Kung-Fu / Box   作:勿忘草

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あるキャラが出ますが彼はこの話だけです、ご了承ください。


『深道ランキング』

俺は変な人に話が有ると言われて喫茶店へ行った、一体なんの用だ?

俺はこの人とは面識がないから全然分からない、冷静に考えたら俺の名前を知っているのもおかしな話だ。

 

「名前を知っているからと言ってそこまで身構えなくて良い……」

 

男がそんな事を言ってくる。

 

「あそこに座ってくれ、先客が居るんでね」

 

そう言ってある席を指差す。

 

「深道《ふかみち》、こいつは?」

「ケアリー、名前は明かさないでくれよ。 まあ、新しいリザーヴ候補で上位ランカーの素質持ちかな」

 

目の前にいたのは百キロを軽く超える巨漢、そして相撲取りのように髪の毛を()っている。

 

それにしてもリザーヴやランカーとはどういう意味だ?

 

「とりあえず座ってくれないか、鉄健くん」

 

そう言われたから座る俺、するとケアリーとか言う人がメニューを渡してきた。

 

「なんか飲めよ。 どうせ深道の奢りだ」

「おいおい……払うのは間違いないがすすめるなよ」

 

とりあえず飲み物を頼むか、流石に話をするのに飲むものがないと面倒だ。

 

「なら紅茶を……」

「分かった、ウェイトレスに言って運んでくる間に話を始めよう」

 

そう言って深道とか言う人はノートパソコンを取り出す、そして俺にある機械を見せてこういってきた。

 

「これはある市販のものを俺が改造して作った『人ナビ』だ」

「ハア?」

 

変な声が出たのは仕方ない、一体それを使って何をするつもりかの説明がないと困る。

 

「まあ、これだけでは分からないだろう。 そして本題だ……」

 

そういった瞬間空気が変わる、さっきまでとは少し違うぞ。

 

「楊鉄健。 君が『深道ランキング』に欲しい」

「『深道ランキング』?」

「ああっ、それは説明させてもらうから気にしないでくれ」

 

そう言ってノートパソコンをクリックして戦っている映像を見せてくる、なるほどそういった企画なのか。

 

「人が誰しも戦いたいとかそう言った欲があるのは分かるかな?」

「分かることは分かりますが……俺もプロボクサー志望ですし」

 

質問に答える、正直な所自分の力を試したいとか言うのはあるし、スパーリングじゃない場面で本気で人に拳を入れたいという願望が無いといえば嘘になる。

 

「そう言った人の要望を満たしながらそれらの戦いを動画として配信する、君達選手に対する報酬は現金であり、基本的にランキング戦であればその対戦相手を倒した時にお金が入るというわけだ」

「なるほど、選手の強さを端的にしめすためにランキング制にした、そして主催者である貴方の名前をつけて『深道ランキング』というわけですか」

 

話を聞いて理解が出来た、としても一体どのような人達が参加しているのか分からない。

 

「その通りだが、君の意見が聞きたい、参加するかどうか、強制をする気もないしな」

「参加するのは出来るだけ早いほうがいいですか?」

「そりゃそうだ、かと言って君の試合は今すぐではない、おおよそ……二ヵ月か、遅くて三ヵ月後ぐらいだな」

 

参加の表明に関しての質問をする、二ヶ月後か、その間に少し体を作っておくかな……戦いやすいようにしておいたほうがいいだろうし。

 

「参加は良いんですけど、いくらか聞いていいですか?」

「こちらの答えられる範囲ならば問題ない、どうぞ」

「まず一つ、これは『試合』ではなく『喧嘩』と見ていいんですかね、反則とかというのは?」

「特に反則はないし、まあ…ストリートファイトだから『喧嘩』だが」

「そして万が一の事でしょうけど将来に悪影響を与えるのは?」

 

俺も流石に少しやりすぎてプロの道が閉ざされたら洒落にならんからな、質問はしておかないと。

 

「流石に悪辣な試合内容でもない限り、そうはならないだろう……少なくても腕や足を圧し折ったりがないなら無問題だ」

「そりゃあ良かった、でもうひとつはその順位ってどうやって決まるんですか?」

「勝利した場合、その対戦相手の順位が手に入る、まあ、当然高ければそれに比例して強いけどね」

「そうですか、よく分かりました、少しね……さっきの言葉を聞いて安心してるんですよ、こっちも『喧嘩』ならばなりふり構う気はないんでね、で……今からケアリーさんを倒してその順位を貰ってもいいんですか?」

 

ファイティングポーズを取ってステップを踏む、さっきまで篭っていた熱がまた吹き返す、狙うのは肋骨、もしくは肝臓、腹そのものは効きそうに無いから側面を集中的にやったほうが効率はいいだろう。

 

「面白い坊主だ、本当に今すぐやってもいいんだぜ!!」

「おいおい……思ったより血気盛んだな、楊鉄健」

 

そう言って椅子から立ち上がった俺とケアリーさんが睨みあう、さて……やるか、しかしそう思った瞬間、深道さんがパソコンを閉じて俺たちの間に入った。

 

「待て待て、そんなに慌てなくてもお互いが戦うチャンスは作ってやるから気にするな」

 

その言葉を聞いてお互いに離れる、まあ今すぐやると言っても戦うチャンスをもらえるのなら構わないしな。

 

「それなら良いですよ、だってこんなに大きい人と戦えるチャンスはないですからね」

「ボクサーは階級別だからな、まあ、いつでも挑戦は待っているぜ」

 

そう言って俺達は店を出て別々の道へと分かれて帰っていった。




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