Kung-Fu / Box   作:勿忘草

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今回が最終話となります。
短い間でしたがお付き合いくださり有難うございました。


『愛は戦争』

最後に気絶した俺は深道ランキングの決着を見る事が出来なかった、そのため俺は『久坂医院』のベッドの上で結果を聞く事になった。

 

「優勝者は屋敷よ、あいつ、エアマスターと渺茫の戦いが終わって暫くしたら居なくなっていたわ」

「離脱して屋上に行っていたのか、らしいといえばらしい」

 

話を聞く所によると屋敷は最後に残っていた三人が、屋上で今にも同士討ちで賞金を山分けしようとしていた所へ乱入、瞬く間に三人を倒して賞金と+αの報酬を手に入れてその後家を買ったらしい。

 

「それにしてもこんな拘束衣を着せやがって……暴れられるわけないじゃん」

 

拘束衣を着ていては体を動かそうとするが全然動かない、もっとも渺茫との対戦の時にイかれてしまったのは右腕のヒビに始まり、その他にも左足にヒビ、左腕と右足が骨折、それに肋骨が六本、どう考えても安静確定の大怪我である。

 

「まあ、念には念よ、坂本ジュリエッタの例があるから」

 

そうナースが言ってくるが弁解してやりたい、あいつは化け物じみているのだ、あいつのように痛みを軽減させられて立てたとしても普通はそこで終わり、動く事はできないものだ、動けるあいつがおかしいのである。

 

「そうかよ……しかしギブスでよく腕動かせるな、ただ足は全然動かせない、更に言えば寝返りが打てないのが辛いところだな」

「そりゃあ腕を動かせるのは俺の処置がいいからだ、本当だったら腕を動かす事もできず、もっと悲惨な事になっているところだったんだぞ、お前」

 

処置の感想をいうと白衣を着た男の人がカーテンを開けて入ってきた、別に飯が食えるから良いんだが足が動かないのは結構辛いものだ。

 

「あんたがここの院長なのか?」

「ああ、俺が院長の久坂だ」

 

この院長……あのナースと同じ名前って事は何かしら関係はあるんだし少し気になる事を聞いてみるかな。

 

「そういえばあのパワードスーツについてどう思ってます?」

 

あのナースとの関係を考えて俺は金ちゃんが着ていたあのパワードスーツについて聞いてみた、すると意外な答えが返ってきたのだった。

 

「正直嫌だな、二度としたくはない」

「えっ?」

「後で静菜に聞いて分かった事なんだが…あの若い奴が気の毒だよ、二代目シズナマンにされて」

「あれ、シズナマンって言うんですか、って……えっ?、二代目って事は初代ってまさか……」

 

金ちゃんが二代目ってことはかつては誰かがしていたという事だ、そしてシズナマンの存在を知っているという事は……

 

「そのまさかだよ、初代シズナマンは俺さ」

 

なるほどね、予測どおりだったわけか。

アレをどういう経緯でやったのか知りたいものだが……顔をよく見ると本人も出来れば少し触れないで欲しいみたいなので、その事に触れるのはやめておこう。

 

「あ、深道から貴方へ預かりものよ」

「一体何だ?」

「コレ、深道から聞いたけど現金入れたバッグらしいわ、疑わないでね、私はノータッチよ」

「どれ位あるんだ?」

「うわ……見たところ帯のついた束が三十だから三千万入ってるわよ、あと手紙があるわ」

 

それを見えるように折って首の所に置く、首を捻って黙読するとこんな事が描いてあった。

 

『長枝へ 

お前がこの手紙を見ているという事は俺は別の病院にいるだろう、わざわざお前にお金を払ったのは最後に歴代の渺茫を三人倒したからだ、エアマスターにも病院で聞くだろうが多分あいつは拒否するだろう。

人の限界を見せてくれたという事で討伐のボーナスを出させてもらった。

またいつの日か逢おう 深道より』

 

「アイツ……わざわざこんな真似しなくていいのによ」

「手紙で思い出したわ、金次郎達からも受け取っているの」

 

そう言って渡される、読みやすい字な事は嬉しいけれどせめてナース、読みやすいポジションに置くなりなんなりしてくれよ。

 

『親愛なる友 長枝へ 

お前がこの手紙を見ているという事は今頃俺と長戸は北海道にいるだろう。

お前を一緒に連れて行かなかったのは、お前を背負った時のお前の顔はまだこの場所に居たいと言うのを、またやり遂げていない事があると感じさせたからだ、これは言い訳に聞こえるかもしれないがそう感じたのは事実だ。俺たちの心は信じて欲しい、俺のハチマキと長戸のジャケットをお前に餞別として渡す。

どんなに遠く離れていても俺たちは親友だ、だからどこかこの遠い空の下でまたいつの日か逢おう 親愛なる親友 北枝金次郎 長戸より』

 

「はい、金次郎達から受け取っていたハチマキとジャケット……」

 

手紙を読み終えるとナースから二人の餞別の品を見せられる、とりあえずコレは持ち帰らないとな、それにしても長戸のジャケットはぶかぶかだろうな、俺が着るとあいつの腰の部分から下を引きずってしまいそうだ。

 

「それはそうと俺が治るまで……何ヶ月ぐらい掛かるんですか?」

 

寝返りが打てないので首だけ動かして院長の久坂さんに聞く。

 

「お前の回復力には少し驚いている、骨折が普段なら四ヶ月から五ヶ月かかるものが三ヶ月にまで減ったんだからな……まぁ、コレもたびたび言うが俺の処置が良かったからだろうな」

「分かりました、寝るんでカーテン閉めてもらって良いですか?」

「おう……っておいおい、偉く懐かしい顔がきてくれたな」

 

そう言って久坂院長が扉へと駆け寄る、せめてカーテンを閉めてから行ってほしいものだ。

 

「由紀さんまで……」

「ん、知り合いか?」

 

ドアが開くと患者の顔が見える、髪の長さで女性と感じ取っていたがそれ以上に雰囲気で分かっていた、顔をその方向にむけて話しかける。

 

「由紀さんはどういった理由で?」

「私はアバラに軽くヒビがはいってるの」

「参加者全員がやっぱりそれなりの怪我は負ったって事ですか」

 

無事に済んだのって一体誰なんだろうか、なんだかリーとかああ見えてぴんぴんしてそうだな、ジュリエッタも。

佐伯四郎と鉄健の二人は結構酷いだろうな、まあ、佐伯の場合は酷い有様になるように意図的にしたんだけれど。

 

「フフフ……重症のランカーは少しこっちにまわして荒稼ぎよ」

「静菜、貴方、少し腹黒くなったわね」

 

もしかして知り合いなのだろうか、少し呆れた表情で由紀さんはナースの人と話していた。

 

「このナースさんって由紀さんの知り合いですか?」

「えぇ、そうよ、高校生の時にね」

 

なるほど……一応信用して此処に来たっていう訳か、それならあの腕だけがシズナマンだった時の金ちゃんにこのナースが関与してるのはバレバレだったわけだな。

 

「そっちこそ『由紀さん』だなんて年下の子を誑《たぶら》かせて何をしてるのかしら?」

「私はこの子が呼びたいように呼ばせてるだけよ、人聞きが悪いわ」

 

二人の女性の殺気が漏れ出して医院の中へ充満していく、人を改造して劣化させるのに比べると由紀さんのはまだましな感じがあるけどな。

 

「あの女の殺気を少しの間受けると思うと、主治医として頭が痛いぜ……」

 

.

.

 

それから三ヶ月経って退院をした俺は、完全に体の調子を整えた上である人を公園へと呼び出していた、あの言葉をくれた日、戦った日から心を締め付けて苦しめる女性《ひと》を。

 

「で、どう言った用なのかしら?」

「由紀さん……重要な事なんです」

 

俺は真剣な目で目の前の由紀さんを射抜き、言葉を発する、その眼力は睨みころさんといわんばかりだろう、正直緊張のせいでうまく力加減が出来ていないだけである。

 

「もしかして戦いたいのかしら?」

「……そうなんでしょうね、きっと言葉以上に雄弁に語ってくれると思います、真剣な気持ちを伝えてくれるでしょう、正直きっかけでしかないでしょうけど」

 

そう、戦いはきっかけであって本来伝えたい事に、上っ面でないと自覚させる雄弁さをくれるだろう。

 

「もし、この戦いで勝てたなら!!」

「勝てたなら?」

 

俺は構えながら伝えようと声を張り上げる、大きな声ではあるが小さな声でこの言葉を伝えるほうが無礼というものだ。

 

「勝てたなら……」

「何かしら、もったいぶらないで言いなさい」

 

言葉に詰まったようにあと一言が出ない、うう……緊張するな、一瞬だけだ、踏み込めば良いんだ、『GO FOR BREAK』……『当って砕けろ』、別に無様でも良いじゃないか、俺は大きく息を吸い込んで決心を固めてその言葉を発した。

 

「俺と付き合って欲しいんです!!」

「えっ!?」

 

喉が張り裂けんばかりの大声で俺は告白をする、顔はトマトのように赤いかもしれない、顔に血が集まるのが感じ取れる、心臓が今までないほどに早鐘を打つ。

 

「俺のような人間には貴方しかいないんだ、あの日俺に気持ちをくれた言葉は俺の心を貫いた、戦いの中で見せた美しさに目を奪われ、そしてどうしようもないほど貴方に心奪われた!!」

「随分とストレートな言い方ね、聞いてるこちらが恥ずかしいわ」

 

顔を赤らめて俺の主張を聞く由紀さん、仕方ない、だって本当の事なのだから、本当に心を奪われてしまったのだから。

 

「だから……俺はそんな貴方が欲しいと思えた!!、これに嘘偽りはない、貴方を愛しているんだ!!!!」

 

この言葉に嘘偽りがない事を強調する、真剣な眼差しで由紀さんを見る、俺が余りにも真剣すぎたのか、簡単に折れないと感じ取った由紀さんは、微笑みながら構えて優しい穏やかな目をして俺にこう言って来た。

 

「そこまで言うのなら…良いわ……勝てたらよ、勝てたら私を貴方の好きにして良いわ!!」

「ありがたい……その言葉が!!、今!!、何よりも!!」

 

俺はその言葉に対し大きな声で叫び、心からの嬉しさに涙ぐむ、しかし涙だけで終わらせる訳にはいかない、勝って俺はこの人と恋をするんだ、俺を見てもらうんだ、俺を愛して欲しいのだ、ずっとこの人の心の中に居させてほしいのだ。

 

「全てを思いのたけ、この思いを貴方に、ぶつける!!」

「ええ、来なさい!!」

 

そう言って踏み出す俺、それに足をかけて投げようとする由紀さん、足が交錯するその一瞬の攻防に心を熱く燃やす。

 

……こうして俺の深道ランキングは終わった。

 

そしてこの戦いの結果は三年後の2009年を舞台にしたある物語に持ち越される事となる、それは……『川神』という場所で始まる物語である。




最終話と言っておりますがコレは次回作のつながりを最後に書かせていただきました。
次回作は一度この作品の時間軸から時間を大きく遡る事になります。
そしてプロフィールを書いてなかったので後日投稿させていただきます。
最後に一言、本当に有難うございました。
何かご指摘のほど有りましたらよろしくお願いいたします。
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