おちんちんハンター花月   作:名も無き二次創作家

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挑発耐性貫通

「入っていわよ~」

 

「失礼します」

 

場所は十番隊隊舎。

その執務室で珍しく事務仕事をしていた松本乱菊(らんぎく)十番隊副隊長が、その手を止めて人を招き入れる。

入室したのは八番隊第三席、京楽花月(かげつ)

彼女は書類を左脇にきっちりと書類を抱えていた。

上位席官、それも三席が他隊の副隊長に手渡しで送る書類。

重要でない筈がない。

 

彼女はそれを粛々と両手で差し出し、松本は両手で受け取り────

 

 

 

「はーい真面目な話はここまでー!」

 

「まだ何も話していませんけれど」

 

 

 

細かいことはいーの! と脳天気に言う松本によって、その場の真面目な空気は既に消し飛んでいた。

今更なにを言ったところで無意味、というか薄々こうなることがわかっていた花月としては苦笑いするしかない。

二人は責任ある重役から気安い友人へと立場を変え、会話に花を咲かせることにした。

女三人寄れば姦しいなどというが、姦しさなど二人居れば充分に事足りる。

 

ところで、十番隊副隊長の松本乱菊はサボり魔で有名だ。

護廷の階級は現世で言う軍隊の階級であり、基本的には上官の命令は絶対だ。

しかし松本は隙あらば直属の上司である十番隊隊長の命令を無視して仕事を放り出す。

というか、隊長に仕事を押しつけて遊びに行こうとする。

 

誤解の無いよう言っておくが、十番隊隊長──日番谷(ひつがや)冬獅郎(とうしろう)が舐められているわけでは無い。

これには二人の過去の立場や関係などが絡んでくるのだが、彼等にはただの上司と部下というだけではない、特殊な絆のようなものがあるのだ。

松本から冬獅郎への信頼は勿論、冬獅郎から松本への信頼だって充分にある。

例えば戦闘力、事務処理力、咄嗟の判断力。

そして────書類仕事からの逃亡力。

今日この状況下で松本が仕事から逃げないはずがない。

その絶大な信頼を得ている彼女には、本日隊長命令により監視が付けられている。

先程花月を部屋に通し、そして今も部屋の前で鎮座している影の薄い男性が今回の監視役である。

まあ、いくら隊長命令とは言え平隊士に副隊長を止めることなど出来るはずもないが。

 

今日も今日とて名ばかり監視が「また自分まで隊長に怒られる……」と意気消沈しながらその未来を諦めて受け入れようとしていた。

しかし彼も末端とは言え死神。

ただでは転ばない。

せめて乱菊(巨乳美女)花月(美少女)の会話を盗み聞きしてやろうと静かに耳を澄ませる。

彼は影が薄いことに定評があり、先ほど花月を通す際に言葉を交わしたというのにもう乱菊から忘れられていたのだが、今はそれが逆に盗み聞きの役に立っていた。

 

「──そういえばあんた、この前修兵のあそこ見たんだって?」

 

「見ましたけど、どうしてご存じなのですか」

 

「あんたと修兵が夜遅くに一緒に居るのを見た子がいたのよ。それを聞いてピーンときたわ。どうだったのよ」

 

「興味があるなら乱菊さんもどこかに連れ込んで見せてもらえば良いじゃないですか。檜佐木副隊長も乱菊さん相手なら喜んでみせてくれると思いますよ」

 

「いやーよ汚い。こういうのは雑談のネタにするくらいがちょうど良いの」

 

あそこ? 九番隊副隊長の檜佐木修兵さんの汚いあそこ、とは何処だろうか……。

と、監視役は考える。

まさか股間のことか? と一瞬最低な思考が過ぎるも、まさかこんな美しい女性達がそんな下品な会話をするわけがないと思い直す。

 

「あそこと言えば今一番気になるのは吉良副隊長ですね」

 

「あいつのはなんか曲がってそう。見たことないけど」

 

「わかります。どうしてか曲がっていそうな雰囲気なんですよね、見たことないですけれど」

 

曲がってる……あそこ?

それもう男性器以外にあるのか? という疑問を必死に振り払い、兎に角会話に集中する。

もしも本当に三番隊副隊長である吉良イヅルの男性器のことを言っているのなら、監視役の男も「わかる」としか言えない。

 

「あんたの影響か、最近私まで気になる時があるのよねぇ」

 

「本当は門外不出なんですが、乱菊さんなら見せても良いですよ。この『おちんちん備忘録』

 

 

不意打ち。

 

咄嗟に吹き出すのを我慢できた彼は立派だろう。

しかしそもそも存在を忘れられているからこそ盗み聞きできているのだからして、そんな彼が盗み聞きの内容で吹き出さないよう堪えたところで、褒めてくれる者はいないのだ。

 

「ほうほう……へー、流石に副隊長までなのね」

 

「実はここだけの話、藍染(あいぜん)隊長のおちんちんを拝ませてもらえそうなのです。時が来れば、と言われました」

 

「ええっ!? ちょっとそれホント!?」

 

隙を生じぬ二段構え。

五番隊の藍染惣介隊長といえば、所属や男女を問わず最も多くの死神から尊敬されている存在だ。

優しく、柔和で、気品があり、仕事ができて、強い。

完璧である。

勿論監視の男も憧れている。

 

故に、彼に藍染隊長=女遊びのイメージは一切無い。

 

特大のショック続きで、彼の精神はダウン寸前だ。

ただでさえ美人と美少女が男性器の話題で盛り上がっていることが未だに信じられないというのに、更にあの藍染隊長が女遊び……。

しばらくは立ち直れそうになかった。

 

「隊長と言えば、(くろつち)隊長のおちんちんにも格別の興味があります」

 

「えー、涅隊長!?」

 

乱菊はびっくりした。

監視の男もびっくりした。

 

そもそも涅マユリは“男性”の枠に入るのか。

そもそも自分の身体すら弄くり回している彼に、果たして男性器が残っているのだろうか。

そもそも不気味で怖い……。

 

「ていうか、そもそも涅隊長に付いてんの?」

 

そうだそうだ。

まさに我が意を得たり。

よくぞ言ってくれました。

さすが我らが副隊長。

 

そんな風に、思わず聞き入っていた監視役の隊士。

先程までは意識を部屋内に向けながらも顔だけは廊下に向いていた彼だが、盗み聞きに夢中になるあまり顔まで部屋の方を向けいていた。

 

「おい……。自分とこの隊長の霊圧すら知覚できないほど、なにに夢中になってんだ?」

 

「ひゃい!!!」

 

床に座り込んで顔だけ部屋(後ろ)に向けていた姿勢から、跳びあがって起立し居住まいを正す。

まさかの隊長様のご帰還だった。

 

「えっと、それは……その……」

 

 

 

「隊長と言えば、うちの隊長のおちんちんは?」

 

「見たことないですね」

 

「じゃあ見てく?」

 

「いえ、別にいいです」

 

「あら、以外。いつもの知識欲はどうしちゃったのよ」

 

「別に何でもかんでも見たいわけじゃないんですよ。あくまでも想像出来ないおちんちんが見たいのです。体格とか雰囲気とかで察せられるモノを見てもどうしようもないじゃありませんか。何度も言っていますが、私のこれは性欲ではなく知識欲ですから」

 

 

 

「???」

 

日番谷冬獅郎は混乱した。

自分の副官がちゃらんぽらんなのは知っていた。

しかし、これはあまりに酷すぎる。

下品すぎて一周回ってやっぱり下品だった。

監視役の平隊士にとっても地獄以外の何物でも無い。

しかし、実は本当の地獄はここからだった。

 

 

「まあ、うちの隊長のなんてどう考えてもお子様サイズだしねえ」

 

「常識的に考えて、典型的な子どもおちんちんで間違いないでしょう」

 

 

 

「ぷふっ……!」

 

油断した隙を突いて、再度の不意打ち。

笑いを堪えきれなかった監視モブ隊士は隊長の怒りに触れて死んだ。

 

「テメェら……神聖な仕事場でなに下品な会話してやがる」

 

「あ」

「げっ」

 

怒髪天を突く勢いで乗り込んできた話題の人物。

申し訳ない、気まずい、そして────哀れ。

そんな視線が冬獅郎の股間に注ぎ込まれていた。

それが冬獅郎の怒りを加速させる。

 

普段彼は極力感情的にならないように意識している。

怒りのままに怒鳴り散らすのはガキのすることだから、ただでさえ小柄な彼はせめて立ち振る舞いや精神性には気を使っているのだ。

そんな彼ですらも怒らせるのが松本の特技であり、本日もその特技は遺憾なく発揮されていた。

 

 

 

◇◇

 

 

 

五番隊副隊長、雛森桃。

彼女は日番谷冬獅郎の幼馴染みである。

非番を使って街の方に足を向けると、とある居酒屋の前でなにやら聞き覚えのある声がした。

まさかと思って入店すると、またもや先ほどの大声が個室の方から聞こえた。

冬獅郎が誰か若い女性を叱りつけているようで、かなり興奮した様子が伝わってくる。

あの後花月たちは仕切り直しのために場所を移していたのだ。

 

「たぶんしろちゃんと乱菊さん……と、もう1人いるのかな」

 

また乱菊さんがお仕事サボったんだろうけど、お店の人や他のお客さんも迷惑しているみたいだし、ここは幼馴染みとして私が注意てあげないと! と張り切る雛森。

ここ最近は急に大人っぽく振る舞ったり階級で抜かれたりした結果、あまり幼馴染らしい絡みができていなかった反動も僅かにあった。

遅れて雛森(お客様)に気付いた店主に事情を話し、個室に向かう。

 

「ちょっと、日番谷くん? そんなに騒いだらお店に迷惑……え?」

 

 

 

可愛い幼馴染みの男の子が、女性隊士に股間を見せつけていたという現実。

 

 

 

「お、お邪魔しました~」

 

顔を真っ赤に染めて店を飛び出した。

絶望に固まる冬獅郎。

長年の初恋があっけなく散った。

こんな不本意な形で。

流石に申し訳なく思った花月は、雛森に冬獅郎のおちんちんの大きさを大袈裟に伝えることを決めた。

花月は真実の探求者なだけであって、真実の伝道者ではないのだ。

 

 

 

 

 

 




後日追加ダメージを喰らった瀕死の冬獅郎が見つかったという。
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