高坂穂乃果は勇者である   作:ZENSUN

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1-8 初陣5

 粉塵の尾を引いて、海未は尚も動く。動き続ける。

 続けざまに炸裂する小型種の破片が、海未の身体を打ち、切り、掠めていく。

 酸素が足りないのか、意識が霞む。深い霧の中をもがくように、それでも海未は懸命に動き続けた。

 もう何度目か分からない爆発が耳の奥へ響き、海未は遂に地面を転がった。

 ふらふらと立ち上がり、そしてまた爆風を受けて転がっていく。

 音が遠くに聞こえ、痛みもまた遠い。

 

――負ける?

 

 そうすれば、この苦しみから逃れられるのだろうか。

 そうすれば、もう立たなくてもいいのだろうか。

 

――ですが、それは……

 

 そう思った瞬間、目に浮かんだのは大切な幼馴染の姿。

 一度は折れた海未の心を、再び奮い立たせた大切な存在。

 

――私は何故ここにいる?

――私が守りたいものはなんだ?

 

 海未が戦う理由――

 勇者として、バーテックスと戦う原動力。

  

 ここで負けるわけにはいかない。

 

 そうだ――

 

「私が穂乃果を守るんです!」

 

 刹那、閃光と共に――

 

 『奇跡』が咲いた。

 

 青い花びらが舞い上がり、旋風が巻き起こった。

 風圧が迫っていた小型種を吹き飛ばし、海未の周りには一種の空白地帯が生まれた。

 海未は視界の片隅で大型のバーテックスを見た。

 忌々しいことに、先ほど減らしたはずの小型種が再び生み出されている。このままでは、さほどの時間を要さずに、元の数に戻ってしまうことだろう。

 

 ならば、と海未は考える。

 

――生産能力を上回る速度で倒すだけです。

 

 決めて、海未は弓を構えた。

 そして、一歩踏み出すと、弓を真上へと向ける。

 力を、想いを蓄える。

 勇者の力はすべて神樹により(もたら)されたものだ。自身の戦う意志に呼応して顕現したものが、勇者の持つ武器であり、衣装なのだ。 

 ならば、強い意志はイメージを形に出来るのではいかと、海未は考えた。

 

 上に構えた弓から矢を放つ。光の(つる)が跳ね、青い花びらを散らす。水面をたたくような静かな動作から放たれた矢は、天高く登り無数の雨に変化する。

 降り注いだ光の雨が、海未の周囲に降り注ぎ、海未を取り囲んでいた小型種を洗い流すように、消し去っていく。

 

「名付けるなら、時雨でしょうか……」

 

 呟いて、次なる矢の準備に入る海未は、ほんの少しの気恥ずかしさを覚えた。

 それでも、この感覚を忘れないために、名前は必要だと割り切って、次の矢を放った。

 放たれた矢は、大型のバーテックスの真上に到達すると、雨へと変わる。降り注ぐ矢雨は、大型のバーテックスを取り囲んでいた小型種を静かに払い除けた。

 

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