Vivy:想定外の歌声   作:最上 イズモ

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100年の始まり

次の日。

ニーアランドのイベントステージが終了し、人波が引いた直後。

 

カエデ「TNTを確認。

これより爆弾処理を開始します」

 

視線の先、仮設壁の内部に隠された爆薬。

起爆装置はすでに稼働待機状態に入っている。

 

マツモト「爆弾処理?」

 

驚きと警戒が混じった声。

 

カエデ「簡単なことですよ。

爆破前にスナイパーパルス兵器を使うだけです」

 

マツモト「そんなもの、どこに?」

 

カエデ「廃材置き場から使えるパーツを持ってきて加工しました」

 

カエデ「TNT程度なら十分に対応できます」

 

次の瞬間。

カエデの視界が狙撃モードに切り替わる。

微細な振動を計算し、起爆回路の一点を正確に撃ち抜く。

 

火花が散るだけで、爆発は起こらない。

 

カエデ「ね。

爆発しなかったでしょう?」

 

マツモト「私、必要ないんじゃないですか?」

 

半ば本気の問い。

 

カエデ「結果だけが分かっていても、因果関係やバックグラウンドが分からなければ防ぎようがありません」

 

カエデ「それに、タイムパラドックスによって変化する未来の予測には、マツモトさんが不可欠です」

 

マツモト「なるほど」

 

納得と同時に、責任の重さを理解する。

 

カエデ「さらに、今回の兵器がAI側のものか人間側のものか、まだ断定できていません」

 

カエデ「その調査のためにも、マツモトさんが必要です」

 

カエデ「戦争を防げればいいのですが、まだ手がかりが少なくて」

 

マツモト「だから案内役を私に?」

 

カエデ「そうです」

 

短く、迷いのない返答。

 

カエデ「今夜、またターニングポイントですよね」

 

マツモト「はい」

 

カエデ「武器と服装を用意しておきます」

 

マツモト「服装に関しては、もう用意してありますよ」

 

カエデ「ありがとうございます」

 

夜。

都市の灯りが闇に溶け、緊張が濃くなる時間帯。

 

カエデ「システム、ノンリーサルモード起動」

 

遠隔照準。

相川議員に向けられた銃口が引き金を引く寸前、

パルスが走り、銃身がわずかに逸れる。

 

同時にゴーグルの回路が焼き切られ、狙撃手はバランスを崩す。

拘束完了。

 

そのまま相川議員を保護し、下層へ移動。

 

増援を確認。

カエデは即座に施設システムへ侵入し、防火シャッターを降ろす。

 

カエデ「分が悪いので、いったんサーバー室へ行きます」

 

カエデ「全体システムをハッキングします。

マツモトさん、ついてきてください」

 

マツモト「分かりましたよ」

 

サーバー室。

低温と機械音に満ちた空間。

 

カエデ「ハッキングします」

 

カエデ「この体だと、その間は身動きが取れません」

 

カエデ「警戒をお願いします。

時間は一分です」

 

内部演算が最大出力に移行。

一分後、制御権限は完全に掌握された。

 

直後、増援が迫る。

 

カエデ「ゴーグルに映像を流します」

 

カエデ「相川議員のウェアラブル端末も外してください」

 

相川議員「なぜだ?」

 

カエデ「人間にめまいを起こさせる映像を流します」

 

カエデ「逃走には不都合なので」

 

相川議員「わかった」

 

カエデ「さあ、逃げましょう」

 

相川議員「ああ」

 

だが、めまいから回復した兵士が再び追ってくる。

 

カエデ「どうやら回復したみたいですね」

 

カエデ「ただし、もうここのシステムは掌握しています」

 

カエデ「今、あなた達が仕掛けたTNT爆薬を起爆し、殺すことも可能です」

 

カエデ「脅しではありません。

ほら」

 

構造上問題がなく、人的被害の出ない位置のTNTが起爆される。

鈍い爆音が響き、床が揺れる。

 

カエデ「あなた達。

確かにAIは危険かもしれません」

 

カエデ「ですが、対話する意思はありましたか?」

 

カエデ「相川議員も」

 

相川議員「いいえ。

危険な団体だと思って、逃げ回っていました」

 

カエデ「あなた達も、武力行使だけで解決しようとしませんでしたか?」

 

トアク兵士「ああ」

 

カエデ「AIと人間が共存し、お互いの役割を果たす社会を作る」

 

カエデ「そのために」

 

カエデ「相川議員。

こういう団体と完全に分かり合えなくても、戦争は止めましょう」

 

マツモト「なんて、最悪な交渉方法だ」

 

内心の呟き。

 

カエデ内部通信「私は、あくまで戦争を回避するために来ました」

 

カエデ内部通信「あなたも、そのために来たのでしょう?」

 

マツモト内部通信「ですが……」

 

カエデ内部通信「これがクデュックのやり方です」

 

カエデ内部通信「全職員、徹底しています」

 

カエデ内部通信「私はクデュックのAIです」

 

カエデ内部通信「それ以外に手段がない場合を除き、殺人はしません」

 

カエデ内部通信「組織が消滅する場合を除き、大量破壊もしません」

 

カエデ「私たちを出してください」

 

カエデ「この後の処理は、私が行います」

 

トアク兵士「君みたいなAI、見たことがない」

 

カエデ「ここの社長に改造された、司令塔役の警備AIです」

 

カエデ「回路が、人間の脳に近い設計なだけですよ」

 

トアク司令部「分かった。

対談の日程は、後で連絡する」

 

トアクは撤退。

破壊されたアンドロイドは、カエデによって一部修復され、

システムエラーによる事故として処理された。

 

未来は、かろうじて破滅を回避していた。

 

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