Kung-Fu / Box   作:勿忘草

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今回は作者の好きなキャラが出てきます。


『怒りに身を任せて』

坂本ジュリエッタとの戦いが終わってから数日後……深道はとある駐車場でキーボードを叩き『深道ランキング』の戦いを中継していた。

 

「今回お届けするのは八位:屋敷俊VS六位:逢間長枝」

「今回のこの試合は消化試合な気するんだけどな」

「大丈夫だ、そしてさらには三位:小西良徳VS十位:楊鉄健」

「それにしてもこれは可哀想な気しかしねぇわ……」

「そして今行われているのは四位:皆口由紀VS九位:北枝金次郎」

「さぁ、ここに負けないほどに熱い戦いを各自で始めてくれ」

 

その言葉で戦いの火蓋は落とされた。

 

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深道が宣言している一方、その頃長枝は深道に渡された地図を便りに屋敷との戦いへと赴いていた。

 

「地図さえあれば正確に道ぐらいいけるって言うのに……深道の奴俺を馬鹿にしやがって」

 

俺は悪態をついて教えられた場所に到着、どうやら場所の指定が出来たのだろうが変哲も無い場所にしたようだ。

 

「おいおい、芸が無いな、お前の得意なペースを掴める場所を選べばいいものを……」

「そんなもん考えてもあんまり無いわ、あんたが坂本ジュリエッタにまぐれとはいえど勝っとる時点で小細工は無駄なんは悟ったしな」

 

屋敷は近寄らず俺に一定の距離から言葉をかけてくる、一体何を企んでいるのだろうか?

 

「悪いけど、すぐに終わらせる、足は腕の三倍力があるんやからな!!」

「そうだな、俺もそういった事はちゃんと知識として知ってるよ」

 

相槌を打って構える、攻撃予告かは知らんが気をつけておかないとな。

 

「そしてこれがワイの新技……本邦初公開やで、『蹴按(しゅうあん)』!!」

 

一気に屋敷が駆けてきて『気』を目一杯込めているであろうドロップキックをしてくる、助走が大きくなくあっけに取られる形で避けられず受けてしまったが……これは屋敷の持つ『気』の量が元々少ないのだろうか?

本当にそうだとしたら大変残念だが…

 

「おい、お前本当に今のが全力なのか?」

 

俺は頬をかきながらいささか拍子抜けであるのを態度で示した、当然純粋な感想を述べておくのも忘れずに。

 

「なっ!?」

 

その風景に屋敷は驚いていた、全力の一撃といえど発展途上だったのかもしれない、しかしそれでも全く効いてないとなったらショックだろう。

 

「じゃあな、『捜下(そうか)崩捶(ほうすい)』!!」

「うぐぅ!!、おえぇええええ!!!」

 

俺の一撃は驚いている屋敷へと無防備に直撃していく、屋敷は足を地面に着けることができず勢い良く後ろへと飛んでいく、どうにかギリギリ当たる瞬間に後ろに下がってさらに『気』で防御したが完全に出来たわけではないようだ。

 

「その様子だと、どうやら『通った』ようだな」

「お前も坂本ジュリエッタと同じ様に攻撃の時に使って『気』を『爆発』させるんかい……」

 

うつぶせの状態から顔だけを動かして喋る屋敷、気絶する前の質問のようだが一応答えておくか。

 

「まぁな、お前のあの技はさながら体全体に拡散する『爆発』の『気』と違って一点集中の『貫通』の『気』ってところか、勉強になった」

「坂本ジュリエッタに勝ったんはまぐれちゃうんかい、お前も十分化けもんやで……」

「失礼な奴だ、流石に俺はあいつみたいに三十メートルも蹴り飛ばすような力はねーよ……って返答は無しかよ、つれない奴だ」

 

俺はそう言って座り込み手を振る、屋敷の目は睨みつけながら俺を見ている、しかしこれは意識がなくなる前の意地だろう、俺は立ち上がって見下ろす形で屋敷を見届ける事にした。

 

「(言いたくないけど、こいつはわいをはるかに凌ぐ『天才』や……)」

「さて……なんか嫌な予感がするが行ってみるか、予感が正しいか確かめないといけねーしな」

「(だんだん意識が遠のいていく……こいつ性質(たち)が悪いで、多分自分の才能を知らんのや)」

「じゃあな、屋敷、また逢おうぜ」

「(こいつには『敗北』の感覚がないんや、もし誰かこいつに『敗北』を教えられるなら頼む、こいつのような奴にはきっと必要なんや……)」

 

屋敷の意識が無くなったのを見て俺は歩き始める、地図がどこかへいってしまったがそんな事は後でどうとでもなるって物だ。

 

「消化試合どころか燃える展開ばかりだな。一方は一撃KO、一方は『サブミッションハンター』を相手に……いやコレは後で言えば良いか」

「兄貴、でも九位と四位は……」

「予測していた結果だ、目の前で言うのもなんだが『最強の女』が相手でも無理は無い」

 

俺は迷って数分後、ある駐車場についていた、俺は目の前に広がっている光景を見て苛立ちを募らせる、金ちゃんが気絶した状態で負けていたのだ。

 

「着いたと思ったら、何やってくれてんだよ……こら」

「逢間長枝……想像していたより速いな」

 

深道がキョトン顔でも無く平然と言い放つ、その態度にも怒りを感じるが俺は目の前の女へと矛先を向ける。

 

「金ちゃんに何やってくれてんだよぉ!!」

 

俺はそのまま駆けていく、踏み込んでそのまま腹に一撃を加えて悶絶させてやる。

 

「おぉ!!」

「くそっ!!」

 

俺は怒りのままに一撃を繰り出す、しかしその一撃を繰り出す前に閃光が眼に入り目を眩まされてしまう、そして晴れたときには女が目の前からいなくなっていた。金ちゃんをやったあの女性を倒す、そう思っていたのだが一体誰が邪魔をしたのだろうか?

 

「悪いが……これから始めるのは皆が見たいエアマスターVS皆口由紀の『最強の女』を決める戦いだ、邪魔をしないでくれ」

 

振り向きざまに再び目を眩ませられる俺、なるほど邪魔をしたのは深道だったのか、しかしお前もあの女も逃がしはしない、深道が使った花火の匂いが漂っているのでその方向へ走っていく。

 

「見つけたぞぉ……深道」

「なっ、方向音痴なはずだろ!?」

「花火を使ったのが仇となったな、で、あの女性はどこにいる?」

 

数分後、俺は深道の目の前にいた、深道も方向音痴なのを分かっていたからこそ予想外だったのか、少し汗をかいている、とりあえず速くあの女の所在を教えろといわんばかりに眼前へと詰め寄った。

 

「悪いが乱入はさせられないんだ、こちらがもう試合を取り付けたんでな」

「お前の都合で怒りを納めろというのか……?」

 

こちらが今にも噛み付こうとするのに対して深道が答えるが、急に取り付けたなどなんだか作為的なものかと邪推をしてしまう。

 

「全くだ、こっちも予定を崩されてしまったら溜まったもんじゃない」

 

俺の不満に賛同するように深道が座っているベンチの後ろから白髪の背が高い男が出てくる。

 

「『JHONS LEE』、全員が見たくて仕方ないものを捨てるのはな……」

「『お前が』だろ、俺も適当だがお前の適当にはユーモアが無い」

 

深道の説明を『ユーモアが無い』と一蹴する『JHONS LEE』、読みは『ジョンス・リー』だろう、少なからずそう聞こえたからな、まあ…正直ユーモア以前にこちらの苛立ちや戦いの欲求を度外視して話を進めるのは余りにもよくないだろう。

 

「お前が俺とあの女性を戦わせておけば俺から痛い視線を受けることはなかったけどな」

「ハハッ、それは手痛い意見だな、お詫びと言ってはなんだが急遽ここで二位対六位の戦いでもやってみるか?」

「深道、流石にそれは断る、俺は『エアマスター』と戦えなかったからそういう代替の戦いをさせろと言っているんじゃないんでな」

「俺もだ、そういうので敵討ちの欲求を満たさせようなんて甘いぜ」

 

俺は正直な意見を言う、あの『エアマスター』と相対する女とさえ戦ったならば深道に怒りをぶつけることは無かっただろうし、ジョンス・リーも『エアマスター』と勝負していたならば深道にここまで言わないだろう。

 

「流石に乗らないか」

「ユーモアにしても不完全燃焼同士ぶつけてもそこまで良いもんは見れないだろうよ」

「その提案が幾ら楽しくて魅力的だったとしても、俺はお前に踊らされるだけじゃ納得はできねぇって訳だ……」

 

肩をすくめて『残念だ』というような反応をする、きっとポーズだけで別に問題は無いのだろう。

俺はそう言ってベンチの横に立って戦いを見ておく事にした、どちらにせよ始まりが決まっているならごねても無駄だろう、そして髪留めが潰れた後の戦いぶりやそこからの展開を見届けた。

 

「結局は……こうなったか」

 

正直一目見た時から俺は四位の女が勝つというのを感じた、『エアマスター』よりはるかに戦いに飢えているのが分かってしまったし、髪留めが壊れた時に見せた目が感じていたものを確信へと変えた。

 

「そうだな、お前はどうするんだ?」

「どうするも何も帰るだろ、普通だったら」

 

深道につっけんどんに答える、快調な時ならいいけれど、アレだけ傷ついた奴に勝っても『当然』としか受け取れないからな。

 

「折角なんだ、少しだけだが鬱憤晴らさせてやるよ」

 

ジョンス・リーがベンチの裏から俺の横に近寄ってきて一言言う、一体どういった形で晴らさせてくれるんだ?

 

「どういうつもりだ、勝負してくれるのか?」

「そういうわけじゃあねえが、ちょっと待ってろ」

 

そう言ってジョンス・リーが深道に言葉をかける。

 

「深道、あそこのアルバイトの奴らの面貸せ」

「別に良いが……」

「おいおい、何する気なんだよ?」

「まあ、とりあえず見てろよ」

「一体何がしたいんだ……」

 

深道が思案している間にカメラのまん前に立って声を放つ。

 

「さてと……お前ら暇なランカー、俺が相手してやる」

「おいおい……いきなりだな」

「俺だけじゃない、ここにいる奴も一緒に相手になってやる」

「はぁ!?」

 

まさか巻き込まれてしまうとは思わなかった、憂さ晴らしってそういう意味かよ!!

 

「退屈しのぎにはなんだろ……」

「あんた、思ったより強引だな……」

 

呆れてしまうほどの強引さ、まあ、別に帰るだけだったし少しはこの気持ちが晴れるだろうから断る理由なんて無いのだが。

 

「おい、深道、俺とこいつに勝てば賞金は幾らぐらいなんだ?」

「それは細かくか?」

「大雑把で良いよ、細かく言ったら面倒だしな」

「まぁ、大雑把で良いならこんな額だな」

 

そう言ってデスクトップを見せる、ここまで俺の賞金膨れ上がっていたのか。

 

「そうか……俺に勝てば860万!、こいつに勝ったら170万!!、あわせて1030万だ、何でも好きな車が買えるぞ!!、今から時間厳守で十分以内に来れるやつだけに挑戦させてやる!!」

 

そしてその宣言から丁度十分後……

 

「こいつら……」

「まさかこんなに来るとはな……」

 

俺はこの状況を見てユーモアとか云々の前に頭を抱えたくなった。

 

「これだけの数全員を相手にする気だったのか?」

「いや、こんなに集まるのは予想外だった」

 

ジョンス・リーが正直な一言を言う、俺もここまで集まるとは思いもよらなかった。

 

「しかしあいつらが勝ったら860万と170万は本当に出るんだろ?」

「まぁな、しかしここに居るのは二桁ランカーとリザーバーだ」

 

二桁っていえばぎりぎり屋敷より下って奴らか、それくらいなら十分だな、もしかしたらリザーバーで掘り出し物があるかもしれんが。

 

「なら、俺たちが負ける事は無いな」

「しかし金が好きなんだな、焚きつけた俺が言える事ではないけどよ」

「とりあえず始めて良いか?」

「で……本当に俺も負けたら取られんの?」

「まぁ、そうなるな」

「巻き込まれて良い気はしないがな、とりあえず負けたくもないしどいつをやろうか……」

 

とりあえずアタフタする前に戦わないとな、控えのランカーに回るのは真っ平ゴメンだぜ。

 

「良い気しないと言いながらノリノリじゃねぇか」

「とりあえず俺は林の中を行ってみるか……」

「良い判断だ、俺も行くぜ」

 

そう言って進んでいく、俺とジョンス・リー……しかし敵が見つけられず反対側の方に出て行く事となった。

 

「おい……」

「何ですか?」

「道間違えてねーか?」

「一応反対側だ、敵に会ってないからそう思うだけだよ」

「だが俺がいる」

 

抜けた先にいたのは守を立てた道着を来た男、見た目は何かやっているのがわかるんだが……とりあえずどんな奴か聞こう。

 

「お前は誰だ?」

「駒田シゲオ、お前の前の六位だ、ジョンス・リー、八極拳士としてあんたと戦いたい!!」

「それは俺じゃなくてこいつがやるさ」

「そう来るのかよ、さて……やるか?」

「俺はジョンス・リーとやる為にここへ来た、お前の様なまやかしの八極拳士は眼中に無い!!」

「だってさ、どうする?」

 

俺は相手がジョンス・リーを指名しているので戦う気を無くしていた、腹が立っているのはあるがせっかく制限時間内に来ているんだから、少しは汲んでやらないといけないよな。

 

「やってやるか、こいよ」

「構えないだと、バカにしているのか!?」

 

構えないのは一つの狙いがあるからだ、それも見抜けないのか、お前が試したいというからどんな攻撃が飛んでくるかを待っているんだ。

 

「良いから来い」

「良いだろう、望みどおり行ってやる『躍歩(やくほ)頂肘(ちょうちゅう)』、『捜下(そうか)崩捶(ほうすい)』、そして『阿修羅(あしゅら)破壊(はかい)豪華山(ごうかざん)』!!」

「フッ!!」

 

三回続いた連続攻撃を僅か一呼吸で弾き返す、あの男も強いんだろうがそれよりもジョンス・リーが圧倒的に強いだけの話だ。

 

「なっ!?」

 

驚きを隠せないのは無理もない、自分の自信の有る技をわずかワンモーションで無効化されたわけだからな。

 

発勁(はっけい)で弾いたか、防御も一級品だ」

 

俺は拍手をしながら今の無効化した一連の流れをたたえる、あそこまで綺麗にできるなんて、流石は二位という高順位に存在するだけはある。

 

「褒め言葉ありがとよ、だがお前にも出来ることじゃねえかよ、さて元六位だったか、勉強させてやる…お前が自分の事を八極拳士の一人だと思っているなら…八極拳士に二の撃はいらない…」

「えっ?」

「実際そうだよな、ジュリエッタじゃ無理なのは同じタイプだからなんだけど」

「八極拳士は一撃で相手を倒す……『八極』とは『大爆発』の事だ」

 

そう言って構えた動きから踏み込む動作を始める、この講座をのんびりと聞いている暇は無い、即座に距離をとるべきだろう。

 

「一撃で倒すには相手に接近する、その時目指すのは常に相手の正面、中心」

「なっ!?」

「終わりだ……リーは間合いに入った」

 

一撃が届く間合いに入ると言葉の通り、駒田の体の中心へと一撃を見舞う、その一撃はとてつもなく重く、駒田を一撃で倒していた。

俺とは違うものをその一撃に見てしまった、同じ正統派八極拳なのに…なぜこうも眩しく俺の目に映るんだろうか?

 

「一撃……か」

「そんなに驚く事じゃねぇだろ?、無粋な今日明日もまだ面白ェ、ホント生きてて良かったよ」

「これでもう帰るのか?」

「そういう訳だ、じゃあな」

 

片手をヒラヒラさせてリーは公園から消えていった。

 

「一体あの眩しさは何だったのだろうか?」

 

俺は自分の戦い方と照らし合わせる、何故同じはずの技なのにあんなにも眩しく映ったのだろうか、その理由を知りたい。

 

「戻ってきたぜ、六位がよ、やっちまえ!!」

「お前らは少し俺の気持ちの整理の為の犠牲だな……」

「なっ!?」

「おおおお!!」

「うわああああああ!?」

 

俺は次々と技を出して一心不乱に戦い、気づいた頃には公園に居た奴らも一人残らず気絶させていた。

 

「ふぅ、殲滅完了……しかしまだ俺との違いが上手く分からないな、ジョンス・リーと何が違うのだろうか……」

 

そう言って俺はこの場所から遠ざかっていく……夜まで結局ジョンス・リーと己の違いが分からなかった、納得できるものは『鍛錬の年季』、『実戦経験』という年のアドバンテージだ、それともそれとは違った俺にはない何かがアレだけ眩しく映すのだろうか。

 

「……結構な距離歩いたかな、でなんでお前はわざわざそんな所にいる?」

 

俺はアレから公園を横切って帰ろうとしていたが、その途中で木の向こう側にいる長髪で腕に三本の傷がある男に話しかける、先ほどから見られているのは分かっていた。

 

「さぁ?、僕は『あなたに引き寄せられたんです』から、前に引き寄せられたのは太っている人でしたけれど」

 

見当違いの言葉が返ってくるがこういう系統の奴は結構知っているから別段驚くことは無い。

 

「成る程ね……精神(オカルト)系か、でお前は何者だ?」

「『時田新之助』」

「そうか、お前は俺の今求める問いに答えられる存在か、時田!!」

「行きますよ」

「来い!!」

 

そう言って俺と時田の戦いが始まった。




現在ハチワンにも出てきていたジョンス・リーです、作者はこのキャラがとても好きです。
なにかしら指摘する点がありましたらどうかお願いします。
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