エロゲの竿役のキャラみてぇな男に憑依しました。 ....さて、どうしよう。 作:二番目の鈴木
「こんにちは。毒島健さん。」
うん。声も綺麗だ。
まぁ、これで声が綺麗じゃない方が変だけど。
こっちも何か言わなきゃな
「....こうして誰かと話すのは久しぶりですね...緊張しますね...なまじ、相手が美人だとね。」
と、なんか俺のキャラにあってない喋り方をしてしまった。
やっぱりコミュ障になってるかも....
「....毒島さんは今なにを?」
と言ってきた。
ヤベェ、俺が変なこと言ったからか、お姉さんの顔が険しくなってる気がする。
◀︎毒島に100の精神ダメージ‼︎
「今は野菜の様子を見に来たんだ..来たんです。」
オイオイ、大丈夫かよ俺。敬語とタメ口が混ざってるぞ。
「無理に敬語を使わなくてもいいですよ。私は気にしません。」
天使か?この人?
上手く話せない俺を気遣ってそんなことまで言ってくれた。
「ありがとう。助かるよ。ところでお姉さんはどうやってこんな所まで来たんだい?」
そこだ。そこが1番気になっていた。
俺は1年前の事件で隔離されている。結界だかでここには来れない筈。
どゆこと?
「歩いてきたの。散歩がてらね。」
と答えた。
え、何?この人結界を歩いて破ってきたの?俺は結界とかよくわかんないけど、すごくね?ジョ○ィとジャ○ロかな?黄金の回転エネルギー使えんのこの人?
まぁ、そんなことは考えても意味はないからいいけど。
「そうですか。今日は暖かくて散歩日和ですからね。」
「そうね。ちょっと疲れたわ。どこか休憩する所はあるかしら?」
...距離近くない?
俺としてはこんな綺麗なお姉さんと会話出来て嬉しいけど、仮にも俺は犯罪者だ。俺のせいでこのお姉さんに迷惑をかけてしまうかもしれない。
「...なぁ..俺が何をやらかしたのか知ってるだろ。悪いことは言わない。ここを離れた方が良いと思うぞ。あんたまで嫌われるぞ。」
すると、
「お気になさらず。それよりも、お水を貰えるかしら?」
とお姉さんは言ってきた。
そうか。この人は今、俺を差別することなく、話しかけてくれている。
なんて、優しい人なんだろうか...俺は過去に最低なことをしたのに.....
なら、せめて...このお姉さんに今できるおもてなしをしよう。
「飲み物か...そこの椅子に座っててもらえるか?」
俺は家の前の椅子を指さした。
「...わかったわ。」
「ちょっと待っててくれ。」
俺はそう言い、近くの川へ向かった。
あれが冷えてる筈だ。
数分後...
「待たせてすまない。これ、飲んでくれ。」
「...これは?」
「家の近くの果物をすり潰して作ったものだ。ミックスジュースみたいな物だよ。」
家の近くで採れたものをすり潰してびんに詰めて飲めるようにしたもので、さっきまで川で冷やしていた。
俺の家の近くには、色んな果物の木が自生している。
前から思ったのだが、ここには誰か住んで生活していたのかもしれない。
「安心してくれ、毒とかは入っていない。もし、飲むのが嫌だったら飲まなくてもいいよ。」
「いえ、せっかく貰ったからには飲むわ。」
そう言って、お姉さんは銭湯の風呂上がりの牛乳のようにジュースを飲み干した。
「へぇ...美味しいわ。あなたこれを1人で作ったの?」
「まあな...1人だとやることもないし...」
「.......」
場の空気が凍ってしまった...
少しの間気まずい時間が流れる。
次に口を開いたのは毒島だった。
「....なぁ..博麗の巫女さんはもう大丈夫なのか?」
「...彼女はもう立ち直ったわ。」
その一言を聞き、毒島は安心した。
「良かった....俺のせいで巫女さんが引きこもったりしてないか不安だったんだよ。そうか...本当に良かった。」
安心したのか、毒島の声は震えていた。
「なぁ、お姉さん。俺はこの先ずっと反省しながら生きていくつもりだ...でも...俺がこうやって生きていることは償いになるのかって思うんだ。俺は巫女さんに一生物のトラウマを植え付けてしまったのに...」
そこには、いつも1人でふざけている毒島ではなく、罪を悔いている毒島がいた。
景山猛から毒島健へ変わったあの日、猛は健のこれまでの記憶がうっすらとではあるが同期し、景山猛と毒島健、2つの記憶が混ざり合ってできたもの...それが今の毒島健である。
そのため、毒島が能力を使って博麗の巫女を襲った時の彼女の絶望した表情がうっすらではあるが残っている。
博麗の巫女がどのような女性かは覚えていない。
だが、毒島健が彼女にトラウマを植え付けた。このことだけは鮮明に覚えている。
お姉さんは静かに話を聞いてくれた。
今、こうやって話を聞いてくれるだけでもありがたい。
「叶うなら、この体で...俺の声で彼女に謝りたい。」
毒島は悲しそうな表情で言った。
「すまないな..こんな暗い話をしてしまって..お詫びといってはなんだが、これ、持っててくれ。今日採れた野菜だ。」
と、お姉さんに今朝採れた野菜を手渡した。
すると、お姉さんは口を開いた。
「紫...私の名前は紫。これからは紫と呼んで。」
いつもの毒島なら「ふりかけみたいな名前ですね。」などと言い、おちょくるかもしれないが、今の毒島はそんな事を考えるような気分ではなかった。
お姉さん改め、紫さんは
立ち上がった。
「野菜ありがたく頂戴するわ。
....ねぇ...もしあなたが1年前のようなことをしたらどうするの?」
紫の声が囁くように、だが、毒島の耳に聞こえるように言った。
少しの間を挟み、毒島の口が開いた。
「そんな事は絶対にしない。神に誓ってしないと約束する。
だが、もし、そんなことを俺がしたら....
この首を差し出すつもりだ。」
毒島の顔には覚悟、決意などの表情が混ざり合っていた。
その顔はまるで、今から死合いをする武士のような勇ましい顔をしていた。
「...そう...また、来るわ。」
そう言い、紫は毒島の家を出た。
紫は森を歩きながら先程の事を考えていた。
ついこの前までは、外道、下劣、屑などと毒島の事を思っていた。
しかし、ここ最近の毒島を見てその考えは変わりつつある。
紫は毒島の表情を思い出した。
汗と土まみれの顔で見せた、収穫を喜ぶ表情。
1年ぶりの会話に緊張する、慌てる表情。
そして...
自分の罪を悔いる表情。
紫はあの時の表情を見て、いや、
という感情が湧いてしまった。
紫は1000年以上生きている大妖怪である。
そのため、人間の嘘を見破る事など容易い。
だから、あの表情は嘘でもなんでもなく、本当の表情、気持ち...自然と出たものだと紫は思った。
毒島は許されざる罪を犯した重罪人である。
でも....何故だろうか....
紫は
まるで、冤罪で死刑を言い渡された囚人のように彼が見えてしまうからだ。
「ヒヒ...オンナ...オンナ...オンナァァァ‼︎」
突如、木の陰から醜い妖怪が立場も弁えず、欲望を剥き出しにして襲いかかった。
「....」
紫はそんな愚か者を見向きもせずに始末した。
「彼もこの妖怪のように醜い欲望の塊だったのに...」
八雲紫は人間が好きだ。
特に強い人間が大好きだ。
精神的に強い人間、身体的に強い人間。
人間という種族は妖怪を始め、他の種族に比べて弱いちっぽけな存在だ。
でも、強い人間は立ち向かう。運命に、絶望に、宿命に、
紫は逃げずに立ち向かう人間が大好きだ。
それが例え、自分を退治しにきた者だろうと。
それが例え、才能がなくとも努力する者だろうと。
それが例え、許されざる罪を持っても、運命と真正面から立ち向かう者だろうと。
紫はお人好しなのかも知れない。
そう思ったからだ。
藍「私の出番は?」
出番の来ない藍だった。