粉塵の尾を引いて、海未は尚も動く。動き続ける。
続けざまに炸裂する小型種の破片が、海未の身体を打ち、切り、掠めていく。
酸素が足りないのか、意識が霞む。深い霧の中をもがくように、それでも海未は懸命に動き続けた。
もう何度目か分からない爆発が耳の奥へ響き、海未は遂に地面を転がった。
ふらふらと立ち上がり、そしてまた爆風を受けて転がっていく。
音が遠くに聞こえ、痛みもまた遠い。
――負ける?
そうすれば、この苦しみから逃れられるのだろうか。
そうすれば、もう立たなくてもいいのだろうか。
――ですが、それは……
そう思った瞬間、目に浮かんだのは大切な幼馴染の姿。
一度は折れた海未の心を、再び奮い立たせた大切な存在。
――私は何故ここにいる?
――私が守りたいものはなんだ?
海未が戦う理由――
勇者として、バーテックスと戦う原動力。
ここで負けるわけにはいかない。
そうだ――
「私が穂乃果を守るんです!」
刹那、閃光と共に――
『奇跡』が咲いた。
青い花びらが舞い上がり、旋風が巻き起こった。
風圧が迫っていた小型種を吹き飛ばし、海未の周りには一種の空白地帯が生まれた。
海未は視界の片隅で大型のバーテックスを見た。
忌々しいことに、先ほど減らしたはずの小型種が再び生み出されている。このままでは、さほどの時間を要さずに、元の数に戻ってしまうことだろう。
ならば、と海未は考える。
――生産能力を上回る速度で倒すだけです。
決めて、海未は弓を構えた。
そして、一歩踏み出すと、弓を真上へと向ける。
力を、想いを蓄える。
勇者の力はすべて神樹により
ならば、強い意志はイメージを形に出来るのではいかと、海未は考えた。
上に構えた弓から矢を放つ。光の
降り注いだ光の雨が、海未の周囲に降り注ぎ、海未を取り囲んでいた小型種を洗い流すように、消し去っていく。
「名付けるなら、時雨でしょうか……」
呟いて、次なる矢の準備に入る海未は、ほんの少しの気恥ずかしさを覚えた。
それでも、この感覚を忘れないために、名前は必要だと割り切って、次の矢を放った。
放たれた矢は、大型のバーテックスの真上に到達すると、雨へと変わる。降り注ぐ矢雨は、大型のバーテックスを取り囲んでいた小型種を静かに払い除けた。