仮面ライダーリバイス 悪魔と伝説の狂想曲   作:BREAKERZ

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鋼のアッパーカット! カンガルー!

ー〈デッドマンズ〉sideー

 

〈デッドマンズ〉のアジト、幹部達がいる間では、頭目のアギレラと側近のフリオと参謀のオルテカが、松田歩、ヘッジホッグ・デッドマンの行動に渋面を作っていた。

 

「ちょっと、あの彼、リバイスと勝負する事になってるんだけど?」

 

「多分ですけど、先ずは邪魔なリバイスを片付けようとって考えているのでは?」

 

「まぁ確かに、リバイスだけでなく、伝説の戦士プリキュア。それと〈時空管理局〉の魔導師達も動いてますからね。先ずはリバイスを潰しておくのは良いでしょう。彼は彼女達と仲間と言う訳ではなさそうですし」

 

「ん? どういう事オルテカ?」

 

「簡単ですよ。プリキュア達は善意で、魔導師達は別の思惑で戦っていますが、彼、リバイスの戦う理由はーーーー『復讐』ですからね。お利口さんばかりのプリキュア達とは相容れないんですよ」

 

オルテカは信者達が隠し撮りしたプリキュア達の写真が張られたホワイトボードを見て、ほくそ笑みを浮かべるのであった。

 

「それに、こちらとしても、漸く『彼』が動けるようになったようですよ」

 

「それって、この間見つけた『スタンプ』の事?」

 

「ええ。“新しい肉体と、馴染んできたようです”」

 

オルテカがそう言うと、部屋の扉が開かれ、ソコから黒衣の少年が、薄く不気味な笑みを浮かべて立っていた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そして事務所のテレビで、輝二は“ある映像が撮られているDVD”を、それはもう何度も何度も繰り返しで見ていた。

 

≪なぁなぁ輝二? 相手は全国チャンピオンよ? 明らかにこっちに不利なんじゃね?≫

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

輝二はバイスの言葉に返答せず、DVDの映像を時にはスローモーションで、時には同じ場面を見ていた。

 

ーーーードドドドドドドドドドドド! バンッ!!

 

『輝二さんっ!!』

 

と、そこで事務所の扉を開いて現れたのは、はな達HUGっとチームだった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

が、輝二ははな達に目を向けず、ジッと映像を凝視していた。

はな達は気づいていないのかと思ったのか、輝二に近づく。

 

「輝二さーん! おー(バクッ)ハグッ!?」

 

はなが輝二の耳元で大声で叫ぼうとするが、輝二がはなの口にお茶請けの大きめのお煎餅を突っ込んで黙らせた。

 

「モガモガモガモガモガモガ!」

 

お煎餅を突っ込まれ、はなが弱冠苦しそうにもがき、今度はさあや達が話しかけた。

 

「輝二さん、どうして決闘なんて受けたんですか?」

 

「そんな事しなくても、あの場で倒しちゃえば良かったんじゃないの?」

 

「私達とのぞみさん達と輝二さんとバイス。このメンバーで戦えば勝率は98.28%でした」

 

「しかも、何で松田歩さんが全国チャンピオンになった場所で戦う事にしたのです?」

 

「・・・・・・・・あの場で倒しても、意味がねぇんだよ」

 

『えっ?』

 

「ムグググググググググ・・・・プハッ! それってどういう事?(バリッ、ムシャムシャ・・・・)」

 

漸くお煎餅を外したはなが聞くが(ついでにお煎餅も頬張る)、輝二はそれ以上答えず、映像に集中していた。

 

「輝二さん! もう!」

 

「ところで、輝二さんの見てるこれって・・・・」

 

「昨年の松田歩さんが優勝した『全国総合格闘トーナメント 学生の部』の試合映像ですね」

 

 

 

 

ーいちかsideー

 

その頃いちか達アラモードチームは、治療中のなのは達へとお見舞いのスイーツを持ってきていた。

 

「(バクバク! ムシャムシャ!)おかわり!」

 

「ヴィータちゃん。あんまりお菓子ばかり食べると、夜のご飯が食べられないわよ!」

 

「あんな不味い病院食みたいなもん食えるかっ! 逆に身体が悪くなるぜ! とっとと治してあのクソ生意気な輝二より先にデッドマンをぶっ倒して! あんの野郎の鼻を明かしてやるっ!」

 

シャマルが苦言を言うが、ヴィータは輝二への対抗心をメラメラ燃やしており耳を貸さずスイーツは爆食いしていた。シグナムやなのはにフェイトも、口には出さないが、デッドマンにやられた借りを返そうと闘志を燃やしているのが分かる。

スバル以外のFW陣は苦笑し、スバルはスイーツを食べて頬を緩ませていた。

 

「元気そうで良かったですね」

 

「まぁなぁ」

 

いちか達も苦笑しながらその様子を見ていると、はやてが少し思案するように黙る。

 

「(私らじゃ輝二くんの『復讐』を止められへんけど・・・・もしかしたらプリキュアの皆やったら)・・・・なぁ、いちかちゃん達、ちょっとエエか?」

 

「はい?」

 

いちか達が首を傾げると、はやてが意を決したように口を開いた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そして翌日。『大和武道館』の選手控室。

両手に包帯を巻いて、腕の保護倶のようにしていた。

 

「・・・・ふぅ~~」

 

呼吸を整え、平常心を保ちながら、『新たなバイスタンプ』を握り締める輝二。

 

≪なぁなぁ輝二? ホントに大丈夫?≫

 

「やれるだけの事はやった。人事も尽くした。後はもう、天命が微笑んでくれる事を祈るだけだ」

 

バイスにそう答えた輝二が控室を出ると廊下にいちかご立っていた。否、いちかだけでないゆりにいおなもいた。

 

「宇佐美? それに月影に氷川も、一体どうした?」

 

「あの! 輝二さん・・・・その・・・・」

 

「・・・・・・・・あぁ」

 

いちかの様子から、何となく察した輝二は後頭部をかきながら口を開く。

 

「口が軽いなぁあの狸魔導師さん」

 

「狸?」

 

「八神はやての事だよ。なぁんかあの女<ヒト>、人を化かす狸ってイメージがあるんだよなぁ。琴爪が猫で、立神がライオンってイメージがあるように」

 

「「あぁ」」

 

その意見に何故かゆりといおなが納得したような顔になる。いちかは納得できたのか、苦笑するが、すぐに戻した。

 

「あの、ね。はやてさん達から聞いてね、輝二さんーーーーお父さんとお兄さんを、〈デッドマンズ〉に・・・・」

 

「ーーーーあぁ、殺された」

 

「っ!」

 

「「・・・・・・・・」」

 

輝二の返答にいちかは息を詰まらせ、ゆりといおなは少し眉を寄せる。

 

「それで、そんな事は無意味だって俺を説得させようと、八神はやては自分達では無理だから、ダメ元で君達プリキュア、特に復讐をしようとしていたムーンライトとフォーチュンの二人を寄越したって訳かい?」

 

「・・・・うん」

 

いちかの返答に、輝二はふぅ~っと、息を吐くと、仕方なさそうに話し出した。

 

「・・・・1ヶ月と少し前、〈フェニックス〉分隊長を任命する式典が行われた」

 

「っ、確かその時の式典に〈デッドマンズ〉が乱入し、数名の重傷者と、死者二名って報道されたわね」

 

「じゃ、その死んでしまった二人が・・・・?」

 

嫌な予感がするいちかに、輝二はソレを言った。

 

「その時に亡くなった一般人と、その式典で分隊長を任命される筈だった隊員が、俺の父の『嵐山勇一郎<ユウイチロウ>』。兄の『嵐山一光<カズミ>』だった」

 

「「「っ・・・・!」」」

 

驚愕する三人に、輝二は話を続ける。

 

「兄貴は俺より八つも年上でな。高校卒業して、防衛大学校、略して防大を卒業して、〈フェニックス〉に配属された。そしてあの日、俺は父さんと一緒に兄貴が分隊長に任命される式典に行ったんだ」

 

当時の事を語りながら、輝二の何処か哀愁のある声となる。

 

「父さんは勿論、俺も兄貴が誇らしかった。俺も兄貴のようになれるかなぁ、なんて呑気な事を考えていたその時だった。あの忌まわしい事件が起こった」

 

そして、徐々に怒りが込められていく。

 

「丁度その時にお披露目される予定の対〈デッドマンズ〉用の装備、〈ライダーシステム〉と『バイスタンプ』を手に入れようと、突然〈デッドマンズ〉が襲撃して来た。その時に、何処から飛んで来たか分からない光弾が、避難しようとしていた俺の眼前に迫って来た。もうダメだと思った俺を庇ってーーーー父さんがその光弾を受けたんだ・・・・」

 

「「「っ!」」」

 

「そして気がついた俺が目にしたのは、背中が焼き爛れ、“心臓の音がしない父さん”だった」

 

「そ、そんな・・・・!」

 

「目の前で、お父さんを!?」

 

「何て、事を・・・・!」

 

いちかは涙を浮かべ、ゆりといおなも驚愕する。

 

「その後、俺は目の前に落ちてきた『リバイスドライバー』を見た瞬間、悪魔の、いや、バイスの言葉に突き動かされ、怒りのままに変身した・・・・」

 

【≪父ちゃんの仇を討てる力が目の前にあるぜぇ! レッツゴー!!≫】

 

「とな」

 

「まさに悪魔の囁き、ね」

 

≪ちょっとゆりちゃん! 俺っちが悪者みたいに言わないでよ! まぁ悪魔だから悪者だけどねぇ!≫

 

「襲撃してきた〈デッドマンズ〉を蹴散らした後、兄貴を探していた俺が目にしたのは、兄貴がーーーー“腹に大穴を開けられて殺されていた姿”だった」

 

「「「っ!!」」」

 

父に続いて兄まで殺されていた。父を目の前で殺されたゆりに、姉を殺された(実際には生きていた)いおなは、それだけでも心が壊れる程の衝撃だったのに、彼はそれを二度も受けたのだ。その時の衝撃は想像を絶するだろう。

 

「俺はな、未だに父さんと兄貴の骨壷を、家に置いてあるんだ。お墓に納められないんだよ。俺の心はーーーーあの時から、父さんと兄貴が死んだあの時から、止まっちまったんだ。だからさ、自分の過去と納得する形で決着を付けなきゃ、俺は前に進めない!」

 

輝二はいちか達に背を向けると、リングの方へと向かった。

 

「例え自己満足だとかエゴイズムと言われようが、俺はこの道を進む! 過去と決着をつける! その『覚悟』は、とうにできてる!」

 

いちか達は、その背中を見つめるしかなかった。

そしていちか達の後方の通路の角では、こっそり話を聞いていたひまり達だけでなく、他のプリキュアメンバー達も、涙を浮かべていた。

そして、あおいが持っていたガンデフォン越しで聞いていたなのは達も。

 

 

 

 

 

 

そして決闘の時間が迫り、赤コーナーで待っている輝二。そして青コーナーからは・・・・松田歩、否、ヘッジホッグ・デッドマンが現れ、リングへと上がってきた。

 

『・・・・良く決闘に応じてくれた。感謝する。しかし、何故あの時お前は俺を倒そうとしなかった?』

 

「ふん。ただ倒せば終わりなんて、んな単純なモンで終わりじゃないからな。俺は依頼されたんだ。アンタをーーーー救ってくれってな!」

 

[リバイスドライバー!]

 

「燃えてきたぜぇ!」

 

マウスピースを付けた輝二は『新たなバイスタンプ』、カンガルーが刻印された『カンガルーバイスタンプ』を起動させた。

 

[カンガルー!]

 

輝二はスタンプに息を吹き、ドライバーにセットすると、輝二の身体からバイスが現れ、巨大なスタンプを手に持っていた。

 

[Come on! カ・カ・カンガルー! Come on! カ・カ・カンガルー! Come on! カ・カ・カンガルー!]

 

ーーーー・・・・・・・・。

 

ーーーーさぁ! 世紀の対決が今始まろうとしていたす!

 

ーーーー赤コーナ~! 仮面ライダーリバイ!

 

ーーーー青コーナ~! ヘッジホッグ・デッドマン!

 

ーーーー今まさに! コングが、じゃなくてゴングが鳴ろうとしています!

 

ーーーーでは、スタンプバイ!!

 

「変身!」

 

『カンガルーバイスタンプ』をベルトに押印しスタンプを横に傾ける。

 

≪ありゃぁ!≫

 

スタンプを掲げたバイスが、輝二に向けてスタンプを振り下ろした。

 

[バディアップ! 跳び上がる! 舞い上がる! カンガルー! 勝利のパンチが決まった!]

 

スタンプが砕かれ現れたのは、赤と青のハーフ&ハーフになっている複眼はまるでカンガルーの耳のようにのびており、手にはボクシンググローブのような巨大な拳を装着し、腹部にはカンガルー育児嚢を模したポケットのようなものが付いた姿、〈仮面ライダーリバイス カンガルーゲノム〉へと変身した。

 

「さぁ、試合を始めようか」

 

その複眼の片方を片手の甲で撫でると、両手を叩き合わせた。

 

 

 

ーはなsideー

 

そして客席では、既に座っていたプリキュアオールスターズが、新たに姿となったリバイスを見ていた。

 

「うわっ! カンガルーだっ!」

 

「ボクシングと言えばカンガルーさんですぅ!」

 

「でも、何でボクシングでカンガルーさんがイメージされるんですか?」

 

「1980年代で、オーストラリア国家を動物になぞらえたボクシング・カンガルーってキャラクターが作られ、それが影響されたって聞いたわね」

 

「流石ほのか、『蘊蓄女王』・・・・それで、はな達どうしたの?」

 

のぞみとうららか目を光らせ、ひかりの疑問にほのかが答えると、なぎさは何故かツッコミのポーズでプルプル震えているHUGっとチームを訝しそうに見ていた。

 

「な、何だか良く分からないんだけど・・・・!」

 

「さっきの輝二さんの、【さぁ、試合を始めようか】って台詞と・・・・!」

 

「あのリバイスの姿を見ると・・・・!」

 

「【それ、違うですぅっ!】ってツッコミを入れたくなってしまうですぅ・・・・!」

 

「理解不能・・・・! この状態はとても理解不能です・・・・!」

 

『メガロドン』だとフレッシュ。『イーグル』だとハートキャッチ。『マンモス』だと5GoGo。『コング』だとスマイル。

何故かリバイスが新たなゲノムになると、1チームのプリキュアチームが、得たいの知れないツッコミの衝撃に駆られているのだ。

と、そんな中、ゆりが声を漏らした。

 

「・・・・バイスは?」

 

『えっ・・・・あれ?』

 

ゆりの言葉に、プリキュアオールスターズは首を傾げた。輝二がリバイに変身したなら、バイスも変身して現れている筈。

 

「輝二さ~ん! バイスはどうしたのー!?」

 

えりかが大声でそう聞いた瞬間。

 

「ーーーーこっちでちゅ!」

 

『“でちゅ”・・・・?』

 

バイスの声がしたが、舌ったらずで変な語尾をつけていた。

 

「ここでちゅ! ここでちゅ!」

 

バイスの声がリバイから聞こえると、左手に何とーーーー赤と青のウサギのフードらしきものを被り、しかもおしゃぶりまで咥えた、はぐたんと同じ位の大きさになった赤ちゃんのバイスが出てきた。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

プリキュアオールスターズ、そしてガンデフォンからこの状況を見ているなのは達も、眼を擦り、リバイの左手を再び凝視すると、

 

「俺っち、赤ちゃんになっちゃったでちゅ~!!」

 

『ええええええええええええええええええええええええええええっっっ!!!!!』

 

ーーーーズデェェェェェェェェン!!

 

赤ちゃんになったバイスを見て、プリキュアオールスターズの大半と、ガンデフォン越しで見ていたなのは達も、一斉に仰向けに倒れた。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「ちっこくなったなバイス」

 

「ベストマッチでちゅ!」

 

「だな」

 

ヘッジホッグ・デッドマンはゆっくりリバイスに近づき、リバイスもドライバーのスタンプを操作した。

 

[必殺! 仕上がる! 身軽! カンガルー!]

 

「俺っち、ひっこむでちゅ!」

 

バイスが育児嚢に入り込むと、リバイスもゆっくりとヘッジホッグ・デッドマンに近づくと、両者リングの中央でにらみ合いを始める。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

と、ソコで実況席に座る狩崎(と、何故かヒトミ)が。

 

「では、試合開始!」

 

ーーーーカーン!

 

ゴングをならした。

 

『「っ!!」』

 

超至近距離から放たれた棘だらけの拳と、巨大な拳が繰り出されるが、二人は顔を僅かにずらして回避し、そしてーーーー、

 

ーーーードドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 

高速て放たれる怒濤のラッシュが繰り広げられ、二人はお互いの拳をギリギリに回避したり、ラッシュをぶつかり合わせていた。

 

「うおらぁっ!!」

 

『らぁああっ!!』

 

最後に放つ拳が交差すると、クロスカウンターとなって、お互いの横面に叩き込まれた。

 

「くっ! うぉ!」

 

『ぐっっ! ぐぅ!』

 

よろけた二人だが、すぐに体勢の整え、拳をぶつけ合わせた。

 

 

 

ーはなsideー

 

プリキュアオールスターズのいる客席に、〈フェニックス〉隊員数名が連れてきた真崎有美と、宮岡孝治郎が現れた。

 

「あ、真崎さんどうしてここに?」

 

「あの、嵐山さんが、ここに来て欲しいって」

 

「俺も連れられた。しかし・・・・」

 

二人はリングの上で戦うリバイとヘッジホッグ・デッドマンの戦いを見た。

 

「・・・・アイツの為に戦ってくれているのか」

 

《まぁそうだね》

 

と、ソコで、実況席にいた狩崎が〈フェニックス〉隊員

が持つガンデフォンで連絡してきた。

 

《宮岡孝治郎くん。君の予想通り、輝二くんは真崎有美さんの依頼、【松田歩を救って欲しい】と言う依頼の為に戦っているだけじゃない。松田歩くん自身の為にも、戦っているのだよ》

 

「えっ? それどういう事ドクター?」

 

《まぁ、端的に言うと、松田歩くんが〈デッドマンズ〉に入り、『バイスタンプ』を手に入れた理由は、自分を捨てた人間達への復讐でもなければ、悪魔の力に魅入られた訳でもない。彼はただーーーーもう一度、キックボクシングがやりたかっただけだったんだ》

 

『えっ?』

 

狩崎の言葉に、プリキュアオールスターズは目をパチクリさせた。

その言葉に続くように、宮岡孝治郎が口を開く。

 

「アイツは、松田のヤツは、もう二度キックボクシングができなくなった事を心から苦しんでいた。もう一度だけで良い。燃え尽きるくらいに思いっきりキックボクシングをしたい。ただそれだけを、アイツは願っていたんだ」

 

「っ! だから〈デッドマンズ〉に入ったのね。デッドマンの第二フェーズになれば、怪人の身体でもまたキックボクシングができるから」

 

「ああ」

 

ゆりの推察に宮岡孝治郎は肯定を示す。

 

「真崎さんは、この事を?」

 

「少し前に、松田さんに会って、あの人がキックボクシングに捕らわれているって分かったの。だから、何か力になれないかなって悩んでいた時に、星空さん達に、嵐山さんを紹介してもらった時、もしかしたらって・・・・」

 

今度はれいかの言葉に、真崎有美は肯定した。

 

ーーーードンッ!!

 

「ぐはっ!」

 

『っ!』

 

と、全員が話に夢中になっている内に、ヘッジホッグ・デッドマンの回し蹴りが、リバイの顔を蹴り、リバイの口のクラッシャーから、血が吐き出た。

 

 

 

 

ーリバイsideー

 

「ちょいちょい輝二! けっこうやばいのうけちゃったでちゅっ!」

 

「っ・・・・!」

 

クラッシャーの血をグローブで拭ったリバイは、ヘッジホッグ・デッドマンに向かおうとした。

 

「なにっ!?」

 

が、それよりも早く、ヘッジホッグ・デッドマンが眼前にまで迫り、 ストレーツ、ジャブ、フック、アッパー、ガゼル、スマッシュなど、様々なラッシュを繰り出し、リバイは回避するので精一杯だった。

 

『シッ!』

 

「ぐぁっ!」

 

「ありゃぁっ!」

 

今度はハイ、ミドル、ローキックの連撃をリバイはギリギリ回避したが育児嚢に当り、バイスが客席にポーンっと飛んでいってしまった。

 

「バイス! ぐぅああああっ!」

 

バイスに一瞬気を取られたリバイに、ヘッジホッグ・デッドマンが踵落としを繰り出し、リバイは回避が間に合わず、左肩に叩きつけれた。

 

「くぅ・・・・!」

 

リバイは一瞬下がって体勢を整えようとするが、ヘッジホッグ・デッドマンはそれを許さないと言わんばかりに追いかけ、拳と蹴りのコンビネーションにリバイは防戦一方になった。

 

 

 

ーバイスsideー

 

「あ~れ~!!」

 

「うわわわわわ!」

 

飛んでいったバイスはつぼみがキャッチした。

 

「あぁつぼみちゃん! これぞハートキャッチならぬナイスキャッチでちゅ!」

 

「ど、どうも・・・・」

 

「凄い強い人じゃん! 格闘経験者の皆さん! どう見ますかっ!?」

 

えりかが、いつきにありすにいおな、格闘経験者プリキュア達にまるでマイクを持ったキャスターのように握り手を突き出して聞いた。

 

「拳だけでなく、蹴りとのコンビネーションがとても上手いね。しかも自分の身体の使い方も熟知しているよ」

 

「怪我でのブランクも全く感じさせていない。流石は全国チャンピオンだ。パワーもテクニックも凄まじい」

 

「ですが、輝二さんも凄いですわ」

 

「えっ? それはどういう事、ありす?」

 

「確かに松田歩さんの動きには目を見張りますが、輝二さんはその動きに、徐々にですが見切り始めています・・・・!」

 

再びリングに目を向けると、先ほどまで防戦一方だったリバイがーーーー。

 

「はぁっ!」

 

『ぐぉ!』

 

「つぁ!」

 

『ぬぅ!』

 

「てぃゃぁっ!!」

 

『ぐはぁぁぁぁっ!!』

 

段々と動きのキレが増していき、ヘッジホッグ・デッドマンの動きに順応していき、拳が当たっていった。

 

「輝二もエンジンのギアが上がってきたでちゅ」

 

「エンジンのギアってなんですか?」

 

「輝二はいつも、変身する時、【燃えてきたぜぇ!】、【燃えてこねぇなぁ】って言うでちゅね?」

 

「はい」

 

「あれは輝二の闘志と言うか、闘争心と言うか、とりあえず戦いのテンションが車のエンジンのように掛かってきたって言う意味なんでちゅ。【燃えてこねぇなぁ】は、エンジンの掛かり具合が悪い状態、【燃えてきたぜぇ!】は、エンジンが良い感じに掛かってきた状態でちゅ!」

 

「それじゃギアが上がるってどういう意味よ?」

 

「例えでちゅけど、プリキュアのみんなも、戦っている最中に集中力が増してきた事があるでちゅか?」

 

『あるある』

 

バイスの言葉に、プリキュアオールスターズがウンウンと頷く。

 

「それと同じでちゅ。輝二はエンジンが暖まってくると、ギアを一段階ずつ上がってきて、相手の動きを予測しているかのように戦うんでちゅ!」

 

『ぐっあああああああああああああ!!』

 

バイスがそう断言すると、防戦一方だったリバイがヘッジホッグ・デッドマンが、ロープにまで殴り飛ばされた。

 

「凄い・・・・!」

 

「輝二のヤツはね、わかってたでちゅ。松田歩の心を救って欲しいってその子の依頼、それはーーーー『未練』って鎖に縛られた松田歩を、解放させてやって欲しいってさ」

 

「それで、嵐山くんは彼との決闘を受けたのね」

 

「ひねくれ者でちゅけど、誰かの為に戦う事ができるヤツなんでちゅよ。輝二ってヤツは・・・・」

 

 

 

 

 

ーリバイsideー

 

『ぐぅ・・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・』

 

「どうした松田。まだだろう?」

 

『えっ?』

 

「お前、まだ戦えるんだろう!? だったら、燃え尽きてしまうぐらいの勢いで、かかってこいや!!」

 

リバイごヘッジホッグ・デッドマンに立てと激励した。

 

「っ! 何してやがる松田! まだお前は戦えるだろう! 負けるんじゃねぇ!」

 

「松田さん! 頑張って下さい!!」

 

宮岡孝治郎と真崎有美が声を張り上げてヘッジホッグ・デッドマンを応援する。

 

『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・ぬぅおおおおおおおおおおっ!!』

 

「ふっ」

 

『そうだ・・・・! 俺は、まだ・・・・燃え尽きていないんだぁぁぁぁぁぁぁ!! うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』

 

「ふっ・・・・」

 

ーーーードンッ!!

 

リバイはリング中央にまでさがると、中央で戦おうぜ、と言わんばかりに地団駄を踏んだ。

ヘッジホッグ・デッドマンか立ち上がると、再びファイティングポーズを取って、リバイの申し出に応じるようにリング中央に移動し、

 

『「っ!」』

 

二人は拳をぶつけ合い、試合を再開した。

 

「・・・・輝二さぁん! フレッフレー!」

 

「相手もヨロヨロです! このまま一気に攻め立てて下さい!」

 

「松田さんもまだまだだぁ!」

 

はなとさあやとほまれが輝二だけでなく、ヘッジホッグ・デッドマン、松田の応援を始めると、他のプリキュアメンバーも、リバイだけでなくヘッジホッグ・デッドマンを応援する。

 

「理解不能。何故輝二さんだけでなく、松田さんも応援するのでしょう?」

 

「ルールー、きっと皆分かったんです。輝二さんは、松田さんの為に、キックボクシングへの『未練』を絶ち切らせる為に戦っているって・・・・」

 

「『未練』を絶ち切らせる為に戦う・・・・ですか」

 

ルールも最初は分からなかったようだが、徐々に理解したような顔となり、リング上で戦う二人を見て、声を張り上げる。

 

 

 

ー狩崎sideー

 

「ふむ。プリキュアガールズも理解を示したねぇ(さて、こちらの“彼”はどうだろうねぇ)」

 

狩崎は自分の傍らに置いたガンデフォン越しで戦いを見ている“少年”はどうしているのか、と思っている。

 

 

 

ー???sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

プリキュアオールスターズの観客席の向かい側の席の通路では、“黒衣の少年”がリングの上で戦っているリバイとヘッジホッグ・デッドマン、否、リバイに冷笑を浮かべながら見据えていた。




次回、黒い仮面ライダーとサムズアップのライオンが登場。
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