かっこよくて乱暴な神様   作:TAMZET

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第三話:神様(後編)

1.蹂躙

仮面ライダーサウザーこと、天津垓様。

その存在は不破様より伝え聞いていた。

人工知能に対する、非道な実験の数々。

邪魔な人間を排除する事を厭わない冷酷なエゴイスト。

ただ、天津様がZAIAシティという、人類を魔素から守る街を作り上げたのは紛れもない偉業である。

天津様もまた人類のために戦う仮面ライダーなのだ。

その時の私はそう信じていた。

私は人類という存在を、無防備に信用しすぎてしまったのだ。

 

そして今、サウザーは黄金槍・サウザンドジャッカーを手にレジスタンスの装甲車群を攻撃していた。

残り二台の装甲車は、サウザーの周囲を走り回りながら、機銃による攻撃を継続している。

しかし、強固なアーマーを前に、一般兵装の機銃などあまりに無力だ。

何故人間同士で争うのか、私には分からない。

けれど、そこで行われている好意のおぞましさは理解できた。

 

「天津様!おやめ下さい!!人類同士で殺戮を行う必要など無いはずです!」

「黙れ道具。私に従わない人類など、ヒューマギア程の価値もない!生き残るのは、ZAIAシティに住む人類だけでいい!」

 

サウザーはサウザンドジャッカーのトリガーを引き、天へと掲げた。

 

【HACKING BREAK ©️ZAIAENTERPRISE】

 

巨大な光の柱が天へと昇ったかと思うと、それは無数の矢となり私達の頭上頭上より降り注いだ。

地面へと着弾した矢は、大爆発を引き起こす。

爆風は装甲車も私達も巻き込み、周囲を炎と爆風に包み込んだ。

攻撃の余波が、私たちにも迫る。

 

「ッ!?」

「伏せろ、2B!!」

 

爆風が到達する寸前、不破様の声がし、視界が暗くなった。

凄まじい衝撃を受け、私の記憶は途切れた。

 

どれほど時間が経ったのだろう。

目を開けると、そこはまだあの荒野だった。

周囲には爆煙が立ち込め、装甲車からは火が上がっている。

そして私の側には、不破様が倒れていた。

 

「不破様!!大丈夫ですか!?」

「……………」

「不破様?」

 

不破様は目を閉じたまま、微動だにしない。

私の頭の中を、最悪の可能性がよぎった。

 

「返事をして下さい……私はまだ…………不破様の秘書を続けたいです」

「………………」

「私が、愚かだったんです。私一人が犠牲になれば、コロニーの皆様が笑顔になってくれると。きっと、全てがうまくいくと……」

「………………」

「無限に続く戦争の渦の中で心を閉じ込めた私に、不破様がそう信じさせて下さったのです」

 

私はまだ残る右腕で、動かない不破様の身体を引き寄せた。

一人でコロニーを抜け出したあの時のように、涙が止まらなかった。

サウザーはそんな私を、つまらなそうに見下ろしている。

仲間であるはずの人類を抹殺して、この人類は何も感じないのだろうか。

 

(こんな奴がいるから……)

 

ふと私は自身の中に、何かが生まれる感覚を覚えた。

これまで悲しみに支配された心の中に、ドス黒い何かが流れ込んでくる。

それは憎しみや怒りといった負の感情だったのだろう。

 

「不破様……待っていて下さい。私が…………天津あなたを守りますから」

 

私はゼツメライザーを腰に巻き付け、サウザーを睨み据えた。

凄まじい痛みが義体を走り抜けると共に、私の思考を黒い何かが侵食する。

論理ウイルスではない、どちらかというとハッキングに近い代物だ。

 

「許さない!!1人の命だって、私達とは比べられないくらい、大事なのに……あんなにも優しかったコロニーの人達を手にかける、お前だけは!!」

「それでいい。機械は機械らしく、己の役割を果たせ!」

 

憤る私に、サウザーは青いゼツメライズキーを投げて寄越した。

ゼツメライズキーには、『ダイアウルフ』と記されていた。

私は躊躇なくそれを、ゼツメライザーに装填した。

 

ゼツメライザーから伸びる管が義体へと接続される。

思考が黒い何かに侵食されてゆく。

そこで私の記憶は途切れた。

 


 

2.この壊れた世界で

もう何も感じない。

自分が何をしているのかも分からない。

どこかで、声が聞こえる。

 

「シティの皆様、ご覧いただけておりますでしょうか!!これが機械の本性、アンドロイドの真の姿です!人間に平気で牙を向く、そんなものは、外壁の掃除でもやらせておけば良いのです!」

 

全身を絶え間ない痛みが襲う。

でも、そんなものは大したことは無い。

心を締め付けるこの痛みに比べれば大した事はない。

 

「このような暴走するアンドロイドを、圧倒的な力を以って排除する。これがZAIAクオリティです!!我々はこの技術という宝物を手に、魔素の無い未来へと旅立つのです!!」

 

最初に見たこの世界は、暗かった。

暗くて息の詰まるような世界だった。

でも、不破様と出会ったそれは変わった。

人類がいれば世界に色がつく事を私は知った。

 

「ふざけるなよ…………天津…………!お前が蒔いた種を放って…………手前ぇらだけ未来に逃げる………だと…………?」

 

いつだってこの声が、私を助けてくれた。

私も心を持っていいのだと、気が付かせてくれた。

そう、私は約束した。

不破様と……人間の命令を聞くなと。

 

「目を覚ませ、2B!!お前の心は、そんなシステムなんかに負けるほど柔じゃねぇだろ!!」

「………フワ……………サマ…………………」

 

暗闇の中に光が見える。

淡い光が。

その奥には、装甲車を背に何者かの腕を食い止める不破様の姿があった。

青い腕だ。

醜く歪んだ青い腕。

それが自分の腕だと気がついた時、私は覚醒した。

 

「不破、さま………?」

 

発した声は、自分の声とは思えない程に歪んでいた。

それで理解した。

自分がレギオンのような怪物に変身したのだと。

そして、不破様を襲っているのだと。

 

「こわして、下さい」

 

なんとか動く喉から声を絞り出す。

まだ制御が効くうちに、伝えなければならない。

 

「何を、言っている」

「不破様を傷つけるだけの秘書なんて、要らないはずです。人に必要とされていないアンドロイドは、いるだけ無駄です!!」

 

私は泣いた。

怪物になってしまったが故に、目から涙は流れない。

けれど、心は確かに涙を流していた。

 

「私の夢は………私の大事な人を………誰も死なせたくない事…………その夢を叶えるために、私が邪魔なんです!!」

「ふざけんな……!!」

 

ふと、右頬に鈍い痛みがあった。

不破様が私を殴りつけたのだと分かった。

重い拳だった。

初めて殴られたあの時よりも、もっと。

喧嘩したあの時よりも、もっともっと。

 

「さっき死んでった奴らはな、お前のためにここに来て死んだんだ。お前は邪魔なんかじゃねぇ。俺もお前も、アイツらの命を背負ってんだ!!だから、お前は生きろ!!」

「不破様……」

「何より、お前は俺の秘書だろうが!!俺は、お前も死なせたくねぇ。俺の目の届かねぇところで、勝手に死ぬんじゃねぇ」

 

不破様の言葉の一つ一つが、矢のように心に突き刺さった。

涙が止まらなかった。

私は必死に全身に力を込め、なんとか義体の動きを止めた。

もう一歩も動けない。

けれど、不破様を傷つける事はせずに済む。

それが、たまらなく嬉しかった。

 

「それは……命令ですか?」

「命令なら聞く必要ねぇ。これは、俺からお前へのお願いだ。命令よりも何千倍も強い、ただのお願いだ」

「はい……答えます……絶対、答えます!!」

 

叫び、歯を食いしばり、必死でゼツメライザーの制御に耐える。

何かが変わるかは分からない。

それでも私は、不破様の約束に応えたかった。

 

「まったく、私は何を見せられているのか。機械と人間の信頼など、実に下らない。早くシティの皆様に、本性を曝け出せ」

 

サウザーはため息と共に、不破様を斬りつける。

不破が傷ついてゆく。

今でも酷い傷なのに、いつ致命傷になるか分からない。

何もできない自分が悔しくてたまらない。

それでも悪意に負けじと身体を硬直させ耐え続けるしかない。

 

「お願い………誰か………………」

 

かつて、亡が教えてくれた。

願う事、それだけは機械にも人間にも許された自由だと。

私は必死に願う。

 

誰か助けて、誰でもいいから。

不破様を、コロニーの人達を。

 

「誰か、助けてぇっ!!」

 

誰にも届かないはずの叫び。

だが、その叫びは確かに1人の人類の耳に届いた。

サウザーを殴り飛ばし、瓦礫の向こうまで吹き飛ばしたその影は、私のよく知る声で優しく語りかける。

 

「ごめんな、待たせちゃって」

「飛電、或人……さん」

「ここからは、俺に任せてくれ」

 

そこにいたのは、黒い仮面ライダーだった。

私達ヨルハと同じ黒に身を包んだ仮面ライダー。

その瞳は赤く染まっている。

彼は手に持った剣・プログライズホッパーブレードで私をそっと撫でた。

不思議なことに、私の変身は立ち所に解除された。

全身の力が抜け義体がその場に崩れ落ちる。

立ち上がれない私の身体を、不破様が支えてくれた。

 

仮面ライダーはサウザーと向かい合った。

 

「なんだ?そのプログライズキーは……?」

「ゼロツーB型。2Bのデータから作った、未来のプログライズキーだ。天津さん……あんたを止められるのはただ一人、俺だ!」

 

サウザーの問いに、仮面ライダーは静かに答えた。

助けを求める小さなアンドロイドの声に答え、ヒーローは黄金の仮面ライダーへと殴りかかった。

 


 

3.未来へ

それからの戦いは、人智を超えていた。

赤い眼を爛々と輝かせ、膂力と武力に身を任せるサウザーに、ゼロツーBは圧倒的な速度と演算予知を以って立ち向かった。

天から飛来する無数の矢を避け、黒の拳が黄金の鎧を吹き飛ばす。

かと思えば、サウザーは地面にサウザンドジャッカーを突き刺し、ゼロツーBの動きを止める。

間髪入れず襲い来る斬撃に、ゼロツーBは膝をつく。

だが、それも僅かな間の事だ。

黒の仮面ライダーは己の身体を加速させ攻撃を回避すると、その勢いのままサウザーに殴りかかる。

そんな戦いが、無限に続いた。

 

だが、決着の時は訪れた。

ゼロツーBの攻撃に、サウザーが体勢を崩す。

すかさずゼロツーBはプログライズキーをベルトの奥へと押し込んだ。

右脚に未来のエネルギーが充填される。

 

「【ゼロツー・バトルタイプインパクト】

 

ゼロツーBのライダーキック……ゼロツー・バトルタイプインパクトをその身に直撃させ、サウザーは爆散した。

跡に残された天津がどうなったのか、そこまでは分からない。

戦いを終えた或人様に支えられ、私は新しく来た装甲車の荷台へと乗せられた。

義体の損傷は9割を超えている。

うまく立つことすらできない。

コロニーの人々が力を貸してくれた。

 

ゼロツーBはレッドアイサウザーの持つあらゆる力を凌駕し、敗北へと叩き落とす。サウザーも応戦するが、勝てない。

 

装甲車はシティの外壁を破壊し、衛兵達を振り切り本部へと突入した。

目標は秘書型ヒューマギア、イズの奪還である。

仮面ライダーバルキリーに変身した刃様が、衛兵達を次々と銃撃し行動不能にさせてゆく。

 

本部の最奥へと乗り込んだ私達は、そこでイズの居場所を知った。

イズは調査のため、未来へと派遣されていたのだ。

或人様の戦力を削ぐため、ライジングホッパーのプログライズキーと共に。

 

彼女を救うには、最早未来に行くより他に手立てが無かった。

未来へ向かう事はその場で、満場一致で決まった。

あの世界ならイズを見つける事は困難ではないだろう。

あの世界なら、人間は誰でも受け入れてくれる。

機械生命体は怖いが、それでも皆の士気は上がるだろう。

月面で幸せな生活も約束される。

 

だが、そこに私はいない。

先の戦闘で私の駆動系はひどい損傷を負っていた。

もう視界もうまく効かない。

シティの外では、凄まじい爆発音が轟いている。

もう時間は無いのだろう。

 

行き先を11950年に設定し、皆は未来へと旅立った。

 

タイムトンネルを前に、不破様と私が最後に残った。

 

「勝手に、生きるのを諦めてんじゃねぇ。お前は俺の秘書だ。俺が絶対に守ってやる」

「ありがとう……ございます…………未来で待っています」

 

そして私は、タイムトンネルへと身を投げた。

行き先は11940年。

ヒューマギアとアンドロイド、機械生命体のいる世界だ。

幸運な事に、タイムワープの先で私はジャッカスに会う事ができた。

駆動系の修理も終わり、辛うじて命は繋ぎ止めた。

もう一人の私に会わないように、私はヨルハ機体A2の名を騙った。

 

もし人類があの世界に帰ってくれば、アンドロイドの士気は大幅に向上するだろう。

世界の復興にも兆しが見える。

全ては人類が帰る世界を取り戻すために。

私は未来で独り、戦い続ける事を選んだ。

 

だけれど寂しくはない。

私の心には神様がいるから。

かっこよくて乱暴な、神様が。




これで、最終話です。
ラストバトルについては、もっとじっくり描きたかった所ではあるのですが、この話戦闘がメインではないため割愛しました。
ここから、本編に繋がります。
本当はこれを2章にして、もっとすっごい長くやる予定でした。
ただ、本編終わった後のモチベの低下が怖かったので、なる早で出しておく事にしました。
本編もそろそろ完結です。
これまでお付き合い頂いた方、お気に入り登録等して頂いた方、本当にありがとうございます。
更新期間長く開いてしまった時期等ございましたが、何卒最後までお付き合い頂けますと幸いです。
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