおぼろげながら見えている。

 

距離感もさっきと今の蹴りで完全に掴む事ができたから、一気に眼前へと迫っていく。

右に動いたから左へと俺から逃れる為に、逆周りの方向へ迂回しようとしている、しかし次第に接近していくせいで足音が大きくなってきた。

 

その為余計に場所を悟らせる結果となり、俺は信彦の輪郭が見えるほど目が回復していた。

 

「何で的確に場所が……」

「花火の攻撃は良かったが、その後に細かく当てずに二回も大技の飛び蹴りをしたのが良くなかった、アレで場所を不用意に漏らしてしまったんだ、距離感もご丁寧にな」

 

そう言って体重を乗せたフックを顔面に叩き込む、そこから顎にアッパー、脇腹にフック、腹にストレートを叩き込んでくの字に折れるまで叩きのめしておいた、とりあえずビルの方へ行かないとな。

 

「さて……あのビルの方へと向かうか」

 

俺は目をパチパチとさせて向かっていく、そしてビルへと入って行くと長髪の男が屋上のドアの前にいる、俺も屋上へ行くか。

 

「なっ……小西さん?」

 

くぐった先にいたのは芋虫のようにビクビクした男と小西さんだった、つまり圧勝って訳か。

あんたに勝てれば俺は満足できるだろう、だからこそ次は負けない、俺は思考を変えて今すぐにでも攻撃を繰り出せるようにした。

 

「鉄健…そしてお前は誰だ?」

「時田新之助」

 

謎の男は名乗る、しかしこの雰囲気は尋常ではない、この男は強い、そう俺は肌で感じていた。

 

「で、お前のその腕の傷は何だ、クマにでもやられたのか?」

 

俺は時田から離れて聞く、射程距離に入った状態で話そうとするなんて無茶な話だ。

 

「クマは無いです」

「何だ、勝負か?」

「言っているのはあなた達ですよ」

「?……」

 

小西さんはキョトン顔をする、もしかしてこいつ『精神(オカルト)系』の奴か、このタイプは話が伝わるのに返し方を理解するのが面倒なんだよ。

 

「コイツはいささか面倒な相手だな……」

「そっか……精神(オカルト)系だったか、どうでも良いや、鉄健もそう思うだろ?」

 

まあ、俺と違って小西さんみたいに割り切ったら簡単なんだけどな。

 

「確かにどうでもいい事でしたね……もしかして少し興奮してますか?」

「興奮って言うな、昂ぶっているんだよ、なんせこの瞬間だけは……時間が止まる!」

 

そう言って笑みを返してくる、まあ、こんな三つ巴で少しぐらい熱くならなきゃもったいないよな。

 

「もう全員話す必要もないしやりあいますか?」

「そうでしょうね、二人とも行きますよ」

「おう、お前ら頑張れよ!!」

 

そう言って始まる三つ巴の戦いの中、初めに動くのは小西さんだった、足を取る為にタックルを繰り出す、すると奇妙な動きを時田はしていた。

 

寝そべる形で小西さんに一撃を加える、俺はその隙に打ちおろしのパンチを繰り出していた。

 

「ラァ!!」

「はっ!!」

 

打ち下ろす軌道と同じ軌道に蹴りを繰り出す、カウンターだと思い、速く攻撃が当ると予感する、しかしそれは間違いだというのを知った。

 

「ぐぅ!!?」

「『同撃酔拳』」

 

このワードを聴いた瞬間、さっきのは全く同じタイミングで出されたカウンターと知る、なんて高等技術の拳法だ……。

 

「今貰ったのはパンチか……?」

「俺が貰ったのは蹴り……」

 

俺と小西さんは距離をとって驚きながらも相手を見据える、コイツも倒さなくてはいけないな、小西さんだけだと思っていたんだが、ここに居る以上は倒させてもらう。

 

「シッ!!」

「遅いですよ……」

「えっ……」

 

こちらが攻撃を出すと同時に攻撃を出すのが見える、こちらはもう拳を出した為に引けない、そして時田の拳の方が速く着弾する、その衝撃は複数感じられて、同時に放っていながら何発もあるとは驚きだ。

 

「くそっ……」

「貴方では僕を倒せない」

「おい、よそ見してんじゃねぇぞ!!!」

 

小西さんが低空タックルを再び試みる、するとそれに合わせて馬蹴りを放って飛ばす、相当な速度有ったって言うのにあれも合わせるかよ。

 

そこから背中へ着いて小西さんの動きに合わせて動く、掴もうとしても酔拳の動きでつかめないようにして一撃を放つ、俺はそこで時田へ接近して攻撃を仕掛けた。

 

右のストレートを出して時田の挙動を良く見る、打開策を見つけるには若干の犠牲を伴わないとな。

 

「さっきより速いがその速度でも貴方は僕を倒せない……」

 

時田が小西さんから離れてカウンターの為に攻撃をする、フェイントのつもりだったんだがな、逆に体重をかけて左のストレートを一気に振りぬく。

 

「オラァ!!」

「くっ!?」

 

カウンターブローに対するカウンター……クリス・クロスの成立がなされて顔が跳ね上がる、こっちも顎先に掠っているから最高の結果とはいかなかった。

 

「ハァッ!!!」

「……まずはこっちだな」

「こっち見ろつってんだろうが……よぉ!!」

 

小西さんが距離をとった状態から再び助走をつけて走り出す、それに対して背中を向けて飛んで予想外の行動をする、それを掴む為に小西さんが指を動かした瞬間時田の連撃が始まった。

 

「くっ……」

 

延々と時田が小西さんに攻撃を加える、俺もようやくバランス感覚を取り戻した、飛び上がって攻撃をしようとする時田へと駆けていき振りかぶる。

 

「喰らいやがれ!!!」

「なっ!?」

 

攻撃が小西さんへ届く直前に俺の拳が時田へと命中する、飛んで蹴りを放っていた時田はうめき声を上げて着地をする、あのまま放置していても外しそうだったが少しぐらい痛い目を見てもらわないとな。

 

「さて……どうするんだよ、時田、まだ小西さんも戦えるし俺も居るんだぜ」

「何もこれ以上はしませんよ……」

 

そう言って時田が去っていく、ああは言ったが俺と小西さんはそれなりのダメージを負っていた、あんな拳法は初めてだったな。

 

「あいつ、わざと外すつもりだったな……」

「そうですね……」

「お前はどうするよ?」

「やりますか……、お互いぼろぼろですけど」

 

小西さんの問いかけに答えて、お互いが前回のように構える、するとドアが音を立てた……

 

「ようやく見つけたぞ、信彦の通信が途絶えていたが此処に居たとはな」

 

深道さんがそこにいた、一体なんだと言うんだ。

 

「おい、深道」

「何だ、小西?」

「ありゃあ、お前の伏兵か?」

 

確かに気になる所だ、アレが深道ランキングの隠し玉ならずいぶんとヤバイだろう。

 

「あれもランカー狩りだよ、おれも知らない奴だからな、それにしても『ランカー狩り』が四人も入り乱れていたりしたら、ランキングが思うようにはいかないわけだ」

「そりゃあご愁傷さまだな、俺もコイツもお前の言う通りに動くのが煩わしくなっていたのさ」

「そうだったのか、まあ…どちらにせよこちらとしては役者は十分なほど揃ったから良いんだけどな」

 

笑っていた顔から一転、深道さんは説明する穏やかな口調となる。

 

「一体どういう訳なんですか?」

「最大の規模を用いた最後のイベントを行うんだ、参加資格はリザーバーを含めた深道ランカーだ、そして賞金の額は八千万だ、これが理由なわけだよ、鉄健」

 

役者が揃った意味を聞くと驚愕の台詞が次々と飛び出す、それから一拍置いて小西さんが『待て』と手を突き出した。

 

「おいおい、待て待て……ちょっと質問をさせろ、いきなり言われても困るんだよ」

「まあ、このイベントは賞金目当てで勝てるような安易なものではない」

「どういう訳だ、トーナメントとかそういったものじゃあないのか?」

 

形式を聞いておかないと後々厄介になってしまうからな、きちんと抑えておかないと。

 

「形式はバトルロイヤル、場所はある廃墟、そして参加者の中には『現一位』ジョンス・リーと『新二位』逢間長枝、そして渺茫(びょうぼう)が参戦するだろう」

「いや、渺茫って誰だよ?」

 

俺が聞いた事の無い名前が飛び出した、順位が無いって一体そいつは誰なんだよ。

 

「元一位だ、鉄健」

「そうですか……有難うございます、小西さん」

 

小西さんが言ってくれているから分かるが……この調子ならばかなり順位が高い面子も来そうだな。

 

「じゃあな、参加するなら○○日後の○時に来てくれ」

 

そう言って深道さんは去っていった、参加するならって……あんなにやられて黙っていられるほど甘くは無いんだよ、参加するに決まっているじゃないか。

 

「どうする、鉄健?」

「俺は帰って万全にしときます、小西さんにも時田にも勝ちたいんで」

「そうか、俺もあいつには勝ちたいしさっきの戦いはそのバトルロイヤルまでお預けにしとくか、またな」

 

俺はそう言って小西さんより先にビルから出て一目散へ家へと向かっていったのだった。




次回から深道バトルロイヤルが始まります。
どこかご指摘の点がありましたらお願いします。
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