Kung-Fu / Box   作:勿忘草

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今回は鉄健戦です。


『深道ランキング前哨戦 楊鉄健VS屋敷俊』

長枝と坂本ジュリエッタの試合の始まりと同時刻……、屋敷と鉄健の試合も熱を持って始まりを告げていた。

 

俺は深道さんが教えてくれた場所へと向かって行った、するとそこには屋敷さんがすでに構えて待っていた。

 

「さて……始めましょうか?」

「お前は幸せもんや、この『天才』屋敷といきなり戦えたんやからな」

「『天才』?」

「そうや、行くでぇ!!」

 

左手を顔の高さまで、右手を胸の高さまで添えるように、掌をこちらへ見せる、それは合気道や柔術のようにも見えるが雰囲気がそうでないと告げている、あいにくその場合に考えられるものを俺は知らなかった。

 

「何で来るんだ?、この構えは読めないぞ」

「さあ、一気に決めたるで、『双按(そうあん)』!!」

 

屋敷さんが両手を突き出すように前へと出す、その攻撃を俺はパーリングで弾いて直撃を避ける、僅かに掠ってしまったが懐に入ればこちらのペースに引きずり込めるだろう。

 

「そして一気にカウンターで……なっ、これは!?」

 

腕が思ったように上がらない、一体何が起こったというんだ、まさかさっきの技がこの結果を生んだというのか!?

 

「残念やったな、『双按』は浸透勁(しんとうけい)や、受けてもうたその腕はちょっとの間上がらんで」

「くっ、触れられただけで腕がだるくなるとは……予想が外れてしまった、まさかそんな技術をここまで身につけているとはな」

「浸透勁を喰らったからって気にすんなや、相手がワイな時点でお前の運は無かった、何せ『天才』屋敷やからなぁ!!」

「そうかよ……でも『天才』だからって余裕かましたらいけないぜ、オラァ!!」

「なっ、なんやて!?」

 

俺はだるくなった腕を鞭のようにしならせて屋敷さんの顔を叩く、『フリッカージャブ』なんて滅多にするものじゃないんだけどな。

 

「兄ちゃん、なかなか根性据わってるやないか……でもだるい腕で無茶したら結構来るやろ」

「勝てるなら無茶でも何でも押し通すのがスタンスでね」

 

俺は構えなおして屋敷さんに向かって言う、勝てるならばだるくなるくらいどうって事はない。

 

「なんや、今のは変な手応えやったで!?」

「悪いが触れる瞬間にだるい腕を盾にして下がったんだ、元々通ったのにもう一回やったら手応えが変になるもんでしょ」

「成る程な……腕一本を犠牲にして付け入るすき作らんのは良い考えや、けどそっちを重点的に狙われたらどないする?」

「俺がそんな事させるとでも思ってますか」

「なるほどな、半身だけこっちに向けてしもたらだるくなった腕は隠せるわ、しかしそれでいけるもんか、相当上手い事せなワイに攻撃は通らんで」

 

「ハッ!!」

「くそっ!!」

「そうあ……」

「フッ!!」

 

俺は屋敷さんが攻撃する僅かな間を縫って顔にジャブを入れる、針をちくちく刺すように僅かなダメージを積み重ねる、大きな技をやる際に隙を作れるだろうし更に距離感を奪う事で攻撃を外しやすくする。

 

「くそっ、チマチマと……」

「KOを狙うのはまだ速い、少しずつ……じわじわと体力を奪っていく」

 

屋敷さんの攻撃を受けないように避けていく、瞼が腫れている為そこまで警戒しなくてもいいが念には念を入れておいて損ではないだろう。

それにこちらも僅かづつしかダメージを与える事ができない、カウンターを入れたければもう少しダメージを与えてそれに見合った状況を作り出すしかない。

 

「このまま長引くんやったら速く決めたらええ……チマチマ当るだけならこわないんやからな」

 

屋敷さんの手には気が集中していくのが分かる、流石にこんなチマチマされていたら苛立ちもあるし、瞼が腫れている以上長くなれば余計に不利になるだろう。

 

「んっ……これは?」

 

俺はだるかった手が少し動くのが分かる、なるほど軽く触れるだけで直撃を避けたから今になって動くようになったのか、しかしこの感覚なら一発フルスウィングしたらまただるさがぶり返すだろう。

 

「双按!!」

「うぉおお!!」

 

俺はその一撃に対して体を反らす、速い速度でやってくるけどもしこれを避けれたらカウンターで入れる事が出来る、

 

「グッ!!」

 

僅かに掠ったのだろうか、体に少しだるさがくる、しかし俺は屋敷さんの顎めがけてアッパーを振るう、その上に見える空ごと打ち抜くように全力を尽くして。

 

「どうや!!、これは通ったやろ!!」

「……それはどうかな?」

 

顎めがけて放ったアッパーは勝ち誇った屋敷さんへと見事に当たる、顎を跳ね上げられて驚きの表情を浮かべていた。

 

「何でやねん…通ったはずやろ……」

「通った事は通ったんですけどね、俺がスウェーバックで直撃を避けた、そしてカウンターを狙ったって訳だよ」

 

足がガクガクしながらもどうにか体勢を整える屋敷さん、俺がだるくなっていたはずの腕を使ってくるとは予測しなかったからか、そのせいで普段なら簡単には成功しないようなスウェーバックからのカウンターに成功して屋敷さんはモロに顎へとアッパーを貰っていた。

 

「それはそうと何でそっちの腕が……?」

「パーリングをした事で直撃しておらず通りが浅くなっていた、そのおかげで時間が経った今なら一発だけフルスウィングできたって訳さ」

「成る程な、そういう訳かい……」

 

こちらがどのような理由で受けた腕でフルスウィングできたかを言う、すると屋敷さんは納得の言葉を言う、納得こそしているものの屋敷さんの足はガクガクして足に来ている、俺も俺で通りが浅いとはいえ少しふらついていた、先に一撃を入れれば勝ちだろう。

 

「双按!!」

「速いが、避けられる速度でそこに固定しているなら怖くは無い!!、オラァ!!!」

 

両手を伸ばすが足のふらつきからか動いて放つ事ができず直線的な一撃となる、俺はそれを避けて最後にストレートを顔へと叩き込んだ。

 

「ストレートが一番到達するのが速いから頼っただけだが、まだまだ万全の状態までには持っていけてないか……もっていけてたならあのアッパーで終わっていただろうしな」

「ガッ……」

 

そう俺が言ってから鼻血を流して屋敷さんは倒れこんだ、とりあえず勝ちって事でいいんだよな。

 

そんな事を考えていたら後ろに気配を感じた、一体誰なんだろうか?

 

「おめでとう、楊鉄健、君が今日を持って新十位だ」

 

振り返るとそこには深道さんが居た、その手には初めて会った時に見せていた『人ナビ』が有った。

 

「さて、今から逢間長枝に渡しに行かないとな、ちなみに次の対戦はまた後日送るから気にしなくていい」

 

そう言って去っていくが正直今まで戦ってきた不良なんて比べ物にはならない。

今回だって防御させないようにジャブの多用だったし、もしがっついてパンチを繰り出していたらもう一方の腕もだるくさせられて立場が変わっていたはずだ。

屋敷さんで八位という事は強いのが最低でも七人は居ると言うことだ、どうやらこのランキングは長丁場になるだろう、速く自分に馴染む体重にもっていかなくてはいけない、二ヶ月で筋力を増やしたりしたがまだその感覚は無いからな。

 

「とりあえず勝ったんだし今日は飯食って帰るかな」

 

俺はとりあえずその場から立って伸びをしたあとその場所から去って栄養補給のために繁華街へと向かっていった。

 

.

.

.

 

場所は変わって長枝に渡し終えた後に喫茶店へと戻る深道達。

 

「さて……次の対戦はこういくかな」

 

そう言ってキーボードが叩かれる、そこから出てきた勝負は……

 

「十位:楊鉄健VS三位:小西良徳と六位:逢間長枝VS八位:屋敷俊か、一つは少し面白みがあるが長枝の方は少しな……」

「坂本ジュリエッタに勝てる奴が屋敷に負けるはずがないし、それに屋敷の高みには至っているだろ、兄貴?」

「まあ、それは間違いない、とにかく俺としては予想外の事さえあればそれで十分だがな」

 

そう言って深道たちもまた鉄健の様に夜の繁華街へと消えていったのだった。

 




次回は長枝です、一話ずつ交代とか続く場合がありますのでご了承ください。
なにかしら指摘する点がありましたらどうかお願いします。
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